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ウォーゾーン

 

「シャッラァッ!」


 俺は目の前にいた学生の股間を蹴り上げ、即座に振り向きながら回し蹴りを俺の背後にいた学生に叩き込む。


「舐めてんじゃねぇぞ、ガキども! 数を頼みにすりゃ俺に勝てるとでも思ってんのか!」


 工夫をしろ、工夫をよぉ! 今、この瞬間にテメェらの基礎スペックが上がることはねぇんだから、頭を使いやがれ!

 俺は俺を取り囲む学生の中から、瞬時に視線を泳がせた学生を見つけ、そいつに飛び掛かり、拳で顎先を打ち抜く。すると、その学生の周りにいた奴は俺を攻撃するどころか、俺に対して怯えて後ずさる。


「脳味噌の使い方が間違ってんだよ!」


 怯えた一人の学生の鳩尾に前蹴りを入れ、続けざまにその隣にいた学生の懐へ飛び込んで膝蹴りを入れる。崩れ落ちそうになる、その学生を俺は受け止めると、掴んで近くにいた連中に目掛けて投げ飛ばした。


「自分で考える脳味噌がねぇんだったら、最後まで徹底して鉄砲玉でもやってろ! 中途半端に自分の頭で考えて最適な判断を取ろうとするから、テメェらはすっトロいんだよ!」


 集団で戦ってんなら自分を捨てろ!

 捨て身でかかって来い。自分を犠牲にする覚悟を持った数十人が相手なら、俺だってこんな簡単に倒せてねぇっての!


「この期に及んで我が身が可愛いか? テメェら、誰に喧嘩を売ってるか、分かってんだよなぁ! あぁ!?」


 俺が声を上げると、俺を取り囲んでいた学生達が一歩怯む。

 しかし、そんな中でも根性を見せようとした奴が──


「調子に──」


 一歩前に出てきたので、その瞬間に距離を詰めて、拳を鼻っ柱に叩き込んだ。

 根性を見せたからなんだってんだ? 弱けりゃ話にもならねぇんだよなぁ!


よえぇ、弱ぇ! 弱すぎんだろ! 魔術を鍛えるよりも体を鍛えろ、体をよぉ!」


 そもそも魔術を発動も出来てねぇよ。

 狙いを定めた瞬間にそいつの懐に飛び込んでぶん殴るし、狙いを定めるにしたって周りに人がいるから、定めるのが遅いからな。


「こいつ!」


 学生の一人が俺に向かって手をかざす、その瞬間、俺は廊下から近くの教室の中に飛び込んだ。

 教室の中には騒ぎが収まるのを待っていた平和主義の学生が隠れるように息をひそめていたが、俺の突入によって、その平穏は簡単に砕かれる。


「あ、待て!」


 魔術を放とうとした学生が構わず教室内に魔術を叩きこもうとするが、他の学生がそれを止める。

 無関係な奴を巻き込むのに抵抗があるようで仲間割れだ。有象無象の連中ってのはこうだから堪らねぇぜ!


「おまえ!」


 他の学生が俺を追って教室の中に雪崩れ込んでくる。

 よろしくねぇなぁ、走って追いかけてくるとかさ。獲物を閉所に追い込んだなら、外からじわじわと追い詰めてくんだろ? 檻の中に入った猛獣を殺すのに檻の中に入ってくる馬鹿がいるか? 正解は教室の外から延々と魔術を教室内にいる奴らとか関係なしに撃ち込んでくることだってのに──


「ぬるい考えで俺をやれると思ってんじゃねぇぞ!」


 俺はいの一番に教室内に飛び込んできた学生を、そいつが俺の姿を捉えるより早くぶん殴って意識を飛ばす。


「もういい、教室の中に撃ち込め!」


 教室の外から聞こえる声。教室の中にいた学生が狂乱気味に教室の外へと出て行く。

 はは、良いじゃねぇか! 逃げ惑う学生に紛れて出て行くようなことを俺がしないでいると、ほどなくして魔術の放たれる気配。そして次の瞬間、壁をぶち破って火球が教室の中へ。


「良いね、良いじゃん! もっとイカレようぜ!」


 楽しくなってきたぜ。

 俺は教室の外から撃ち込まれる火球の雨を掻い潜り、教室の窓から外へと飛び出る。


「逃げたぞ!」


 俺にぶん殴られた学生が教室の外にいる仲間に声をあげる。

 でも、言ってることは間違ってるね。俺が逃げる? 逃げるわけがねぇだろ。

 俺は窓から飛び降りると下の階の窓枠を掴み、窓を破って下の階へと入り込む。


「うわぁ!」


 急に窓の外から入ってきた俺に、下の階の教室にいた学生が悲鳴をあげるが──


「こいつ、アッシュ・カラーズだぞ!」


 どうやら俺のことを知っている奴がいたようで、即座に攻撃を仕掛けようとした来たので、俺も即座にそいつの頭を掴んで近くの机に叩きつけた。


「おい、人を呼べ! アッシュ・カラーズがいるってみんなに知らせろ!」


 下の階にいた学生の誰かが、そう言ったが、その声で誰かが動くより先に俺は教室を飛び出す。

 そして、廊下へ出ると階段を駆け上がり、最速で上の階に戻ると俺が飛び降りた教室へと戻り──


「オラァ!」


 教室の前で、教室の中の様子を伺っている学生の一人に飛び蹴りをかました。


「こいつ、どこから!?」


 下の階に降りてから戻ってきたんだよ!

 教室の外から魔術を撃ち掛けてきた学生たちが急に背後から襲ってきた俺に驚愕にし、動きが鈍る。

 その隙に、俺はその場にいた学生を殴り倒していく。


「どうした! 根性を見せてみろ! まだれるだろ! 戦れるつもりで俺に襲い掛かって来たんだろうが!」


 集団の中に飛び込んだ俺に対して、同士討ちを避ける学生たちは魔術を放つのを躊躇い、そうして躊躇っている内に俺にぶん殴られ、倒れ伏す。

 辛うじて抵抗をしようとする奴は俺に組み付こうとしてきたので、バックステップで攻撃を躱しスカした所へ拳を叩き込む。


「こ、こいつ」


 半分以上が倒れた所で、残っていた奴は乱戦状態から抜け出して、俺から距離を取っている。

 その眼は怯えが見えるが戦意も消えていないように見える。良いね、ただの学生共かと思ったけど根性が座ってるじゃないか。

 まぁ、俺を倒せば進路を決める上では有利な立場になれるし、そうしたら将来安定で名誉も手に入るとなれば必死か。

 受験生だって、隣に座ってる奴をぶん殴れば志望校に合格できるっていうのが公のルールとして存在すれば、ぶん殴る奴はいるんじゃない? 受験生じゃなく就活生とかもだろうけどさ。


「まだるんだろ?」


 戦意が衰えてるように見えないしな。

 将来がかかっているわけだから必死なのも分かるぜ。でも、負けてやるって気持ちにはならねぇんだよなぁ。


「──そこまでだ」


 不意に声が聞こえてきて、俺が声の方を見ると、そこにはシステラが来ている白い制服と同じ制服を着ている学生たちが何人かいた。エリート学生の筈のそいつらが何の用かと思って、黙って見ていると、そいつらは俺のことを指差し──


「そいつを倒すのは我々だ。一般生徒は退いてろ」


 どうやら、こいつらも用件は同じようだ。

 なるほど白服の学生だからって無条件で研究院に入れるわけじゃないんだね。


「貴様もおとなしく我々に倒されるのなら、大怪我を負わずに済むぞ」


「は、ウケる。そんなことを言って楽に倒せる奴なら、倒しても評価は上がらないと思うんですがねぇ」


 まぁ、俺に喧嘩を売って来てくれてるなら、ありがたく買うけどさ。


「余裕を見せていられるのも今の内だけだ」


 そう言うと白服の学生たちは自分達の魔力を解き放つ。

 その魔力量はというと──


「力の量だけなら、ゴ゠ゥラと同じくらいか?」


 昨日、戦った宣教師で仙理術士のゴ゠ゥラ。使ってる力は魔力ではないので、種類は違うのだが、それでも力の量だけならば、間違いなくゴ゠ゥラと同じくらいに感じる。

 だけど、よく考えてみなくてもおかしいよな。そこら辺の学生がエリートとは言ってもゴ゠ゥラと同じくらいの力の量? ありえねぇよ。


「ドーピングでもしてんだろうね」


「何を言っている」


 ドーピングって言葉が通じないか。じゃあ分かるように言おうか?


「何かズルしてないキミら?」


 俺のその問いに白服の学生達の数人が僅かに表情を動かす。

 良いね、育ちがいいってのはさ。隠し事が苦手なようで、素晴らしいぜ。


「ま、良いけどさ。楽しくれるなら、俺は構わねぇよ」


「減らず口を!」


 そう言って白服の学生が俺に向けて手をかざし、魔術を放とうと狙いをつける。

 だが、そうして構えた瞬間に俺は既に距離を詰めており、戦闘に立っていた学生の鳩尾に拳を叩き込んでいた。


「よーいドンでの戦いが下手だなぁ」


 リーダー格だったやつが倒されたので、近くにいた白服が慌てて魔術を放とうとするが、明らかに本来の量ではない魔力を制御することは上手くいかないようで手間取り、そうしている内に俺の拳が顔面に突き刺さる。


「良く勘違いされるんだけどさ」


 即座に二人倒されたことで、集団の中に恐怖が芽生える。

 どんだけ魔力を増やしてスペックだけ上げても精神がこれじゃあね。


「ドーピングってのはすれば強くなるってもんじゃないぜ? ドーピングによって上がった能力についていけるように、自分の感覚を調整しなけりゃいけないんだよ」


 キミらみたいに急に魔力を上げても上手く魔法が使えないみたいに、体を動かすのだって上がった能力を生かせるようなトレーニングをしなけりゃドーピングの効果は有効活用できない。

 だからまぁ、キミらも上がった魔力を使いこなせるような練習をしなきゃいけなかったんだが、そこら辺は理解してるだろうか?


「ま、理解しても今からじゃ遅いけどさ」


 白服の学生はまだ大勢いるが、表情は最初に現れた時とは異なり、怯えの色が浮かんでいる。

 そりゃそうだ。鳴り物入りで登場でしてこのザマだもんなぁ。


「だからって、俺は優しくはしねぇけどさ。そういえば最初に言ってたね、大人しくしてれば大怪我を負わずに済むってさ。それじゃあ、俺の方からも言わせてもらおうかね」


 そして俺は白服の学生達を見据え──


「必死で抵抗しろよ? 大人しくしなければ、大怪我にならない程度にぶちのめしてやるからさ!」





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