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何をつくろうかな

 

 天使に襲われたけど撃退して帰ってきた。

 なんで襲ってきたのかとか、考えるべきなんだろうが、面倒くさいね。

 まぁ、誰かが呼び寄せたんだろう。でもって、狙いは俺じゃない気がするね。

 狙いが俺だったら、もっと襲撃に計画性があると思うし、そこら辺ほっつき歩いている時に偶然、俺のことを見つけて我慢が出来ずに襲い掛かって来たとか、そんな感じじゃなかろうか?


 そんなことを考えるより、メシに何を作るか考えなきゃな。

 食材は落としたけど、無事に拾えたし、使うのも問題は無い感じだからメニューを考えるのに支障はない。

 なので、問題は何を作るかってことだけだが──


「風土的にはフレンチかな? でも、面白味がねぇんだよなぁ」


 この辺りの食文化とかに合わせるとフランス料理が良さげな気がするが、土地に合わせた真っ当に美味い料理ってのは俺の好みじゃないんだよね。遊びがねぇとつまらねぇしさ。


「何にすっかなぁ」


 食材を買ってる時にメニューを決めとけって話だけど、最初から何を作るか決めてんのも何だか面白みが無いような気がするんだよな。


「和食は……調味料が限定されるしなぁ、洋食もそれだったらフレンチとそんなに変わんねぇし……エスニックにしとくか?」


 エスニック料理と一口に表現してしまうのは乱暴なんだけどね、実際はアジア・南米・アフリカとかの色んな国の民族料理をひとまとめにしてるだけだからさ。

 アジアと南米じゃ気候風土、文化歴史が違うんだから食文化も違うし、エスニックと一括りにしても使う食材も出来上がる料理も全く違うんだよね。


「……ま、適当にやるか」


 ちょっと面倒臭くなって来たしな。

 俺は食材を調理場に運び込む。酒場であるので、当然それなりの規模の調理場はあり、そこも当然、掃除している。調理器具も買ってあるから問題は無い。


「……」


 とりあえずボールに小麦粉と少量の油、水、塩を入れてこねる。こねたら30分ほど放置。後はこれを焼けばパンの完成。

 酵母を使わず平らにのばして焼いて作る、フラットブレッドって言われる種類のパンだ。インド料理のチャパティやメキシコ料理で使われるトルティーヤがそれにあたる。

 割と原始的な製法だけれども、味が悪いわけじゃないし、設備がしょぼくても出来るのが良い。


「──で、生地を少し寝かせている間に……」


 他の作業をしよう。

 野菜は……タマネギに近い感じのがあったから、これは生でいってみよう。ネギ系は殺菌作用があるから生で食っても危険は少ない。それ以外の野菜は火を通しておいた方が良いな。

 俺やマー君は食あたりとかしないから気にする必要はないんだけれど、ジュリちゃんは人間だからね。気にしてやった方が良いだろう。

 とりあえずタマネギは生のスライスと煮込み用を用意、

 トマトに近い感じの野菜は細かく切ってタマネギと一緒に鍋に入れて火にかける。

 セロリとかピーマン、ニンニクに似た野菜なんかも一緒で良いや。で、香草と一緒に煮込む。


 あと、ひよこ豆に煮た豆があったから、その豆を塩ゆでして潰して油、ニンニク、塩と香草を加えた上でペースト状にしてフムスっぽい何かが完成。フムスはアラブ料理でひよこ豆のペースト、本来は練りゴマなんかを使うんだけど、ゴマが無いんでその辺りは諦める。


 野菜ばっかでもしょうがないんで肉も焼く。

 燃料とか加熱調理器具に関しては、マー君に頼んで魔道具を作ってもらってるんで何とでもなる。

 中世ヨーロッパ風ファンタジー世界の調理場にIHコンロみたいものが置いてあるのは変かもしれないが、魔術で何とかしてると言えば世界観的にはおかしくないだろ?


『なんで、こんなもんを……』


 そんな文句を言われつつも作ってもらったロティサリーもある。

 ロティサリーってのは回転する肉焼き機のことで、一番イメージしやすいのはモンスターを狩るハンターになる某狩りゲームに出てくる肉焼きセットのアレだ。

 後は秋葉原とかで目にするドネルケバブを焼いている機械もロティサリーの一種。とにかく肉を回転させながら、その表面を炙る機械だと思えばいい。

 それを俺はマー君に頼んで作ってもらい、せっかくなんで縦型にもしてもらった。

 肉を刺す串が乗った台座とその周りに魔術的な効果で熱を発する板。台座は魔術による自動回転機能付き。

 これで、いつでもどこでもケバブ屋を開けるという代物だ。


「で、当然それで肉を焼くと」


 肉に塩と香草、それと市場で買ったスパイスらしき物、ニンニクに似た野菜のすりおろしをすりこんで、焼く。火が通った部分から削ぎ落していき、そうして薄切りにしていった肉は取っておく。


 休憩が入ったのか、屋上からマー君とジュリちゃんが下りてくる気配がした。

 ちょうどいいタイミングだ。

 俺は寝かせておいた生地を塊から、ちぎり取り、それを板に挟んで薄くのばしたうえで、鉄板の上で焼く。フライパンなんて洒落たものは無いんで、こうするしかない。


「そして焼きあがるトルティーヤ」


 出来上がったのは小麦粉を薄くのばして焼いたトルティーヤ。

 トルティーヤはトウモロコシを使うのがオーソドックスだけれど小麦粉で作ることも多い。

 もっとも、今回はこだわりの問題ではなくトウモロコシが無かったから小麦粉で作ったんだけどな。でもっまぁ、仮にトウモロコシがあっても、それを粉にしてトルティーヤは作らねぇかも。結構、作るの面倒臭いしさ。

 で、トルティーヤを作ったとなれば後は──


「でもって、タコスの完成」


 タマネギのスライス、煮込んでおいたトマト、フムスっぽい何か、それと焼いた肉。

 全部をトルティーヤの上にのせて、塩とハーブとスパイス、そしてライムのような柑橘系の果汁を絞ってかければ出来上がりという感じだ。

 俺はそれを皿に乗せてマー君たちのもとに持っていく。


「……なんだこれ」

「タコス」


 それもテックスメックスじゃないメキシコスタイルのタコス。

 テキサス風メキシコ料理を意味するテックスメックスのタコスはアメリカ風にアレンジされたもので、牛ひき肉とチーズ、たっぷりの野菜を使うのが特徴的だけれど、メキシコ本来のタコスはもっとシンプルな物だ。俺はどっちも好きだけどね。


「なんでタコス?」

「得意だから」


 人間時代にアメリカにいられなくなって逃げた先のメキシコで覚えたんだよ。

 タコス屋やれるくらいの腕前だと自負してるぜ。


「……いや、まぁいいや」


 マー君が仕方なしに食おうとしてる横でジュリちゃんがタコスにかぶりつく。すると即座に──


「えっと、思ったより美味しいです」


 反応がイマイチなのは仕方ない。まぁ、食ったことが無い味付けだろうしな。

 もう少し食材のバリエーションがあればクオリティを上げられるんだがね。

 メキシコのタコスは何でもありだぜ? 魚を使っても良いし、いろんな調理法の肉を使うのもある。

 今回みたいにケバブ風の肉を使うパストール。小さく切った牛肉を使うアサーダとか、色々と種類はあるけれど、やはり食材とかがネックだよなぁ。

 本気で作るなら使えそうな食材を調べる所から始めないといけないわけだが──


「……」


 マー君も何か言ったらどうだい? どう考えてもテメェが作ったものより美味いだろ?


「俺の方が美味いものを作れるんだから、文句を言っても良いよな?」


 マー君は面倒くさそうに溜息を吐きながらジュリちゃんの方を見る。

「お前のせいだぞ」と言いたそうだが、流石にそれを口にしない分別はあるようで、口を開く代わりに俺の作った料理を口の中に放り込んでいる。

 なんだかんだで二人とも結構、食っているようなので、俺はおかわりの用意を始めることにした。

 まぁ、おかわりの用意って言っても、肉の塊の炙った表面を削ぎ落し、トルティーヤを焼くだけなんだけどね。


「……これで、お店でも開いた方が良いんじゃないかな?」


 おかわりを食いながら、ジュリちゃんが提案をする。


「お金が厳しいみたいだし、これなら売れると思うから、お店を開いてお金を稼いだら?」


 俺にタコス屋をやれって? 金のために人にメシを作れって?

 俺はそういうのは遠慮したいね。自分で食うメシだって面倒臭いから人に作ってもらってるのに、そんな俺が金のためとはいえ人のためにメシを作るのはありえないだろ。

 俺がメシを作るのは他人にマウントを取るためだけだぜ? そのためだけに人間時代にグルメガイドで三ツ星を取ったレストランに潜入して身に着けた俺の技術を、金稼ぎみたいな俗な使い方はしたくないね。


「それに酒場の建物自体もあるわけだし、ここで酒場でも開けば──」


「却下」


 とんでもないことを考えやがるなぁ、ジュリちゃん。

 俺に酒場を開けって? 馬鹿を言っちゃいけないぜ。


「俺はね、働きたくないのよ。労働が嫌なわけじゃなくて、やりたくもないことをして額に汗して苦労したくないんだよ。金のためにね」


 人間時代からこうだったんだし、いまさら生き方を変えるのはちょっとね。

 悪人への強請りたかり、もしくは極悪人から盗む、たまに人の好意に甘えるなんかして稼いできた生き方を変えるのは無理だぜ。


「……うわぁ、最低だ」


 最低でも最高でもずば抜けてるのってのは大事だと思わないかい?

 それはそうとジュリちゃんも遠慮が無くなって来たね。良いことだ。


「でも、きっと評判になると思うし売れると思うんだけど……」


「別に評判とかいらねぇし、売れなくても良いよ」


 俺の答えにジュリちゃんは困った顔になり、何か言いたそうにするが──


「お前らは静かに食えねぇのか?」


 黙々と食っていたマー君が俺達の会話を遮る。

 何だかんだ言いながらマー君が一番食ってやがる。

 まぁ、メシの最中にグチャグチャ話してんのも確かに良くないわな。


 ──というわけで話があるなら、メシが終わってからにしてくれよ、ジュリちゃん。




思いもがけずタコスの話に……

外出自粛のせいで好きな物も食えなくて気分が落ち込むせいか……調子が出ない。

自分は比較的、癖の強い料理が好きなんで、自作するのも難しくて困る。


タコスを作るならカルディとかに行けば作るためのタコスキットは売ってると思う。

ただキットについてくるトルティーヤはアメリカスタイルの固いタイプの物なんで好き嫌いが分かれるかもしれないから、柔らかいトルティーヤが売ってたら、そっちも買った方が良いかもしれない。



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