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使徒さがし

 

 魔導院に使徒がいる。

 まぁ、俺の使徒と言ってもゼティを見てれば分かるように俺に対して盲目的に従ってくれるわけじゃない。

 ぶっちゃけ、俺の言葉に素直に従う使徒なんて殆どいないんだよね。


 そこら辺はまぁ、俺と使徒連中はだってお互いに一個の人格を持ってるわけだから反りの合わない奴だっているわけよ。

 72人いないのに72使徒、実際は30人くらいの俺の使徒の間で、俺が仲良くやれてんのは3人くらい。顔を合わせたらガチで話し合いは絶望的で殺し合いになるのが15人くらい。他の面々は状況次第だろうか? ゼティも状況次第で協力してくれる面々の一人ね。

 ちなみに使徒同士の仲だって良いわけじゃないんだよね。ゼティだって顔を合わせたら間違いなく殺し合いになる使徒が7人くらいいるしさ。


 まぁ、そんなわけで使徒がいるからって俺に協力してくれるとも限らないわけだけど、だからって合わないわけにもいかないだろ? 

 もしかしたら手を貸してくれるかもしれないし、可能性は低いけど、この世界を脱出する手段を持っているかもしれないしな。だから、俺とゼティは魔導院にいる使徒を探そうと思っているわけだが──


「俺だけスタートが遅れちまったけどね」


 ひとり言を呟きながら俺は魔導院の門をくぐり、校舎の中に入る。

 今日は停学が明けて、俺が魔導院に復帰する。結局、一週間で済んだのは短かったのか長かったのか。

 21世紀の地球的な考え方だと暴力事件を起こしておいて一週間で学校に戻れるってのもなかなか無い気がするけどさ。


 俺が停学になって一週間、魔導院に来ていない間にゼティとシステラがどれだけ調べてくれているか。ゼティの方は顔を合わすんで進捗状況を聞くことも出来るが、システラの方は寮に入ったまま顔を店にも来ねぇ有様だし、俺の指示が通ってない気もするんだよな。


 まぁ、二人が役に立たなくても俺が何とかすれば良いだけの話なんで問題は無いけどね。

 そんなことを考えながら、俺は校舎の中に入り教室へ向かう。だが、校舎の中を歩いていると俺は周囲からの視線を感じた。


 俺が俺を見ている連中の方に視線を返すと、俺を見ている連中は俺からサッと目を逸らす。

 俺が見られてる理由は分かるぜ。そりゃまぁ、登校初日にクラスメイトをぶちのめせば噂になるのは当然だよな。あんまり注目されると人探しがしづらくなりそうだ。


 俺が探してる使徒の気配も消えてるし、どうしたもんかね。

 俺やゼティが使徒の存在に気付けたように向こうだって、俺達の存在に気付いたはずだ。それなのに接触してくる気配が無いってことは俺達に会いたくないってことだよな。こっちから逃げ隠れしてる奴をどうやって見つけたもんかねぇ。


「地道に探していくしかねぇかな」


 俺達に会いたくないってことは協力を渋られる可能性が高いが、そこら辺は直接会っての交渉次第な所もあるしな。まぁ、そういうことを考えるのも、まずは見つけてからかな。

 そして見つけるにしても、とりあえずは学生らしい振る舞いってのもしなきゃならないわけで。退学させられたら探すも何も無いわけだしね。

 だから、俺もしばらくは大人しくしておくべきなんだろうけど……


「おい、お前」


 俺が学生らしい当たり前の行動として教室の中に入ろうとすると、その直前で俺は呼び止められた。

 どちらさんでしょうかって声のした方を見ると、そこには学生が数名ほど。


「ドニとデノスをやったのはお前か?」


 制服を僅かに着崩した学生たちだ。不良気取りの連中だろうかね?

 そのリーダー格らしき、学生が俺に挑戦的な眼差しを向けながら詰め寄り、それを見て、その取り巻き連中がヘラヘラとした笑みを浮かべて俺を見ている。


「そういう名前の奴らは知らねぇが、少し前に二人ほどぶん殴ったのは憶えてるぜ?」


 俺の言葉を聞いたリーダー格らしき学生が俺を睨みつけてくる。

 いいね、わかりやすくて、こういう展開はさ。


「ちょっとツラ貸せや、転校生」


「なんだい? 校舎裏で粋がってる奴をシメるのかい?」


「分かってるなら話は早い、仲間をやられて黙ってるわけにはいかないんでな」


 いいね、そういうの好きだよ。

 使徒探しは、まぁいいか。ゼティやシステラが何とかするだろ。

 学生らしく大人しくってのも、まぁいいんじゃない? どうでもいいぜ、そんなのはさ。

 それよりも喧嘩を売られてんだから買わないとな。そっちの方が重要だね。


「オーケー、良いぜ。ろうか?」


 俺は了承の返事をし、リーダー格の学生の後をつれられて校舎裏に向かう。

 そして、それから数分後──


「弱すぎぃ!」


 俺は倒れている学生の腹をつま先で蹴った。

 場所は校舎裏──ってわけではなく、校舎の隅っこの人通りのない場所。

 そこに今は学生たちが転がっていた。やったのは当然、俺です。


「数を頼みに魔術も使って、なんでこんなに弱いんですかねぇ!」


 もう一回、倒れている学生を蹴る。

 まぁ最初から嫌な予感はしてたんだよねぇ。

 相手は複数で魔術も使えるってのに、俺の方は魔力も気も使えなかった。つまり俺が自分にかけてる手加減の呪いはこの学生たちと俺が戦った場合、魔力や闘気が使えたら勝負にならないって判断したってことだ。


「ロクに喧嘩の経験も無いくせに粋がんなよ、お坊ちゃんたち」


 囲んで脅せば泣きが入ると思ったんだろうけど、俺には効かなかったね。


「相手を選んで喧嘩を売ってくれよ。売られた方はつまんねぇ思いをするんだからさ」


 あー、つまんね。

 手加減の呪いで俺も弱体化するから一方的になることは、あんまり無いんだけどね。

 純粋な能力とは別の戦闘経験的な物が微妙だと、こういう結果になるんだよなぁ。はぁ、つまんねぇ。


「俺達に……こんなことを、して、どうなるか、分かってんのか?」


 リーダー格の学生が息も絶え絶えと言った感じで俺に言う。

 最初に会った時の挑戦的な眼差しは何処へ行ったのか、瞳には怯えの色が見える。

 やだねぇ、根性なくてさ。どんだけ、ぶちのめされても「ぶっ殺してやる」って眼で見てくる奴もいるってのに、こいつはちょっと小突かれただけで戦意を失ってやがる。

 挙句の果てには自分じゃなく誰かの名前でもって俺を威嚇しようとしてくるしな。こういうのを虎の威を借りるっていうんだろうねぇ。虎も何も怖くねぇ奴には効かねぇってのにさ。


「どうなるか教えてくれよ。もっと強い奴でも出てくんの?」


「当然だ……俺達にこんなことをしたら先輩たちが……黙ってねぇぞ。先輩たちは──」


 良いね。強い奴が出てくるなら俺は歓迎だぜ。

 倒せば倒しただけ、敵が出てくるとか此処は天国か何かですかってね。


「それは俺も望むところだね。なら、さっさと連れてきてくれよ、ほら早く」


 ──って言っても、俺が殴ったせいで動けないようだね。なら仕方ない。


「待っててやるから連れてきてよ、俺は教室にいるからさ。動けるようなったらすぐに教室に連れて来いよ?」


 キミらに対しては現状では興味は抱けないんでね。違う人が良いのよ。

 だから、その強い先輩ってのを俺のもとに連れてきてね。

 使徒探しよりも、そっちの方が面白そうだしさ。


 ……でも、よくよく考えてみれば、使徒連中ってのはクソ強いわけだし、魔導院いたら、強いことで有名になっていてもおかしくないよな。もしかしたら、その強い先輩ってのが使徒の可能性だってあるんじゃない?


 おいおい、ツイてるねぇ。早速、目的達成かな?

 いやぁ、その先輩ってのに会うのが楽しみだぜ。



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