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邪神vs

 

 黄神が巨大な右腕を振り回して俺に叩きつけようとする。

 手だけがやたらと大きく歪な形状をした黄神の腕。それが真っ直ぐ振り下ろされる。

 相手の大きさが大きさだけに、受け止めるって選択肢が頭の中に浮かびにくい。

 だって、全高20メートルだぜ? 気分が高まらねぇと、よっしゃ受け止めてやるぜとはならねぇよ。

 20メートルって言うと、アレだぜ? 俺の人間だった頃の地球の日本のお台場にある有名ロボットアニメの実物大の立像と殴り合うようなもんだぜ?

 俺が生きていた地球では処女厨ビーストの変身するアレだったけど、地球といっても色々あるしアルファベットの最後のアレが立ってる世界もあるから微妙に話が通じないんだよね。

 そういう世界出身の連中は「順番的に考えたらアルファベット26番目のアレでしょ。なんでファーストからいきなり飛ぶわけ?」って言うからさ。俺は言い返せなかったね。


「Aaaaaaaaa!」


 おっと悪い。キミのサイズ感を考えていたら、思考が脱線しちまったぜ。

 俺は振り下ろされた黄神の手を横に走って回避する。大きさが大きさだから、半端に避けても意味ないしね。

 黄神の腕が地面に叩きつけられ大地を砕き、その衝撃で生じた土埃が俺を飲み込み、俺の姿を隠す。


「Uuuuuuuuu!」


 手応えの無さから俺が逃れたことを感じ取ったんだろう黄神は呻き声を上げながら、地面に叩きつけた手をそのまま横に薙ぎ払い、その勢いによって土埃が晴れる。


 攻撃するときは相手を見てからにしようぜ?

 土埃に隠れてるんだから、俺の姿も見えないだろ? 雑な攻撃はよろしくねぇな。

 俺は横薙ぎに払われた黄神の手を踏み台にして跳躍する。


 土埃が晴れた瞬間には既に俺の体は黄神の顔の前にあり、俺は巨大な黄神の顔面に回し蹴りを叩き込み、蹴りの衝撃によって黄神の頭がる。


「思ったよりも硬いなぁっと」


 黄神は反撃に左手で俺を叩き落とす。サイズ差のせいで虫を叩き落とすようになり、黄神の平手打ちを食らった俺は吹っ飛んで、真っ直ぐ地面に叩きつけられる。そういう反撃が来ると分かっていたのでガードはできたし、受け身も取ったのでノーダメージ。

 衝撃を殺すために地面を転がるが、俺は何事も無かったように立ち上がる。


「もう少し気合いを入れようか」


 マジで殴っても簡単に死なない奴は良いね。好きになりそうだぜ。

 どうやって硬さを出してるのかは分からねぇけど、正面からぶち砕いてやろうじゃねぇか。

 俺の気持ちの昂ぶりに比例して、魔力や闘気──内力ないりきの量が増える。

 俺の業術カルマ・マギアはシンプル。感情の変化に合わせて内力ないりきが無限に増える。

 魔力や闘気じゃなく神力や神気だったり俺が身に着けた全てのパワーが全部増えるわけで、俺は増えたそれらを全て身体能力の強化に回す。

 皮膚、筋肉、骨、神経、細胞。全てが内力によって強化され、俺の身体能力が高まっていく。


「来るかい? 俺は行くぜ?」


 黄神が蛇の尾を俺に向けて振り下ろしてくる。

 よーいドンで殴り合わないのは賢いが、それだけしか評価できることがねぇな。

 俺は尾が振り下ろされる瞬間に地面を踏み切り、飛び上がる。


 跳躍した瞬間、極限まで強化された俺の脚力が生み出す跳躍の衝撃で地面が爆発して砕け散る。

 助走も無しに跳ぶだけで俺の速度は音速を越え、俺は振り下ろされた尾の横を駆け抜けてこうしん黄神の胸元に飛び込む。


 そしてそのまま反応も間に合わない黄神の胸骨に拳を叩き込む。

 飛び込んだ勢いのまま突っ込むようにして全体重を乗せた拳だ。それを受けた黄神が100メートル以上吹っ飛んでいく。


 ──まだまだ行くぜ。

 俺は吹っ飛んでいく黄神を見つめながら着地すると、即座に駆け出し黄神を追いかける。

 駆け出す俺の速度も当然、超音速。俺が駆け抜けた後の地面が衝撃で砕け散っていく。

 そして俺は一瞬で、吹っ飛んだ黄神を追い抜くと、その背中を蹴り飛ばして、上空にかち上げ、20メートルの巨体がお手玉のように飛んでいく。


「ここだと被害が無いってのは、俺が与える被害も含まれての話さ」


 こんな動きをフェルムでやったら俺の動きの余波というか、移動が生み出す衝撃波でフェルムの人間は全滅しちまうからな。

 まぁ、それでも全力には程遠いけど。手加減の呪いが全く無い状態で本気で動いたら、俺が走るだけで星が吹っ飛ぶくらいになるんで、街が吹っ飛ぶ程度に収まっている以上、黄神相手でも俺が自らに課した手加減の呪いルールは機能しているようだ。


「まぁ、全力を出したら簡単に終わっちまうし、縛りは必要さ」


 俺は空中に打ち上げた黄神を追撃するために跳躍する。

 砲弾のような速度で迫る俺に気付いたのか、黄神が空中で巨体をねじり、俺を叩き落そうと長い腕を振り抜く。


「虫を払うように落とせるとは思わないでもらいたいね」


 俺もまた空中で身を捻ると、俺に向かって振るわれる腕に向けて回し蹴りを放ち、その腕を弾く。

 黄神の骸骨の顔に表情は見えないが、心の中では驚いてくれると良いね。人間で言えば蚊を叩き落とそうと手を振ったら、蚊にその手を弾かれたようなもんなんだし、そんな状況になったら人間だったら驚くだろ?


「サイズ差がパワーの差じゃねぇんだよ」


 黄神がもう片方の腕で俺を叩き落とそうとする。

 俺はもう一度、空中で体を捻り、今度は蹴り弾くのではなく、足場にするようにして黄神の腕を踏み蹴って懐に飛び込む。

 サイズ差のせいで俺が懐に飛び込んだら黄神は迎撃の手段はない。俺は反撃の手段の無い相手の胸に再び拳を叩き込んだ。


「やっぱ硬いな」


 手応えはあるが、ダメージを与えられていないという手応えだ。

 それでも俺の一撃を受けた黄神はまたもや吹っ飛び、今度は地面に向けて真っ逆さまに落ちる。

 地面に落ちた程度でダメージは無いだろう。俺の方も重力に任せて地面に落ちていくが、落ちたところでダメージは無いから慌てることも無い。


 そうして、黄神が落ちていくのを俺も落ちながら見ていると黄神は地面に激突する寸前で背中の翼をはためかせ飛翔してみせた。

 人間でいう肩甲骨辺りから生えてる黄神の翼は骨格だけしかないように見えたが、それでも飛べるようだ。まぁ、魔術的な力で飛んでいるんだろう。


「Aaaaaaaaa!」


 やられっぱなしなことに怒りを覚えたのか俺に殺意を向けて、黄神は骨の翼を羽ばたかせて俺に向かってくる。


 良いね、今度は空中戦かい?

 俺は業術で内力ないりきを熱へと変える。

 急激な温度変化によって大気が炸裂を起こし、俺を加速させる推進力が生み出される。


 なんで最初からやらなかったのかって?

 だって、向こうが空を飛べないのに俺だけ飛んでるのもフェアじゃないじゃん。

 相手の能力に応じて、こっちも使うの能力を制限しないと一方的になって面白くないだろ?

 地上戦しかできない奴を空中戦でボコるってのは俺は好きじゃないんでね。地上戦しかできないなら地上戦で応じてやる。実はそいつが飛ぶことが出来たって言うなら俺も飛ぶのを解禁するっていう感じに相手の能力に合わせて戦うのが俺は好きなんだよ。


「Aaaaaaaaa──!」


 空中を駆け抜け黄神が俺に向かって突っ込んでくる。

 そっちからすれば、俺なんか虫みたいな大きさなのに、俺を執念深く狙ってくる。狙いも付けづらいだろうに頑張るもんだぜ。


 腕を突き出し俺を捕まえようとする黄神。その腕を掻い潜り、懐に飛び込もうとすると、真下から黄神の尾が跳ね上がり、俺を迎撃しようとする。

 回避のタイミングが無かったので俺は全身に力を込めて衝撃に備える。直後、尾に叩かれ俺の体が吹っ飛んだが、ダメージは軽い。


「良いね」


 空中で体勢を整えた、次の攻撃に備える俺の視界に口を大きく開く黄神の姿が映る。

 そして次の瞬間、開かれた口に眩い光が迸り、黄神の口から光線が俺に向かって放たれた。

 想像はしていたが対策はしていなかった遠距離攻撃だ。俺は防御が間に合わず上半身を消し飛ばされた──


 ──さて、上半身が吹っ飛んだということは今の俺はどうやって思考しているのだろうか?

 上半身が無いので当然だが脳も無い。そういう状態で俺はどうやって思考しているのだろうか?


 答えは──まぁ、どうでも良い話だよな。

 人の思考を司るのが本当に脳であるのかなんて誰も興味が無い。

 そして俺の方もそんなことを考えているような暇もない。


「──良いね。予想外で凄く良い、好きになっちまいそうだぜ」


 消し飛んだ上半身が再生し、復活する。

 復活した俺は地面に座っていたんで、上半身が消し飛んだ時に地面に落下したんだろう。

 一回、死んじまったなぁ。でもまぁ、一回程度じゃ俺は殺しきれねぇし問題はねぇよ。

 ズルいとかは言わねぇよな? 黄神そっちだって、そうだろ?


「Aaaaaaaaa!」


 一回殺しただけじゃ気が済まないって様子だ。

 まぁ、そりゃあそうだよね。俺を殺しきって滅ぼさなきゃ、ここからは出られないんだしな。


「第一ラウンドはそっちの勝ちで良いぜ。じゃあ早速、第二ラウンドを始めようか?」


 俺が立ちあがって拳を構えると、俺の闘争心に合わせて内力が熱を生み出す。

 向こうが魔術的な攻撃を使わなかったら、俺も使わなかったんだけどね。でも口からビームを出してきたんしな。

 それなら俺も使うぜって話しさ。相手に合わせて、こっちも能力を解禁するようにしてるんだから相手が特殊な力を使うんだったらこっちも使わせてもらおうかな。


「ゴングは無いが、さぁ始めるぜ」


 俺は熱を纏いながら、黄神に向かって駆け出した──





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