表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
102/379

薄笑いのアッシュ

 

 悪夢の森で色々とあってから俺はすぐに帰ってきた。

 カイル達は森の出口くらいまでは送ったけれども、そこからは別行動。

 結局、悪夢の森を攻略しろとかいう話は無視して俺は戻ってきてしまったってわけ。

 だって、ムカつくじゃねぇか。

 俺に対して舐めた真似をしてくる奴が裏にいるようなダンジョンを素直に攻略するとか俺にとっては面白くねぇよ。


「何があった?」


 帰ってきたらゼティは不在で帰って来るまで待っていたわけだが、帰って来るなりゼティは俺にそんなことを訪ねてくる。

 何があったか? 見れば分かるだろ? 楽しそうに見えるかい?

 まぁ、俺がどう見えているかはどうでも良いけどな。


 とりあえず仕事から帰ったばかりなら夜が明けてから話をしよう。

 そっちの方が常識的だしな。今とか地球時間だと深夜二時とか三時くらいだし、そんな時間に重要な話をする奴はいねぇよ。

 そう思ったのだがゼティは椅子を持ってきて俺の前に座り、真面目くさった顔で俺に訊ねる。


「誰を殺す?」


「物騒な奴だなぁ。まだ何も言ってないのに」


「そんなツラをしてれば何となく想像はつく。俺に殺しを頼むときはいつもそんな顔だからな」


 どんな顔かは自分じゃ分からねぇけどな。

 まぁ自分の気持ちくらいは分かるんで、キレそうな時やキレてる時こそ、穏やかな顔つきになるように意識して、怒ってる時ほど笑うようにしてるんだが、それが良くねぇんだろうな。


「殺して解決するなら殺してもらうんだけどなぁ。ちなみにフェルムにいる奴らを殺して来いって俺が言ったら?」


「能力の制限を解除してくれるなら、朝日が昇る前に全員殺してきてやる」


 物騒なことだぜ。

 まぁ、フェルムが原因で俺はキレてるわけじゃねぇから、そんな命令を出すこともないだろうけどさ。

 俺はとりあえず何があったかをかいつまんで話してゼティと情報を共有する。

 と言っても話せることは、ダンジョンの奥で俺は自分の過去を見せられたってことと、フェルムの周囲のダンジョンがどうにも怪しいってことくらいだ。分からねぇことが多すぎるんで推理しようにも、妄想にしかならねぇしな。


「地下迷宮も森も、フェルムの周囲のダンジョンは侵入者をおかしくさせようって意図があると俺は思うんだよな。コルドールの地下迷宮では地命石による魅了、悪夢の森では悪夢の試練による精神汚染って具合に。そして、それはどっちも洗脳に類するものであるというのが俺の見解って奴だな」


 ──で、そんなことをする目的は?

 俺の想像通り洗脳なら、洗脳をするのは自分の都合よく動かせる奴が欲しいってことだよな。

 そして単なる洗脳目的なら、ダンジョンの最初に洗脳するためのアイテムやら装置があってもいいんじゃないか?

 その方が対象になる奴が多くなるから、手っ取り早く洗脳できて手駒を確保できるぜ。それなのにダンジョンの最奥にあるってことは、そこまで来れる奴であることが望ましいってことだよな。

 ダンジョンの奥まで来れるってことは腕が立つ奴の場合が多い。そんな奴を洗脳するってことは、腕の立つ奴を手駒にしたいっていう目的があると考えられる。

 じゃあ、それは何でだ? なんで、腕の立つ奴を手駒にしたがる?

 手駒に量ではなく質を求める理由は? 腕の立つ奴じゃないと困難である仕事を任せるためか?


「そういえば俺は仕事でダンジョンの制覇をしたという冒険者の護衛をしたが、そいつらも洗脳されている雰囲気だったな。俺以外の奴らは気付いていないようだったが」


 ゼティが俺の話を聞いて思い出したように言う。


「結局、ダンジョン関係がどうにも怪しいって結論にしかならねぇな」


 ダンジョンを作った奴が俺の思い出に土足で踏み込んだんなら、そいつを見つけ出してぶち殺すだけだ。

 しかし、そいつを見つけるにも情報がねぇんだよなぁ。


「全てのダンジョンを制覇したら分かるってこともあるんだろうけどさ」


 それが面倒くせぇんだよな。

 つーか、今度もイライラさせられそうな気がするし、ダンジョンに潜るようなことはしたくねぇよ。

 けれどもダンジョンについては知りたいわけで、そうなると俺がするべきことと言えば──


「知ってる奴から聞くべきかな」


 洗脳の件も気になるし、それに冒険者が暗殺者に狙われる理由ってのも気になる。

 俺の勘ではダンジョンを攻略したってことが暗殺者に狙われた理由だと思うんだが、それは単に成功を妬んでの物ではないような気がするんだよな。

 攻略する度に洗脳されそうになるダンジョンだろ? 仮にダンジョンとダンジョンを作り出している連中に思惑があるとしたら、洗脳された奴が死ぬってのは思惑通りか? 


 どうにも分からねぇことが多い。

 こういう時は少しずつ情報を補完していくべきだろうな。


「暗殺者を捕まえに行くのか?」


 今後の方針について考える俺を見てゼティが質問を投げかけてくる。

 ゼティ君は素直で良いねぇ。暗殺者の正体も何も分からないのにどうやって捕まえるって言うんだい?

 犯人の行方が分からないのに犯人を捜すとか効率が悪いぜ。それよりも被害者の方は何処にいるか分かるんだから、そっちから調べていく方が良い。

 人間だった頃に探偵の真似事もやっていた身としては、被害者の方を調べて犯人に繋がる情報を探していくべきだと思うね。

 だからまぁ、アレだ──


「いいや、俺達が捕まえるのは冒険者の方さ」


 要するにこれから誘拐して来ようぜって話さ。

 誰にも邪魔されず詳しい話を聞いたり、そいつらに何が起きているのかってのを調べるには攫ってきちまうのが良いと思うんだよな。


 別にそいつらが何か悪いことをしたわけじゃないけれどね。

 でもまぁ、俺の自分勝手な都合のためにそいつらにはちょっと嫌な思いをしてもらおうって話さ。

 文句があるならどうぞ。まぁ文句を言われたって俺の行動は変わらねぇけどな。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ