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[2-2-2]日記。わたくしが買われた日の事

エルシュの日記。視点違いです。

 わたくしが奴隷商館に入って一ヶ月。こちらでの生活は大分慣れました。

 奴隷とは思ったよりも良い暮らしのようです。

 個室が与えられ三食に白いパンとスープと肉と豆が付き、のんびりと暮らしています。


 奴隷として、主人には害してはならず、主人の言うことを聞き、主人を守れと教わりました。

 それはわたくしが目指していた騎士と同じだったのです。

 騎士を諦めたわたくしですが、ならば奴隷としてその主人の騎士となると心に誓いました。


 その日、不思議な条件での募集が出されました。

 「依頼主は女性。条件は性別は問わず。冒険者家業の危険と、性行為の許可、料理と雑用ができること」というものでした。

 求める技能からして冒険者奴隷の募集のようです。

 しかし気になる点があります。


 依頼主は女性ということ、そして性行為の許可で「おおー」と男たちの声が小さく上がりました。

 多くの方が立候補をしているようですが、選別はかなり厳しいようで、部屋から出された人数は限られていました。

 男は屈強で顔が良いものが選ばれ、女性はそもそもの候補者が少なく二人だけが選ばれました。


 わたくしは手を上げました。

 戦闘能力は求められていないようですが、選ばれた方はみな強そうな方たちでした。

 その基準なら、わたくしも負けていないはずです。

 しかし副館長は手を上げたわたくしの姿を見て、少し顔に驚きを見せました。


「君は……まあいいでしょう。本来は表に出すような方ではないのですが」

 

 と言われて気づきました。きっと言われていない別の条件があったに違いありません。

 他の9人の方は大人の美形でした。つまりそういうことなのです。

 色々つけた条件はフェイクで、本来の目的は美形の男の性奴隷なのでしょう。

 わたくしは部屋に向かう間に察してしまい、落胆をしていました。

 女性冒険者の方でしたら、それを守る騎士となれるかもという淡い期待も薄れていきました。

 先に男性7人が入り、わたくしと女性2人が後から入るようです。


 「どうした次、入れ」


 わたくしの前の方の足音が静かすぎて、動いていることに気づくのが遅れました。前の方から少し遅れて部屋に入りました。


 「買う」


 という声が聞こえ、わたくしは顔を上げました。

 男性が本命かと思っていた私の予想は全く違っていたようです。

 すると前の二人……? と思ったのですがどうやらそれも違い、わたくしが第一指名されたようです。

 何もしていないのに。

 力も見せていないのに。

 どういうことなのでしょう。


 わたくしを指名されたお客様は小さな少女でした。わたくしの心は大きく揺れ動きました。

 騎士は主人を守るもの。

 奴隷は主人を守るもの。

 もしわたくしが買われたならば、あの姫を守る者となるのです。


 思わず出した声が震えた。一度は諦めた騎士のような者にわたくしはなれるかもしれないのです。

 彼女は親切にわたくしに忠告してくださいました。冒険者としての道や騎士への道はただ綺麗なだけではないと。

 しかし厳しいからこそ男になれると。

 望むところです。私は目を見て笑顔で答えました。

 すると姫は目をそらされてしまいました。もしかしたら姫は目を合わせるのが苦手な、奥ゆかしい方なのかもしれません。

 今後は気をつけることにします。


 わたくしは姫に待遇や希望を聞かれました。

 わたくしは騎士を目指していましたが、誰かを守るということはこれが初めてです。いつも父や母や兄上や姉上に守られてきました。

 人を守る側は初めてですが、できれば優しくしてくださると嬉しいです。


 わたくしが素直な気持ちを伝えるとすぐに商談に入りました。

 まさかのここが一番の問題でした。私の姫はお金がなかったのです。

 わたくしは手を上げ、足りない分はわたくしが支払うと、伝えました。

 そもそもこれからはペリータ様と私で協力してお金を支払うのです。

 ペリータ様が支払えなくなったならば、残りのお金はわたくしが支払うのは当然だと思います。


 商談が決まり、ドレスの着替えに渡された服はメイド服でした。

 しかもこれを着ることがペリータ様の希望との事です。

 ペリータ様は騎士よりも侍女を求めているのでしょうか。

 言われてみれば始めから料理と雑用と条件に出されていた気がします。


 応接室に戻ると、ペリータ様もメイド服に着替えるとのことです。

 ペリータ様は姫なのでドレスのままでわたくしは良い気がします。別室でペリータ様のドレスを脱がすのを手伝いました。

 ペリータ様は自身の身体を「汚い」とおっしゃられましたが、そんなことは全くありませんでした。

 戦いの傷は勲章と父は常日頃おっしゃってました。

 ペリータ様の身体は父上のようなかっこいいお姿でした。


 この後に一緒にカフェで食事をしたり、酒場の掃除などをしました。ペリータ様は金貨はもらえませんでしたが、大きな銀貨をもらいました。

 書きたいことは沢山ありましたが、ペリータ様にお呼ばれされましたので今日はこれでおしまいにします。


 今日はペリータ様と一緒に寝るようです。寝ている間も守れるか不安ですががんばります。

 おやすみなさい今日のわたくし。

 明日のわたくしはペリータ様のようにもっと男らしくなれますように。

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