[3-3]快楽は祝福とともに
前回までのあらすじ:黄金の天使は治癒魔法が使える本当に黄金の天使だった。
「どうだ?」
私はエルシュに向けて両手を広げた。
次の日の朝、再び宿の部屋に三人集結した。
エルシュはいつものメイド服ではなく、青いドレスを着ている。
私が奴隷商館で始めて会って一目惚れした時の姿だ。
「久しぶりに見たけどドレス姿もかわいいなぁ」
私はエルシュをぎゅーと抱きしめた。身長が足りないので顔がお腹までしか届かないが。
「恥ずかしいです……」
「奴隷の首輪はどうするんだ?」
ドレス姿だが奴隷の首輪は付けたままだ。
「外せないのか?」
「外せるとは思うが……」
さっすがゴンズの兄貴! 怪しいことはなんでもできるぜ!
カチャカチャと弄りカチャリと外れた。
魔法が込められてて外したらドカーンとかならないのだろうか。
「これでよし、と。あとは胸が足りないが」
「今おまえ全女を敵に回したぞ」
こいつめ……ロリコン変質者の上におっぱい教徒だったとは……。
ロリ巨乳は邪教ぞ。
「いや、おとこ……まあいいか。ペリ公はどうするんだ」
「私か……そうだな……いっそ私が奴隷になればいいんじゃないか?」
「ペリータ様が奴隷だなんてダメです!」
ドレス天使が私をぎゅーっと抱きしめた。くるしい。
「私が奴隷の首輪をしてメイド服を着る。奴隷の首輪は本物だ、バレはすまい。私は黄金の天使に助けられた者とする」
「あーうん。いけるかなぁ……」
「髪型とか弄りますか?」
エルシュが私の髪をさわさわした。
やんっ! 女の髪を触るのはえっちな行為なんだぞ! BANされてしまう!
「ちんちくりんが編み込みしても変だぞ」
なぬ! また目から水出すぞ。
「編み込み! する!」
私はぴょんぴょん跳ねた。こうなったら幼女化してやる。
「と、言っても誰がするんだ?」
「あっわたくしできますよ」
さすが騎士を目指していたエルシュだ。なんでもできるなぁ。
さっそく私の髪を三つ編みにしはじめた。
「後はそうだな……実演か。いいか? 傷跡が残る程度に治すんだぞ。できるか?」
あくまで軽い怪我が治せますよという設定にしようと決まった。
治癒魔法使いだが万能ではない。重傷者は死なない程度の傷まで治す、というように。
ジョバーニゴンズはナイフで自分の腕を切りつけた。
「えっ、急に何してるの? お前そういう趣味が……」
ドバドバ血を流す腕をうわーっとドン引きした目で見る。
「テストだ。俺の腕を傷跡が残る程度まで治してみろ」
「あっ、今ペリータ様の編み込みをしているので手が離せません」
「だ、そうだ」
「おおおい! 待て! こっち先にしてくれ! 血! 俺死んじゃう!」
こうしてジョバーニゴンズは死んでしまった。
と、ならないように助けてやる。
「黄金の天使さま、あのアホ面の男を治しておくんなまし」
「わかりました治しましょう」
この会話もそれっぽい練習中だ。
黄金の天使はジョバーニゴンズの腕にそっと指を当て、ごにょごにょっと呪文を唱えた。
あれは一応やらないと使えないようだ。
黄金の天使の指先がふわっと輝き、ジョバーニゴンズの腕の傷の血は止まり、傷はぐじゅぐじゅっとした感じになった。
「あふっ……おお……完璧だ……」
ジョバーニゴンズは自分に出来た傷を満足げに眺めている。
「なあ……変な声を出していたがその……やはりそういう趣味なのか……?」
私は怪しんだ目でじっと見つめた。
「いやそのなんだ……傷を治されるのが気持ちいいんだ……いやっそういう趣味ではなくてだな!? 痛みを止めるのにきっと快楽効果があるのだろう」
ふうん……気持ちいいんだ……。
黄金の天使に治して貰うの気持ちがいいんだ……。
あっそういえば、黄金の天使とベッドでイチャイチャしてた時に気持ち良かったのも、私の身体の傷の修復が関係してたのかもしれない。
うっ……しかし思い出そうとしても記憶が失われてしまっている気がする……。
そんなことが……確かあったような……。
いや無かったかな……。うん。いやらしいことなんてなかった。勘違いだな。
「私も気持ちよくされたいのだが……」
と、口に出して私は閃いた。
知っての通り私の身体は清らかなボデーだ。
そして私はこう聞いている。初めて大人になる時はとても痛い、と。
そしてあれだ、私の身体は見ての通りロリっ子だ。
こんな身体に腹パンされたら間違いなくゲロを吐く。 【腹パン:腹にパンを詰め込むこと】
私の内蔵はボロボロになって私はボロボロ泣くに違いない。
しかし、黄金の天使の手にかかれば、最高の痛みが最高の快感になるのだ。
こんな素晴らしいことがこの世にあるだろうか。
「じゅるり」
「ペリータさ……ペリちゃん。よだれが垂れてますよ」
「あら私としたことがオッホッホ」
「キャラブレ酷いな……本番までになんとかしろよ……」
やれやれ、とジョバーニゴンズが傷跡が残った腕で頭をかく。
「それ、完全に治さなくていいのですか?」
「ああこれか? これも演技に使うさ。黄金の天使様に傷を治して貰った証拠としてな」
「え? お前も来るの?」
「ちゃんと計画話しただろが!」
そうだっけ? 黄金の天使かわいい! しか覚えてない。
「もう一度話してくれ」
ジョバーニゴンズはしょうがねえなとがりがりと頭をかいた。
「いいか? 黄金の天使様は小さな村の教会で村人の傷を癒やしてきた聖女だ。そして俺ジョバーニと妹のペリエッタは偶然黄金の天使に助けられ、従者として一緒に旅をすることになった。俺たちはフニャシー領で内乱が起こった事をしり、それを嘆いた黄金の天使様は傷ついた人を治すためにやってきた」
「え? 私とゴンズが兄妹? 嫌なんだけど……」
兄妹ということは仲がいい演技をしないといけないってことだろ。無理だろ。
「わがままを……ってそうか、ペリ公は奴隷ということにするんだったか。それじゃ俺の奴隷……」
「嫌だ」
私は黄金の天使をぎゅっと抱く。黄金の天使は私を抱きかかえた。
「あーはいはい……。ペリ公は黄金の天使の奴隷な。聖女の黄金の天使が奴隷っていいのか?」
「変じゃないかと思わせるくらいの方が設定っぽく無くなるだろう」
出来すぎた設定はかえって怪しくなるものだ。
「ならそれでいい。ペリ公は余計なこと言いそうだから無口キャラでいいぞ。黄金の天使はいつも通りにこにこと笑っていればいい。あとは俺がやる……なんか俺の負担が多くね?」
「ジョバ兄……任せた……」
ペリエッタが役に入りびっと親指を立てた。
黄金の天使は言われた通りにこにことしている。
「よしそれじゃ行くか」
ジョバーニゴンズが荷物を持ち上げようとした。
グキィ!
「うっ……あっ……がっ……」
ジョバーニゴンズはその場にくの字になって倒れた。
これはあれだ、天使の怒りってやつだ。
「あっ……あっ……あっ……」
息がヒューヒューと聞こえてくる。
「治しますねっ」
黄金の天使がとてとてとジョバーニゴンズに走り寄り背中をさすった。
「あー……あう……はぁ……はぁ……ありがとう感謝する……本当に天使に見えたよ……」
「何を言う黄金の天使は元から天使だぞ」
「荷物は一部を宿に預けて軽量化していこう……」
黄の魔力の怪力で運んでいた荷物はジョバーニゴンズには重すぎたようだ。
天使の怒り……こっちの世界でいう魔女の一撃。




