[1-2]王都は良き街、一度は来てみな。酒は不味いが女は綺麗だ。
過去編の真ん中です。ゴンズが出てくるから読み飛ばしていいってペリータが言ってました。
水姫様こと私は冒険者になり水魔法使いペリータとなった。
誰かが言っていた。冒険者は冒険者であると言ったときから冒険者になると。
最初は王都から少し外れた少し大きめな街を拠点としていた。
女冒険者は馬鹿にされた。が、魔法使いであることを知るとそれなりに認められた。冒険者に魔法使いは少ない。魔法が使えるということはそれだけでエリートだからだ。魔法が使えるならば魔法学園に入り、宮廷魔法使いになるのが普通だ。一部の田舎者か、エリートから外れたクズ魔法使いのみが冒険者となる。
パーティーには誘われたが、次第にソロで活動することが多くなった。こんなちんちくりんな身体でも、奴らは私を女として見るのだ。直接的に襲われることは少なかったが、黄の魔力の男に抑えられたときは危なかった。しかし奴らは手を押さえれば魔法使いを封じられるとでも思っているのか。あの時は私の奥の手、目から水の高圧噴射したら慌ててテントから出ていった。ざまあみろ。
次は女冒険者から目をつけられた。女というのはなぜ仲間に近い存在をいじめるのか。私がソロで依頼をこなしはじめてからはいじめが悪化した。言われもしない噂を流される。訂正が面倒くさい。水浸しにされる。服を乾かすのが面倒くさい。無意味に道に立ち塞がる。どかすのが面倒くさい。はぁ。私が変な口調になったのもきっとこいつらのせいだ。
しかしある時から派閥が変化した。女冒険者のパーティーのリーダーが依頼でやらかしたらしい。致命的なミスではないが依頼は失敗だ。いじめの対象は次はリーダーとなった。そしてそれに私も加担させようとしてくる。なぜこんな冒険者という小さなコミュニティの中の数人だけの女の中でこんなことが起きるのか。私はひっそりと活動するようになった。
水魔法は裏稼業を得意としている。足音を消し、霧で姿を消し、すっと仕事をする。面倒な奴らからは私の存在はいない扱いになっていった。さらに少し危ない仕事もこなせるようになってきた。危ないと言っても少しだけだが。ひっそりと潜入して話しを聞くとか。
そんな事をしていると、今度は受ける依頼が無くなってきた。そんな依頼は常日頃あるわけでもなく、表立った活動もしづらくなった。なので私は街を移すことにした。ちょうど王都行きの荷物の護衛の依頼が私個人へ届いたのでそれに便乗した。道中少し変な奴らが襲ってきたが、さっくり返り討ちにしてやった。そして私は拠点を王都へ移した。
王都に入る時、手引きしたのがゴンズという男であった。この男は私と同じ水魔法の使い手で裏稼業の男だった。困ったことにこいつはロリコンの変態野郎だった。私の事を見かけると事あるごとにちょっかいをかけてくるのだ。この男、事あるごとに仕事がブッキングするのだ。さらに先輩面して王都の新参者の私に色々と教え込もうというつもりのようだ。あわよくば私の身体も狙っているのだろう。汚い男である。
そして王都での裏稼業の仕事はほどほどになり、主に冒険者としての活動がメインとなった。
初めての王都はどこもきらびやしく見えた。完全にお上りさんである。
王都はまず道が綺麗だ。王が通る道だから当然である。人も綺麗だ。綺麗に着飾っている。私は黒い。黒くてダボッとしたローブを着ていた。ゴンズはこのローブをセンスがないと言いやがったので、スネを蹴り飛ばした。
私がこのローブを見つけたのは前の街で、冒険者でこつこつとお金を貯めて買ったのだ。選んだ理由はこれを着るとまるで師匠のような姿になるからだ。なので私は黒い服がお気になのである。
しかし王都のきらびやかな雰囲気にも私は心を惹かれた。特に惹かれたのはメイドさんである。メイド服は選ばれた者だけが着ることが許される戦闘服だ。メイドになるには、「一に家柄」「二に教養」「三四におっぱい」「五に気立て」である。私には見事にどれもない。まずサイズがない。着られる服が子供服しかない。王都ですら、ない。
食事も金を出せば美味かった。ちょっと歩けばいろんな地方の食べ物が食べられた。ただ、冒険者酒場の飯は不味かった。なぜあの親父はこんなに料理が不味いのか。おそらく冒険者酒場だから料理が不味いんだろう。美味かったら三ツ星レストランになっていてトレビアンな親父になっているはずだ。よって必然だったのだ。
冒険者としての問題は、私には知り合いがいなかった。ゴンズがいるからマシなのだろうか、それともゴンズと関わっているから誰も寄り付かないのだろうか。あるいは私の気質のせいなのかもしれない。
まともな依頼をソロでこなすには限界を感じた。まず私はちんちくりんだ。そして力がない。よって荷物が持てない。準備に持っていける荷物は少なくなり、持って帰ることのできる荷物も少ない。ならば奴隷を買えばいいとゴンズは言っていた。
私は奴隷商館に行った。そこで見つけたのはその頃に依頼で向かった村にいたとある少年だ。私が助けたあとも資金繰りは厳しく少年は売られたようだ。少年は橙色の魔力の色をしていた。私は少年を金貨1枚で買った。
少年は誠実で明るく真面目でよく働いた。私が王都の冒険者と打ち解けているのは少年のおかげでもあるだろう。私の代わりに情報を集めて、依頼の選択もしてくれた。
一度だけ私達は死にかけた。冬山に閉じ込められたのだ。少年の魔力は小さいものだったが、赤に近い魔力なので暖かかった。私は少年で暖を取った。思春期の少年には酷であったであろう。極限下では性欲も高ぶる。しかも相手は簡単に手篭めできそうな可憐な美少女だ。しかし少年は耐えた。雪が晴れ、少年は私をおぶって下山した。しかし少年も限界だった。私達が道で倒れているのを救ったのは王都の騎士だ。その流れで私は少年の素晴らしさを説き、騎士の従者にしてくれないか頼んだ。騎士は快く承諾し、奴隷商館を通して金貨10枚を支払った。
俺は桃色で長くうねった髪型を揺らして歩く、宝石なような碧い綺麗な瞳の少女を忘れられなかった。
思えば俺は、あの時恋をしていたのだろう。ただそれを知るにはまだ幼すぎた。
俺は一所懸命に少女のために働いた。馬車馬のように働くことに喜びを感じた。すると少女は少しだけ褒めてくれるのだ。
少女は凄く不器用な子であった。
少年だった頃の主人であるが、まるでペットのようであった。
あの頃ろくに仕事ができなかった俺から見ても、少女からは生きるための力というものが欠けているように感じた。
料理炊事洗濯諸々全て俺がやった。少女はそれを見てにっこりと笑うのだ。
少女は水魔法を得意としていた。自らを水姫だの水影だの大魔法使いだのと呼んでいた。俺は得意げに魔法を使う少女が好きだった。輝いてキラキラして見えるのだ。
少女と別れるきっかけとなったのはやはり冬山での一件の事だろう。
その年の雪は早かった。山に入ったところで豪雪が襲いかかった。
雪も溶ければ水であるから水魔法でなんとかなるのではと俺は思ったが、少女は震えながら俺に抱きついてきた。
俺は弱々しく震える少女を守らねばと奮い立った。
食料がない状態で雪は三日間振り続けた。
少女は明らかに憔悴していた。思えばあの時見つけて避難した洞窟が雪で埋もれなかったのは、彼女が魔法でどうにかしていたのかもしれない。
俺は彼女をおぶった。凄く軽かったのを覚えている。
下山し王都への道を見つけたところで力尽きて倒れた。俺の記憶はここで一旦途切れた。
次に目覚めた時、俺はすでに少女の奴隷ではなくなっていた。
俺の主人は騎士となっており、俺は従者となっていた。
最初は俺が役立たずで売られたのかとショックを受けた。
そんな様子を見て騎士が、冒険者が自分のサポートにしておくのは勿体無い人材なので引き取ってできれば騎士として育てて欲しいと頼まれた、と教えてくれた。
俺はここでも懸命に働き、自分を買い取り自由市民となり騎士見習いの従士となった。
俺は少女に感謝した。 故郷の村を救い、奴隷となった俺を買い、騎士にするべく売ったことを。
俺はいつか、少女を守ることを誓い、騎士を目指し励んでいる。
願わくば、再会するまでお互いに無事で生きていけるように。水女神の加護を。




