表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ささくれ黙示録 ~ショートショート集・ソノ1~

ショートショート002 会場

作者: 笹石穂西

 ちょっと、ちょっとあなた。新しく来られた方ですよね。

 ちょっと聞いてくださいよ。私がこんなことになっちゃった理由を。とにかく誰かに話したくて話したくて、仕方がないんです。はぁ、聞いてくれますか、それはどうも。

 いやいやまさか、こんなことになるなんてねぇ。




 もう半年ほど前になりますか。同窓会に誘われたんですよ。中学の同窓会なんですがね。

 私も初めは行くつもりだったんですが、途中でやっぱり嫌だって言ったんです。だけど相手が悪かった。幹事の森山ってやつなんですけどね。


 森山は、人一倍、いや二倍も責任感が強い男でして、いったん引き受けたことは強引にでもやり通すんです。

 そうですね、たとえば、中学の体育大会のときの話なんですが、森山が応援合戦の団長をやることになりましてね。

 そのときに、先生が「がんばって優勝してくれよ」なんて言っちゃったもんですから、もう大変。森山のやつ、「まかせとけ」ってはりきってはりきって。

 毎日、朝は五時から、放課後は夜の九時まで、猛練習させられてしまいました。ええ、おかげさまで優勝できましたけれどもね。




 その森山が、今回の同窓会の幹事に選ばれたんですよ。責任感の強いアイツなら、絶対に全員集めてくれるだろうってことで。


 確かに、全員集まってました。はい、一人残らず。私は必死に抵抗したんですけどね。たぶん、みんなそうなんじゃないかな。でも、結局無理やり連れて来られちゃいました。


 何をそんなに嫌がったのかって? いや、別に同窓会それ自体はいいんですけどね。いくらなんでも会場が悪い。とんでもない場所を提案してきたんですよ。


 あっ、ほら、あっちを見てください、あそこで喋ってるのがその森山ですよ。言い忘れてましたが、今まさにその同窓会の真っ最中でして。責任を果たせたからって、嬉しそうにしちゃって、まぁ。


 ああ、理由をお分かりいただけましたか。そう、そうなんです。


 森山の野郎、幹事に決まってからしばらくして交通事故で死んだんですが、「絶対同窓会は開いてみせる」なんて言って、嫌がる私たちを無理やり……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 森山は死んだんじゃなかったのですか??
[一言] 読ませていただきました。 責任感が強すぎるのは少しばかり厄介ですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ