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9 三人で 魔物の姿 変身し 575

 ダメだ……俺達は抱き合いながら茂みに隠れていた。

 魔王城に乗り込みたかったが、さすがに敵の本拠地だけあって防御が堅い。

 骸骨の歩哨がひっきりなしに見回っている。


 今までの経験上、負けはしないと思うが次々に敵が集まってくるかもしれない。

 それに正直なところアリシアとメアリーが心配だ。


 ポケットに入っている鈴を握りしめておキツネ様に相談するという手もあるが大きな問題があった。

 小さな茂みに隠れるために、俺に左から抱きついているメアリーだ。


 体は俺の回復魔法で治っているがカマキリのカマで袈裟懸けにされた服は直っていない。

 そしてメアリーは僧侶(仮)だ。全身タイツに前かけというそもそもかなりエッチな服なのだ。

 切り裂かれた全身タイツで豊満な胸の重要な部分がギリギリはみ出ないように引っかかってるだけなのだ。しかも下半身は湿っている。


「リョウタ メアリー ムネ ミタル ノ?」

「いや見てない。見てない」


 同じく俺に右から抱きついているアリシアに蔑んだようなジト目で見られてしまう。思考を読まれていないアリシアにすらこれでは、おキツネ様にはなにを言われるかまったくわからない。


 というかアリシアも黒いマントの下は胸の谷間が強調された緑のワンピースのような服を着ている。

 これはこれでエロい。左から抱きつかれているメアリーを見てたら怒られたから右のアリシアのほうをむいたら赤い顔で「ふんっ」とそっぽをむかれた。

 けれども何故か強くギュッと抱きしめられた。茂みは小さい。敵にばれないため仕方ないのかもしれない。


 ある意味で状況は最高なのだが、長くはこうしてはいられない。もし一匹でも敵に見つかれば、仲間を呼ばれてすぐに最悪になる。


「どうしたらいいんだろう?」

「ヘンチンマホウ……マモノ ニ」


 ヘンチン魔法? 魔物に? ああ、変身魔法か! なるほど魔物に変身したら堂々と乗り込めるかもしれない。


「アリシア、メアリー、早速、変身魔法をやってくれ」

「ヘンチンマホウ チョウコウトウ」


 アリシアとメアリーは抱き合ったまま俺を左右から見つめる。

 わかりました。やってみるよ。

 俺は指を数えながらアレやコレやと575を作った。


「えっとさっきの三人では5文字でしょ……魔物の格好だったら良し7文字」


 575が完成。


「三人で 魔物の姿 変身し」


 どうだ! と思うと同時に俺たちの体が光りはじめる。


「ヘンチンマホウ ノ ヒカリ? スゴイ!」


 ヒカリが消える。ところがアリシアはそれほど変化が無いようだ。黒い三角ハットに黒いマント、赤髪。

 アレ。暗くて分かり難いが皮膚の色が……紫!?

 そう思ったと同時にアリシアがふり向いた。顔が傷だらけで口が怪我で裂けていた。うわっ!


「私はゾンビみたいね」


 アリシアは自分の顔を触りながら言った。なるほどゾンビか。そうとわかれば怖くない。ちょっと怖いけど。


「リョウタは骸骨か」

「え? 骸骨?」


 自分の手で顔をさわろうとする。しかし触る前に気がついた。手が完全に骨になっている。


「あう……俺は骸骨か。さっきの歩哨と同じだな」

「ぷっ」


 アリシアに笑われた。

 しかしどういうことだろう。ハッキリと言葉が通じ合う。


「どうも魔物言語が話せるようになったみたいね。変化魔法って便利」

「そういうことか!」


 自分が自然と変な言語を話していることに気がつく。う”~とかあ”~の抑揚で話しているようだ。

 この状態で日本語って使えるんだろうか?


「リョウタって転移魔法とか変化魔法とか超高等魔法を一体どこで学んだの?」


 日本ですけどちょっとそれは言っていいかわからないので誤魔化すしかない。


「そういえばメアリーは?」


 俺たちはキョロキョロとメアリーを探す。

 なぜか足元に脱ぎ捨てられたような前かけと全身タイツがあるだけだった。

 一体どこに? ちょっとしたミステリーだ。


「皆どこー?ここはどこなのー? 暗いしジメジメしてるよー」


 全身タイツがモゴモゴと持ち上がる。アリシアがタイツの中に手を入れるとスライムが出てきた。ミステリーは一瞬で暴かれた。

 メアリースライムはまた下半身から液体を出したような気がしたが、俺たちが魔物ではないとわかるとピョンピョンとはねて喜んだ。


 ところで俺は気がついた。

 アリシアとメアリーがゾンビとスライムになれば、エッチなことを考えずにおキツネ様に相談できるのではないかと。


 俺はハンガーに掛かったようなジーンズのベルトを締め直しつつ、ポケットから鈴を取り出そうとした。

 その時、ビリリという音が聞こえた。

 なに!? ビリリって……。


 音の方向を見るとゾンビのアリシアが服を破いていた。特に胸元を。


「な、なにしてんの?」

「いや服が破けてたほうがゾンビっぽいかなあ~って」


 ゾンビのアリシアの黒マントの下は元々肩なしで胸の上が見えるセクシーな緑色のワンピースだったが、左のオッパイの大事な部分まで見える破れたワンピースにクラスチェンジしていた。


 紫色の肌でところどころに傷があるのに、それが逆に妙になまめかしい。

 それに骸骨は瞳がないのでどこを見ているかわからないだろうから見放題だ。

 とてもおキツネ様に思考を晒しながら相談できる状況ではなくなる。


 ちなみにスライムメアリーの前かけと全身タイツはゾンビが持つと血が付いてしまうということで、俺が預かることになった。血は付かなくてもタイツは最初から湿っていた。

応援よろしくお願いします。

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