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8 三人で 魔王の城に 転移する 575

 魔法使い(仮)さんは異世界人なのに日本語を話せるのだろうか。

 

「ニポンゴ ヲ ケンキョウ シチル」

 

 ? ああ、なるほど。日本語を研究していると言ったのか。

 魔法使いだからこの世界の魔法言語である日本語を研究しているのかもしれない。


「ワタシ アリシア」


 魔法使い(仮)さんはアリシアという名前らしい。

 

「ああ、俺はリョウタです」

「リョウタ ニポンゴ ウマイ マホウ モ スゴイ」


 どうも褒められているようだ。


「アノコ メアリー タスケ クレタ アリガト」


 僧侶(仮)さんはメアリーという名前のようだ。

 アリシアは積極的に話しかけてくるタイプだが、メアリーは逆らしい。赤い顔で遠くからペコペコとお辞儀をされた。


 三が日までに魔王を倒さねばならないので俺はあまり時間はない。

 だが二人をここに置き去っても良いのだろうか。

 とりあえず、少し休むことにした。


 彼女たちは複雑な会話はできなかったが単語で話せば、辛うじて意思疎通ができた。

 アリシアがわからないことはメアリーが、メアリーがわからないことはアリシアが補った。

 それによると彼女たちも先ほどの男たちと共に魔王を討とうと冒険に出たらしい。四人は人間の国に出る魔物には負け無しで、必ず魔王を倒すと意気込んで旅だった。

 しかし魔族の国に入ると加速度的に強力な魔物が現れて先ほどの状況になってしまったらしい。


 勇者(仮)のカスと戦士(仮)のクズが逃げた件については、メアリーよりもアリシアのほうがショックだったらしい。

 アリシアは初対面の俺とも明るく話してくれたが、ヤツらが逃げ出したことを話す時だけは辛そうだった。二人を信用していたのかもしれない。

 

「俺も魔王を倒しに来たんだ」

「ホント!? ワタシタチ イッチョ ニ イク」


 一緒に行くときたか。正直、足手まといだと思う。

 俺は地図を出した。二人を指差してからエレンがいる村を指差す。


「二人はここに逃げてくれ」


 アリシアとメアリーが現地語で相談する。


「ソコマテ カエラルカ ワカレナイ」


 村まで帰れるかわからない……か。そうだよな。


「リョウタ ニ ツイタク イナチ カケル ケガシテラ コイテテ」


 命を賭けて俺について来る。怪我をしたら置いてけってか。

 俺が一番苦手そうな要求だった。

 

「なんとか帰ってくれないかな……」


 俺がそうつぶやくと今まで大人しかったメアリーが力強く主張した。


「オネガイ タテ デモ イイ」


 盾……なぜそこまで……。


「メアリー カゾク イナイ」


 アリシアが教えてくれた。魔物か魔族に殺されたとでもいうんだろうか。


「わかったよわかったよ。わかりました!」


 投げ遣りに言ったから伝わらないと思ったが二人は笑顔になる。

 伝わってしまったようだ。


「でも俺は明後日までに魔王を倒さなければならない」

「!?」


 二人の顔が驚きに変わる。無理だと書いてあるようだ。


「いやその……強い魔法を使えるのは明後日までなんだ」

「ハヤクシナイト?」

「うん」


 アリシアはこちらになにか事情があると察してくれたようで考え込んでいる。


「タンイマホウ ナラ マコウジョウ スグ」


 タンイ魔法? ああ、ひょっとしておキツネ様も言っていた転移魔法だろうか。


「ケド タンイマホウ チョウコウトウ」


 そりゃそうだろうな。転移魔法がガンガン出来たら航空機のパイロットとどこでもドア職人が職を失うことになる。

 転移魔法か。しかしどうすればいいのだろう。


「魔王に転移」


 とか言えば良いんだろうか? 適当に言ってみたがちょうど神数とか言う7文字だぞ。どうだ!

 なにも起きなかった。転移魔法は超高等というのもうなずける。


 そういえばおキツネ様がこうも言っていた。575の韻律いんりつはこの世界の魔法詠唱だと。

 アリシアも57577のリズムで氷魔法の詠唱をおこなっていた。

 なら……俺は指を折り曲げつつ言ってみた。


「三人で 魔王の城に 転移する」


 どうだ575だぞ。一応イメージもした。

 ……まあ、こんなんで転移できたら苦労しない。

 溜息を吐いて下を向く。すると自分の体が光りだしたことに気づいた。


「え? あれ?」


 アリシアとメアリーも光った顔を見合わせる。


「マサカ タンイ ノ ヒカリ?」


 その言葉を聞いた瞬間、あたりの景色がフッと変わった。

 木しか無かった目の前には黒い石造りの不気味な巨城が現れた。

 これはひょっとして魔王城では? ヤ、ヤバイ! 魔物がこっちに来る。


 俺は呆然とする二人の女の子の首を掴んで慌てて茂みに隠れた。

 音がしたのか歩哨が生気の無い顔でこちらを見た。

 生気が無いのは当たり前だ。なぜなら骸骨の兵隊だったから。


 二人の口に手を回して必死に抱き合う。

 どうやら骸骨は気が付かずに通り過ぎていった。


「スゴイ タンイ デキタ ノ?」


 アリシアが俺の手を口から外して聞いた。


「いや初めてだけどね。できたみたいだよ」


 そういえばメアリーは? いた。

 というかなぜかヒシッと俺に抱きついていた。骸骨が怖かったんだろうか。でもやっぱり下半身は少し湿っていた。

明日は魔王(?)と決戦です!

応援よろしくお願いします。


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