13 暴かれた陰謀
俺はマントの男に向かって言った。
「暗殺者 雇った野郎の 名前出せ」
すると、男は急に喋り出した。
「ドンガーと言う男に雇われた」
「王様、聞き覚えはありますか?」
「ふむ……確かどこかで……そうじゃ!」
王は大きく目を見開く。
「確かモダルド商会の人間だ。何度か城にも来ておる。しかし、なぜ商会の人間がワシの命を……」
それは暗殺者に聞いてもわからんだろうな。そうなると――
あっ、いい事思いついた。
俺は近くにあった壁に向かって575を言う。
「この壁に ドンガーの策 写し出す」
するとまるで映写機を使ったかのように、壁に映像が浮かび上がった。
「おお、凄い真名じゃな」
「これくらいどうって事ないですよ」
そこにいたのはドンガーと思わしき猫背の男性と、もう一人の小太りの男性……ってこいつは確か。
「ダッフス?!」
俺より先に、王は驚いた声で言う。
映像の中で、ダッフスとドンガ―はなんらかの取り引きを行っていた。
『……困った事に魔王などと名乗りだす小娘が急に現れてな。和平交渉がしたいと言いだしてる』
『そいつは本当に魔王なんでしょうかねえ』
『知らんが、困った事に国王は聞く耳を持ってしまっている。王もご老体故終わらぬ戦いに疲れているのだろう。このままでは魔族との戦争が終わってしまうかもしれんぞ』
『そりゃあ困りますね。せっかく何十年も続いている争いでこんなに美味しい思いをしているのに』
『無論。そしてこれから何十年も同じように甘い蜜を吸うつもりだ』
『じゃあ、どうしますかね?』
『国王ももう歳だ、王座から降りてもらう』
指で喉を切るようなモーションを見せながらダッフスは言う。
それをみたドンガーはニヤニヤと口の端を吊り上げた。
『なるほど。しかしそれでは真っ先に怪しまれるのは側近の貴方様では? 国王と馬が合わない事はこの国に広く知れ渡っている事実ですよ』
『通常ならばそうかもしれんな。だが今夜は王の城に客人がいる』
何かを察したようにドンガーは頷いた。
『王を始末し、魔王にその罪を擦り付けると言う事ですね』
『その通り。そうすれば最近沈静化していた魔族との戦いも再び激しくなり、我々の懐にますます金が入る』
『いやー、ダッフスさんは悪いですなあ』
嬉しそうに言うドンガーの肩にダッフスは手を乗せる。
『何を言う。我々はこの国の経済を回してやってるんだぞ』
『ふはは、それは違いないですね』
二人は笑いだし、映像は途切れた。
要約すると、ダッフスは王国に戦争の為の武器や資材を売っていたモダルド商会のドンガーと癒着しており、商会が有利になるような法案や政策を通し、その見返りに金を貰っていたのだろう。
しかし戦争が終わってしまえば商売もあがったりになってしまう。だから彼らにとって魔族との戦争は絶対に続かなければいけないもの。
自分の利益の為に他者の犠牲は厭わない。ヘドが出るほどの悪党だ。
「ダッフス……貴様……」
国王は怒りで震えていた。
無理もないだろう。腹心に裏切られたのだから。
「衛兵、今すぐダッフスを捕らえてワシの元に引きずりだせ。この手で切り捨ててやる」
そう言い、王はベッドから出て壁に掛かった立派な剣を手に取った。
「ドンガーと言う男もだ。王都の衛兵すべてに連絡を通して必ず見つけ出せ!」
ずいぶんアクティブな爺さんだな。
◆◆◆
その晩、自室で悠々と過ごしていたダッフスは即座に捕らえられ、王にその場で処刑された。
翌日のうのうと王都にやってきたドンガーも捕らえられ、牢獄に放り込まれて処刑待ちらしい。
一連のごたごたが済み、リリスは晴れて王と和平交渉を行える事となった。
「――そなたの言い分は既に聞いた。我々としてもこれ以上不毛な争いを続けるつもりはない」
「ありがとうございます」
利害の一致もあったのか、会議は平和条約を結ぶと言う形で即決し、開拓村に砦を作る必要もなくなったので軍も村から身を引いた。
とりあえずこんな感じで一件落着ってとこか。




