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10 開拓村の危機

 開拓村の前門まで転移し、中に入るとそこには何十と言う数の兵士がいた。

 その中のリーダーと思われる赤いマントを羽織った男性は、長老となんらかの話をしていたようだ。


「――と言う事だ、ただちにここを立ち退いてもらおう」

「そ、そんな事を言われましても。我々はどこに行けば……」


 両手に兵士から渡された紙を持ち、長老は震え声で言う。


「知った事か」


 兵士は吐き捨てるように言う。


「どうしたんですか?」

「これじゃよ……」


 俺とエレンさんは長老に渡された紙の内容を見た。


「えっ……これは……」

「なんて書いてあるんですか?」


 もちろん俺はカナンの言葉を読めないので、エレンさんに尋ねる。


「わかりません。私も字は読めないので」

「なんじゃそりゃ」


 俺はしかたなくポケットの鈴を触り、おキツネ様と通信する。


 おキツネ様、ちょっとコレ読んでもらえるかな。


『……』


 あのー、おキツネ様。


『知らんわ』


 なんだかよくわからないが拗ねてるようだ。


 どうしたんだ?


『どうかもなにもあるか、ワシを三日も無視して他の女と遊びおって! この不敬者!』


 いや、風邪ひいてたんで。


『じゃあワシに祈ればよかろうものを。リョウタは信仰心が無さすぎるのじゃ!』


 いやー、ごめんな。


『全然心が籠っとらん。却下じゃ』


 じゃあもうアリシアに読んでもらうから大丈夫。


『あ、いや、ちょっと待て! それは嫌じゃ。やっぱりワシが読んでやる!』


 相変わらず気難しいが扱いやすい神様だ、と俺は一旦鈴から手を離して思った。


『さて、これじゃな……なになに。ほう、これは困ったのう』


 長老から渡された紙に目を通しながらおキツネ様は言う。


『どうやらエルガルドの国王は魔王軍に本格的な攻撃を仕掛ける為に前線を上げようとしてるようでな、ここに砦を作るつもりらしい。これはその為の立ち退き命令のようなものだ』

「そんな無茶苦茶な」


 ここから出ていけと言われても、開拓村の人々に行くあてなどある訳がない。

 邪魔だったからとこんな危険な場所に追いやっておいて、いざその土地が必要になったらまたどこかへと追いやるなんてあまりにも身勝手すぎる。


「まてよ……」


 そこで俺はこの問題の極めて簡単な解決法に気付いた。

 国王は魔王軍と戦う為にこの土地を譲れと言っている。だがそもそも魔王軍とは戦う必要はないのだ。リリスはもう人間を攻撃しないと言っているのだから。

 ただ、国王はそれを知らないのだろう。仮に魔王(と言うか裏で魔王を操っていたゴルベール)が倒された事は耳にしていても、事情をしらないエルガルドの者からすれば魔王なくしても魔族が攻めてくる可能性はあるのだから。

 ならば、国王に魔族はもう人間を攻撃しないと伝えればいいだけのこと。


 俺は赤マントの兵士に尋ねる。


「あの、いつまでにこの村を出て行かなきゃいけないんでしょうか」

「我々とて鬼ではない。三日の猶予はくれてやる」


 追い出している時点で十分鬼だと思うけどな。


「ただし、四日目の朝にまだこの村にいるようであれば命はないものだと思え。以上だ」


 そう言い残し、赤マントは連れの兵士たちと共に去っていく。終始身勝手なヤローだ。

 だがまあ、三日もあれば十分。


「長老さん、エレンさん。俺に任せてください」

「任せるって、リョウタさん……一体なにを?」

「ちょっと王様を説得してきます」

「そんな、無茶ですよ!」

「残念じゃが貴族でもない人間が王に会う事など到底許されるはずがない」

「大丈夫ですって。それに長老やエレンさんにとってこの村は大切なものじゃないですか。それを他の連中の勝手な都合で奪わせはしない。たとえそれが王様であっても」

「リョウタさん……」


 すると、どこからともなくリリスが姿を現した。


「リョウタ様、少しほどお話してもよろしいでしょうか」

「ああ、うん。いいけど」


 リリスに連れられ、俺は小屋へと戻る。

 小屋の扉を閉めると、リリスは俺を真っ直ぐ見つめながら言った。


「話は聞きました。私もお供いたします」


 確かにリリスが直接国王に会って話してくれればそれが一番いいだろうな。

 問題はいきなり王様と魔王を会わせていいのだろうかと言う事だが……まあなんとかなるだろう。

 

「本当に大丈夫なのか」

「はい。いずれかは人間の王とも対面しなければ行けないと思っていたので。怖くないと言えば嘘ですが……この先、人と魔族が共存していくには欠かせないものだと思うんです」


 確かにリリスの言う通りだ。


「わかった、一緒に行こう」


 俺はリリスの手を掴むと、57577を唱えた。


「 今すぐに 王の前へと 移転する リョウタとリリス いざ交渉へ」

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