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3 日本語は真名(まな)=魔法言語

諱を真名に変えさせてもらいました。

「く、熊だ……しかもデカイ」

『馬鹿、あまりしゃべるな。この異世界では日本語は真名まなあるいはいみなじゃ! 可愛いワシとは心で話せるだろう』

「は、はあ? ど、どういうことですか?」

『そりゃリョウタがおキツネ様は可愛いなあと思っていることは鈴を通して伝わって来ておるぞ。お前も……可愛いやつじゃの』

「い、いや、そうじゃなくて真名まなだからしゃべるなってほうですってそんなことはどうでもいい」


 ジリジリと後退する女性に対して、熊もジリジリと前進して距離を詰めている。


「ヤ、ヤバイ。あのままじゃ」

『早速、飯の種じゃ。助けろ』

「助けるって言ったって……そうだ!」


 どうせ俺なんかゴミのような人生だったんだ。女性と熊の間に入って代わりに死んでやろう。それで女性がもし助かるなら。


『リョウタ……』


 走りながら思う。ここは俺のことなんか誰も知らない土地だ。もしここで死んだら、変質者が熊に殺されたで終わるだろう。


『お前は良い奴じゃな』


 でも、この鈴のおかげで俺の本当の気持ちがおキツネ様だけにはわかる。それは誰もが望んでもできなかったことだ。

 ちょっと変な女の子だけどそれだけで嬉しかった。


『だが……少々投げ遣りなのはいただけないな。あとちょっとエロい』

「エロいは余計ですよ!」


 死ぬ前におキツネ様の太ももを思い出したって罰は当たらないじゃないか! 


『エロいことを考えながら特攻する前に……そうじゃな。念じながら「燃えろ熊」と叫べ』

「燃えろ熊なんて言ってなんの意味があるんですか?」


 切迫した事態にもかかわらず、平然としているおキツネ様に怒鳴る。その時だった。


「グギャアアアアアアア!」


 獣の咆哮が響く。馬鹿話に気を取られて見ていなかった熊を見る。

 なんと熊は炎に包まれて転がりまわっていた。一体、どういうことだろうか?


『魔物とはいえ可哀想に。ちゃんと念じずに真名まなを発したな』

「ど、どういうこと?」

『ともかく今は急いで、もう一度、念じながら「燃えろ熊」と発音するんじゃ』

「え?」

『いいからやれ! それと手のひらを熊に向けてカッコイイポーズもしろ!』


 なんだかよくわからないが手のひらを燃える熊に向けてポーズをとる。


「燃えろ熊!」


 念じながらそう言った瞬間、まばゆい火柱が熊に立つ。火柱は苦しんでいた熊を一瞬で焼きつくして灰も残さなかった。


「な、なんですか。これは……?」

『だからあまりしゃべるなとそっちの世界では日本語は真名まなじゃ』

真名まなってなんですか?)

『物事や事象の本質じゃ。それを言葉にすれば実現化する。魔力にもよるがな』

「え? じゃあ日本語でなにか喋ったら危ないじゃん」

『だからそう言っとるじゃろ』


 俺は慌てて口を閉じる。


『日本でも昔の貴人は本名で呼ぶことを避けていた。それを言われると操られるとな』


 そんな話も何処かで聞いたことがある。


『まあこの異世界カナンでは、それを魔法言語としている』

(ま、魔法?)

『そうだ、わかりやすく言えば、この世界では日本語は魔法言語だ』

(ポーズには何の意味が?)

『あ~アレか。アレは……フフフ』


 重要な話を聞いている気もするが先にやらないといけないことがあった。

 先ほどの女性だ。怪我はないと思うが安心させたほうがいいだろう。

 女性は驚いて尻もちをついていた。怪我はないですか、と声をかけようとしてまた口を閉じる。言葉にして大丈夫だろうか。


『それなら大丈夫じゃ。ただし通じはせんがな』


 俺がどういうことと思っていると女性が話しかけてきた。


「●×△※□▽」


 女性の言葉は日本語ではなかった……。


『もし異世界人が日本語を普段から話していたら逆に困るだろう? ありがとうと言っているぞ』


 そりゃそうだ。火事が毎日のように起こってしまうことだろう。


「△※□▽△※●×△※□」


 また話しかけられたが、なにを言ってるかわからない。


『なにかお礼をしたいと言っているぞ。異世界に来た当初の目的が果たせそうじゃな』


 マ、マジか。本当に腹が減っているんだ。小さないなり寿司を二個は少なすぎた。

 だけどどうすればいいんだ。腹が減っていると伝えらない。


『仕方ないの~今からワシが言った言葉をそのまま復唱してみろ』


 おキツネ様は俺にはまったくわからない言葉の羅列を教えてくれた。異世界の言葉だろう。

 しかし発音自体はそれほど難しくない。目の前の金髪の女性も笑って頷いている。意味は通じたようだ。


『異世界カナンの言葉は、発音こそ違うが構成や構文はほとんど日本語だからな』


 俺はへ~そうなんだと思う。


『勉強すればすぐに覚えられるぞ』


 覚えたいような、覚えたくないような……。ここに馴染んでしまいそうじゃないか。


『異世界カナンの言葉は日本だったら真名まなじゃぞ』

「へっ? それってつまり……」


 つい言葉に出してしまった。


『ああ、そうじゃ。カナンの言葉を覚えれば日本でも魔法を使えるようになるだろう。まあ日本人はワシへの信心が少なくなってしまったから小さな魔法じゃろうが』


 アッサリ言われたけどそれって凄いことなんじゃないだろうか。日本で魔法が使えるってことか? 俺は早急に異世界を学ぶ必要があるようだった。

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