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6 順番

 朝になったがくしゃみが止まらなかった。


「くっしゅん! くっしゅん!」

「だ、大丈夫ですか?」


 黒革ハイレグの美少女(魔王)に暖められながら寝たのは心地は良かったのだけど、どうやらやはり風邪をひいてしまったらしい。

 

「熱あるかなあ」

「やっぱり、そうですか」


 おそらく風邪なんか575の詠唱で簡単に治せるだろう。

 けどリリスと一緒に寝るためには風邪といういう口実があったほうがまだいいんじゃないかなぁ……と。

 断じてエロい目的ではない。

 

 リリスは自分が魔族だから俺に気色悪がられていると思う時があるようなのだ。

 それにこの村の人は悪気なくリリスの前で魔族の批判をしてしまうことだろう。

 それも彼女を傷つける。


 もし俺が健常であったら、リリスも俺も強く一緒に寝ることは求めることはできないし、寝床を二つ用意しようということになってしまうかもしれない。

 風邪で新しい寝床を作るのは無理だし、お風呂に一緒に入るのも無理。

 風邪をひいている人には一緒のベッドに寝て暖めるぐらいが丁度いいのではないだろうか。


 この理由ならおキツネ様も納得してくれるだろう。

 俺は鈴をポケットに入れたままおキツネ様からお許しを頂いた。


「なにか食べられますか?」

「あんまり食欲はないかな」

「でもなにかは食べたほうが……」


 そうは言っても異世界の食事は硬いものが多かった。

 エレンとリリスが作ってくれたものは決して不味くはないのだが、健常な時ならともかく今は本当にあまり食べたくはない。

 

「あっ。なら私、エレンさんのところで柔らかいものを作ってきますね。リョウタ様はそのまま寝ていてください」


 なんて気が利く子なんだ。涙が出てくる。

 これからはリリスと一緒に暮らすのか。

 さようならネカフェ難民生活。


 異世界の生活が不便だったとしてもこっちのほうがいいに決まっている。

 まあ男手がいなくなった開拓村だから色々問題はありそうな予感がしているが575魔法を使って少しづつでも解決していけばいいのだ。


 そんなことを考えながら再び寝てしまう。




――――――いい匂いがする。




「あっリョウタ。起きた?」


 良い匂いにつられて起きた。女性が声をかけてくれたがリリスではないようだ。目をこすってよく見る。


「あっアリシア」

「今、エレンに麦粥を作ってもらって持って来たから食べさせてあげるね」


 え?


「いや、いいよ。自分で食べるから」

「いいからいいから」


 アリシアはベッドに腰をかける。


「上半身を起こして」

「あ、ああ」


 俺は言われるままに上半身を起こした。


「はい。あーん」

「ん? あち!」

「あっごめん! 熱かった。ちょっとかき混ぜるね」


 麦粥なんて初めて食べたが結構美味しい。しかしまだ熱々でかなり熱かった。

 やはり、というか、どうもというか、アリシアはリリスより〝女子力〟が低いようだった。

 元々は貴族の令嬢で勢いで冒険者になったのだから当然かもしれない。

 でも一生懸命やってくれている感がある。

 

「私もちょっと食べてみるね。あ、うん。これなら大丈夫かな」


 アリシアが食べた木のスプーンで食べる。


「うん。美味しいよ」

「そう? 良かった~」


 アリシアは俺よりちょっと上に見える。ちょっとだけお姉さんという感じだ。


「そういえばアリシアって何歳なの?」

「リョウタは?」

「俺は17だよ」

「あ~私は19なんだ」


 少し残念そうに答える。


「なんで? 19ダメなの?」

「やっぱり男って自分より若い人のほうが良いんじゃないの?」


 若い人のほうが良い?


「それって好み的なアレ?」

「うん」


 少し考えてみる。おキツネ様は若く見える。けど実際は数千歳だったっけか……?


「まあそういう人もいるかもしれないけど、俺は……全然そんなのないよ。ははは」

「ホント?」

「ああ、ないない。ないよ。全然上でも大丈夫だよ」


 頑張って言ってみる。


「そ、そう。良かった」


 アリシアがなぜか上機嫌になる。ふと外を見るともう夕方だった。


「もう夕方なのか。大分寝ちゃったみたいだ。熱っぽいのもほとんどとれたみたいだ」

「リョウタは疲れてたんだよ。まだ気をつけたほうが良いよ」

「別に疲れてなんか」

「ううん。異世界日本とここを行ったり来たりしたり、ゴルベールと戦ったり、疲れてたんだよ。さあ横になってて」

「あ、ああ」


 無理やり寝かされる。

 アリシアも俺を見ながら楽しそうにパンやチーズの夕食を食べていた。

 アリシアはまさに日本で言うところの魔法使い。長い赤毛の前髪を額で切りそろえている。後ろ髪は肩より少し下で切りそろえている。


「そういえば、デスマンティスに襲われた時、リョウタが来てくれて助かったわ」

「たまたま、あそこを通ってただけだよ」

「ううん。言葉も通じなくてあの時はちゃんとお礼を言えなかった。本当にありがとうね」


 アリシアはお礼を言ってくれるが、改まった感じではなく楽しげに言ってくれるからこっちも楽しいし気が楽だった。


 他にもあの冒険の話を色々してくれた。


「私のゾンビどうだった?」


 破いた服と相まって妙に色っぽかったとは言い難い。


「面白かったよ」


 と言って笑って誤魔化す。


「なにそれ~」


 そろそろ外は夜の帳が降りようとしていた。

 当たり前か。起きた時は夕方だったんだから。そういえば……。


「そういえばリリスは?」


 アリシアの笑顔が固まる。げっそういえばリリスと一緒に住んでいることは隠していたんだ。

 むしろ風邪をひいている俺がここで寝てたほうがおかしいんだよ。


「リリスちゃんは今日は来ないよ」


 へ? リリスが来ない?

 ここはリリス(と俺)の家なんだが。


「今日は私の順番だからね」


 順番? そういえば前も順番とか誰かが言ってた気がしたけどいつだっけ。


明日も12時投稿を予定しています。

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