19 田中さんの家
田中のオジサンの家は街にある神社に併設していて滅茶苦茶大きかった。
ちなみにその神社は山の中の神社の百倍は立派だった。
巫女さんや神職さんも沢山いる。
さっきの田中さんの口ぶりからすれば何社の宮司をしている。家が大きいのも当たり前かもしれない。
「さあ。上がって上がって。娘もそろそろ部活から帰ってくるかもしれないよ」
家は和風なのかと思ったらなかは洋室も多いようだ。
壁掛けの時刻は17:30を示していた。確かに田中……いやアオイがそろそろ帰ってくるかもしれない。
しかし、あのアオイが学校に来なくなった俺を心配してくれていたとは。意外だな。
「客室はどこを使ってもらおうかなあ?」
「そんなにあるんですか?」
「うん。使ってない部屋が、まだ5個ぐらいはあるかな」
「……」
宗教法人って儲かるんだな。
「ワシの部屋もあるんじゃぞ」
「おキツネ様……田中さんの家じゃないですか」
「ハッハッハ。いいんだよ。いいんだよ。この家だっておキツネ様に儲けさせて貰って建てたようなもんだからね」
神職の人にしては生臭い会話だった。
「とりあえず居間にいくかね。お茶をだすよ」
「ありがとうございます」
俺は居間の立派なソファーに座ってお茶を待つ。
「ただいまー」
「あっおかえりー」
げっ。アオイが帰ってきた。実を言うと俺はアオイが苦手だった。身長170ぐらいあるスラっとした長身の女なんだが、クラス委員長ということもあって俺はなにかとアオイから注意をされていた。
美人と言われていて、まあ俺もそれはそう思うけど……キツイ女の子ですぐに怒る。
一度なんか女子の体育の授業を眺めていただけで、衆人の前で注意されて頭を叩かれた。
なんか俺だけ目の敵にされていたような気がする。まあ赤点をとると怒りながら勉強を教えてくれたりもするから悪いやつじゃないんだろうけど。
「おとーさん。玄関に靴があったけどお客さん来てるのっ……」
アオイが居間に入って来た。俺と顔があう。
俺もアオイも膠着してしまったが、わずかにこちらのほうがリアクションが早かった。
「よっよう……久しぶり……」
俺はちゃんと挨拶したつもりだったが……。
アオイはバタンと勢い良く居間の扉をしめた。走り去る音が聞こえる。
足音からするに二階に上がったんだろうか?
田中さんが呼びかける。
「お、おい。アオイ! アオイー……うーん。ちょっと娘のところにいってくるよ。どうしたんだろうね?」
こっちが聞きたい。怖かった。
オジサンはしばらくすると居間に戻ってきた。
「うーん。なんか調子が悪いみたいだよ。まあ挨拶はいつでもできるだろう。これから一緒に住むんだから」
うーん。本当に住まわせて貰って良いんだろうか。
それに開拓村に一緒に住もうというアリシアやメアリーの提案もある。
「好きな部屋を自由に使ってよ。法的な手続きとかは私がちゃんとするからね」
「あ……いや……でもぉ……」
俺が逡巡しているとおキツネ様が俺の腕をとる。
「ワシが家を案内してやるのじゃ!」
「それがいい。おキツネ様に案内してもらいなさい」
「え? え? え?」
俺はおキツネ様に案内されて田中さんの家の客間を回る。どの部屋も大きく机やベッドやエアコンが完備されていた。
「ホテル並みだな……どこでも十分すぎるよ。一番小さい部屋でいい」
「なんでじゃ。ワシは一番大きい部屋を使っておるから一緒に使ってやっても良いぞ。ベッドもこーんな大きいから一緒に寝てやるぞ」
その提案は断り難い魅惑の響きがあった。
しかし、この家にはアオイがいる。そんなことをしたら寝ていた枕で「この変態」とアオイに百叩きにされてしまうことだろう。
そういえばアオイは俺を主人公にWEB小説を書いているらしいな。
すぐ俺の行動にスケベと言ってくるアオイのことだ。きっとど変態に書かれているに違いない。
一階はほとんど全て回った。二階に上がって客室を回る。
「ほ~ワシが使っている部屋よりは小さいが、ベッドの大きさはワシの部屋よりも大きそうじゃな」
本当に大きい。キングサイズとかいうやつかもしれない。外国映画とかで出てきそうなやつだ。
「リョウタ、ここにするんじゃ。夜はワシが来て一緒に寝てやるわ」
「マジっすか! モフモフしてもいい!?」
「たまにならよいぞ」
おキツネ様の部屋に一緒に住んだらアオイに当然知られてしまうけど、夜におキツネ様がこっそりこっちに来てくれるならバレないかもしれない!
「へ~私の部屋の隣の部屋がうるさかったから来たんだけど楽しそうね」
険のある声が後ろから聞こえてくる。
振り向くとアオイが立っていた。その後ろは部屋のドアが閉じられずに開いていた。入った時に開けっ放しだったのだ。
だからアオイが入って来ても気がつかなかった。
おキツネ様はベッドに腰掛けて楽しそうにポヨンポヨンしている。
「お~アオイ。体調は大丈夫なのか? 夜になったらお前も来るといい。三人で寝るのじゃ」
「来ません!」
アオイはまた扉をしめて出ていった。今度は一階に降りたようだ。
やっぱ開拓村か魔王国に住もうかなと思いながら、俺はおキツネ様とポヨンポヨンし続けた。
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