表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/40

13 お風呂場では鈴に注意

 ボンテージファッション風のハイレグ黒革の美少女と二人っきりになったことをつい意識してしまう。

 おキツネ様の鈴を手に持っていたら確実に罵詈雑言の嵐だろう。

 

「あの……話って?」


 魔族の国のこれからの治め方の話か、人間の国との外交関係の話か。

 俺はそう思っていたが魔王は俺の側につつつと寄ってきた。なにか話そうとしたら抱きつかれて口を口で塞がれてしまった。

 息継ぎの間に止めようとした。


「ちょっちょっと!」

「……魔族は気持ち悪いですか?」

「いや気持ち悪いなんてことはないよ。というかむしろ気持ちいいよ」

「嘘でも嬉しい……なら五分間だけこのままで」


 嘘なんて、と言おうとしたが、魔王は俺の胸で泣いていた。強く抱きしめられたりキスをされたりした。

 俺は優しくそれに反応を返したが、魔王の様子がどこか気になった。


◆◆◆


 コンコン。


 五分、いやもう少ししただろうか。ドアから遠慮がちなノックの音がした。少女は俺の口から口を離し、口元と目元を拭って取り繕った。

 赤い目は隠せていない。


「はい」


 と、魔王はドアに返事をする。


「もう入ってもいい?」

「どうぞ」


 二人はゆっくりとドアの開けて部屋に入って来た。

 四人の間に沈黙が流れた。俺もなにを言って良いのかわからない。アリシアが口火を切る。


「それで魔王さん、私たち人間としては要求があるんだよ」


 アリシアは言い方がキツすぎるのではないかと俺が思っていると、魔王がニッコリと笑って言った。


「わかってます。私の命ですよね」

「いっ!? なんで?」


 俺は魔王の命をとろうとなど考えてもいなかった。

 だが、その言葉に驚いたのは俺だけで、アリシアとメアリーは驚かなかったようだようだ。


「きっと皆様はご家族や大切な人を魔物に殺されたりしていることでしょう」


 そう言われればそうだ……異世界人の俺にはそんな経験はしていないけれどもアリシアやメアリーは。


「私が勇者に倒されなければ決着にならないでしょう」


 そう言って魔王は跪いて目を閉じた。

 魔王を倒す勇者って俺のことだよな。出来るわけ無いと思ったがアリシアとメアリーの目は充血していた。メアリーは魔物に殺された家族を思っているのかもしれない。

 アリシアが聞いた。


「本当にいいのね」

「最後に良い思い出もできました。お願いします」


 良い思い出ってアレかよ。もっとたくさんしてーよ。

 でもダメなのかな。これが決着ってやつなのかもしれない。


「そう。覚悟はできているってわけね。私の魔法攻撃力じゃきっとダメだからリョウタお願いね」


 俺は震える足で魔王の背後に立つ。

 575の真名まなの組み合わせを考えようとするが、思いつかない。


「……できないよ」


 こんな小さな少女を殺すのか? 確かに罪はある。部下の暴走を止められなかった。それは長たる魔王の責任だ。

 魔王はそれを言った。


「ゴルベールの罪はそれを止められなかった私の罪です。それで多くの人が死にました……早く殺して……私もいつまでも気丈では居られないかもしれない……」


 俺は魔王を一撃で殺すだろう575の真名の組み合わせを思いつく。

 その時だった。スライムのメアリーがサササッと魔王の側に走りより、ジャンプして顔にタックルした。


「……え?」


 魔王は唖然とした表情をしている。メアリーは涙声で叫んだ。


「殺せなんて言うな!」

「どうして……私を助けるの? 憎くないの?」

「憎いし、アンタを助けたわけじゃない!」


 ならどうして? と俺は思う。魔王も同じだったようだ。


「なら……」

「確かにアナタを殺せば、私の旅は万々歳だよ! でもアナタが死んだらリョウタが傷つくでしょ!!!」


 魔王が俺を見て


「嘘……私が殺されたら傷つくんですか……?」


 とつぶやく。俺も魔王の目を少しだけ見て言った。

 

「傷つかないはずないだろ。殺すなんてさ……」


 もちろん本音だった。


「ましてやそのリョウタに殺させるなんてひどすぎるよ……ぅぅぅ」


 そう言ってメアリーはワンワンと泣き出した。

 アリシアも涙声を出す。


「まあ魔王が死んでも魔物は残るんだから、魔王が生きて統率していてくれてたほうが助かるんじゃないかしら。だからアナタお願いね。私たちも手伝うから」


 魔王はそれを聞いて泣きながらコクコクとうなずいた。


「アリシア。最初からそういうつもりだったんだろ?」

「そーよ。これじゃ私だけ悪者みたいじゃない」


 そういうとアリシアは泣きながら笑った。魔王もゾンビもスライムも人間の俺もみんな笑って泣いた。


 そして魔王の部屋の大きなベッドでもつれあってぐっすりと寝た。


◆◆◆


「良い湯だなあ」


 今、俺は魔王城の浴室にいる。

 魔王はお風呂が好きらしく、城には立派なお風呂があった。


『しかしそんなことがあったのか。まさか魔王が交代していたとはのう』


 おキツネ様が俺の話に感心していた。

 かなり苦労したんだ。もっと感心して欲しい。


『偉い偉い。ワシの依頼を解決してくれたんだ。よくやったぞ』

「しかし神様も大変なんですね。人間の願いを叶えないといけないなんて」

『それが仕事じゃからな。しかも自分では直接干渉することはできないんじゃ』


 ひょっとしたら魔神もそれか。


『うむそうじゃ。それでゴルベールにやらせたんだろう。どこの魔神かしらんがの』

「しかし、おキツネ様はどうして俺にやらせたんですか?」

『お前が神体や鳥居を綺麗にしてくれたからじゃ。だから当面はお前にしか力は注げん』

「良いことしたのに苦労させられて……でもまあ旅は楽しかったかな」


 これはからはしばらくは魔王とアリシアとエミリーで魔王国を平和で良い国にしなければならないのだ。

 魔王のハイレグとアリシアのゾンビ乳とメアリーの破れたタイツから零れそうな乳が頭に浮かぶ。

 

『リョウタは本当に女ったらしじゃな! どうしてこう次から次へと色んな女と!』


 おキツネ様はさっきから一分に一回は怒っている。

 

『お前が一分に一回は女のことを考えるからだろうに!』


 俺は若い男なんだからしょうがない。ぶっちゃけおキツネ様のはかまから出た太ももをイメージすることもできる。

 あんまりうるさいからやってやるぞ。


『ぁぁもぅ……リョウタのエロ……恥ずかしいからやめておくれ……』


 イヒヒヒッ。


『……それからな。タイミングを逃して今言うことになるが、お前が鈴に触れている時はお前の目を通した映像も見えるんじゃぞ』


 え?


『お前がワシの太ももを……思う度に……その……アレがな……! 嬉しくなくもないが……さすがにワシも恥ずかしいわ!』

「うわわわわわわわあああああ!」


 その時、浴室の向こうから魔王の声がした。


「リョウタ様、一緒に入ってもいいでしょうか?」

「いい? っていぃ!?」


 魔王が浴室に入ってくる。

 もちろん今はあのエロいハイレグすら着ていない。


「ちょっちょっと」

「ダメですか? やっぱり魔族は気持ち悪いですか?」

「いやそんなことないけど」

『コラー! リョウター!』


 だって気持ち悪いなんて言えないじゃないか。


「リョウター! 私ゾンビだから一緒に入ってもいいよねー?」


 アリシアまで来た。傷だらけのゾンビなのになにか艶めかしい。もちろんあのボロボロの服すらない裸だ。

 おキツネ様がなにを言ってるかわからないぐらいギャーギャーと文句を言っている。


「あっ先約の魔王様……クジで順番制でしたよね?」


 順番制ってなに?


「リョウタくん。私スライムだから一緒に入っていいよね。私の体に石鹸つけて体洗っていいよ。あっ魔王様……アリシア……」

「アリシアさん、メアリーさん、どうぞご一緒に」

「ヤッター!」


 三人はいつの間にか仲良くなっていたようだ。


『あーまたじゃ! お前はワシ以外の誰で……吐けー!』


 思考が読まれるのだ。隠せるはずがない。全員だった。

 でもちゃんとおキツネ様も入っています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ