愛愛門華蓮
意識を取り戻した永遠は、瞼の向こうに光を感じた。
ゆっくりと目を開ける。
ぼんやりとした視界に映ったのは、真っ白な天井。
知らない天井だった。
ブレザーを脱がされて、永遠はソファーに寝かされていた。
シャツの上から横腹に手を当てる。
痛みはなく、傷はおろか少しの痕すらもない。気を失っていた間に完治したようだ。
ソリテュードの治癒能力の高さに改めて感嘆しつつ、自身の置かれた状況が理解できずに困惑していたときだった。
「気がついたみたいですね」
女性の声。慌てて永遠は上半身を起こした。
永遠の傍らに立っていたのは、宇水にある私立高校のものと思われる制服を着た少女。
おぼろげな永遠の記憶の中にも、彼女の顔は確かにあった。
「あなたは……。それにここは」
「私は白鶴学院高等学校二年の愛愛門華蓮と言います。って、そんなことはどうでもいいですよね」
華蓮はお茶目に舌を出し、胸元からハート形の装飾がついた首飾りを取り出した。
「私はあなたの記憶にある通りハートのQのソリテュード。そしてここは私の家です。気を失ったあなたをあのまま放置しておくことはできなかったから一旦ここへ運ばせてもらいました」
永遠は周囲を見回す。
恐らくはマンションの一室。一通りの家具は揃っているが、それ以外に女の子らしい物は見当たらない、至って殺風景な部屋だった。
華蓮の他に人の気配はない。一人暮らしなのだろうか。
ひとまず他人の家でいつまでも寝転がっているわけにはいかない。そう思って起き上がろうとした永遠を華蓮は制した。
「そのままゆっくりしていてください。今、温かい飲み物を用意しますから」
そうしてキッチンへ向かうと、華蓮は手際よく準備を済ませて今度はプレートを抱えて戻ってくる。
「どうぞ飲んで」
目の前に置かれたカップから甘い香りが漂う。
しかしどうしたものか。
遠慮した永遠が手を出さずにいると、華蓮は悲しそうに眉を下げた。
「あら。ひょっとしてココアは苦手だったんでしょうか」
そんなことはなかった。永遠は甘いものに苦手など一つもない。
「い、いえ。いただきます」
両の手で可愛らしくカップを持って、永遠はホットココアを一口啜る。
優しい甘みと心地よい温かさが喉を落ちて胃の中から永遠の身体を温めてい
く。全身に広がるそれは、やがては永遠の心をも温めてくれるようだった。
「……おいしい」
呟き、永遠はホッと息をつく。
その様子を眺めて。
「よかった」
華蓮は嬉しそうに微笑んだ。
「少しは落ち着けましたか」
「はい」
華蓮の笑みにつられて永遠も笑顔を浮かべながら頷き、しかしハッとしてすぐに頭を下げた。
「あ、あの。さっきは助けてくださってありがとうございました」
華蓮は軽く首を横に振り、一層穏やかな眼差しを永遠に向ける。
「気にしなくていいんですよ。あなたを救うことができて、私自身なによりだったんですから」
なんて良い人なんだろう。
自身を襲った暮乃朱音とは全く違った人種。
大人っぽくて、可憐で、優しくて、まるで女神さまのような人間だと。
永遠はそう思った。
「それに、こんなに可愛い子がいじめられているところを見かけちゃって、助けないわけにはいかないですし」
「か、かわいい……!?」
唐突にそんなことを言われて、永遠は目を丸くしながら頬を紅潮させる。
言われ慣れていない永遠の驚きぶりや恥ずかしがりぶりを見て、華蓮はふふ、と声を漏らす。
「ええ、とっても可愛いです。その制服を見るにあなた、宇水中の子でしょう。一年生ですか?」
「えと、に、二年生です」
「あら、二年生だったんですか。てっきり一年生かと……ごめんなさい。でもやっぱりちっちゃくてとても可愛いですよ」
「ち、ちっちゃくて?」
なるほど、と。
「あー……」
可愛いというのは容姿が美しいことを指すのではなく、この小柄な体格故にまるで小さな子供に見えることを比喩した言葉だったらしいと、永遠はちょっぴりがっかりした。
「あはー……」
落胆を見せぬよう愛想笑いする永遠。
そうとは気づかず微笑み返す華蓮だった。
「ところであなた、ソリテュードになったばかりなんでしょう」と華蓮が訊ねた。
「あっ、はい。実はまだソリテュードになって半月くらいで」
永遠の頷きに、華蓮は「そうなんですね」と相槌を打つ。
そして言った。
「あなたも災難でしたね。ソリテュードになって早々にああいう類の子と出遭ってしまうなんて」
華蓮の言葉を、永遠はそのままに聞き過ごすことができなかった。
思考が巡る。
ああいう類とは、つまり暮乃朱音のようなソリテュードを指すことは分かる。
では彼女から受けた印象といえば何か。
暴力的で、恐ろしくて、そして何より。
ソリテュードを襲うソリテュード。
「えと、あ、あの。あの子、暮乃さんみたいにソリテュードを襲うソリテュードって他にも沢山……いるんですか」
永遠の問いに、華蓮は少しだけ瞳に翳りを落とした。
少しの間、躊躇うような素振りを見せて。
華蓮は小さく頷いた。
「そうですね。沢山います」
一呼吸置き、華蓮はつけ加える。
「実を言えば、私達ソリテュードは暮乃朱音のような種類の人間が大半を占めているんです」
「そん、な……本当なんですか」
永遠は愕然とした気分を味わった。
暮乃朱音のような人物が多勢であるということは。
それはすなわち、ソリテュード同士が戦うのは当然だということ。
自分のような人間はむしろ例外だと、そういうのか。
俯き、顔を上げられない永遠。
「悲しいんですね」
当然だった。
「どうしてあなたは悲しいんですか」
華蓮が問う。
永遠は俯いたまま言葉を零していく。
「だって私達は……ソリテュードは、みんなを守るためにイマーゴと戦う仲間じゃないんですか」
それが永遠の認識だった。
しかし現実は、恐ろしい化け物と戦い、その上で目的を同じにした存在とも戦わなくてはならないというのか。自分達と同じ姿をした人間と。それは一体何故だ。
永遠には理解できなかった。
「仲間、ですか」
華蓮は呟き、天井を見上げる。
何かを考えるような、または何かを思い出しているような眼差しをしばらく浮かべて、やがて華蓮は口を開く。
「あなたは、自分がソリテュードになったきっかけを覚えていますか?」
唐突な問いにきょとんとした顔をする永遠。
予想通りの反応だとでもいうように、華蓮は薄く微笑んだ。
「最近なったんですもの。覚えていますよね」
永遠が答える前に、華蓮は言葉を続けた。
「皆同じなんです。私達は全員、一度死んでソリテュードとして蘇った。私だってそう。かつて私は命を落としました。そしてあの男、ジョーカーによってソリテュードとしての命を与えられることで再びこの世に生を受けたんです」
ソリテュードは、皆が皆一度は死んだ人間である。
すなわち、永遠のみならずに久遠や華蓮、あの暮乃朱音も死を経験した上で生き返った存在だというのか。驚くべき事実だった。
ところが、永遠は怪訝な表情を顔に浮かべる。
確かにソリテュードの事実については興味深いものだった。
しかしその奥、華蓮が何を言いたいのかが見えてこなかったのだ。
華蓮はそれを承知した上で、焦らず静かに語る。
「つまり、誰もが皆なりたくてソリテュードになったわけじゃないってことです。むしろ生き返った代償として嫌々ながら、あるいは恐れを抱きながら皆イマーゴと戦っている」
まだ。まだ話が見えない。
それがどうしてソリテュード同士戦うことに繋がるというのだ。
華蓮の話はまだ続く。
永遠の目の前に、華蓮はどこからともなく取り出したそれを見せた。
「これが何か知っていますか?」
永遠は知っていた。
それは、普通とはちょっと違ったプレイングカード。永遠の持つカードとそっくりな絵の描かれた一枚の絵札だった。
そして、その名称は。
「アニマカルタ、ですよね」
「そう、その通りです。それではこれがどんなことに使えるのかは知っていますか」
それも永遠は曖昧ながらに知っていた。
かつてジョーカーが口にした言葉を、永遠は覚えていたのだ。
「集めていれば何かいいことが起こる、そう聞きました」
「いいこと。確かにいいことです。間違いありません」
次に華蓮が口にした言葉は、永遠に大きな衝撃を与え、驚愕させるに充分な事実であった。
「このアニマカルタを全て、すなわちスペード、ハート、クラブ、ダイヤ各スート十三枚ずつの計五十二枚を集めると――願いが叶うんです」
「願いが、叶う……」
一見すれば単に特殊な絵柄をしただけのトランプが、その実は願いを叶える、つまりは願望を現実にするなどという途方もなく強大な力を持った、まるで魔法か奇跡のような代物である。
「このカードに、そんな力が……」
つい数週間前の永遠ならば腹を抱えて笑っていたに違いない。
しかし今ではあらゆる非日常を目の当たりにし、さらに永遠自身が非現実的な存在だ。
華蓮の言葉を疑いはしなかった。
「そろそろ話が見えてきたんじゃないでしょうか」
言う通り、永遠は彼女の言わんとすることを理解しかけていた。
ソリテュードは皆、生き返った対価としてイマーゴとの戦いを強いられている。
そして全て揃えれば願いが叶うというカードの存在。
「ソリテュードがソリテュードを襲う理由は」
それが指すものは。
「アニマカルタの……奪い合い」
「正解です」
そんな正解、永遠はちっとも嬉しくなかった。
無論、華蓮だってちっとも笑ってはいなかった。
「誰もが皆、心の中ではイマーゴとの戦いを望んではいない。そんな使命からは逃げ出したい。でも、だからこそ私達はイマーゴと戦い、イマーゴを殺すんです。だからこそ私達はソリテュード同士戦い、殺し合い、互いのカードを奪い合うんですよ。いつか全てのアニマカルタを手に入れて、今度こそ普通の女の子として生き返るために」
華蓮は、次の言葉で話を終えた。
「だからソリテュードは皆、独りぼっちなんです」
静寂がリビングごと永遠と華蓮の二人を包む。
永遠の手に握られたままのココアは、もうすっかり冷めてしまっていた。
やがて、カップを満たすチョコレート色に透明な雫が波紋をつくった。
「それって、悲しいですよ。せっかく生き返ることができたのに。命懸けでイマーゴと戦うどころか同じように生き返ることができた人同士で殺し合わなくちゃいけないなんて、そんなのはつら過ぎる」
カップをぎゅっと握り締めながら、永遠はやっと理解していた。
どうして当初の久遠がソリテュードすらも拒んでいたのか。
根本が違った。
ソリテュードだからこそ拒んでいたのだ。
ソリテュードにとってのソリテュードは決して仲間などではなく、アニマカルタを奪い合う敵なのだから。
一粒、また一粒と涙を流す永遠を見て、しかしどこか嬉しそうに、華蓮は優しく微笑みかけた。
「泣かないでください。実は、今話したことにはちょっとだけ嘘も混じっていたんです」
「……え?」
永遠は涙に濡れた顔で華蓮を見上げる。
「ソリテュードが皆独りぼっちだって言うのは嘘。だってあなたみたいにソリテュード同士で殺し合うことを好まないソリテュードは、あなた以外にだっているんですから」
永遠は気づく。
そうだ。全てのソリテュードが敵ではない。
華蓮は言ったじゃないか。大半、だと。
少数派ではあるけれど、確かに戦いをよしとしない人間だっているのだ。
それは例えば。
「カレンさん……」
何も言わず、華蓮は一層の笑みを浮かべた。
「私は願いなんてどうでもいいんです。ううん。どうでもいいわけじゃないんだけど、でもイマーゴとの戦いから逃れるために、そんな理由のためだけに人間同士で殺し合おうだなんて思わない。自分のためだけに他人を不幸にするなんて、そんなのあの化け物達と何も変わらないもの。だから私は、あなたの仲間です」
その言葉が、永遠には心の底から嬉しかった。
少なくとも、自身は目の前の少女に襲われることはなく。
少なくとも、自身は目の前の少女と戦わずとも良いのだと。
華蓮の笑顔は大変に頼もしく、そして心強く。
絶望にも似た気持ちだった永遠は、既に涙を止めていた。
ソファーを立つ華蓮。
そして歩み寄ると、そのまま永遠の前にしゃがみ込んで。
華蓮は永遠の頭にそっと手を置いた。
「だからこれからは、何か困ったことがあればいつでも私を頼ってくださいね。……えっと」
言葉を詰まらせる華蓮。
涙を拭き、永遠はすかさず口を開く。
「……と、永遠。木崎永遠ですっ」
永遠の言葉を聞き。
華蓮はまた嬉しそうに微笑んだ。
「これからよろしくお願いしますね、木崎さん」
そう言って撫でられた頭に心地よさを感じながら。
そして喜びを胸に抱きながら。
幼い子供のように顔を綻ばせて、大きく永遠は頷いた。
「――はいっ。カレンさん」
「ここまでで大丈夫です」
自宅近くの道に永遠と華蓮は立っていた。
帰りにまた他のソリテュードに襲われては危ないと、華蓮が永遠の見送りを申し出てくれたのだ。最初は断った永遠だったが、「お姉さんに面倒を見させなさい」との華蓮の言葉に、最後は甘えることにしたのだった。
「本当に大丈夫ですか? 家の前まで送ったって私は全然構わないんですよ」
心配そうに胸の前で手を握る華蓮に永遠は笑顔を模ってみせる。
「本当に大丈夫ですから。あんまり送ってもらっちゃうと、今度は私がカレンさんのこと心配しちゃいます」
「そんな心配なんて要らないんですよ。こう見えても私、ソリテュードの中じゃ強い方なんですから」
そう言ってちからこぶを作って見せる華蓮に子供っぽい可愛らしさが垣間見えて、永遠は口許に手を当てて笑いを零した。
しばらくして、華蓮は腕を下げる。
「でもそうですね。木崎さんが大丈夫だっておっしゃるのなら、ここまでしておきましょうか」
「はい。今日は本当にありがとうございました」
ぺこりと永遠にお辞儀されて、華蓮はちょっと照れくさそうに胸の前で手を振った。
「いいんですよ。私だって、可愛い仲間ができて今日はとっても嬉しかったです」
仲間というワードに、永遠の笑顔はより明るさを増す。
今宵の満月にも負けないくらい明るく笑えていると、永遠は自分でも思った。
「それじゃあお休みなさい、カレンさん」
「ええ。お休みなさい、木崎さん。今度はお茶でも飲みながら、ゆっくり楽しいお話をしましょうね」
「はいっ。街中の静かなお店なんかで是非とも」
そんな、まるで友達のような約束を交わして。
華蓮に見送られながら永遠はその場を後にした。
自宅までのそう遠くはない夜道を一人歩きつつ、永遠はふふ、と声を漏らす。
命の危機に晒されたり、つらい事実も知らされたりしたけれど、結果として悪い一日ではなかったと永遠は思う。
一人の仲間ができたことが、素直に永遠は嬉しかった。
悲しいことがあってもそれに心を押し潰されることなく、嬉しいことを嬉しいと思えるのは永遠の良いところだった。
「おやおや。何やら楽しそうですね」
唐突に男の声。
一人だと思っていたのに、急に背後で声がしたものだからびっくりして肩を跳ね上げる永遠。
心臓をバクバクいわせながら振り向いた永遠は声の主を確認し、少しほっとしながら、けれど困ったように眉を下げながら息をついた。
「……ジョーカー。あなただったのね。もう、いい加減に突然出てくるのはやめてよ」
「これはこれは。大変失礼致しました」
まるでそんな気を感じさせない、ニタついた声での口先だけの謝罪に少しばかり不満を持つ永遠だったが、会うなり文句を言うのも何なので黙っておいた。
永遠の二歩ほど後ろをジョーカーはついてくる。
「愛愛門華蓮さんから色々とお話を聞かれたようですが」
当たり前のようにジョーカーは言う。
まったく、この男には常に監視されているような感覚を覚える永遠だった。
「聞いたよ。ソリテュード同士があまり仲良くできてないってこと」
「それにしては随分と上機嫌のようですね」
「そんなんじゃないよ。でもカレンさんとは仲良くなれたから。それが私は嬉しいの」
顔を上げる永遠。
夜空からは、より輝きを増した満月が永遠を見下ろしていた。
ぽつりと永遠は呟く。
「これでカレンさんが私とだけじゃなくて、叶世さんとも仲良くなれたらいいのになあ」
先ほど華蓮は冗談っぽく言っていたが、実際に彼女の腕は相当なものだろうと永遠は思っていた。
永遠を襲った暮乃朱音は、決して弱くはなかった。本気になれなかったとはいえスピードに特化した永遠を上回る俊敏性を見せたのだ。加えて数多の攻撃のどれもががむしゃらなものではなく的確に急所を狙っていた。弱いどころか、むしろ強い部類にすら入るのではなかろうか。
その彼女を退けた華蓮の強さは、きっと生半可なものではないはずだ。
「そうしたらきっともっとイマーゴとの戦いも楽になるし、今探してる強いイマーゴと戦うときも、カレンさんがいてくれればとっても心強いと思うんだけど」
そんな彼女が久遠とも打ち解け、共に戦えるようになれば対イマーゴにおける戦闘の際に生じる危険度も下がるだろう。
そしてなにより、多くのソリテュード達が願いを叶えるため争うのだとしても、自分達はそうはありたくなかった。
たとえ願いを叶える機会を捨てるのだとしても。
普通の女の子に戻るチャンスを逃すのだとしても。
協力してイマーゴを倒して、家族を、友人を、みんなを守りたい。
それができたらなんと喜ばしいことだろうかと、永遠は考えていた。
「くっくく」
「な、なんで笑うのよジョーカー。私変なこと言った?」
少し頬を膨らませながら、永遠は足を止めて振り返る。
「いえいえ」
仮面の上から口許に手を当て、ジョーカーは一つ咳払いをした。
「無垢な少女というものは、なかなかどうして眺めていると愉快なものです」
「どういうこと?」
「お気になさらず」
ジョーカーが何を言っているのかさっぱり分からない永遠。
しかしこの男の言葉が難解であるのはいつものことだ。
いちいち気にしていてはこちらが疲れるばかりだと、永遠はそれ以上に追及はしなかった。
再び足を動かし始める永遠。
やがて燕尾服の男は静かに語った。
「しかし悲しいかな。その純粋無垢な瞳もやがては……」
その言葉はあまりに小さく、永遠の耳には届かなかった。
「え、なに?」
「何でもありませんよ。それよりほら。急がないと御婆様が心配しておられます」
言われて携帯電話を確認しみれば時刻は午後九時を過ぎていた。
「いけない! 絶対おばあちゃん心配してるよ!」
途中気を失っていたせいで時間感覚に狂いが生じていたらしい。
よく見れば自宅から電話が入っている。祖母で違いはない。
ジョーカーの言葉に対する疑問など一瞬で永遠の頭からは消え去っていた。
既に手遅れ感は否めないものの、永遠は慌てて走り出す。
その背中を、笑う仮面はじっと見つめていたのだった。




