満月の夜は
彼は決まって、満月の夜に消える。
薄暗い部屋から満月を見上げる。まん丸のその月は私をぼんやりと照らし、悩ませ。私の存在をかき消すように月明かりは輪郭を溶かし、空気と混ぜ合わせ、深い青に染めてゆく。
彼はどこへ行ったのだろう?
満月の夜にだけ、消える。
私の恋人。
まさか……
私の脳内に女の人が横切った。
真面目で好青年な彼が、そんなことできるわけ、ない。
無音という冷めた音が私の耳に鳴り響く。車の音も人の声も、こんな夜中じゃなにひとつ聴こえはしない。
ああ、月の光よ、私を導け。
恋人のもとに、導いて。
月の光は私たちを平等に照らす。
グラスの氷がカランと音をたて、弾けた。
読んでくださった方々、ありがとうございます。作者のぬーんです。
短編ということで、とても短い文章でしたが、いかがでしたか?少しでも楽しめていただけたら幸いです。
拙い文ですが、これからも書いていきますのでよろしくお願いします。