質問
6作目です。…恋愛要素どこいった……
「って事なんだけど、仁。お願いしてもいい?」
「ん?何が?」
ヤバイ。全く何も聞いてなかった。
弁当を食べた後だから、眠気に襲われて話も右から左状態だった。
「はぁ……途中から上の空だったから、もしかしたらとは思ってたけど」
「いや、すまん。えーと……佐奈ちゃんが受験なんだよな?」
記憶を頼りに、最低限聞いていたアピールをして怒りを買う事を避ける。
「そこからなのね……」
どうやら、俺が聞いていたのは最初の方だけだったようだ。
「佐奈が今年、受験だから勉強を教えて欲しいのよ」
「お前が教えてあげればいいじゃん」
目の前のこいつ──新垣 美香は、成績優秀者で学年でも上位陣のはずなんだが。なのに、何故俺なんだ?
「私が教えると、お互い集中出来ないのよ」
「あー、女が3人集まれば何とやらか」
「いや、私と佐奈の2人だけだけど……まぁ、あながち間違いでもないか」
まぁ……俺も高校受験程度の勉強なら教えられるが……。
「年頃の男女を同じ部屋に閉じ込めるのはどうかと思う訳なんだ」
「佐奈に手を出したら、あんた死ぬよ」
分かってたさ。
だから、そんな殺気を放つなよ。クラスメイトが俺の周りから離れていくじゃないか。
「はぁ……あんたはそーゆ事をしないと思って頼んでるんだから、自分で自分を貶す事しなくていいよ」
「そりゃ、どーも」
なんか、男として見られてない気もするがこの空気で言う事でもない……か。
「ま、いいよ」
「本当っ!?ありがとう!」
「いや……そんなに喜んで貰えるとは……」
「あ、いや、ごめん」
「どうせ、暇を持て余してるからな」
暇じゃなくても、美香の頼みなら多少は無理もするが……俺も受験の時は世話になったし。
「んーと、ならいつから教えに行けば──」
「今日から頼みたい」
「さいですか……」
まぁ、受験生だもんな。
残り時間もそんなにある訳じゃないし、しょうがないか。
「なら、今日は一緒に帰るか」
「え?」
「『え?』じゃないよ。家に直接行った方が早いだろ」
「そ、そうだけど」
「どうせ、帰るなら1人より2人の方が楽しいしな。あ、他に帰る人がいるなら別に構わな──」
「い、いや!一緒に帰ろう!」
「お、おう……」
当分、放課後の家でゴロゴロする時間はお預けだな。
「んじゃ、放課後に下駄箱でな。ほら、チャイム鳴るから自分の教室に帰れ帰れ」
「あぁ、放課後にな」
なんか……顔が赤かったな。風邪でも引いてるのかな?
「美香の家に上がるのも久しぶりだな」
「あ、あぁ……そうだな」
何故だろう……会話が続かない。
「家、こっちであってるよな?」
「あぁ……大丈夫だ」
「最後に来たのは小学生かな〜。家の場所がうろ覚えなんだよな」
「そ、そうか」
うーん。やっぱり調子でも悪いのか?
ずっと顔が赤いし。
「風邪でも引いたか?」
「な、何を突然」
「いや、静かだし顔も赤いし」
「い、いや、いつも通りだ」
「そうか?」
「そうだ!」
本人が大丈夫って言うなら大丈夫……なんだろうか。
「家に着いたら、大人しくしとけな」
「い、いや。私も佐奈の監視役ぐらいには……」
「ぱっと見具合い悪そうだし、寝てろ」
「い、いやでも……」
手を縦にして、チョップの様な感じで頭に手を置く。
「寝てろ」
「子供扱いして……」
「はいはい、後でな〜」
目的の家に着いたので、話しを終わらせる。
「鍵、あいてるか?」
「もう、佐奈が帰ってると思う。学校でメールしたら『今日は急いで帰るね!』って返って来たし」
「なら、上がらせてもらうわ」
「お、お茶とか出すからリビングに──」
「勉強教えに来たのに、ゆっくりしてどーすんの」
「そ、そうだな……」
やっぱり具合い悪いのか?
「佐奈ちゃんの部屋ってどこ?」
靴を脱ぎながら、そう聞く。
「あぁ、私の部屋の……案内するよ」
「あー……だな。間違ってお前の部屋に入ったら、悪いしな」
スリッパに履き替え、案内してくれると言うので素直に後ろを着いていく。
「そーいや、佐奈ちゃんに会うのはいつぶりだ?」
「さぁ……中学に入ってからは会ってないんじゃない?」
「んー……なら、5〜6年は会ってないのかな」
そう思うと昔が懐かしくなって来るな。
昔は俺と美香と佐奈ちゃんの3人でよく遊んだものだ。
「まぁ……佐奈はちょくちょくあんたの事を見てたらしいけど」
「そうなのか?気付かなかったな」
しょせんは家の中。
話しをしていると、すぐ目的の部屋に到着。
「ちょっと待ってて」
「ん?了解」
何をするのかと思ったら……。
「佐奈ー、いるー?」
ドアをノックする意味あるのか?と思う程、ノックした瞬間にドアを開けてしまった。
佐奈ちゃんの返事も待たずに。
「お、お姉ちゃんっ!……と、五十嵐さんっ!?」
「久しぶり」
俺は手を挙げながら、久しぶりに会う佐奈ちゃんに笑顔を向ける。
「え、ま、まだ私……ふ、服だって」
「ん?別に制服でも俺は気にしないが」
何をそんなにあたふたしているのだろうか。
別に制服なら恥ずかしい事もない気がするが。
「佐奈、諦めなさい」
「お姉ちゃんの意地悪……」
相変わらず2人は仲が宜しいことで。
「さてと、美香は自分の部屋に行ってろ」
「い、いや、だから私も──」
「お姉ちゃんは出てけー」
「くっ……佐奈、覚えてなさいよ!」
「仲が良いのは分かったから」
これじゃ……勉強が始められない……。
「お姉ちゃんの事、好きですか?」
「ん?どうした、急に」
勉強を始めてから、1時間が経った頃、佐奈ちゃんから唐突に質問をされた。
「言葉通りですよ」
「まぁ……ずっと一緒にいるのに、嫌いって事はないな」
「いえ、そーゆ事ではなく……」
「まぁ、好きなんじゃないか」
読みかけの本から目を逸らさず、俺はそう答えた。
「はぁ……これじゃあ、お姉ちゃんも苦労するな……」
それは一体、どーゆ意味でございましょうか佐奈さん。
「ありがとうございました」
「受験に合格してから言ってくれよ」
「そうですね」
そう言い、2人で笑った。
「じゃあ、俺はそろそろ帰るな」
「そうですか?では、また明日もよろしくお願いしますね、先輩」
「おう」
先輩か……中学時代を思い出すな。
「おーい、美香いるかー」
リビングにいた美香を見つけた。
「あ、勉強終わった?」
「佐奈ちゃん、普通に頭良いな」
勉強を教えてたというか、なまけない様に見張ってただけだった気がする。
「あのさ、佐奈ちゃんに『お姉ちゃんの事好きですか?』って聞かれたんだけど、あれ何?」
「なっ!?」
まだ、顔が赤いな。やっぱり、風邪でもあるのかな?
「佐奈のやつ……」
「そんなに怒ってやるなよ。さてと、今日は帰るな」
「え、ご飯食べて行けばいいのに」
「いいっていいって」
「そう……」
そこで、何故シュンとする。
「んじゃ、また明日な」
「う、うん」
そのまま、美香と別れ玄関へと向かう。
「あ、ねぇ仁!」
「どした」
なんだなんだ?急に。
「ありがとう!」
「は?」
「佐奈の事も含めて、ありがとう!」
「お、おぅ……」
「なんだったんだ……」
今日の美香はとことん変だった。
「佐奈ちゃんの質問もイマイチ意味が分からなかったし」
『お姉ちゃんの事好きですか』か……。
まぁ、嫌いじゃない。むしろ好きだ。
そんなの見れば分かる事だと思うんだけどな。
「そーいえば、佐奈ちゃん。どこの高校受けるんだろうな」
長編を書くにあたって、コレを書きたかった……。
長編…書くぞー