自伝の証人
「オレ、将来偉い人になって
自伝書くんだ!」
一体何を思いついたのか、
君が突然楽しそうな顔をして
言ってきた。
自伝…って、なにそれ、意味不明。
っていうか、エッセイじゃなくて
自伝っていうところに
ナルシズムな彼の性格を感じる。
「どんな?ギャグ?
それとも、コメディ?」
「はーぁ?バカにすんなよ!
なんかすげー発明して、
その苦労とか喜びとかを
書き記すんだよ!」
「へぇ…」
でもちょっと思うんだ。
あなたのエッセイ(決してあたしは
自伝とは言わない)、
きっとおもしろいんじゃないかな。
だって君はおもしろいひとだもの。
ちょっとガキだけど、
なんでも楽しいことに
変えちゃうんだから。
あたしにとったら君自体が
なんかすげー発明っていうか。
…なんていったら君は
絶対自惚れるから、言わないけど。
「じゃあそれ、出来上がったら
あたしにも読ませてくれる?」
あたしがほんの冗談のつもりで
尋ねると、彼は真顔で首を傾げた。
「いや。お前は読まなくていーよ」
「な、なんでよう」
あたしには関係ないっていうの?
「だってあれじゃん。
お前は、オレがなんかすげー発明しようと
頑張ってるそばで、影となり日向となり
日々支え続ける役だろ?
ってことは、一部始終ぜーんぶ
見てるんだから別に、
わざわざ読まなくても。」
「あ、そっか」
…って、んんんんん?
それって、どういうこと?