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14、薫の変化

少し期間が空いてしまいましたごめんなさい。

新しいのを投稿してたりしますが、もちろんこちらも投稿するつもりですので宜しくお願いします。


 まず僕は早希ちゃんに昨日の返事をしてきた。

 早希は泣きそうな顔をしていたが、友達でもいいので遊んでくださいと懇願されてしまった。もちろん僕としてはそれは願ったり叶ったりのことだった。

 早希ちゃんのことはむしろ好きだったりする。もちろん友達として……なんだけどね。 

 一度決心してしまえばこんなにも簡単なことだったのか。

 僕の心は羽根のように軽くなっていた。

 恋人といっても何かが変わるわけでもなく、今までどおりの生活をしてればいいんだ  僕はそう思っていた。


 しかしこの時から僕達兄妹が保ってきた均衡は、もろくも崩れ去ろうとしていたのである。



 ――――そして今日という日を僕は一生忘れる事はないだろう。



 朝ごはんを済ませたあと、みんなで今日はどうしようかと話あった。

 そして二日目はそれぞれ自由行動にしようということになり、僕たちは4人で行動することとなった。

 メンバーは僕、薫、レン、早希の4人である。ちなみに紀子は今日は彼氏と共に過ごすとか。

 僕は早希ちゃんとは先程和解のやり取りをしていたので、多少の気まずさはあったけどそこはお互い意識しないようにしていた。


 ちなみに本日の行動予定は周辺の探索……もとい散歩ということになった。

 レンは相変わらずの騒がしさで「秘密の洞穴とか探そうぜ」なんて楽しそうな口調で僕たちを引っ張ってくれる。

 早希もレンのことは最初はビクビクしながらあまり近寄らないようにしていたようだけど、害はないことに気がついたのか、距離は離れているが会話くらいはできるようになっていた。

 僕にとってそれは喜ばしいことだった。早希ちゃんには男が苦手という一面を治す手伝いはしたいと思っているし、治してもらいたいとも思っている。

 それは振ってしまった罪悪感とかそういうのではなく、友達としてそれは純粋な気持ちだった。

 レンも早希が男が苦手ということを知っているので、無理に話しかけようと近づいたりせず、適度な距離を取りながら話をふったりしている。さりげない気遣いもできるいい男である。

 普通に女子が好きだったら絶対彼女できるはずなのに……本当に残念な子です。

 

 そんな二人を僕は見守っているのだけれども、そもそも何故僕は前の二人と距離をとってるのかと言うと…………僕の横にはピッタリとくっついている、大きな甘えん坊が一人いた。

 薫がニヤニヤしながら僕に抱きついているのである。

 僕の腕を掴んだり、手を握ってきたり、髪の毛をいじっていたり。

 とにかく、やたらと僕にちょっかいをだしてくるのである。

 

「あのー、薫ちゃん? さっきからどうしたのかな」

「んー、別にー」


 なんとも気のない返事だった。心ここにあらずと言った感じに僕に絡み付いてくるのであった。

 どうしてこうなったのかは言わずもがな、今朝のやり取りのせいだろう。あのあと自然と二人は離れて、そのまま何事もなかったかのように合流したのだ。

 それでも二人の気持ちはお互いわかっており、いつも通りに日々を過ごしていく……そう真琴は思っていた。

 しかし薫は違っていた。露骨に愛情を体で表現してくるその姿は、まるで新婚の夫婦で、周りを気にしないバカップルのように振舞っている。

 普段の薫からは考えられない大胆な行動だった。

 これには僕も戸惑いを隠せない。


 そんな薫に向かって、僕は他の二人に聞こえないように耳打ちをする。

「あのね……そういうのは何て言うか……外ではやめない?」

「なに? そういうのってどういうの? わかんないなぁ」

 薫はニヤニヤしながらさらにきつく腕に絡み付いてくる。

「だから、そういうラブラブしてるのは、ちょっと……」

 僕が恥ずかしがりながらそう言うと、薫はニヤリと笑みをこぼし、

「へー、これラブラブしてたんだね。私は兄妹のスキンシップのつもりだったんだけど、そっかー私たちラブラブなんだぁ、嬉しいなー」


 うっ……僕はどうやらからかわれてるらしい。てか薫ちゃんものすごい上機嫌だからそれはとても嬉しいことなんだけどね。しかし人前でここまでされるのはさすがに抵抗があるというかなんというか……

「あーまた考えごとしてる。いいじゃん、私たちはもうラブラブなんだよ」

 僕の考えを見透かすようにそう言い、そしてそのままレンと早希の目を盗み僕の頬にキスをする。


「ちょ、ちょっと薫ちゃん、見られたらどうすんのさっ」

「別にいいもん、もう開き直った私は最強だよ」


 うん、なにが最強なのかわからないけど本当に開き直ってることは事実みたい。

 実際にこうなった妹は僕には手に負えないことは事実だった。

 子供の頃も振り回されていた気がするが、でもそれはいい方向に振り回されたので感謝しているんだけどね。


 でも今回のはさすがに振り回されるわけにはいかなかった。兄妹で恋人だなんて噂がたってしまったら……


 ――――さらに注目されて遊ばれてしまう!


 それだけはなんとしても避けたい。

 気の弱い僕のことだから学校に行くのが嫌になって、いずれは登校拒否という事態になりかねない……そんなのは嫌だ。


「と、とにかく人前でこういうことは禁止だからねっ!」

「うんー? こういうことってどんなことかなー」

 

 どうやら悪ふざけは続くらしい。さすがに僕もいい加減焦ってきたので口調が厳しくなってしまった。

「いい加減にしないともう知らないからね」

 そう言い放ちプイッとそっぽを向く。


「はーい、ごめんなさい」

 すると妹は素直に僕の体を開放して普通に横に並び歩く。

 もう……ホント僕のことは全てお見通しらしい。かなわないよ。




 ――――僕たちがこっそりとそんな会話をしていたら先頭を歩いてた二人がそれを発見した。

「おいあれみろよ! 海岸沿いに大きな穴が空いてるぞ」

 かなりテンションが上がった感じではしゃいでいる。早希も同じように目を見開いて、

「すごいですよ先輩! きっと隠された財宝とかありますよ」

 早希は目を輝かせて指をさしている。

 いや……さすがに財宝は……でもなんだか嬉しそうだから水はささないでおこう。


 僕たちも二人の視線を追い、早希が指をさす方向に目を向ける。すると一見わかりづらいが洞穴のようなものが確かにそこにあった。

 

「ほんとだすごい! 昨日は全然気が付かなかったよ」

 僕も釣られてテンションが上がる。天然の洞穴なんて男の子のロマンだよね。

「うわぁ、ホントだね。入ってみようか?」

 薫も少しテンションが上がったようで、持ち前の好奇心が抑えられないようだ。

 僕たちは全員一致で洞穴探検をすることにした。


 一度別荘に戻り懐中電灯を手にとった。中を覗いたところ少し暗い部分があり、足元も不安定なので明かりが必要だと判断したのだ。

「よし、この非常用バックを持って行こう。なにがあるかわからないからな」

 レンはそう言うとバックを背負い、頭には電灯をつけどこからどう見ても完全装備である。

「そ、そこまでするの?」

「バカヤロウ! 海を舐めるな! これでも足りないと思ってるくらいなんだぞ! 探検とは生きるか死ぬか、デッドオアラブだ!」

「そ、そっか」

 デッドオアラブって……どうやらレンは生より愛らしい。うん、レンらしいと言えばレンらしいよね。まあいい間違えたんだろうけど。


 準備を整えた僕たちは再び洞穴の入り口へとやってきた。

 昼間だというのに少し進むと真っ暗で、ことわざ通りの一寸先は闇だった。

 レンが先頭を歩き頭のライトと手に持っているライトで足元を照らしながら慎重に進んでいく。

 道という道はなく、岩盤が突き出ている場所が続き、歩きづらいったらありゃしない。正直、洞穴というものを甘くみていた。

 みんなが不安に思ってきたころ、先頭のレンが突然感嘆の声を上げた。

「すげえ……」

「ど、どうしたのさ」

「いや、この先すごいぞ……とにかく行こう」


 みんなレンのその声を聞いて、一斉にその場所にでた。


「うわぁ……」

「すっごーい!」

「……きれい」


 僕たちは見とれてしまった。みんなその場所に立ち尽くし動けずにいる。

 そこは大きな空洞になっており海の水がびっしりと張り巡らしていて、上からは日の光が差し込み、それが水に反射して幻想的な光景を生み出していた。

 

「こんな場所あったんだね、とっても綺麗だ」

 僕は単純だけど思ったままの感想を口にする。

「はい、波で揺れる光がとても神秘的で……」

 早希も続くがそれ以上の言葉がでてこない。


 僕たちはしばらくその光景に見入っていた。それぞれ思い思いに動き、その光景を角度を変え眺めた。

 しばらくすると光が弱まってきた。どうやらその光景が見られるのは太陽が真上にきている少しの時間だけだったようだ。

 僕たちは少し寂しい気持ちもしたけれど、心は高揚し、充実した気分になっていた。しかしそれが僕たちの悲劇を招くとはこの時は全然思っていなかったのであった……

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