第4話 『科学室』
2人はしばらく見つめ合っていた
お互いに目は悲しそうで…
先に沈黙を破ったのは彼女だった
「神崎君……今回は両思いになれたね。」
彼は少し顔をしかめた
「やっぱ…見てたんだ…」
彼女は少し顔が強張った
「ぅん…聞くつもりじゃなかったんだけど…ごめん…」
また沈黙が続く
次に沈黙を破ったのは彼だった
「福留!!あのさ、俺…」
しかし彼女の言葉に彼は止まった
「わ…私…神崎君に謝りたいことがある…」
彼は不思議そうな顔で彼女を見つめる
「あのね…本当はいっつも、思ってたの。」
真剣な顔で彼女の話を聞く
「神崎君に好きな人が出来る度、上手くいかなければいいって…」
「………」
「最悪だよね…本当…」
「福留…」
「それに!!……嘘だったの。」
「なにが…?」
「恋の話に興味があるってこと…
ただ神崎君と話すきっかけが欲しかっただけなんだ…」
彼は彼女をじっとみつめた
「私…」
「福留!!」
彼女はビックリして目を見開いた
「俺も福留に謝らなきゃいけないんだ…聞いて。」
「……うん。」
彼は一呼吸置いて話し始めた
「俺、福留に今まで嘘しかついてなかった。」
「ぇ……」
「俺、一週間に一度『科学室』に来ては、嘘を言ってた。」
「どういうこと…?」
「毎回毎回好きな人が出来たって言ってただろ?ぁれは嘘なんだ。」
彼女は彼を怪訝な目で見つめた
「絶対俺のことなんか好きにならないだろうっていう人を出して
好きになったなんてこと言ってた。」
「じゃぁ…辻川さんの気持ちを踏みにじってたの?」
「まさか好きになってくれてるなんて思わなかったんだよ。」
「でもそんなの酷いよ!!」
「だけど俺本当は…福留が好きだったから!!!…」
「!!!」
「ゴメン…好きな奴に嘘しか言ってなかったなんて…」
「嘘…嘘つかないで…」
「これは嘘じゃない!もぅ福留に嘘はつかないから!!」
「だって…」
「福留を、ここで初めて見たときから惹かれてたんだ…
福留…名前しか教えてくれなくて…もっと喋りたいと思って…」
彼女の目からは涙がこぼれていた
「恋の話が好きって言うから…必死になってた。ゴメン…」
「……私が悪い…」
震えた声で彼女は言った
「なんで?」
「私の嘘が、神崎君の嘘を招いて…私達すれ違って…」
「………それは……」
「ごめんなさい…」
彼は少し微笑んだ
「謝ってばっかりだね…俺たち。」
「…あ。」
「俺、福留から本当の気持ち聞きたい。」
彼女は顔を真っ赤にした
「私…私ね……」
「うん。」
明らかに彼は彼女の言うことを分かっていた
「神崎君のことずっと好きだった!!」
彼は笑った
「うん。俺も。」
彼女も笑った
「バカだね。俺たち。」
「うん。相当だよね。」
2人は窓の外を見ながらいつまでも笑っていた
結局辻川さんが可哀相で終わってしまいました…すいません。




