#1.始まりの歌
#1はプロローグになっています。短いですが読んでみてください。
「あぁっ!彼女欲しい!」
「俺も!」
何気ない高校生の嘆き。
一学期の終業式の帰りだった。
主人公、滝田 俊【たきだ しゅん】は、市立尼之崎工業に通う一年生。
その横にいるのが滝田の小学校の時からの連れ、池波 雅樹【いけなみ まさき】この炎天下の中、二人は周りの目をかえりみず大声で叫んでいた。
「あー…マジで彼女ほしぃ…」
学校からJR尼之崎駅までは徒歩15分。
二人はそれしか言わなかった。そして駅横広場のベンチに腰掛け一服する。
「フーッ…セッタうめー」
座るやいなや滝田はセブンスターを吸いだす。
「あーあ…知ってるか池波…」
「何を?」
「真木もうヤッたらしいぞ…」
池波は一瞬止まった。
「……うぇあ!?マジで!?」
真木とは2人の中学の同級生である。
「俺らまだ15、6の若僧だぞ?ヤッちまっていいのかよ!」
「池波…もし目の前に股開いてカモーンしてる女子高生がいたらどうする?」
「はっ!飛込むであります隊長!」
「だろ?ってことは15、6でもヤッちゃっていいんだよ…」
「とりあえず18までには終わらせてーな」
「まーなー」
当時の自分はこんな馬鹿だったのかと書いていて少し悲しくなった。
「うちの学校の女子の人数数えてみろよ」
「えーと……いち…にぃ…」
池波は数えるうちに落ち込む。「一年生4人…絶望的数字だ…」
そう、工業高校ということでこの学校には一年は4人しか女子がいない。男子150人に対して。
単純に考えても146人は余る。
もう外で彼女を作るしかないという答えがおのずと出るのだった。
「っつーことで明日お前の家で作戦会議な」
滝田の目は真剣だった。
「お待ちしております」
無論、池波も。