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ユニヴァース  作者: クモガミ
二人の再会
99/125

デジャヴ

気を取り直して戦闘の続きを始めることにした二人は武器を構え直して、お互い相手の出方を伺う。

一方でカレンと金髪の少女と同じように『爆弾石(ばくだんせき)』の爆発で意識を削がれ、戦闘を中断していたミツルギとボスも向こうの二人に合わせて、戦闘を再開しようとする。

「流石にさっきのはヒヤッとしたぜ! 全く、イカレてるのかあの小僧は!?」

その発言に対してミツルギはボスを睨み付け、

「……訂正してもらうか、盗賊。カレンは少し天然なだけだ。決してお前達のようにイカれて等いない!」

「…………なんだと?」

ボスの方もミツルギの発言が聞き捨てならなかったのか、声を低くして睨み返す。

「全く、どうして貴族様って奴はどいつもコイツも勘に障る奴が多いんだろうなッ!!?」

叫びと共にボスは一気に間合いを詰め、斜線を描くようにチェーンソー型の魔装器(まそうぎ)を振り下ろし、ミツルギはそれを両手で持った刀型の魔装器(まそうぎ)で受け止める。

二人の武器が接触した瞬間、接触箇所から火花が飛び散り、甲高い金属音が鳴り響く。

だがその直後、ミツルギは即座に刀の切っ先を下へ傾けさせた。

そうするとチェーンソーが滑り落ちるように刀の刀身に沿って降下し、そのまま床に着地する。

「!!」

同時にチェーンソーが床に着いたことでボスの上半身も下へ傾き、身体が前のめりになった。

ボスは自分の攻撃が受け流されたと悟った瞬間、ミツルギが身体を一回転させ、刀をフルスィングのような振り方で斬撃を放つ。

ダンッ!とボスは咄嗟に地面を力強く蹴ってバックステップを行うと共に上半身を起こしてミツルギから離れる。

標的が緊急回避したので、フルスィングした刀は虚しくも空を切り裂く。

後方へ約10m程下がったボスは自分の胸元を一瞥する。

すると上着の胸元の辺りがハラリと切り裂かれていた。

どうやらミツルギが放った斬撃はボスの上着には当たっていたようだ。

それを見てボスは傷を負わなかったのに忌々しそうに舌打ちをする。

「(まただ! くそぅ……野郎、どういった能力を使ってやがる!?)」

『雷の衣』を纏った自分をこうも簡単に斬ることが出来るミツルギの魔装器(まそうぎ)の能力がどうゆう効果なのか。

未だに分からずいる為、どう対処するかボスは悩んでいるようだ。

「(衣をすり抜けて俺の身体に触れているように見えなかった、刀は『雷の衣』でちゃんと防いでいるのに何故斬れるんだ? )」

斬られる瞬間を見ても、『雷の衣』は確かに刀の斬撃を防いでいるのにも関わらず、自分の身体が斬られるという不可解な現象が起こっており、ボスはその謎を見抜けず、焦りを感じ始める。

「(不味いぞ……こっちは相手に傷を負わすことは出来ないのに相手はこっちに傷を負わすことが出来るなんてよ。本当なら近付づかないで遠距離から攻撃したいが、俺以上に速く動けるあの小僧には通用しないだろう。それにもう『力のマナ』を3分の1ぐらいまで使っちまった、早くあの小僧の『マナ』を使い果たさねぇとこっちが先にやられちまう)」

お互い魔装器(まそうぎ)の能力で身体を守っている者同士、どちらかの『マナ』が早く尽きれば、能力の使用は続行出来ず、相手の身を守る物が無くなれば、相手を倒すことが出来る。

だからボスはミツルギに攻撃し、能力の使用で『マナ』を使い果たせるのが狙いだった。

しかし、ミツルギにはボスに『雷の衣』が身に纏っていても刀で斬ることができ、接近戦を仕掛けるボスにとって厄介なものであった。

遠距離から攻撃を仕掛けてもミツルギには『縮地法(しゅくちほう)』が在るので、ボスは簡単に避けられると予測する。

なので接近戦でしか、ミツルギの『マナ』を減らす方法が無い。

速度的にはミツルギの『縮地法(しゅくちほう)』が速いが『雷の衣』を纏ったボスもそれと同じぐらい速く動けるので対抗出来ない訳じゃない。

だが上記で述べた通り、ミツルギだけがボスにダメージを与えられるので攻勢的にはミツルギの方が有利であった。

しかも、現時点で残りの『力のマナ』が3分の2になったボスに対して、ミツルギはまだ余裕があるのか、涼しい顔をしている。

能力使用には『力のマナ』が必要なのでボスの『マナ』は今現在、刻一刻と減り続ける。

「(一旦『雷の衣』を解くか? ………いやそれは愚作だ)」

『マナ』の節約を考えて『雷の衣』を解くことを考えたボスだったが、すぐさまそれは愚作だと判断する。

防御の要でもあり身体能力の強化の要でもある『雷の衣』を一瞬でも解くことがあれば、ミツルギ程の腕前ならその隙を見逃さず、襲ってくるからだ。

ミツルギの『縮地法(しゅくちほう)』に対抗出来るのは『雷の衣』の力のお陰なので、それを解いた状態ではミツルギの攻撃はかわせない、だからミツルギとの戦いでは『雷の衣』の力は必須条件なのだ。

するとボスは視線を下に落とし、自分の身体を眺める。

自身の身体を眺め始めたボスの身体には至る所に血は出ているが戦闘に支障の無い程度の浅い切り傷が幾つも在った。

その傷は全てミツルギと打ち合っていた最中で負わされた傷。

ミツルギはボスとの打ち合いの中で僅かとは言え、ボスにダメージを与えていたのだ。

「(……悔しいが魔装器(まそうぎ)同士の打ち合いでもあの小僧の方が上、真っ正面から打ち合っていてもやられちまうかもしれねぇ)」

実力面でもミツルギの方が上のようで、『マナ』を尽きさせる為に正面から接近戦を挑み続けても、打ち合いの中でいずれ致命傷を受けて殺られてしまうかもしれないと予測するボス。

そしてボスは視線を上げてミツルギに警戒しながら考え始める。

どうすればミツルギ相手に戦いを有利に進ませるかどうかを。

「!」

すると考え始めてからたった数十秒程度でボスは妙案を思い付く。

――いや、思い付いたと言うより、思い出したと言った方が正しいか。

ボスは自身の魔装器(まそうぎ)を一瞥する

「(そうだ! 俺にはまだ使える能力が有るんだった!)」

ミツルギに対して有効的な能力でもあるのか、ニヤリと笑みを溢すボス。

片やミツルギはボスがイヤらしい笑みを溢すのを見て、怪訝そうな表情を浮かべる。

―――と、その時だった。

ボスの『雷の衣』から透明な何かが放射された。

人の眼で見ないそれはミツルギの眼にも見えなかったが、何か力のようなものを肌で感じる。

その直後、ミツルギの身体が自分の意思とは関係なく、不自然に前へ動きは出した。

「!!」

身体が勝手に動き始めてミツルギは眼を丸くする。

いや、身体が勝手に動き出したというより、身体がある物に引っ張られて動いているのだ。

そのある物とは挙げれば色々あるのだが、その中でもミツルギの身体を引っ張る一番の要因且つ一番目立つ物と言えば、ミツルギの左手に在る物。

そう、それはミツルギの武器、刀型の魔装器(まそうぎ)『ブレイヴ』である。

ミツルギは自身の魔装器(まそうぎ)に引き摺られる形で前方に居るボスの方へ移動してしまう。

迂闊に近付く訳にも武器を手離す訳にもいかないので強力な力で身体を引っ張る魔装器(まそうぎ)を負けんよう、ミツルギも両足で踏ん張って強制移動に抗うがその中でデジャヴを感じる。

つい最近、これと似たような現象を体験したからだ。

それを体験した場所は『白霧山脈(ホワイト・マウンテン)』。

体験する切っ掛けとなったのはそこに住んでいた『古代獣(こだいじゅう)』に遭遇したこと。

持ち物に引っ張られるという現象を引き起こしたのは『奇石』類の『磁力石』による力。

そしてそのデジャヴを感じた直後、ミツルギは確信する。

ボスから放たれている力の正体を。

「〝磁力〟かっ!」

「ご名答、良く分かったなぁ!!」

力の正体を指摘されても隠そうとせず、潔く正解だと叫ぶボス。

これでミツルギの確信は事実に変わる。

『奇跡』類の『磁力石』と同じく盗賊団のボスから強力な磁力が発生しており、その磁力によってミツルギは自分の持ち物を通じて引き寄せられているということを。

ボスから出ている力の正体が分かったことでミツルギはすぐ行動に移る。

古代獣(こだいじゅう)』との戦いで得た経験のお陰でこういう状況になったらどう対処すべきかが分かっており、『縮地法(しゅくちほう)』で自ら接近し、懐まで飛び込む。

そして懐に辿り着くと同時にミツルギは刀の切っ先をボスの胴体に目掛けて突き出す。

―――が。

「!」

刀がボスの数mm手前で停止した。

勿論、止めたのはミツルギ自身では無い。

刀が持ち主の意思に反して、勝手に止まったのだ。

そしてこのような現象もミツルギは知っている。

「…反発!」

「その通り!!」

そう叫ぶとボスはすかさずミツルギの左腕を左手で掴み、続いてミツルギの頭目掛けてチェーンソーを垂直に振り下ろした。


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