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ユニヴァース  作者: クモガミ
二人の再会
93/125

能力

盗賊団のボスの拳が横っ腹にジャストミートしたミツルギは身体がくの字に曲がり、そして砲弾のように下へ急降下し、ロロと金髪の少女が出て来た四階の廊下の壁に激突した。

殴られた威力は凄まじかったようで壁に激突したミツルギは壁を突き破り、更に次の壁を突き破り、連鎖のように壁を突き破り続け、建物内の奥へと消えて行き。

やがて壁が突き破られる音が消えた。

どうやら建物内の何処かで止まったようである。

「「「…………ッ!!」」」

そして今の光景にカレン・ロロ・アイシャの三人は唖然と言葉を失う。

たった一発のパンチで人が砲弾のように吹き飛んだからだ。

そしてカレンは床に着地すると同時に我に戻り、ミツルギが突き破った壁の穴の方へ駆け出す。

いくら人一倍頑丈なミツルギでもあの絶大な威力を持ったパンチをモロに貰っては命に関わると思ったようだ。

やがてボスの方も床に着地する頃にはカレンも穴際に到着し、中を覗くとミツルギが突き破って行った幾つもの壁はまるでトンネルのように穴が続いており、そのトンネルの長さはボスのパンチの破壊力を物語っていた。

「ミツルギ!」

叫ぶようにカレンは呼び掛ける。

だが返事は返って来ず、代わりにカレンの声が山彦のように返って来るだけだった。

その様子が余程滑稽に見えたのか、ボスは高笑いを上げながら話し掛ける。

「無駄だ、無駄! 『雷の衣』を纏った俺のパンチを喰らったんだ。奴はとっくにミンチに―――」

と、ボスが言いかけた時。

トンネルの奥から一本の細長い銀色の柱のような物が飛び出した。

飛び出したその細長い柱は弾丸並みの速さでボスの方へ一直線に伸びて行き、瞬く間にボスの顔に迫る。

すると柱との距離があと数cmのところでボスは持ち前の反射神経で咄嗟に上半身を少しだけ右に傾けた。

その行動のお陰で銀色の柱の先端部分がボスの顔の横を通過し、ボスは串刺しに成らずに済む。

直後に先端部分がボスを通り越すと柱はピタリと伸びが止まる。

最低限の動きで避けたボスは即座に右へ5m程度まで移動し、チラッとトンネルから飛び出して来た細長い銀色の柱の先端部分に視線を向ける。

先端部分は鋭利状に尖っており、しかもその先端部分には血が付着していた。

それを見付けたボスは自分の頬から一筋の血が出ていることに気付く。

ボスの頬に細い一の形をした切り傷が出来ていた。

直撃は免れたがどうやら避ける際にカスっていたようだ。

だがその程度の傷、ボスにとってはどうでもよく。

自分を襲った柱の正体を暴くべく、柱を観察する。

「(あの柱、いや刀か! まさかっ!)」

あの細長い銀色の柱の正体は刀だと確信したボスは切り傷から流れ出ている血を舌で舐め拭きくと今度はトンネルに視線を傾ける。

するとボスが視線をトンネルに向けたのを合わせたかのように柱が縮んでいき、トンネルの奥の方へ戻って行った。

そしてその直後に突然トンネルの前に一人の少年が出現する。

突然その少年が眼前に現れてカレンは眼を見開いて驚くが、すぐその少年の顔を見て苦笑を浮かべる。

「無事ならちゃんと返事してよ、ミツルギ」

「済まない、少し頭に血が昇っていたようだ」

バツが悪そうに指で頬を掻きながら謝罪するミツルギ。

あれだけ盛大に吹き飛び、幾つもの壁を突き破ったのにも関わらず、ミツルギの身体には傷一つ付いていなかった。

その様子にボスは顔をしかめる。

「(ケロッとしてやがる、馬鹿な! 『雷の衣』を纏った状態の俺のパンチを喰らって、何で無傷なんだあの野郎!?)」

自身のパンチをモロに喰らっても傷一つ付いていないミツルギにボスは疑問を抱く。

何故、無傷で済んだのか?

その秘密を探すべくボスはミツルギに対して再度観察を行う。

するとボスの目線がミツルギの左手が持っている刀に止まる。

「(あの伸びる刀……ん? 伸びる? …まさかあの刀!)」

ミツルギの刀の正体を察したボスは率直に尋ねる。

「その刀、もしかすると魔装器(まそうぎ)か?」

「む? その通りだが」

ミツルギは刀を軽く掲げて、あっさりと答える。

「……やはりそうか、謎が解けたぞ」

ストレートな返答によって頭の中の憶測が確信に変わり、ボスの口元が笑う。

そしてミツルギに向けて人差し指を突き刺し。

「よもやそこの獲物(こぞう)以外にも魔装器(まそうぎ)使いが居たとは驚きだ。だがこれで納得した! テメェも魔装器(まそうぎ)使いなら、俺の攻撃を喰らっても何故無傷なのかは何となく想像がつく!」

と言ってボスはミツルギに刺し向けていた人差し指を刀に向き変え、どうしてミツルギは怪我を負わないのか。

その訳の核心を指摘する。

「テメェがフェンスに衝突しても俺のパンチを喰らっても怪我を負わないのは俺と同じ、〝魔装器(まそうぎ)特有の能力〟のお陰だ。そうだろ?」

「………能力?」

ボスの言葉を聞いてカレンは首を傾げ、ミツルギに眼を向ける。

ミツルギや盗賊団のボスと同じ魔装器(まそうぎ)使いであるカレンだが、ついこの間魔装器(まそうぎ)の存在を知ったばかりの人間なので、魔装器(まそうぎ)に対しての知識に乏しいカレンはボスの言う、魔装器(まそうぎ)特有の能力が一体何なのか。

分からないでいた。

だからこそカレンはミツルギに尋ねる。

「ねぇミツルギ、能力って何?」

とカレンは尋ねた直後、ズドドっと何人かがズッコケる音が響く。

ズッコケたのはボスと三人組の盗賊、そして金髪の少女だった。

周りのその反応に対し、ロロとアイシャはカレンのああいう所にもう慣れたのか、『またか』と呆れの表情を浮かべる。

そして話を振られたミツルギは驚きや呆れを隠せない周りとは一味違って、異質的に呆れ等の表情は一切出さず、淡々と説明を開始する。

「能力とは魔装器(まそうぎ)に『力のマナ』を送ることで発動する、魔装器(まそうぎ)特有の不思議な力のことさ。『リア・カンス』で言ったと思うがこの力が魔装器(まそうぎ)が強力な武器であると認識されている一番の要因でもあるんだ」

「じゃあ、僕の魔装器(まそうぎ)にも能力が有るの?」

「勿論有るさ。魔装器(まそうぎ)の種類によって備わっている能力の数は違うが、俺達が持っている『アブソード』型は能力を三つ持っているんだ」

「三つも? そんなに有るんだぁ」

大剣を眺めながら自身の魔装器(まそうぎ)に能力と呼ばれる不思議な力が三つも備わっていることにカレンは関心を抱く。

「ただし、ただ単に魔装器(まそうぎ)に『マナ』を送るだけで能力が発動する訳じゃない。能力を発動させる為にはその能力に必要な属性を持ち主が持っていなければならないんだ」

「必要な属性? 魔装器(まそうぎ)の能力も魔法みたいに属性があるの?」

「そう、例えばあのボスが身に纏っている電気を帯びた衣のような物」

例えとしてミツルギはボスが纏っている『雷の衣』に人差し指を指す。

「あれは見た目からにして間違いなく〝雷〟属性の能力。雷属性の能力を発動させる為には使い手が〝雷〟属性を持っている必要がある。つまり〝雷〟属性の能力を発動させているボスは〝雷〟属性を持っていることになる」

「ということは魔法と同じく、使い手が必要な属性を持っていなければ、使いたい能力は使えないってことなんだね」

「そういうことだ。まぁ魔装器(まそうぎ)に選ばれた人間がその魔装器(まそうぎ)の能力に必要な属性を持っていないってことは滅多に無いんだかな」

とコメントを残したところで、ミツルギは魔装器の能力についての説明を終える。

「し、信じられない……あいつ、私達と同じ魔装器(まそうぎ)使いなのに魔装器(まそうぎ)のこと、何にも知らないの? しかも基本的な知識まで」

床に這いつくばった状態で様子を眺めていた金髪の少女はカレンの無知さに驚愕する。

カレンが抱えている事情を知らない人にとっては驚くのも無理もない。

その事をフォローしようとロロは。

「まぁアイツの場合、知らないのは仕方がないんだよ。ちょっとした事情があるからな」

「事情? 何よそれ?」

「いやぁ実はなーーー」

「だぁはっはっはっはっはーーーーーーーッ!!」

事情を話そうとしたロロだったが突如大声で笑い出したボスの笑い声に遮られた。



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