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ユニヴァース  作者: クモガミ
始まりの一日
9/125

遭遇

地面を這いずって歩くような物音を発しながら、暗い通路を小さな影達は進んでいく。

「ワル!」

「!」

その声はゆっくりとカレン達の方にに近付き、そして、カレン達が暗闇の中でやっと見える程度の距離からその姿を露になる。

「こいつらが………魔物だ………」

「これが………」

カレン達の目の前に現れた存在は人々から魔物と言われている存在で、その魔物の姿はまるでダンゴみたいな丸状の形でそこに目と口と犬のような耳としましま模様な外見をした、とても動物には見えない生き物がそこに6匹も現れた。

「ワルワル……ワルワル」

独特な鳴き声を放つ魔物はその丸い目でカレン達を睨み、少しずつ距離を詰めていく。

「戦う気かな……? やっぱり?」

「だろうな………」

相手は人の言葉は話さないが、その小さい体から放つ殺気が語っていた。

「………ストライク!!」

カレンは避けられない戦いだと察し、自分の魔装器のコアもといストライクを呼び出し、ガジェッタ―を取り出して、ストライクをガジェッタ―にはめ込む。

                   「REGIレジINイン

声と共にカレンの魔装器まそうぎは形を形成し、盗賊達とロロと戦った時と同じ、ライトピンクな大剣が姿を現す。カレンは剣が現れるとすぐ剣を構え、警戒しながらジリジリと近付く魔物達から目を離さず、意識を集中させ、戦闘の準備を完了させる。

「よ~し……いっちょやるか……」

カレンの後ろに居るロロは肩に掛けてある鞄の中を探り始めた。

「ワルワル!!」

「「「!」」」

魔物達がとうとう動き出し、先手は魔物の中から3匹が突進してきた。

「ワーーール!!」

突進して来た中で先頭にいた一匹の魔物が跳び上がり、口を大きく開けて、そこから外見には似合わない鋭い牙を出し、カレンの頭に向かって正面から食い掛ろうとする。

「ッ!」

飛び上がって正面から襲い掛って来た魔物をカレンは同じく正面から剣を縦に振って打ち払い、魔物の顔面に直撃させる。

「!」

鈍い音ではなく風船が割れたような音を出した魔物は、鳴き声を出せずに勢い良く吹き飛び、暗闇の先に消えて行った。

「「ワルワーーーーール!!」」

「!!」

続いて残りの2匹の魔物が左右からカレンの首の辺りを噛み付こうと跳び掛る。

「「!」」

歯と歯がぶつかり合う音が響く。カレンの首を捉えた魔物2匹であったが、カレンは素早く首と腰を下げて、2匹の襲撃を避ける。

「おお! やるぅ!」

感心したのかロロは歓喜の声を出す。2匹の魔物は攻撃を避けられたため、空中でお互いクロスして左右を入れ替わり、カレンの後方に着地して、カレンはすかさずそこを狙い。

「てぇい!!」

魔物が着地して一旦動けない所を狙って、素早く振り向きカレンは自分から見て左側の魔物に突進する。

「ワル!!!」

剣を横に打ち払い魔物を壁に叩きつけ、壁にめり込ませた。

「ワルワル!!!」

仲間がやられた事に腹を立てた右側に居た魔物はカレンの横から噛み付こうと跳び掛る。

「あぶねぇ!!」

「くっ!」

腕に噛み付こうとした魔物は、距離は近かったものの、ロロの掛け声に反応したカレンが剣を両手で振り上げて、その振り上げた反動のお陰であと一歩で避けられる。

「ワルワル!!」

避けられても素早く振り返って再び噛み付こうと跳び掛る魔物であったが、カレンは瞬時に剣を持ち直し、突進して来た魔物を横にズレテ避ける。

「せいっ!!」

自分の目の前に入って来た魔物を剣で垂直に打ち上げる。

「ワル!!」

打ち上げられた魔物は上の壁に叩き付けられ、2匹目に倒した魔物と同じく壁に深くめり込む。

「ワルワーーーール!!!」

「っ!」

急に魔物の鳴き声がして、顔を左に90度に曲げて後ろを見ると、さっきまで後ろで待機していた残りの3匹の中の1匹がいつの間にかカレンの後ろに迫り、噛み付こうと跳び上がっていた。

「(しまった!!)」

気付くのが遅い上に後ろを取られたカレンは体を動かす事が出来ず、魔物は大きく口を開け、その鋭い牙でカレンの頭を狙って、頭上から迫り来る。

「!!!」

何かが刺さった様な音がカレンの耳に響く、カレンを喰おうと跳び掛った魔物は噛み付く前に顔の中央に何かが刺さり、カレンの目の前で絶命し地面に落ちてしまう。

「………?」

何が起こったか分からないカレンは、魔物に噛み付かれそうになった時、顔の横を何かが通り過ぎた感じがして、その何かが来た方向に視線を向けると。

「へへ………」

そこには、得意げに笑みを浮かべているロロの姿が在り、ロロの手には弓と矢を持っていた。

「君……」

今カレンを噛み付こうとしていた魔物に何かを刺したのは、ロロの放った矢で、ロロは魔物からカレンを守ってくれた。

「ワル……ワル………」

一方魔物は仲間が次々とやられ、残り2匹なって、慌てふためく表情を隠せない魔物達は鳴き声が弱々しくなっていた。

「俺様が居るって事を忘れるな!」

魔物に向かって叫び、弓を構えて標準を合わせるロロは弓糸と矢を引き、魔物の1匹を捉えたらすぐさま矢を放った。

「!!」

放たれた矢はカレンの横を通り過ぎ、真っ直ぐ伸びて1匹の魔物を顔の中央を的確に射抜いた。射抜かれた魔物は避ける事も出来ず、その横にいた魔物はまた仲間がやられて、口を開いて大きく驚く。

「!」

ロロに続いて攻撃を仕掛けようと突進するカレン、魔物は呆気を取られ反応が遅れて為、カレンの素早い接近に容易に間合いを取られ、カレンは魔物の一歩手前で大きく剣を振りかぶり。

「たぁ!!」

「!!!」

剣を下から上へ垂直に打ち払い、魔物は逃げる事も出来ず、そのままモロ顔面に直撃して、また風船の様な音を出して魔物は通路の闇の中に吹き飛んで消えて行ってしまった。

「…………」

辺り見渡し、もう魔物が居ない事や倒した魔物がもう動く事はないと確認したカレンは安堵の息を漏らし、構えを解き、大剣の刃先を地面に着けた。

「ふぅ……」

「まぁ……俺様に掛ればこんなもんだなぁ」

誇らしげに勝利を喜びながらカレンの隣まで来るロロ。

「あれが魔物なんだね………」

「ああ、そうだよ。お前本当に見た事ないのか?」

「………たぶん」

しかめっ面で『おいおい』っと呟き、頭をポリポリと掻くながらカレンをまた呆れたロロの視線はカレンの右手に止まる。

「お前その手……怪我してるじゃないか」

言われて見るとカレンの右手の甲に切れ目が伸びていて、そこから真っ赤な血が溢れて出ていた。

「いつの間に………気が付かなかった」

「最初に突っ込んで来たあの3匹の魔物に付けられたんじゃないか?」

傷を付けられ事を気付かない程、戦いに集中していたカレンはロロの指摘により初めて己の傷を発見した。

「どれ………俺様が治してやるから、見せてみろ」

「えっ? 治すって………どうやって?」

ロロの治すという言葉に疑問を感じたカレンは、ロロに視線を移した。

「いいから、その右手を出してみろって!」

「………」

ロロの言う通りに右手の甲を前に出して、ロロに見せるカレン、するとロロは両手を前に出して、カレンの右手の上で手の平を開いた状態で手を翳した。

「慈悲たる心に、天からの癒しを、今ここに汝に与えん」

目を閉じて何かに祈るように唱えるロロ、その言葉に反応したのか、カレンとロロの周りに複数の白い色の光の珠が現れ、そしてロロとカレンの手と手の間に謎の文字が書かれた白い輪のような円が現れた。

「これは………!」

カレンはあの時、湖で出会った少女が同じような物を出した事を脳裏に思い浮かぶ。

「ヒール!」

「!」

〝まるで何かを呼ぶように〟『ヒール』と叫ぶと、ロロとカレンの手と手の間に在った白い輪のような円が眩い光を放ち、瞬く間にその光は一瞬で消え、白い円も周りに浮かんでいた白い光の珠も消えていた。

「どうだ? 治ったろ?」

「え? あっ!」

右手の甲を見てみると切れ目が無くなり、傷跡も血も綺麗さっぱりに消えていた。

「すごい………………」

何が起こったか分からないが、驚きと感動を覚えたカレンは、治った右手をあらゆる角度から見直した。そんなカレンをロロは。

「お前……まさか魔法も知らないのか………?」

また怪訝そうな顔でカレンを尋ねるロロ。

「(魔法? ………何所かで聞いたような?)」

「魔法ぐらいは知っているよな?」

「………その魔法って言うのは?」

大体予測が着いていたのか、ロロは「やっぱりか」っと呟き、もう溜息など尽きた様な引きついた表情だった。

「魔物を知らない、ストーカーって言葉も知らない、魔法も知らない……お前って一体何なんだ―――…………」

「?」

急に言葉を止め、考え込むように黙り込んだロロ。カレンは急に黙り込んだロロの顔を覗いた。

「まさか……お前………!」

「!」

何かに気付いたのかロロは、カレンに指を指す、カレンはロロの態度に思わず生唾を呑む。

「お前……俺よりも田舎者だなぁ!!」

「えっ?」

何を言い出すかと思いきやロロは見当違いの勘違いをした発言にカレンを唖然とさせる。

「そうかそうか! 俺達の村より田舎だったら仕方ないな!」

一人で妙に納得したロロはカレンを自分よりも田舎者だと勘違いをしていた。

「いや……僕は………」

「そうゆう事なら、お前より何でも知っている俺様が、手取り足取り教えなきゃな!」

天井を見上げて『あっはっはっはっ』とまるで自分が偉いかの様に高笑いし、カレンの声はロロの耳に届いてはいなかった。

「いや……だから……」

「オシ! 俺様は優しいからな! 直々にお前の知らない事を沢山教えてやるから感謝しろよ!」

勝手に話を進めるロロはもうカレンの声など全く耳に入ってはいなかった。

「ん? そういえば、何か忘れているような………?」

そんなカレンをよそに何か重要な事を忘れてかけていたロロは、首をすくめた。

「あっ! そうだ、こんな所に立ち止まっている場合じゃなかった! おい! 早く先に進むぞ!」

盗賊達の事を思い出した、ロロは再び走り出し、カレンに急いで先に進むよう呼び掛けた。

「………あっ! うん!」

先に走り出したロロを追い掛けて、走り出すカレンは自分が記録喪失だという事はゆっくり話せる時に話そうと心の中で思いながら魔装器もとい大剣を背中に背負ってロロの後を追った。


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