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ユニヴァース  作者: クモガミ
二人の再会
88/125

鋼の身体

一方、その頃。

盗賊団のアジトを目指して鉱山の一本道を歩き続けていたカレン・アイシャ・ミツルギの三人はやっとアジトと思われる建物を発見する。

早速乗り込もうとした三人だったが、アジトの手前に出入りする為のゲートが立っており、しかもゲートの頂上に監視塔らしき物も在り、その監視塔に見張りがゲート周辺を見張っていた。

迂闊にゲートに近付き、見張りに見付かってゲートを閉められたら大変なので、三人はゲートから200m程離れた岩陰に隠れながら、監視の眼を盗むチャンスを窺っていた。

すると次の瞬間。

ボカン!! と突然、盗賊団のアジトの方から強烈な爆音が鳴り響く。

「「「!!」」」

三人は前触れの無い唐突過ぎる出来事と爆発に因る大地の震撼にたじろぎながらも視線をゲートからアジトに移す。

爆音を鳴り響いたアジトから大きな白煙が舞い上がっていた。

「煙? まさか、『爆弾石』が爆発したんじゃ……!?」

「いや、『爆弾石』が爆発したなら黒煙が上がる筈だ」

「白煙ということは今の爆発は水素爆発か水蒸気爆発のどちらかだよ」

『爆弾石』が爆発したのではと危惧するカレンだったが、ミツルギとアイシャが今の爆発は水素爆発か水蒸気爆発のどちらかに因る物だと推定する。

『そうなんだ』とまた新しい知識を覚えたカレンは二人の方に顔を向け。

「『爆弾石』の爆発じゃなかったとしても、一体アジトで何が遇ったんだろう?」

「分からない。此処からじゃどうにも」

「……もしかしたら連れ去れた人質達が戦っているのかもな」

とミツルギは冗談混じりに言ってみる。

するとその発言を聞いて、アイシャはアジトの方を見据えて。

「……それは有り得るかもね」

「へ? 有り得るのアイシャ?」

あの爆発は何だったのか、考えれる可能性の中で確率がかなり低そうな可能性を何の根拠も無く有り得ると呟いたアイシャが意外だったのか、カレンはつい聞き返す。

「えっ? あぁ……うん。だってほら、人質の中にはロロが居るでしょ。彼がアジトから脱走しようとさっきの爆発を起こしたと考えられないかな?」

「…成る程、確かに連れ去られた人達の中でまともに戦えそうな人って、ロロぐらいしか居なそうだよね」

BAS(バス)』に設置していた監視カメラの映像に映っていたロロを除く乗客達は戦う力を持っていなそうだと身体のナリで評価する。

そして見掛けだけで判断しているが、確かにカレンの言う通り、盗賊団に連れ去られた乗客達は戦う力を持たないひ弱な一般であるのは確かだ。

……あの金髪の少女は除いて。

一方でミツルギは腕を組んで何処か腑に落ちなそうな顔をしながらも。

「ふむ。ロロがそんな大胆な事をするとは思えんが……ともかく、何時までも此処に居ては確認のしようも無い! 一刻も早くアジト内に入らなければな」

「そうだね、何とかしてあそこを通り抜けないと!」

なんであれ、事実を確かめるのも少女とロロを救出する為にもアジト内に侵入しなければ、話が進まないのでカレンはミツルギの意見に同意しつつ、ゲートの方に視線を戻す。

と視線をゲートに戻したカレンはある異変に気付く。

ゲートの頂上に位置する監視塔に居た見張りの姿が消えていたのだ。

カレンはすぐその事を二人に報告する。

「見張りが居なくなってるよ!」

「しめたぞカレン! ゲートを潜り抜けるチャンスだ!」

「見張りが戻って来る前に今の内にアジトへ入ろう!」

今が好機だと意気投合した三人は岩陰から飛び出し、一目散にゲートへ走り出した。

しかし、三人が走り出した直後。

監視塔から姿を消した見張りが元の場所に戻って来てしまい、見張りはこちらに向かって来る三人を発見する。

「侵入者だ!!」

見張りは他の仲間にも侵入者の存在を知らせる為に大声を上げると同時にゲートの緊急遮断のスイッチを押す。

その直後。

ブザー音と共にゲートを閉じる為の分厚い黒い門扉が二つの門柱からそれぞれ勢い良く飛び出し、二つの黒い壁はお互いに惹かれ合うように近付き、ゲートを閉じていく。

閉じていくゲートに対して三人は。

「ゲートがっ!」

「見付かった!?」

ゲートまであと100mのところでゲートが閉じていくのを見て、カレンとアイシャはどんなに頑張っても間に合わないと悟る。

が、しかし。

「させん!!」

と叫んだミツルギは腰に掛けていた剣の取っ手型の『ガジェッター』を取り出し、そして何処からか出て来たのか、空いて右手に蠍の姿をした『(コア)』が飛び付き。

ミツルギは手元に来た『(コア)』を素早く『ガジェッター』の剣格部分に差し込む。


REGI(レジ)IN(イン)


(コア)』と一つに成った『ガジェッター』がそう発すると剣格部分の上から昇るように形が形成されていき、瞬く間に剣の形へと変わる。

自身の魔装器(まそうぎ)が姿を現すとミツルギは即座に『縮地法』であともう少しで閉まろうとしているゲートの隙間に移動し、魔装器(まそうぎ)をその隙間に挟み込ませた。

ゲートの門扉である二つの黒い壁の間に魔装器(まそうぎ)という障害物が割り込んで来たことに因って、閉まり掛かっていたゲートの閉鎖の進行がピタリと停止する。

剣を水平に挟めたので門扉の隙間は剣と同じ長さの隙間で、人一人が通り抜けるには問題ない広さだった。

普通の剣なら運動量を持った10t以上の巨大な門扉に挟まれれば、無残にもぺしゃんこになるところだが、魔装器(まそうぎ)とは鋼鉄よりも硬いのか、ミツルギの魔装器(まそうぎ)は屈曲どころか罅一つ付いていなかった。

だがゲートの閉まる力が余程強いようで、苦悶の表情を浮かべながらミツルギは剣が門扉の隙間から外れないように剣を両手で支え、まだゲートに辿り着けていないアイシャとカレンに向けてこう叫ぶ。

「長くは持たない! 出来るだけ早く来てくれ!」

「了解!」

「すぐ行くから!」

急ぐように催促された二人は心の中では焦りながらも冷静に了承する。

と二人が返事を返した直後、二人はある物が眼に映る。

「ミツルギ、後ろ!!」

一早くカレンがミツルギに向けて叫ぶ。

その叫びにミツルギは顔だけを振り向かせ、横目でアジトの方に視線を傾ける。

そこでミツルギの瞳に映った物は銃を構えた六人の盗賊だった。

「誰だか知らねぇが、そう安々と侵入なんかさせねぇ!!」

一人がそう言った次の瞬間。

盗賊達の銃が一斉に火を噴き。

無防備なミツルギの背中に鉛弾の雨が容赦無く直撃する。

「ミツ……ッ!!」

銃弾をモロに喰らうところを目の当たりにしたカレンはミツルギの名を呼ぼうとしたが、その前にある事に気付いて言い留まる。

ミツルギの身体から小さい何かが大量に落ちたのだ。

カレンは眼を凝らしてミツルギの身体から落ちた物を良く見てみると、それは先端が凹んだ弾丸だった。

しかもその大量の弾丸は〝ミツルギの身体を貫いて身体の前から落ちた〟訳では無く、〝当たった所から落ちた〟のだ。

盗賊達は口をパクパクさせて、眼の前の光景に唖然とする。

自分達が放った銃弾を全弾モロに喰らった筈なのに、ミツルギは傷一つ負っていないからだ。

「な、何なんだお前ーーーー!!?」

先程の盗賊が悲鳴のようにそう叫ぶと再び銃を乱射し、ミツルギに鉛弾を叩き込む。

それに続いて他の盗賊達も銃弾を発射するが、いくら鉛弾をミツルギに叩き込んでもミツルギには効かず、無数の弾丸は虚しくも地面に落ちるか、身体に当たった拍子に跳弾して何処かへ飛んでいくだけだった。

それでもめげずに撃ちまくる盗賊達だったが、やがて銃のマガジン内の弾を撃ち尽くしてしまう。

「く、くそっ! 弾が!!」

引き金を引いても弾が出ないので弾切れに成ったと察した盗賊達は慌てながらも新しいマガジンに切り替えようとした。

しかし、その前にまだゲートに辿り着いていなかったカレンとアイシャがようやくゲートに辿り着き、ミツルギの脇を通り抜けて、アジトの敷地内に入り込む。

そして二人は盗賊達に視線を移すと、アイシャは腰のホルダーから拳銃を抜き取り、カレンは腰に携えていた剣の取っ手型の『ガジェッター』を取り出し、続いてカブトムシの形をした『(コア)』を呼び出す。

呼び出してすぐ手元に飛んで来た『(コア)』をカレンは難無く左手で掴み取り、そして流れるような動作で『ガジェッター』の剣格部分に『(コア)』を差し込む。


REGI(レジ)IN(イン)


その声と共に『ガジェッター』の剣格部分の上から形が形成されていき、瞬く間に大剣の姿へと変わる。

「ミツルギ、大丈夫!?」

即座に戦闘態勢を整えたカレンは前を向いたまま、ミツルギに身体の安否を尋ねる。

するとミツルギは門扉に挟まれないよう、門扉の間に挟めて置いた魔装器(まそうぎ)を素早く引っこ抜きと同時にアジトの敷地内へと入り込み、少し乱れた息を整えると笑みを浮かべて口を開く。

「勿論、問題ない」

「良かった」

銃弾を喰らったのにどうして無事だったのかは分からないが、元気な姿を見せるミツルギにカレンは安堵の表情を浮かべる。

それとは正反対に盗賊達は青ざめた表情を浮かべて。

「こ、コイツ等、魔装器(まそうぎ)使いだ!!」

「ぞ、増援だ! 増援を呼べぇ!!」

カレンとミツルギが持っている武器を魔装器(まそうぎ)だと見抜いた盗賊達は今の人数では勝てないと踏み、増援を呼ぼうと一人が上着のポケットから小さな箱のような物を取り出し、それに向かって誰かに呼び掛ける。

相手側の対応にアイシャは即座にカレンとミツルギにこう告げる。

「増援が来る前に片付けるよ!」

「「了解!」」

息を揃えて了承した二人は盗賊達の所へ突撃する。

向かい撃つ盗賊達であったが、三人の圧倒的な実力に捩じ伏せられるのだった。


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