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ユニヴァース  作者: クモガミ
二人の再会
77/125

奇跡

◇◆◇◆◇◆◇◆


「という訳だ」

以上で三人は此処に来るまでの経緯を全て話した。

「へぇ、そうだったんだ……皆、迷惑掛けてゴメン。僕なんかの為に要らない苦労まで……」

自分の為に様々な苦労を皆に掛けたことにカレンは謝ろうと頭を下げようとした。

しかし、それを阻止するようにミツルギが言葉で割り込む。

「気にするな、我が友カレン。友が友を助けるのは当たり前だ、謝罪には及ばん」

余計な気遣いや無駄に気取ることも無く、思ったことをそのまま伝えるようにミツルギがそう答えるとそれに続くようにロロとアイシャが。

「まぁ、仮にも今日まで一緒に戦って来た仲だからな。あのまま見殺しなんてのは最高に後味が悪いしな! なぁアイシャ?」

「だね。お互いに力を合わせて折角あそこまで辿り着けたんだから、最後まで助け合うのは当然だと私もそう思うよ」

ロロもアイシャも気取っている様子も無く、ミツルギと同様、本心で話しているようだ。

「二人もこう言っているんだ。今の我々の間に謝罪の言葉など不要だ。カレン」

「みんな………」

三人の言葉を聞いたカレンは胸の中に秘めている申し訳ない気持ちが感謝と感嘆の気持ちに生まれ変わり、自然と笑みが零れ。

「ありがとう。本当にありがとう!」

カレンも心から素直に感謝を述べる。

「お客さん、見えて来ましたよ。あれが『リア・カンス』です」

すると四人の話し合いに水を差さないように見計らっていたのか、機内の上半分の右側の運転席に居る『CAB(キャビー)』の運転手が四人に前の窓ガラスに方を見るように話し掛けて来た。

四人は運転手の声に反応して、前の窓ガラスに視線を向けると。

「わぁ……!」

一目見ただけでカレンは思わず、驚嘆の声を漏らす。

前の透明な窓ガラスの数百m向こうには視界に収まり切れない程のビルと言う縦長の建物が無数に立ち並んでおり、更にそのビルの下には無数のグラ・ビーと無数の人々がまるで蟻ん子のように群れと為して地面の上を歩き回っていた。

視線を左右に傾けても主にビルの列が何処まで続いており、それに集うかのように人もグラ・ビーもビルの足元に群がっている。

軍用都市『レイチィム』もかなりの大きさだったが、同じ都市でも首都と言うだけあってか、『レイチィム』とは桁違いの広大さと人口を持つ、首都『リア・カンス』にカレンは圧巻する。

そしてカレンが圧巻している間に四人を乗せた『CAB(キャビー)』はとうとう首都内部に入り込む。

都市内部は外とは違って入り組んだ道が多く、その入り組んだ道を『CAB(キャビー)』が進んで行く中、カレンは病院に着くまで都市内部の景色を眺めようとした。

「!」

が、その時。

突然視界が歪むと同時に意識が朦朧となり、カレンの顔色が再び、青く染まる。

「カ……レン! しっ………か……り…しろ! カ………」

明滅する視界の中、カレンの異変に気付いたロロ達が必死に呼び掛けるが、カレンの意識と耳は次第に遠くなり、やがて全ての神経が遮断されたかのように、カレンの意識は暗闇へと再没する。


………カレンが意識を失ってから数分後。

CAB(キャビー)』は指示通り、『リア・カンス』内部で一番大きな病院に着き、此処まで運んでくれた運転手にミツルギは感謝を込めて彼の年収の何倍にも値するであろうという額を支払い、それに驚愕する運転手を放って置いてカレン以外は『CAB(キャビー)』から降り、協同で動けないカレンを降ろし、ロロがカレンを背負ってから、四人は病院へと入り込んだ。

病院内に入ると四人はすぐさま受け付けに駆け込み、病院関係者に事情を説明すると、病院関係者はカレンの容態を見て一大事と思ったのか、医師を呼び出すと共にカレンを急遽、手術室へと搬送した。

………そしてカレンが手術室に搬送されてからしばらくの時が経ち、カレンの身を案じて、手術室の隣に在る診察室で手術が終わるのを待つ、ロロ・アイシャ・ミツルギの元に無精髭を生やした白衣の男性が入って来る。

三人はその白衣の男性に見覚えがあった。

実はその男性は受け付けに居た病院の関係者が呼び出した医師であり、同時にカレンの手術を受け持った医師でもあった。

彼が此処に来たということはどうやら手術は終了したと三人は察する。

そして手術の結果はどうなったのか、最初に切り出したのはミツルギだった。

「ドクター、カレンの容態は?」

ミツルギの声は冷静であったが、やはり心配を隠して切れないのか、心なしに表情が浮ついていた。

対して医師は返答する前に三人を安心させるかのように笑顔を浮かべる。

「ご安心を、彼はもう大丈夫ですよ。さっき輸血して失った分の血を殆ど取り戻しましたから、あとは意識が正常に戻るのを待つだけですね」

医師のその言葉を聞いた途端、三人の表情が安堵の物へと変わる。

だが、そこで医師は不意にこんなことを呟く。

「しかし、彼には何というか驚かせられました〜〜」

「え? 何がですか、医師(せんせい)?」

医師は一体カレンの何に驚いたのか、気になったアイシャは他の二人を代表するように尋ねる。

「いやですね、最初は彼の右腕と左腿の怪我の方を見た時も驚いたのですが、それよりも彼の失った血の量の方にはもっと驚いたんですよ。なんせ彼の失った血の総量は致死量を完全に越えていましたから」

「「「………はぁ?」」」

予期せぬ返答に三人は声を揃えて唖然とする。だがすぐさま三人は我を取り戻すと、ロロが他の二人よりも一足早く、口を動かす。

「ちょ、おいおい医師(せんせい)! 冗談しちゃつまらないぜ! カレンが失った血の総量が致死量だって? そんな訳がないだろ、実際アイツは今さっきもちゃんと生きてたんだぜ!」

苦笑いを浮かべてロロは医師の話は冗談か嘘だと受け取っていた。

何故なら、もし本当にカレンが失った血の総量が致死量ならば、カレンは死んでいるからだ。

つまり血を致死量レベルで失っているならば、カレンが生きているのはおかしいとロロはそう言いたいのだ。

その指摘を受けて医師はロロと同様、苦笑いを浮かべ。

「ごもっともな意見です。実はこの此処に来る前に同僚の医師(せんせい)に会って、今のような説明をしたら、あなたと同じ反応されました……」

そう言うと苦笑いを浮かべていた医師の顔付きが真剣なものに変わる。

「ですが、本当なんです。信じられないかもしれませんが、彼が失った血の総量は確実に致死量を越えていたんです」

「……んな、アホな。だったら何でアイツは生きているんだよ?」

ロロのもっともな指摘に医師は開いていた口を一旦閉じ、少し考える素振りを見せてから口を開く。

「それは……分かりません。一度精密な身体検査を行ったのですが、要因と思わしき物は何一つ見付かりませんでした。一体〝何が〟彼の命を取り留めていたのか…………皆目見当も尽きません」

このような不可解な事態は医者と成ってから初めての経験なのか、医師は少し戸惑った表情も見せる。

と、その謎を打ち払うようにアイシャとミツルギがこう言い放つ。

「調べても分からないなら、考えてもしょうがないですよ」

「そうだな。もし納得がいかないなら人知を越えた奇跡が起こったと思えば良い」

「奇跡って、そんな言葉で片付けて良いのか?」

「別に間違いではないだろう? 本来確実に死ぬ状態であったカレンが生きていたんだ、これが奇跡と言わずに何と言う? それにカレンは生きているんだ、これ以上の吉報は無い! 余計なことは考えず、カレンの生還を喜ぼうではないか!」

一理あるミツルギの意見にロロは『それもそうだな』と言って笑みが浮かべる。

そして高らかに友の生還を祝うミツルギに感化されたのか、理由は分からずとも患者カレンの命が助かった事に医師にも笑みが浮かぶ。

「ところでドクター、カレンの右腕と左腿の怪我は治るのにどれくらい掛かる?」

「え? ああ、そうですね……彼の右腕と左腿の怪我は両方共、人体を貫通した程の大怪我ですからね。傷口が塞がっているとはいえ自然に治るのを待つならリハビリを含めて最低でも二ヶ月。回復魔法を使って怪我を治せば、一ヶ月で済むでしょう」

「うわ、そんなにか」

「予想はしていたけど、二ヶ月も一ヶ月も入院していたら、カレンが追い掛けている女の子の行方を完全に見失ちゃうね」

「むむ、それはカレンが困ってしまうな」

月単位で入院生活を強いられれば、カレンがペンダントを届けたいという金髪の少女の行方を見失ってしまうのは眼に見えている。

それを回避すべく、ミツルギは友の為に何か解決策は無いか、腕を組んで二秒くらい考えた結果、ある妙案を思い付く。

「よし、ドクター」

「はい、なんでしょう?」

「『再生石(さいせいせき)』を使ってカレンの怪我を治してくれ」

「「「…………えぇ?」」」

ミツルギがサックリと言い放った発言に医師を含めてロロとアイシャの三人が声を揃えて、呆気を取られる。

やがて我を取り戻した医師は聞き間違いでは無いかと思い、確認を行う。

「さ、『再生石(さいせいせき)』を使って治療させるのですか?」

「如何にも! 『再生石』の力を以ってすれば、怪我はあっという間に治るし。リハビリも必要無くなるのだろう?」

「そうか、その手が有ったな! あ……でも、『再生石』での治療ってスゲー高いって聞くぜ? 俺達にそんな金なんて――」

「心配するな、金は俺が払う」

「あっ、そういえばミツルギは大貴族だったね」

「そういやぁそうだった、忘れてたぜ」

「だ、大貴族?」

『大貴族』という単語を聞いて、医師の顔が怪訝っぽく変わる。

「ボンボンの中のボンボンのミツルギは払うなら金の心配なんて要らねぇな! しかも、『ルーレイ』と『神楽』の子孫だからなぁ」

「る、『ルーレイ』!? か、『神楽』!?」

更に『ルーレイ』と『神楽』の名を聞いて、医師の顔がギョッとなる。

「でも〝世界遺産〟と称される『再生石』をただの怪我を治す為だけに使うなんて、幾ら何でもちょっと贅沢すぎるな」

「傍から見たらそう思われるかもしれないけど、カレンの人探しは一刻を争うんだし。それに怪我を早く治せる方法が有るなら、それを使えるお金が有るなら、有効に使うに越したことはないよ」

「別に誰も困りましないんだ、気にする事は無い」

「ったく、こういう時も頼もしいね。お前は」

戦闘以外にも金銭面でも頼りになるミツルギにロロは口元を緩めて妬ましげに言う。

一方、医師は今自分の眼の前に居るお客が大貴族であると同時に世界規模の超有名な英雄の子孫、『ルーレイ』家と『神楽』家の人間であることを知って緊張してきたのか、まるで未知の生物と対話を試みるかのように及び腰で恐る恐る聞き返す。

「と、ということは本当に『再生石』をご利用なさるのということでよろしいのですか?」

「勿論だ! 友を助ける為なら代金が高かろうが安かろうが全額払ってやるさ!」


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