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ユニヴァース  作者: クモガミ
始まりの一日
7/125

感謝と別れ………そして、思わぬ再会

ロロの妹、イミナから有益な情報を手に入れて、金髪の少女の行き先が分かったカレンは村を出る前に会っておかなければならない人の元へ駆け走っていた。

「お! 来た来た、おーーーい!!」

「あっ」

そして、待っていたのかコルトは宿屋の前に立っており、宿屋に戻ってきたカレンを見つけ、呼び掛ける。それに気付いたカレンは会って話しておきたい恩人コルトの元まで走って行った。

「コルトさん!」

「おお! どうだったカレン? その子に行き先がわかったか?」

帰って来たカレンに結果がどうだったか聞くコルト、カレンはコルトの前に止まり。

「はい! わかりました! 彼女は軍用都市『レイチィム』に向かったそうです!」

「『レイチィム』にぃ? でもあそこに行くための橋は、今は修理中―――――」

「はい、だから『水底の洞窟』に通りに行くんです」

カレンの返答にギョっとコルト。

「ま、待て! カレン! 最近あそこは魔物が大量―――――」

「はい! それも聞きました!」

「……………………」

自分の発言を悉く打ち払うように遮るカレンの返答は悪意がこれぽっちも無いその笑顔を見ると何とも言えない感覚を覚えるコルトであった。そんなコルトにカレンは。

「コルトさん! 本当にありがとうございました!」

「へっ?」

カレンの唐突のお礼にキョトンとするコルト。

「僕がここまで足を運べたのも、湖で助けてくれたのも、ご飯を御馳走したくれたのも、見ず知らずの僕を助けてくださって、本当にありがとうございます!」

頭を下げてカレンは自分の感謝の気持ちを全て、コルトに伝え。コルトはカレンの感謝を照れ臭そうに頭をポリポリと指の爪で掻いた。

「そう畏まらなくても――――」

「後、これをお返しします」

またコルトが言う前にカレンは手に持っていたガジェッタ―をコルトに差出す。

「! カレン…………」

目の前に差し出された魔装器の一部ガジェッタ―を見て、コルトは目を見開いてカレンの顔に視線を移す。

「これは元々僕の物じゃなくてコルトさんの物ですから、今まで僕が勝手にお借りしていただけなので、これはコルトさんにお返しします」

自分の物ではないと述べたカレンは次にストライクも呼び、自分の手元に飛んできたストライクをもう片方の手で掴み取り、ガジェッタ―と一緒にコルトに差出しだそうとしたが、それより先にコルトが手を前に出して、制止させた。

「いや……それはもうお前さんの物だ」

「コルトさん………いや、でも」

カレンはそれでもコルトに返そうとするが、コルトは手を前に出したまま、首を横に振る。

「こいつはお前さんを選んだんだ…………だからお前さんしか使えない、説明したろ?」

「でも、これは…………」

コルトの発言に戸惑うカレン。コルトはそんなカレンに淡々と語りかける。

「例え、ワシがこれを持っていたとしても、ワシにはこれを使う事ができない。そんなのは宝の持ち腐れという奴なもんよ」

「宝の……持ち腐れ?」

言葉の意味が理解できないのか、首を傾げるカレン。

「まぁ、とにかく………それはお前さんにやるよ」

あっさり自分の物だった魔装器をカレンに譲るコルト。そんなカレンの手に握られていたコアは力ずくでカレンの手から離れ、またカレンの周りを飛び回り、また肩に止まる。

「それに、そいつはお前を気に入ったみたいだしな!」

会って間もないのにもうコアに懐かれているカレンにコルトは微笑ましそうに笑うと、カレンに一つの袋を渡す。

カレンはそれを受け取り、中を確認する。

「! これは………」

中には一つの本といくつかの食材と赤い色の付いたゼリーみたいなのが入っていた。

「ウチの商品の余り物だが………もしかしたらこの先、何かしら役に立つかもしれんぞ」

袋に入っていたのはコルトの商品だった。

「その本は自分の記憶や思い出を書いて、次にまた記憶を失っても大丈夫なように日々の日記として使ってくれ、そして中に入っている食材は道中でお腹が空いた時に使った方がいいぞ、後最後に――――」

「コルトさん……………」

震えたカレンの声に、言い止まるコルト。カレンは目線をコルトの目に向け。

「本当に………お世話になりました! この恩は忘れても、忘れません!!」

「……………」

再び頭を下げたカレンはしつこいくらいの感謝と思いっきり矛盾に満ちた発言だが、コルトにあなたへの恩は絶対に忘れないと心強く伝え、そんな気恥ずかしいセリフを吐いたカレンにコルトは呆れたのか感心したのか、軽い溜息を吐く。

「気を付けて………行ってこいよ………!」

「はい!!」

力強く返事を返し、後ろに振り返って村の外へ走り出すカレン。やがて村の外へ出て東へ進む。

そんなカレンの後ろ姿を見えなくなるまで見送ったコルト。

そしてカレンの背中が視界から見えなくなって、見送りが終わったコルトは宿屋に戻ろうとしたが、何かものすごいスピードで自分の横を通り過ぎて行く人影をコルトは目撃した。

「何だ? ……今の?」

コルトは自分の横を通り過ぎて行った人物の顔をよく見ることができなかった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


カレンが『カム―シャ』から出てイミナの証言通り、東へ歩いて約一時間くらいが経ったのか、歩いていた一本道の先に森が広がり、やがて一本道の周りは森に囲まれ、そして行き着いた先には大きな岩山に穴が空いた、一つの洞窟らしきものがあった。

「此処かな?」

目的地に進むために通り抜けなければならない場所『水底の洞窟』、此処がそうだと穴の近くに建てられているカンバンを見つけて確信したカレンは。

「よし! それじゃあ――――」

「待てやゴラァ~~~~!!!」

洞窟に入る直前に後方から聞き覚えがある叫び声が聞こえ、カレンは振り向いて見るとそこには遠くからだが自分のところに向かって猛スピードで向かって来る一つの人影があった。

「やっと! 見つけたぜ~~~~~~~!!!」

人影はみるみるとこちらに近付き、そしてカレンの所まで走って来た人物は。

「ハァハァ………ハァ………、やっと追い付いたぜ………!!」

「君は…………!」

息を切らせて現れたのは『カム―シャ』で会ったロロ・グライヴィーだった。

「決着を……付けにきたぜ!」

「決着………?」

息を切らしながら言うロロ、そのロロの発言の意味が理解出来ていないカレン。

そしてロロは呼吸を整え、深呼吸を行ない、顔をゆっくり上げる。

「お前との決着を付けに来たに決まってるだろう!!」

「え?」

何を言い出すと思えば、ロロはカレンとの闘いに、決着を付けにわざわざここまで来たようだ。見た所あの時の焦げ跡はすっかり無く、服も新しいのに変え、元気な姿だった。だがそれに対しカレンは。

「いや…………あれは僕の勝ち―――――」

「勝負っていうのは! 自分が負けたと思わなかったら永遠に決着は付かないんだ!!」

カレンの言葉を跳ね除け、断固自分は負けてないと主張するロロ。そしてカレンにビシっと指を指し。

「とにかく! 決着を付けるまでお前を逃がすかよ!!」

「まったくその通りだぜ!!」

その意気に加勢するかのように何処からか、カレンでもロロでもない誰かの声が聞こえ、ロロはその声に驚き、後ろに振り向いた。

「だ、誰だ!?」

ロロは謎の声の人物に向かって呼び掛けた。

すると木や草の茂みから一人の人物が出てくる。その人物にカレンは見覚えがあった。

「やっと、見つけたぜ! くそボウズ!」

「! あなたは!」

その人物とはカレン達が『カム―シャ』に向かっている途中、コルトの馬車を襲った、スキンヘッドの盗賊だった。

そして、スキンヘッドの盗賊は何かの合図のように手を振り。直後に他の木や草の茂みから盗賊らしき人物がゾロゾロと現れ、カレンとロロの前を囲む。

「な、な、何なんだよ! お前ら!!」

突然の事態に状況が見えないロロは現れた盗賊たちに動揺していた。

「お前には用はねぇよ、用があるのはそこのボウズだ!」

しかし、スキンヘッドの盗賊はロロの事などまったく気にせず、カレンの方を向き続ける。

「お前には、せっかくの獲物を邪魔されたからな……………」

「………………」

スキンヘッドの盗賊は忌々しそうにカレンを睨め付け、カレンも黙って睨み返す。。

「だが…………今もうあの獲物はいらねぇ…………」

そう言うとスキンヘッドの盗賊は腰に掛けてある剣を抜き、カレンに向けて指す。

「お前の持っている魔装器を売れば、一生遊んで暮らせる金が手に入るんだからよ!!」

最高の獲物を見つけた様な大声を出したスキンヘッドの盗賊、そして今のが合図だったのかスキンヘッドの盗賊の後ろに居た、盗賊達が一斉に武器を取り出して、ジリジリと二人に近付いていく。

「いいかお前ら、ガキだからって油断するな! 〝こいつ〟も魔装器使いだ!! 舐めて掛らず全力で叩き潰せ!!!」

「「「「「「おう!!!」」」」」」

スキンヘッドの盗賊の警告に気合い十分な盗賊達、そしてさらにまた木や草の茂みから盗賊がゾロゾロと出て来て、その数ザっと見た所、50人はくだらなかった。

「ところでハン、この獣人のガキはどうするんだ?」

盗賊の一人がスキンヘッドの盗賊に近付き、ロロの対処について尋ねた。

「そうだなぁ………見た所あのボウズの知り合いみたいだらなぁ………」

スキンヘッドの盗賊はロロの方をチラと向き。ロロは盗賊の反応に困惑した。

「こいつだけ逃がすって訳にもいかねぇ! ついでにこいつも殺っちまえ!!」

「ええ!? そ、そんなぁ……………」

何で俺までっと言いたそうな情けない声を出すロロ。

そこに付け込むように盗賊はまたジリジリと近付き、逆にロロは足を一歩ずつ下がらせつつ怖気付いた表情を露わにして、カレンの隣まで後退りをする。

「お、おい! どうするんだよ…………こ、このままだと俺達やべぇーよ!」

「……………」

盗賊達の圧倒的な人数に戸惑いを隠せないロロは同じ窮地に立たされているカレンに問い掛ける。

この危機的状況にカレンは目を閉じて少し考え込み、そして。

「逃げるよ!!」

声と共に洞窟に入って一目散にカレンは逃げ出した。

「えっ!? あっ! ちょ、ちょっと待て!!」

唐突に走りだしたカレンに反応が遅れたロロは急いでカレンの後を追って洞窟に入る。

「なっ! 逃げたぞ!! 追え追え!!」

逃げだしたカレン達を追って洞窟に入る盗賊達であったが洞窟の中は暗くて狭く、大人数で走る程の余裕は無く、全力疾走しているカレン達に差を付けられる事になった。

「くっくそ!!」

もどかしい状況にスキンヘッドは舌打ちをしたが、見通しが悪い洞窟の中で仲間達を導こうと自ら先頭に立って、カレン達を追いかけた。

そして、盗賊達から逃げる為、カレン達はこの暗くて長い洞窟の奥をさらに進み続けた。


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