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ユニヴァース  作者: クモガミ
度重なる出会い
52/125

仲間

◇◆◇◆◇◆◇◆◇


四人が再び歩いておよそ一時間、空洞の奥は今まで通った通路と同様、洞窟の奥へ続いているみたいで,

特に分かれ道が多く。

奥に進むにつれ、分かれ道が段々多くなっていくが地下水道の時のようにマッチが風の吹いている方向を示してくれる為、難なく奥へ進んでいた。

その中で四人は。

「そういえば、ミツルギも『レイチィム』に居たんだよね」

「なんだ、お前も『レイチィム』に居たのかよ?」

「ああ、大事な用が有ってな」

「用って……もしかして『ルーレイコーポレーション』と何か関係が有るの?」

岩の壁が凸凹としただけの殺風景な通路をただひたすらに歩き続けるのもなんなので。

四人は暇を紛らわす為、時折になんの変哲もない雑談を繰り返していた。

「ご明答。アイシャの言う通り『ルーレイコーポレーション』からの〝視察〟さ」

「視察?」

「視察って〝何を〟だよ?」

「『トロイカ』軍が最新鋭で配備させた『バトル・マシーン=タイプ〝ヒューマン〟』の性能及び設計の検査さ」

「「バトル・マシーン?」」

視察の対象で挙げられたのが『バトル・マシーン』と聞いて、カレンとロロは『レイチィム』で戦った、盗賊達が乗っていた『バトル・マシーン』の姿を思い浮かべる。

「年に一度、各国々が我が『ルーレイコーポレーション』に申し頼む、〝機体視察〟が有ってな。視察する対象の機体の性能と設計を徹底的に調査して細かい部分から大雑把なところまで総合的に評価し、改善の余地が有るかどうか、調査した後日に報告するという事業が存在するんだ」

「は~~成る程な!」

「仕事についてはあまりよく分からなかったけど、何だが立派な仕事みたいだね!」

「あれ……でも確か、ミツルギって『コーポレーション』の社長でしょ? 何で、社長自らそんな事をしているの?」

下の者に任せればいい仕事を何故、社長直々に〝視察〟を行なっているのか。当然、不自然と思ったアイシャはその素朴な疑問をぶつけた。

「俺は今年から『コーポレーション』に入社したと同時に社長に就任したから日が浅くてな。会社の事業は役割や仕組みも含めて全て頭に入っているのだが……」

「だが……?」

「頭に入っているだけでは『ルーレイコーポレーション』というとても巨大な会社の全体の流れを掴み切る事はできない。だから俺も一社員として会社の事業全てをこの身で体感していくことで、これからの『ルーレイコーポレーション』を引っ張って行く社長としての俺の役割を本当の意味で理解するという俺なりの算段だ」

「それでわざわざ社長の君、自ら? 会社の社員から止められなかったの?」

「もちろん、止められたが……力尽くで押し通った!」

「強引だな、おい!」

「働き者なんだね、ミツルギって」

本人の話からにして大手の会社の社長という立場を無視したミツルギが自身の会社への対する情熱と大胆さにアイシャは無表情ながらも瞳の奥は呆れの色を覗かせ、ロロは突っ込みを入れ、カレンは働き者と感心する。

「軍の連中も驚いたんじゃないか? 『ルーレイコーポレーション』の社長が自ら来て?」

「まぁな、だが各国の軍に俺の名前を知って貰う良い機会だからな! 損はならない筈だ」

「でも、大丈夫なの? ミツルギは『ルーレイコーポレーション』の社長だけじゃなく、『神楽かぐらカンパニー』の会長なんでしょ? 二つの会社を留守にしても良いの?」

「心配するな、二つの会社には俺の留守を預かってくれるとても優秀な代理がそれぞれ居る。抜かりは無い!」

自身の代理を務めている人物たちに余程の信頼を置いているのか、ミツルギは自信たっぷりと豪語する。

「で、どうだったの視察は?」

「ん? そうだな……『レイチィム』の『トロイカ』軍が最近配備した『タイプ=〝ヒューマン〟』は制作コストの削減と各パーツの流用性の高さを考慮した、とても生産性が優れた良い機体だったんだが………」

「? どうした?」

と言い掛けてミツルギは言葉を詰まられたのか、悩むように腕を組んだ。

「……生産性が優れている分、各関節部分が極端に脆い所が一番の痛手だった」

「ああ、成る程……」

視察でミツルギが発見した『トロイカ』軍の『タイプ=〝ヒューマン〟』の欠点を挙げられ、その事を知っているロロは物分かりが凄く良いぐらい納得した。

「ホバージェットが付いて飛行性能も備わっているのは良かったが、あの脆い関節で強い衝撃を受けたら手足は簡単にへし折れて、使い物にならなくなってしまう……見直しが必要だな。あれは!」

「まっ…そのお陰で俺達は助かったんだけどな! なぁアイシャ?」

「……御尤も」

「「?」」

弱点が在って助かったとロロとアイシャはお互い顔を見合いながら苦笑いを浮かべ、その二人の反応にカレンとミツルギもお互いの眼を見詰め合って二人の苦笑いは一体何なのか、見当が付かなかった。

「! そういえば……視察の終わった後……」

「「「?」」」

「俺が『レイチィム』から出る前に都市全体から警報が流れてな、そしたら今度は門番達の話声が聞こえてきて、どうやら何処かの宿屋の近くで〝暴動〟があったそうなんだが、カレン達も『レイチィム』に居たのだろう? 何か知っていないか?」

「ああ、それは多分ぼく―――……むぐっ!?」

事の真相を話そうとしたカレンをロロとアイシャが一瞬にして口と鼻を抑え込んだ。

「ちょいまてカレン! 『レイチィム』での戦闘の話は例えコイツでも話すな!」

「ばんで(何で)?」

「私達が『レイチィム』で戦闘を起こした中の一人だと話して、ミツルギを通して他の人に伝わってしまったら、まずい事になる!」

二人がカレンを黙らせた理由、それは誰であっても事の真相を話せば、自分達が罪人である事をいずれバレテしまうと二人は当然危惧したからだ。

「だから俺達が『レイチィム』で戦った事は秘密だ! 分かったなら頷け」

「………」

『レイチィム』での戦闘は秘密だと耳元から言い聞かせるロロとアイシャの気迫に押され、カレンは素直に頷き、その返事を視認した二人はカレンの口と鼻から手を退ける。

「どうしたんだ三人とも?」

「いや、何でも無いよ。それよりも『レイチィム』の〝暴動〟についてだっけ?」

「ごめんなぁ、俺達もそれについては〝全然〟知らないんだよな! あっはっはっはっ」

「……そうか、それなら仕方ないな」

落ち着いて対処するアイシャはともかく、あからさまに誤魔化そうと〝全然〟を強調するロロの下手な演技に違和感を覚えたミツルギだったが、深く追求する事はなくそのまま穏便に流した。

「む……今の話で思い出したんだが……」

「? 何を?」

二人から解放されて息が出来ると呼吸を行なおうとするカレンを遮る様にミツルギがまた話を持ち掛けて来た。

「前にカレン達が『地下水道』と言っていただろう? ここ等辺近くの地下水道といえば『レイチィム』のしかない………まさか『レイチィム』の地下水道を通ったのか?」

「うん、そうだよ」

「何の為に?」

「それは僕達がぐん――――……むぐぐっ!??」

事の真相を話そうとしたカレンを再びロロとアイシャが一瞬にして口と鼻を抑え込む。

「ヴぉいカレン! 何、俺達が軍に追われている事を話そうとしているんだ!?」

「ば、ばなじぢゃだべばぼ(は、話しちゃ駄目なの)?」

「私達は追われている身だって事は分かっているよね? その事をミツルギに話して、もし、通報されたりしたら私達は捕まってしまんだよ!」

一呼吸する前に口と鼻をまた抑えられ、カレンの顔がやや青くなる。

「び、ビヅヌビばぼんばじどじゃ………(み、ミツルギはそんな人じゃ………)」

「良いから〝これ〟も絶対に誰にも話すな!」

「用心の為だよ!」

「さっきから何をしているんだ、三人とも?」

「ううん、何でも無いよ。それよりも私達が地下水道を通った事についてだっけ?」

「いや~~~俺達三人が〝何となく〟一度だけでも良いから地下水道を通ってみたかっただけなんだよ! ただそれだけなんだよ!」

その場で思い付いた〝何となく〟だけを強調した適当な嘘を吐くロロを余所にカレンの顔色は段々と青ざめていった。

「いいかカレン? 『レイチィム』で起こった出来事全てコイツを含めて誰にもどんな事が有っても話すな! ……分かったなら頷け」

「カレンお願い、分かって」

「………」

これ以上口論したら身が危ないと悟ったカレンはこれも素直に頷き、その返答を視認した二人はホッと溜息を吐いて、カレンの口と鼻から手を退ける。

「……ほほう、面白い理由だな!」

「やっぱりそう思うか? あっはっはっはっ」

「スゥ…ハー…スゥ…ハー…」

案の定、カレン達は何かを隠していると感付いたミツルギだったが、先程と同じく追求はせず、代わりに面白いと評価して、それをロロは笑って誤魔化した。

そして、カレンは二人から再び解放されてやっとまともに呼吸ができるようになったから、顔色が正常に戻った。

「「「「!」」」」

すると四人は通路の途中で無数の岩に埋もれた分かれ道を発見する。

「この道って……」

「俺達が落ちた穴と同じ、地震の影響で空間内の岩の壁が崩落したんじゃないか?」

「此処もこうなっているなら、この洞窟内では地震が起こる度にこうゆう事が至る所で頻繁に起こるようだな」

「……やっぱり洞窟ここは危険だね。早く出口を見つけないと!」

自分達が落ちた穴以外の場所で壁の崩落で埋もれたと思われる場所を発見したアイシャはこの洞窟内に居続ける限り、魔物以外にもこういった危険が度々起こると推測し、早急に出口を見つけた方が良いと他の三人にも促した。

「ねぇ僕達が落ちた……あの穴の崩落も地震の所為でああなったのかな?」

「十中八九そうだろうな」

無数の岩で積み上げられて塞がった道を手の平で触れて、カレンは自分達が落ちた穴についての話題を持ち挙げた。

「でも何で僕達の足元にあんな空洞が在ったんだろうね?」

「それは恐らく、『ポッケル』の仕業だろう」

「『ポッケル』?」

「魔物の事だよ」

あのような空洞が出来た理由は『ポッケル』という名の魔物の仕業らしい。

「『ポッケル』は主に山脈地帯に住む強靭な牙と顎が特徴の魔物で、その特徴で岩を削ってトンネルを作り、そこを住処としているので有名な魔物だ」

「有名なの?」

「『ルモン』と同じで、温厚で大人しく人間に対しても友好的な魔物なんだよ」

「そうなんだ……あれ? でもあの時あの空洞の中にはその『ポッケル』っていう魔物の姿は一匹も見当たらなかったけど」

「あそこに居ないとなると、あの空洞は『ロック・プートン』達に岩を送る為に削った空洞だな。きっと!」

「え? 『ロック・プートン』?」

ついさっき戦った魔物の名前が飛び出して、カレンは意外そうに瞳を細める。

「何で『ポッケル』が『ロック・プートン』の為に岩を送るの?」

「『ポッケル』が岩を送る事で『ロック・プートン』が守ってもらえるからさ」

「守る?」

何故岩を送る事で『ロック・プートン』が守ってもらえる事に繋がるのか、常識に疎すぎるカレンは無論、皆目見当も付かなかった。

「険しい山脈地帯に住む『ポッケル』は外見とは裏腹に数少ない草食派の魔物でな。肉食派の魔物が多い山脈地帯では他の魔物から一番良く狙われる魔物でもあるんだ」

「おまけに戦う力も弱いから、誰かに守ってもらうしか身を守る術がなかったんだ」

「その守ってくれる相手が『ロック・プートン』? でも何で?」

「削り取った質の良い岩を『ポッケル』が提供する事を条件に『ロック・プートン』が他の魔物達から身を守ってくれる契約みたいな物が『ポッケル』と『ロック・プートン』の間に在るんだってよ」

話に因れば二匹の魔物の間には契約のような物が存在し、その契約のお陰で『ポッケル』は外敵から身を守って貰っているらしい。

「契約……魔物同士でもそうやってお互いに手を合わせて、生き延びているんだね」

「以前見た資料に因るとこの二匹の協力関係は昔から築かれた関係であるからにして、二匹の結束はとても堅い」

「もちろん契約が在るからお互いに協力しているって事もあると思うけど……でもお互いに相手を助け合っている内に自然に信頼が生まれ、そして、その信頼が昔から今でも二匹の関係を続かせていると私なりにも思う」

「いわゆる……〝仲間〟みたいなもんだな!」

「〝仲間〟……」

信頼で結ばれた二匹の協力関係を〝仲間〟だと例えたロロの発言に心の中で何かが反応したカレンは考えているポーズを取って、考え出した。

「じゃあ…僕達も〝仲間〟って言えるのかな?」

「あぁ? はっ……なんだよ突然?」

「いやだって、僕達もお互いに協力して洞窟ここから出ようとしているからさ。僕達もいわゆる〝仲間〟って言えるんじゃないかなって思って」

今日会ったばかりで今話した二匹のような信頼関係は無くとも、今のお互いの関係は一種の仲間と言えるのではないかとカレンは心の中でそう思った事を出し惜しみせずに話した。

「私達の協力関係はあくまで一時的なものだけど……確かにそうも言えなくも無いね」

「〝いわゆる〟程度な訳がないであろうカレン。君と俺は〝友〟であると同時に〝仲間〟でもあるのだから、俺と君は既に〝仲間〟という関係なんだ」

「えっ……そうなのミツルギ?」

「もちろんさ!」

「後付け臭ぇな……」

今の会話に合わせたかのような都合の良い話にロロは怪訝そうな表情で突っ込んだ。

「むっ!」

「?」

「「!」」

すると何かを感じ取ったのか、ミツルギが急に足を止めて、釣られてカレンもアイシャも足を止めるが、先頭に居るロロはそれに気付くのが遅かった為、一人だけ足を止めず、皆から距離を作って孤立した状態になってしまった。

「おい、何を急にとまって……」

「「「!」」」

他の三人が止まった事に気付いて振り向いた瞬間、ロロの後方の壁から暗闇の中で光る二つの緋色の玉が出現した。


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