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ユニヴァース  作者: クモガミ
始まりの一日
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バンチョー

颯爽とカレンは宿屋から出て、村に居る住人を手当たり次第、少女に関する情報の聞き込みを開始した。しかし………現実は甘くはなかった!

「女の子? さぁ~~知らないなぁ~?」

「知らないの~~~?」

「女の子? 見てないわねぇ~~?」

「おやおや、お前さん、もしかしてその子の追っかけかい?」

「えっ? いやだ。まさかあなた、ストーカー?」

「ねぇねぇ、お兄ちゃんって、ストーカーなの?」

「わーーー! ストーカーだ、逃げろ~~~~~!」

「………?」

何やら、いつの間にか誤解されたような感じになってしまったカレンはそれでもめげずに聞き込みを続けていった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


そして、カレンが聞き込みを始めてかれこれ一時間が経とうとしていた。

「………だめだ。誰もあの子を見たっていう人が居ない。この村を通った訳じゃないのかなぁ?」

まったくあの少女に関しての情報が些細なことも手に入らず、困り果て大きな岩の前で座り込むカレン。

「困ったなぁ~~」

岩を背にして両目を閉じ、カレンはこの後どうしたらいいのかそんな事を悩んでいると。

「ふっふっふっふっ、何か困っているようだな~~~?」

フと大きな岩の裏から声が聞こえた。

「だったら、この俺様にまかせろ!!」

声が岩の裏から岩の上から移り、それと同時にカレンの頭上に人影が被った。

カレンは上を見上げると,そこには腕を組みながら仁王立ちしたライトグリーン色の髪と茶色の眼を持ち、尚且つ頭に猫の様な耳が生えた一人の少年が立って居た。

「誰?」

「よくぞ聞いてくれた! 俺はこの村を仕切る、バンチョ―・ロロ!!」

『いや、そこまで聞いていないが』とカレンが言う前にロロと名乗る少年は岩から飛び降り、カレンの前に着地する。

そして彼が近付いて来て分かったが、カレンはロロの眼の瞳孔が普通の人間よりも縦に細く、目尻が下に下がっていることも気付く。

「お前か~、この村に来た〝二人目〟のよそ者は~~~」

「(〝二人目〟……………?)」

顔をのぞみ込むように近付き、ふてぶてしい態度で接するロロに対してカレンは接し方より、ロロが今言った〝二人目〟の方が気になった。

「!  ――――君……今、二人目って!」

勢いよく立ち上がったカレンは、ロロの肩を掴む。

「僕たちより先に『カム―シャ』に来たのは、長い金髪の女の子だった!?」

「な、なんだ!? おまえら知り合いなのか!?」

動揺したロロに目もくれず、問い続けるカレン。

「長い金髪で、蒼い目をした女の子だったんだよね!?」

「あ、ああ。そうだよ。そいつがどうしたんだよ?」

ロロの答えにやっと光が見えたカレンは、彼女が何処へ行ったか尋ねる。

「それで、その子は何処に行ったの?」

まるで子供のようなカレンの期待に溢れた目を見たロロは、ニヤッと笑う。

「ふっふっふっふっ、知りたいか?」

肩を掴まれていたカレンの手から離れ、勿体つけるように焦らすロロ。

「うん! 知りたい!」

とバカ素直にカレンが答えると。

「そうか! じゃあそれは俺に勝ってから聞くんだな!!」

「へ?」

ロロの予想外の発言にカレンはキョトンとする。

「その女の行き先を聞きたいなら、このバンチョ―・ロロに勝ってからにするんだな!」

あっはっはっはっは、と高笑いし、困惑するカレン。

「えっ、だってさっき、困っているなら俺にまかせろ! って?」

「ああ! だからその協力を得るためには、俺様に勝ってからじゃないとだめなのだ!!」

まるで後から取って付けたような発言で、カレンに勝負を吹っ掛けるロロ。

「…………」

このむちゃくちゃな吹っ掛けにカレンは少し考え込むが金髪の少女の行き先を知るには行き先を知っているロロに勝つ以外方法が見当たらない為、他に選択肢は無かった。

「わかった。勝ったら教えてくれるんだよね?」

覚悟決めたカレンはロロに再び問い掛け、その返事にロロはまたニヤッと笑う。

「ああ、勿論だ♪」

余裕の表情を見せ、ロロは楽しそうに答える。

「じゃあ……」

身を構えるカレン。

「ああ、始めようぜ……」

同じく、身を構えるロロ。カレンは辺りを見渡し。

「えっと……ストライク!!」

自身の魔装器のコアの名称を呼ぶとそれに応えてコアが何も無い所から飛んで現れ、カレンの手の平に止まり、カレンは即座にズボンにぶら下げていたガジェッタ―を取り出して、コアをガジェッタ―に差し込む。

                    『REGIレジINイン

声と共にガジェッタ―の上から姿形を形成し、盗賊たちを撃退した時と同じ、大きな剣の姿を現した。

「(……あの時は戦いに夢中で気付かなかったけど、この剣……もの凄く軽いな)」

以前これを持った時は戦いの所為でゆっくり眺めることが出来なかったが、カレンはこの機に自身の魔装器を観察する。目測でいうと全長は180cm以上、刀身の横幅は50cm、厚さは5cmといった、大きい上に分厚くてとても重そうな外見が特徴の大剣。

そんな外見を持つ魔装器を改めて持ってみると、見掛けに反して剣は綿の様にとても軽いようだ。

「な、な、なんだよそれ!? なんなんだよ!?」

見た事が無い物を見た様な分かりやすいリアクション取り、動揺を隠せないロロ。

「魔装器って、らしいよこれ」

ロロの動揺を解くために、カレンは親切に教える。

「ま、魔装器? それが?」

はじめて見るのか、珍しそうにカレンの魔装器をマジマジと見詰めながらロロは警戒をする。

「ま、まぁいいさぁ。相手が魔装器だろうと昨日徹夜で作ったこれで!!」

腰に掛けて合った、鞄から何か取りだすロロ。

「ロロ特製お手軽爆弾!!」

取り出した物をカレンに見せつけるように前に出し、自分が作ったとわざわざ伝えるロロ。

「何それ?」

「良くぞ聞いてくれた! これは昨日の徹夜でようやく完成させた、小型爆弾だ! いや~~ここまでのサイズにするのは苦労したな~~」

「そうなの?」

「ああ! なんたって火薬の量と導火線の配置がなかなかうまく決まらなかっくてよ~~~!」

「それでそれで」

「それでな~~~って……、そうじゃね!!」

戦いの中でのん気に話をしている事に気付き、我を取り戻すロロ。

「とにかく! こいつの威力を見よ!!」

振りかぶったロロは、カレン目掛けて導火線に火が付いた特製爆弾を投げ付け。カレンはそれを横にずれて避ける。爆弾はカレンを通り過ぎて地面に落ちる。

「!!」

爆弾は地面に落ちた後、瞬く間に爆発し、爆発した所の地面はポッカリと凹んで、土は小さい土の塊に成り、上からパラパラと落ちた。

「どうだ!! このサイズでこの威力!! 喰らったら只じゃあ、すまねーぞ」

確かにあの小さな物であの威力とは思えない代物だった。ロロは自慢そうに喜ぶ。カレンは爆発した所を見ていると。

「へへっ、どうだ? 降参するならしてもいいぞ―――?」

まるでもう勝ったかのように誇らしげにロロはいきなりカレンに降参を薦める、だがカレンは。

「降参は……しないよ!」

「!」

「君に、彼女の事を聞き出すまで逃げたりはしない!」

怖気など微塵も感じさせないカレンの強気な態度にロロは目を丸くする。

「ま、マジでやり合う気か?」

自分の爆弾の威力を見ても降参しないカレンに驚くが、間を置いてロロはゆっくりと顔を俯いて、不敵に笑う。

「いいぜ………そっちがその気なら――――」

言い終える前にロロはカレンの方に顔を向けるとそこにカレンは居らず。いつの間にかロロの頭上に飛び上がっていた。

「せいっ!!」

空中でカレンは大きな剣を力の限り振り下ろす。

「ぬわっっ!!」

持前の反射神経でロロは後ろに飛び下がって間一髪で避ける。一方振り下ろされた剣は地面を叩き割り、その光景を目の当たりにして、あれを喰らったらタダじゃ済まないと若干青ざめたロロはいきなり不意打ち的に斬りかかった来たカレンに対して。

「あ、あ、あぶねぇな!! いきなり!! 急に斬り掛ってくるな!!」

勝負だと自分から吹っ掛けたくせにロロは思わぬ反撃を喰らいそうになった事につい怒鳴ってしまう。

「…………………」

怒鳴られた事は気にせずカレンは黙って剣を持ち直し、再び構える。同時にロロの方も体制を立て直す。

「しょうがねぇ………だったら、俺様の実力を………とくと思い知らせてやるぜ!!!」

すぐさまロロは鞄から数個の爆弾を取り出し、カレンに向かって投げつける。カレンはその爆弾たちを掻い潜って避ける。

「ッ!」

放たれた爆弾は次々と爆発して、粉塵を撒き散らす。その中でカレンはロロに接近するがロロはまた爆弾を取り出し、カレンの前の辺りに放り投げる。

「!!」

慌てて後ろに下がり、爆発から逃れようとするカレンにロロは不敵そうに笑う。

「近づけさせないぜ!」

爆弾は間もなく爆発し、カレンはとっさのバックステップでどうにか爆風から逃れられた。

「くっ!!」

思うように近付けないカレンは焦りを感じる。それに対してロロは自分が優勢だと感じて、笑みを浮かべつつ、次々と爆弾を投げ付ける。

「っ!!」

状況を打開しようとカレンは、向かって来た爆弾の一つを打ち返す。

「なぬっ!」

打ち返した爆弾はロロの方へ飛び戻って行った。

「ぬおっっ!!」

思いもよらない爆弾の帰宅にロロは慌てて横に飛んで避けた。

「っ!」

爆弾はロロを通り過ぎて爆発し、難を逃れたが慌てて飛んで避けた為、着地の際、ロロは体勢を崩した。

「今だ!」

その隙を見逃さずカレンは一気に接近する。

「甘いぜ!!」

しかし、カレンの接近を読んでいたのか、ロロは一個の爆弾を懐から取り出し、カレンに投げ付けた。

「!」

目の前に爆弾が飛び出たのでカレンは慌てて、剣を垂直に振り上げて爆弾を打ち返したが。

「あ………」

勢い余ってか、カレンは振り上げた剣をスルッと手を滑らして上空に放り投げてしまい。このアクシデントにはロロの方も予想外だったが。

「へっ、これでお前の獲物は無くなったな…………」

「……………」

不運にもカレンは唯一の武器を無くし、頬に一筋の汗を流す。そんなカレンの焦った表情を見てロロは、勝利を確信したような笑みを浮かべ、そしてまた鞄から爆弾を取り出す。

「じゃあ………これで終わりだ!!!」

そして、カレンに向かって爆弾を放り投げようとした瞬間。

「!!!」

爆弾を投げ飛ばす寸前にロロの頭の上からカレンが上空に偶然放り投げてしまった剣が、ロロの頭に落ちて来て、剣の剣背部分が後頭部に当たった。

「……………」

「かっ………かっ………」

唖然とするカレン。片やあまりの痛さに声にならない声を出すロロ、カレンに向かって投げ飛ばす筈だった爆弾をポロっと自分の足元に落としてしまい、爆弾の導火線の火は火薬部分に到着し。

「!!!」

追い討ちのように足元で爆弾が爆発し、巻き上がる粉塵が引いた後、そこには黒焦げたロロが立っていた。

「…………」

バタッっとそう経たない内にロロは倒れ、唖然と眺めていたカレンはハッと気付いて、ロロの元へ慌てて駆け寄る。

「だ、大丈夫!?」

しゃがみ込んでカレンは心配そうに身体を揺さぶって声を掛ける。

「………………」

だが返事がない。カレンはロロの命が危ないと思い、誰かを探そうと立ち上がった時。

「すいませーーーーん!!」

「?」

声が聞こえた方に視線を移すと、遠くから人影がカレンたちの方に向かって声を掛けて走っていた。

やがて、その人影はカレンたちの所までたどり着いた。


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