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ユニヴァース  作者: クモガミ
度重なる出会い
47/125

ロック・プートン

今度こそはと撃ったビームは目標に命中すると……思いきや。

「っ!??」

運が悪いのか或いは撃った本人の腕が悪いのか、それとも両方重なったのか、鋼鉄をも溶かす幾多のビームは二度も翼が生えた三角形の魔物達の間と間を僅かな壁の隙を通り抜けるように外れてしまい、同じ光景を二回も見たカレンはさすがに強く動揺してしまった。

「パロッパロッ!」

自分達に向かってビームを二度も放ったカレンを見ながら、『避けるまでも無い』と言いたげそうなニヤリ顔でカレンを馬鹿にして笑う様に鳴いた、翼を生やした三角形の魔物達は、あと数メートル進めば、カレンのところに辿り着くまでの距離に近付いていた。

更には速度を早め、同列に居た獣系の魔物達を追い越して先頭に乗り出し、次にはカレン達と同じように空を飛ぶ魔物達は陣形を広く展開し、小さな身体を重ね合って空を飛ぶ壁のような陣形を作り出した。

「(び、BEAMビームCANNONカノンじゃ、あの小さい魔物には当たらない!)」

何故こちらの攻撃が当たらなかった訳は、現在狙った標的が今まで攻撃して来た標的よりも小さ過ぎる為、『BEAMビームCANNONカノン』では極限に当て難いとカレンは今になって気付いた。

「パロパロッ!!」

ほんの少し前までは遥か遠くに居た魔物の大群の一部が、今は突進を行なう宙に浮かぶ壁のようにカレンを間近に追い詰め、獣系の魔物達より一足先にもう眼と鼻の先の距離まで来た空を飛ぶ三角形の魔物達は、小さな口を開いて見た目に因らずかなり大きさを誇った鋭い牙を露わにして、その牙で一斉にカレンを喰い付こうとした。

「くっ!!!」

自分の身体よりもデカイ大剣を側面にして盾にするような感じで前に翳し、空を飛ぶ三角形の魔物全匹の牙を漏れなく受け止めたが、相手の攻撃の衝撃で足を後方に引きずられた。

「てぇい!!」

「パロロっ!?」

負けじとカレンは、次はこちらが押し返すぞと腕に力一杯入れて、大剣に喰い付いた魔物全匹を追い払う様に薙ぎ払った。

「ガウガウッ!」

「っ!?」

薙ぎ払った直後、タイミングを計ったかのように今度は獣系の魔物達の5匹程が飛び掛り、牙は使わず、手に生えた鋭い爪を使って、カレンを引き裂こうとした。

「くぅ! ぬぅ! がぁっ!!」

連携染みた魔物達の時間差攻撃に何とか反応しきれたカレンは大剣を素早く引き戻して、再び盾にして攻撃を防ごうとしたが獣系5匹の突進で勢い付いた、重くて鋭い爪の引き裂き攻撃が予想以上に強く、一発ずつ喰らう毎に全身が後方へ押し出され、そして、最後の一撃に耐えきれず、カレンは大剣ごと吹き飛ばされる。

「つぃぃぃっ!」

後方にはアイシャ達が居るので、魔物を引き付ける囮役がこれ以上後ろへ下がったら彼女達に危害や妨害を与えさせてしまうかもしれないと吹き飛ばされた瞬間、脳裏にその事が過ぎって、カレンは大剣を地面に突き刺して身体にブレーキを掛けて、意地で後進を無理矢理止めさせ、瞬時に地面に跪いても着地し、急いで態勢を立て直そうとしたが。

「ガウ! ガウガウ!!」

「なっ! まだ、来る!?」

顔を上げれば、次に待っていたのは第二波目の攻撃を仕掛けて来た、五匹の魔物達よりも少し遅れて来た獣系の三匹の襲撃であり、カレンは迫り来る第三波に対処しようとしたが、無理な着地が原因で身体が意識とは裏腹に直ぐには付いて来れず、飛び上がって空中から猛襲する魔物達をカレンは地面に跪いたまま、ただ見上げる事しか出来なかった。

「「「!!!?」」」

「!」

獣系三匹の牙と爪がカレンに届く寸前、逆方向から10本の矢が急遽乱入し、獣系三匹は空中に居たのが仇と成って避けらず、真正面から飛んで来た10本の矢に各急所を射抜かれ絶命し、カレンに傷一つ付けられぬまま、カレンの頭上を通り過ぎ、地面に滑り込んだ。

「カレン、逃げ回れ! 少しでも相手との距離を取って、時間を稼ぐんだ!」

「わ、分かった!」

獣系三匹をまとめて倒した、10本の矢を発射させたのは四人の中で唯一の弓の使い手のロロであり、宣言通りちゃんと援護したロロは突っ立って居ては危険なので、戦って魔物を引き付けて時間を稼ぐ事より逃げて時間を稼いだ方が良いとカレンに指示を出し。

戦闘中なので振り向けないが、耳の後ろから聞こえたロロの発言から推測するにアイシャの強力な一撃はあともう少しだとカレンは悟り、跪いた身体を立ち上がらせ、大剣を持ち直し、続いて大剣の矛先を今度は全匹一丸となってハイスピードで、突っ込んで来る空を飛ぶ魔物達と獣系の魔物達に向けて、取っ手の凸型トリガーを連打する。

「「!!」」

しかし、当てる気がないのか、カレンは魔物達の頭上や真下、左右にビームを乱射する、それに対して自分達にはカスリも当たらなかったが無茶苦茶な方向に走り抜けるビーム攻撃に驚いた魔物達はつい足を止めてしまい、進行を停止してしまう。

「こっちだ! こっちに来い!!」

ビームを乱射させながら魔物達を自分の所だけに誘い込むように言葉で手招きしてロロ達から今よりもっと離れるカレン。

この行動と当てる気がなかった思われるビーム攻撃から察するにカレンの狙いは魔物達の進路変更だったようで、ビーム攻撃は牽制として、魔物達の足を一時的に止めさせる布石で、そして、相手の注目を一層に強めて、相手の標的を自分一人だけ絞らせ、自分の方に誘き出させようとするのが狙いらしい。

「パロパロ!!」

「ガウガウ!!」

「(よし、来た!)」

狙い通り魔物達は目標をカレンだけに絞り、ロロ達の事など眼中には入れず、二人から遠く離れた所へ逃げながらビームを発射し続けるカレンの背中を追った。

「(さて、この後どうするか? あの数ではいくらロロの援護だけじゃ足りない……とは言っても僕一人ではあの程の数を一遍に相手仕切れない……どうする?)」

二人から十分に離れた場所に来たカレンは足を止め、逃げるのを中止し、振り向いてもう一度、接近しつつある合計約30近くの魔物達に眼と大剣の矛先を向けて、これからどう対抗するか、状況を見極め、冷静に作戦を練り出そうとした。

「(トリガーを二回連続押した後、押しっ放しにしろ!)」

「(っ! こ、この声は、レクサス!?)」

考えながら意識を目の前に事に最大限に集中した一片の油断も許さない緊迫した状況の中、それを崩すようにまた頭の中で不意を突く謎の声もといレクサスの声が響き、その所為でカレンは頭の中で考えていた色々な作戦が全て吹き飛んだ。

「えっと……トリガーが二回押した後、押しっ放しにする?」

考え込んだ作戦や戦闘への集中力、雰囲気全てを台無しにされてもカレンは現在と今まで似たような状況でいつも助言を話してくれるレクサスの言う事を無条件に信じて大剣の取っ手に在る、凸状のトリガーを二回押してそのまま押し続けた。

「!」

カレンはレクサスの言われた通りに実行してみると、大剣の刃が中央から左右に大幅に別れ、空いた広い隙間から小さい光の弾が無数に広範囲に飛び散った。

「「「「「!!!!!!!」」」」」

無数に飛び散った光の弾は獣系の魔物達よりも移動速度が速い為、先頭に居た空を飛ぶ三角形の魔物達に直撃し、さっきまでは全然『BEAM・CANNONビーム・カノン』の一発も当たらなかったのに、レクサスの言われた通りの方法から飛び出した光の弾には嘘のように空を飛ぶ魔物達を次々と射抜いた。

「当たってる! ……でも、これは?」

雨の如き降り注ぐ光の弾は小さ過ぎてカスリもしなかった空を飛ぶ三角形の魔物達を既に大半を堕としてしまう。

弾が当たらない隙間なんて微塵もないと思わせる攻撃にカレンは、攻撃が当たった喜びとは別にこれは何なのかと疑問を抱くと、それに答えるように『ガジェッター』の剣格部分に在る水晶なような物、正しくは『ランプ』から文字が浮かび上がった。

「『BEAMビームBALKANバルカン』? 『BEAMビームCANNONカノン』とは違う、別の攻撃……」

浮かび上がった文字にはそう書かれており、カレンはトリガーの押し方によって、ビーム攻撃が変化するとレクサスの助言のお陰で知る事が出来た。

「(これなら、イケる!)」

「パッパロッ! パッパッ!!」

BEAMビームBALKANバルカン』の攻撃範囲なら対抗出来ると確信したカレンは、トリガーを押しっ放しにして、光の弾を放出し続け、相手の牙が届かない間合いから空を飛ぶ三角形の魔物達を一気に殲滅させた。

「ガ、ガウガウ!!」

「!」

先頭に居た小さいが空を飛べて、何より素早くて頼りにもなる種族の違う仲間が全匹瞬殺されて、それを目の当たりにした獣系の魔物達は大損害の戦力低下に意表を突かれて急停止し、このまま突っ込んでカレンの相手をしたら自分達も殲滅されると思ったのか、狙う目標を急変更し、アイシャ達の方へ走って行った。

「行かせるかっ!」

アイシャ達の所へは行かせまいとカレンはトリガーから指を離して、大剣を元の形に戻し、そして、両手で大剣を自身の頭上に振り上げ、次は『力のマナ』を練り込み、その次は練り込んだ『マナ』を大剣に流し込んだ。

剛破神ごうはじん!!」

力一杯大剣を振り下ろしたカレンは刃の部分を地面に叩き付け、流し込まれた『力のマナ』はうまくコントロール《制御》された結果、風の塊と成り、地面に着いた衝撃で大剣から解き放たれ、地中に入り込んで地面に一本の線を作りながら地面の中を駆け走り、突進している獣系の魔物達の先頭ら辺に向かって、斜め後ろから接近した。

「!!!」

地中を駆け抜けた風の塊は、先頭を走っていた魔物達の真下まで辿り着いた途端、急に膨れ上がる様に爆散し、先頭と先頭の後ろに居た、合わせて計4匹の獣系は爆散で生まれた衝撃波とついでに爆散よって粉々になった岩の破片も一緒になって4匹を吹き飛ばした。

「ガ、ガウ! ガウガウッ!!」

今度は同族がやられて、獣系の残りはやられた同族達を心配して横目で様子を窺い、確認して動揺しながらも停止は決してせず、むしろ自分達の意地を見せつけるかのように今よりも、もっと速度を底上げして、まるでやられた仲間達の犠牲を無駄にしない為にも決死の表情で、アイシャ達に襲い掛ろうとした。

「……先が見えぬ、闇の果てに待ち受ける、望む者、拒む者どちらも共々、千の叫びと共に〝冥〟へ引きずり込む、魔の手!」

詠唱を続けていたアイシャは、やっと詠唱が終わったのか、閉じていた目をゆっくりと開いて、現在の状況を把握する。

「ロロ、私の隣に!」

「お、おう!」

進路変更して自分達の方へ気迫溢れた形相で接近して来る残りの獣系達を向かい撃とうとしたロロであったがアイシャに呼び出され、即座に強力な一撃の準備が整ったと察知し、すぐさまアイシャの隣に並んだ。

デーモンハンド!!」

仕上げの魔法の名前を発すると、アイシャを中心にロロ達の足元から大きな黒い魔法陣が出現し、そして、黒い魔法陣から何十本の真っ黒な腕が伸び出し、その何十本の腕は現れては直ぐ手を握り拳して、当初の半数以下になってしまったまだ健在中の獣系達の元へ次々と飛んで行き、拳の雨を降らせた。

「「「「「!!!!!!!!」」」」」

無我夢中に近い心境で突っ走っていた残りの獣系達は、アイシャの黒い魔法陣から伸びて来た真っ黒な腕達にあと一歩手前で追い返されるように一匹残らず殴り飛ばされ、そのまま受身を取れず地面に叩きつけられた獣系達は志半ばにノックダウンされる。

「よっしゃ!!」

「ふぅ……カレン、無事?」

「うん! 僕なら大丈夫だよ!」

大群から分離しても40近くも居た魔物群れを撃退して、手をパーからグーにして喜びの掛け声を叫ぶロロとは別に詠唱中はずっと目を閉じていたので、囮役のカレンがどうなったのか心配して、安否を確かようと周囲を見渡すアイシャに二人の元へ駆け寄って、自身が無事であることを元気な姿を見せて証明するカレン。

「これで、全員無事だな!」

「いや、まだミツルギの方が……」

襲い掛かって来た魔物群れを倒して、カレンとアイシャ自分を含めて三人無事である事に安心仕切ったロロは、もう一人の人物の存在をすっかり忘れており、カレンはミツルギの事を話そうとした瞬間、当人のミツルギが一瞬にして、カレン達の目の前に現れた。

「ふむ、さすがに無事のようだな、カレン」

戦っているのに汗や疲れ等、微塵も感じられない実に平静そうな姿で戻って来た理由は、発言から察するにミツルギもカレンの安否を確かめに来たようだった。

「ミツルギ!」

「うぉお!? お、お前、何時の間に!?」

笑みを浮かべるカレンは登場の仕方には一切気にする様子は無く、それよりも一人で戦っていたミツルギが無事で良かったと安心するが、それとは異なって、神出鬼没な登場の仕方にロロは取り乱すぐらいビックリした。

「あれっ? 魔物はどうしたの?」

「大方倒したぞ、ほら」

お互いの無事を確かめるとカレンはミツルギが戦っていた魔物大群はどうなったのかと気になって、見る限り怪我など何処にも見当たらない本人に尋ねるとミツルギは殆ど倒したと発言し、証拠に残った魔物達が居る所を指で指して示した。

「おおっ! もうあれだけしかいないのかよ!?」

ロロは驚愕した、何故なら指が指した場所には魔物はもう一目で数えるぐらいしか居らず、127匹も居た魔物達が僅か数分で15匹しか、そこに立って居なかったのだから。

「あんだけなら、こいつは楽勝だな!」

「ドルドルッ!!!」

「?」

沢山居た魔物は最早見る影もなく、残り15匹しか居ないのなら、もう勝負は決まったなと楽観的になって、油断しているロロにその残った魔物達の中でまだやる気が有って、外見は幾つ物の岩がくっ付いて出来た球状の岩の塊で下の方には細い足がはみ出ており、そして球体の中央にはポッカリと空いた小さい穴から顔を覗かした変な魔物が、ロロ目掛けて自身の岩の一つを砲弾のように投げ飛ばした。

「ど、ど、わったった!?? な、何だ、あいつは!!?」

油断しきった自身目掛けて飛んで来た岩の砲弾に眉を最大限に上に上げて、眼を疑って仰天しながらも飛び跳ねて器用に避けたロロは、想定外の方法で岩を投げ飛ばして来た変な岩の塊の魔物に眼を付ける。

「ロロ、よそ見しちゃいけないよ!」

「わ、悪かったな!」

まだ戦いは終わってもいないのに油断して、オマケによそ見もしていたロロにカレンは珍しく少々吊り目になって注意し、これにも予想外だったロロはやや不貞腐れた顔で自身の落ち度を認めながらも反論する。

「気を付けて、あの魔物は『ロック・プートン』! 自分の身体に幾つも岩をくっ付けて、敵の攻撃からは身体に付いた岩で身を守って、自分が攻撃する時は身体に付いた岩で敵を攻撃すると言った、攻守共に厄介な魔物なんだ!」

皆に気を配りつつ、アイシャはさっきのロロの投げ掛けの疑問に答えるかの如く、変な岩の魔物の正体と戦闘の特徴を明かし、危険性を露わにさせた。

「ドルッ!!」

「!」

説明が終わった途端、早速他のロック・プートンも自身の岩を岩の砲弾のとして投げ飛ばし、狙ったまとはミツルギだった。

「フッ」

真正面から降って来る岩の砲弾にミツルギはまたしても嘲笑うかのように鼻で笑い、しかも、その場から移動する素振りも見せなかった。

「ミツルギッ! あぶなっ――――」

逃げる気がないと感付いたカレンはもう遅いが避けるよう、叫ぼうとしたが、それよりも早く、当のミツルギは逃げない代わりに流れるような動作で、顔面に降って来た岩の砲弾を剣の爪先でソッと突いた。

「「「!!」」」

爪先で軽く突かれた岩の砲弾はたったそれだけで弾道が大きくズレ、命中地点のミツルギには当たらず、上昇して通り抜け、約50メートル程の間合いが在った後ろ壁に衝突し、岩が重力に従って、落ちて行くまでを目撃したカレン達は何とも信じられないと言いたげな表情に変わっていた。

「け、剣の爪先だけで……」

「岩の軌道を……」

「変えた……?」

間近で一部始終を捉えていたロロ、アイシャ、カレン達三人はミツルギの神業と言っても過言じゃない物体への弾き技に揃って見惚れるぐらい唖然とした。


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