127匹 VS 4人
魔物の気配を感じたとミツルギの発言が的中するように空間内で一番大きな穴の奥から数えきれない程の足音が四人の耳に拾われた。
「こ、この足音は…?」
「魔物の物だね…恐らく」
「どんどん、こっちに近付いて来る!」
ドドドドドっと地震を連想させる、無数の地面を蹴る音にロロは『この音の正体は?』と誰かに尋ねるように呟き、それをご丁寧にアイシャが魔物の足音だと答え、時間が過ぎいくにつれ、次第に足音が大きくなって、足音の発生元の魔物達が自分達の方に迫っているとカレンは皆に知らせる。
「っ! あ、あれは!?」
全員が魔物の足音が聞こえる巨大な穴の奥を睨めっこするように見詰める中、ロロが穴の奥に何かを捉えた。
「ま、魔物だ!!」
「「「!?」」」
ロロが捉えたのは自分達が居る空間の方へ走って来る魔物達の姿のようで、ロロの発言に反応して、視線をロロに移し変えたカレン達にはどんなに眼を凝らしても魔物達の姿を全く捉える事が出来ずにおり、ロロ一人だけが肉眼で遥か先に居る、暗黒に染まった闇の向こう側の魔物達の存在をいち早く、捉えていた。
「ロロ、見えるの?」
「あ、ああ、何とかな……」
「数は分かる?」
「ちょっと待てよ…えっと、ひぃ・ふぅ・みぃ……っ! おい、マジかよ!? 100はくだらねぇぞ、あの数は!!」
三人を除いて、一人だけ魔物達の姿を何とか捉えているロロにアイシャは魔物達の数を調べるように問い掛けると、なんと魔物達の数は100以上のようだ。
「ふむ。 正確に言えば、127匹だな!」
訂正するようにミツルギは感じる気配の数を数えて、魔物達の総体数を断定する。
「127匹か……!」
「どちらにせよ、数が多いって事だけは確かだね!」
正確な数を聞いた、カレンとアイシャは遠く離れた人間よりも何十倍もでかいトンネルの中の先を見詰め直し、こちらとの距離を縮めつつある魔物達に対して、気を引き締めた。
「見えて来たぞ」
トンネルの方に視線を一直線に向けたまま、視線を崩さずにミツルギは呟いた。
そう、遂にミツルギ達がやっと肉眼で捉える距離まで、トンネルの奥から魔物達がその姿を現わしたのだった。
「数字通り、凄く多いね」
「だろ? でも…ちょっと気になる事が有るんだ。 最初に見た時から思ったんだが…気の所為か、何かあいつ等…妙に物々しいって言うか、何かいきり立っているっていうか…そんな、感じに見えないか?」
とうとう暗闇の世界から現れた情報通りの魔物達の量に、やっとこの眼で姿形を捉える事が出来たカレンはその数の多さを、身を持って知り、戦ったら一筋縄では行かないという意味で『凄く多い』と呟く。
すると、カレンの言葉に同意したと同時にロロは見た時から気になっていたという、魔物達の様子が何処かおかしいという事をカレン達に伝える。
「……ホントだ! どうしたんだろ?」
確かにロロの言う通り、トンネル内を駆け抜けている魔物達は姿形、種類や種族もバラバラだが、どの魔物も何故か、落ち着きを失くし、怒気の相を浮かべていた。
「きっと、地震の影響で興奮しているんだよ」
「だろうな。 今のあいつ等は興奮し過ぎて、冷静さを失っている」
魔物達の不自然な様子の原因は、地震の影響の所為だとアイシャは推測し、その推測を確定するようにミツルギが、魔物達の気配を通じて魔物達の心情を察する。
「に、逃げないか?」
「無理だな。 人間の足では魔物の足には勝てない…すぐ追い付かれる」
「気を付けて! ああなった魔物は見境なしに襲ってくる!」
「ちっ! 結局、戦うしかねぇっていうのかよ!?」
逃げる事を提案するロロだったが、ミツルギに無理だとあっさり一蹴され。
興奮状態の魔物は見境なしに人を襲うとアイシャは、全員に用心するよう声を掛けて気を配り、腰に掛けている銃のホルダーから銃を取り出して戦闘態勢に構え。
どの道、戦うしか選択肢は無いという現状にロロは舌打ちをして、鞄から弓矢を荒っぽく取り出す。
「カレン! ロロ! 先制攻撃で数を減らす! 私に続いて!!」
「おう!!」
「うん! ストライク!!」
戦いになる事は眼に見えているので、戦いが有利になる様にアイシャは先手必勝の事、先制攻撃で魔物達の数を少しでも減らそうとカレンとロロに自分に続いてと呼び掛け。
興奮しきった魔物達は興奮混じりに殺気も滲み出し、その無数に放たれた殺気を肌に感じたカレンは避けられない戦いだと悟り、ロロと一緒に先制攻撃を了承する。
自分も戦闘態勢になろうとカレンは腰に掛けていたツールの『ガジェッター』を取り出し、同時に『核』である『ストライク』を呼び出す。
そして、何も無い所から出現して、自分の方に飛んで来る『ストライク』を難なく掴み取り、『ガジェッター』の剣格部分に差し込む。
『REGI・IN』
『形を形成して、姿を映し出す』の意を持つ(世間では一般的にそう解釈されているだけ)『RESIST・INSTALL』の略を発したと共に、剣格部分の上から刀身が形成され、力を抑えた〝最初の状態〟『SAFETY・MODE』の魔装器が現れる。
「死の後に、肌を冷やす氷よ! 今、我に仇名す、かの者を凍て尽くせ!!」
体内に在る『力のマナ』を瞬時に練り合わせ、次に『力のマナ』のコントロールを補助してくれる魔法の呪文を唱えて『マナ』をうまく制御し、手本通りの魔法の発動条件を順に従って行っているアイシャに応じるように、周りから銀色の光が無数に溢れ出す。
一方では、魔物の大群を向かい撃つ為、ロロの方も弓に引いた一本の矢を魔物達の一角に狙いを定め、その矢の一本に『力のマナ』を流し込んで、〝魔術〟を出す使う為のコントロールを施し、『力のマナ』を流し込まれた矢は刃の部分に赤いオーラが宿った。
もう一方では、大剣の形をした『セフティ・モード』の魔装器を魔物の大群に狙いを付けて、刃先部分で標準を定めたカレンはアイシャの攻撃の合図を待ち……そして、その合図は間も無く、挙げられた。
「氷の砲撃!!」
「彗星!!」
「BEAM・CANNON!!」
最後の発動条件である魔法の名前を唱え、左手を前に翳して後に、斜め下に振り下ろしたアイシャの前に銀色の魔法陣が出現し、そこから複数の氷の刃が発射され、続いてロロもカレンもそれぞれの攻撃を放つ。
弓から放したロロの赤いオーラを宿した矢は、通常の3倍の速度で空中に赤い線を描きながら突き進み、一方カレンの方は『ガジェッター』の取っ手部分に在るトリガーを五回連続で押し、大剣の刃の部分が中心から左右に別れ、刃と刃の間に出来た隙間から5本の光の矢が連続で放射され、三人の攻撃は一斉に魔物の大軍へ飛んで行った。
「「「「「「!!!」」」」」」
先頭を走っていた魔物達の一角にアイシャ達の攻撃が直撃し、氷の魔法を喰らった魔物は氷漬けになり、光の矢を喰らった魔物は身体を射抜かれ、そして、赤いオーラの宿した矢は一体の魔物に突き刺さり、矢を通じて体内に入った赤いオーラは膨張するように眩い光を放ち、その所為で魔物の身体が赤く光った直後に、たちまち魔物の身体から赤い閃光の爆発が起こり、周辺に居た魔物達は赤い爆発に巻き込まれる。
「「「!」」」
広い空間内に爆音が響く渡り、攻撃はまず成功したと思ったロロ達であったが、爆発で巻き起こった粉塵の中から、運良くロロ達の攻撃から免れ、無事生き残った一体の魔物が猛スピードで駆けあがり、後ろに居る仲間の魔物達を引き離し、自分一体だけでトンネルを抜け、ロロ達の所までぐんぐんと迫って行った。
「来るよ!」
敵は一体だけだが、油断しないようにアイシャは全員に注意を掛けて気を配り、カレン、ロロ、アイシャは身構えるが、そんな三人を余所にミツルギだけが、無防備に前に出る。
「ミツルギ、危ないよ!」
「まさか、我が友カレンが魔装器使いだったとはな!」
一人だけ前に出たら危ないとミツルギに促すカレンだったが、当の本人は全く聞いていないのか、魔物が近付いているのも関わらず、顔だけを振り向かせた状態で話を持ち掛けた。
「お前、丸腰じゃねぇか! 危ないからさっさと下がれ!!」
「しかし、奇遇だ! 〝カレンも〟魔装器使いだというのは!」
すぐ傍まで魔物が迫って来る中、外見上、武器のような物は一切見当たらないのに、無謀にも前に出たミツルギにロロは、当然危険だと思い、すぐに下がれと警告するが、またしても当の本人は人の話など全く聞いていないのか、まだ話を続けていた。
「だ・か・ら! 下がれって、言って――……っ!」
緊迫したこの現状で人の話を聞いていないミツルギに腹を立てたロロは怒り混じりにもう一回下がれと警告しようとしたその時、ロロの眼に猛スピードで走っていた4本足の獣系の魔物が飛び上がり、ミツルギの後頭部目掛けて噛み付こうと大きく口を開けて鋭い牙を覗かせているのが映った。
「ミツルギ、危なーーい!!!」
獣系の魔物は一直線にミツルギの頭を狙って空中から急接近し、その危機をカレンは呼び叫んで知らせるが、何故かミツルギは背後から魔物の鋭い牙が迫っているのに一向に引こうともせず、それどころか余裕綽々と言ったような小さな笑みを浮かべた。
「!!?」
刹那、獣系の魔物の牙がミツルギの頭部まで到着まであと数cmの所で魔物の横から小さい謎の物体が魔物にタックルを喰らわせ、タックルによって吹き飛ばされ噛み付きを阻止された魔物は受身を取れずに地面へ叩き付けられ、あっけなく気を失ってしまった。
「あれは?」
魔物を吹き飛ばした小さい謎の物体をアイシャは眼を凝らして、確認しようとした。
「ふっ、心配するなカレン! 〝俺にも〟これが在る! ……ソード!!」
『心配しなくていい』とやっと顔を前に向き直して言った。そして、ミツルギは直ぐに上着の内側から何かを取り出し、続いて、何かの名前を呼び叫んだ。
「!」
ミツルギに呼ばれて、反応したのは今さっき魔物にタックルをお見舞いした、小さい謎の物体で『ソード』と呼ばれた謎の物体はミツルギの手元まで大きく飛び跳ねた。
「ミツルギ……………それって、まさか?」
難なくミツルギの右手に掴み取られた謎の物体を良く見てみると、両手と尻尾から銀色の剣が生えた灰色のサソリのような物体で、更にミツルギの左手が服の内側から出した物は、カレンの剣の取っ手のような形をした白く染まった『ガジェッター』とは少し違う、 青色に染まった剣の取っ手のような物であり、カレンはその二つを見て、ある言葉が頭の中に浮んだ。
「REGI・IN!」
カレンが頭の中で浮んだ言葉を言う前にミツルギは魔装器の起動開始の略を呟き、颯爽と右手に持っているサソリに似た物体を左手も持っている取っ手の剣格部分と思われる所に差し込んだ。
『REGI・IN』
続いて今度はミツルギの声では無く、青色の取っ手達の方から聞こえ、そして、その声と共に青色の取っ手の剣格部分の上から昇るようにみるみると形が形成されていき、やがて灰色の細長い剣のような形となった。
「魔装器!」
「あいつも魔装器使いだったか!?」
あの細長い剣のような物は魔装器だとアイシャは一目で見抜き、初対面でミツルギの名前すら知らないロロは彼も魔装器使いだという事に眼を丸くして驚く。
「ミツルギ、君も……」
「カレン、話は後だ。 今は目の前に敵に集中するぞ!」
遮るようにカレンの話を言い止めたミツルギはカレンの魔装器同様、剣としての鋭い刃が無い細長い剣の形をした魔装器を華麗に振るい、これから起こる魔物の大軍への戦いに集中すべきだとカレンの気持ちを切り替えるように促した。
「……そうだね!」
話なら後で幾らでも出来るとミツルギに発言のお陰で、思い直したカレンは今、余計な事を考えないでもうすぐトンネルを抜けて、こちらの空間内にやってくる魔物の大群に集中しようと大剣を構え直し、向かい撃つ準備を整えた。
「入って来たぞ!」
そして、ロロの声の通り、とうとう魔物の大群がトンネルを抜け、大きな波となって空間内に入り込み、4人の方へ怒涛の勢いで様々な魔物達が押し寄せて行った。
「縮地法」
誰にも聞き取れない声で呟いたミツルギは、次の瞬間、その場から姿を消し、前進する魔物達の眼の前に瞬間移動したかのように現れた。
「「「「「!」」」」」
突然、眼の前に人間が現れて、魔物達は眼を疑った。
「「「「「!!!!」」」」」
瞬間移動のような方法で魔物達の懐に飛び込んだミツルギは、細長い剣の魔装器を水平に振るい、数体の魔物をいとも簡単に薙ぎ払った。
「! あ、あいつ、何時の間にあんなところに!?」
さっきまで、そこに居たミツルギが一瞬に消えたと思えば、空間内に入って来たとはいえ、まだ約百メートル以上も距離が有った魔物の群れの中へ、一瞬にして移動した事にロロを含めて、カレンとアイシャも驚いた。
「って、あいつ! あんな所に行ったから、魔物達に囲まれてるぞ!!」
「おまけに今、攻撃なんてしたら彼を巻き込んでしまう」
思いもしない敵の出現と相手の度肝を抜かす程の不意打ちを喰らわせたお陰で猛突進していた魔物達は足を止めたが結果的に魔物の群れの中に一人だけ、入り込んでしまったミツルギは誰から見ても魔物達に囲まれてしまい。
しかも、魔物の群れの中に居て貰ったら、こちらの攻撃の巻き添えになってしまうかもしれないからアイシャ達は迂闊に攻撃できなくなってしまった。
「「「「ガウガウ!!」」」」
魔物の群れの中で孤立してしまったミツルギに八体の獣系の魔物が四方八方から飛び掛り、食い千切ろうとそれぞれの牙を向けた。
「………」
逃げ場無しの危機的状況にミツルギは慌てる様子もなく、それどころか、上半身は動かして、下半身は微動だにせず、自身の頭上に円を描くように細長い剣を振るった。
「「「「!!!」」」」
牙が標的に届く前にミツルギが振るった一本の剣が四方八方から襲い掛かってきた8体の獣系の魔物をたった一太刀で打ち払った。
「三日月!!」
攻撃の手を休まず、ミツルギは前方に居る魔物に向かって、刀を振ってまたもや線を描き、その宙で作った線を三日月のような形に描いた。
「「「「「!!!!!!」」」」」
次の瞬間、ミツルギが宙に作った三日月形の線が三日月形の斬撃と成って、前方にいた魔物達を地面ごと吹き飛ばし、斬撃によって吹き飛んだ岩の地面はしっかりと三日月状の形に抉られていた。
「パロパロ!!」
「ドルドル!!」
「ガウガウ!!」
「ぺペイ!ぺペイ!」
敵は一人だと油断して舐めて掛って返り討ちされた仲間を見て、種族は違えど同胞が何十体もやられて、頭に来たそれぞれの魔物達は独特の鳴き声を叫んだ瞬間に吹き飛んだ前方の方は除いて、ミツルギの後方と左右から数を掛けて、一斉に襲い掛かった。
「縮地!」
こうなることを予想していたのか、ついさっきの三日月形の斬撃は、相手への攻撃だけではなく、自身の逃げ道の確保の為に放ったようで、そこに居た魔物達が吹き飛んで事で前方が空いた所をミツルギはまた瞬間移動みたいな方法で移動して、左右後方から同時に押し寄せてきた魔物達から距離を取って、造作も無くかわした。
「気巧波!!」
相手の側の攻撃を凌いだミツルギは、即座に指を曲げて手の平を伸ばした右手を正拳突きのように襲い掛かって来た魔物達の方へ突きだした。
「「「「!!!!!!!!」」」」
突き出された右手から薄い水色の気の大きな塊が飛び出し、ミツルギへの攻撃を空振った所為で、避ける余裕がない魔物達を飲み込むように吹き飛ばした。
「さぁ、来るならもっと来い! まとめて相手になってやろう!」
敵を吹き飛ばした後、すかさず雄々しく剣を突き立てて、まだ残っている魔物達を挑発し、ミツルギは全魔物の注意を自分に向けさせようとした。
「グルルルルルル………」
人間の挑発を理解したのか、魔物の半数は挑発を真に受けて、怒りと殺気を強め、殺意を籠めた眼差しをミツルギに隠す事無く、向けていたが……。
「ガウガウ!」
「パロパロ!」
「ぬっ!?」
殺意の眼差しをミツルギに向けている魔物達とは別に、物量はこちらの方が圧倒的に上の筈なのだが、そんな事など全く関係無いようにたった一人で多くの同胞を倒してしまったミツルギにこのまま戦ったとしても、どうせやられるだけだと悟った別の魔物達は狙いを変えて、反対方向に居るカレン達の方へ、疾走した。
「カレン! そっちに行った魔物を頼む!」
「あっ……うん!」
ほんの少しだけだがミツルギの戦いぶりを見て、心の中で彼一人だけでも任せても大丈夫なんじゃないかと、そのような事を思いつつ呆けていたカレン達はこちらに向かって来る魔物達の相手をミツルギに頼まれて、我に戻ったカレン達はすぐさま武器を構え直して戦闘態勢に戻った。
「数は40ってとこか? 空を飛ぶ奴と獣みたい奴!」
まだ距離に余裕が有るので、ロロはこちらに来る魔物の数と種類を観察しながら、後ろに手を伸ばして鞄から矢を取り出し、弓に矢をセットする。
「足の速い標的には、これだ!」
弓に矢をセットしたロロは矢の刃の部分に『マナ』を流し込み、今度は赤いオーラでは無く白いオーラが刃に宿り、鋭く尖った矢先を小さな群れを成してこっちにかなりの速度で突進してくる魔物達に向けると思いきや、何故かロロは矢先を上空に向けた。
「流星!!」
白いオーラを纏った矢を上空へ放すと、空高く舞い上がった矢は自らの分身を何十本も作り上げ、数十本になった白いオーラを纏った矢達は方向転換を行ない、ロロ達の方へ突っ走っている魔物達を上空から降り注いだ。
「「「「「!!!!!!」」」」」
空から舞い堕ちる流星群のように白いオーラを纏った矢達は、走行中の空を飛ぶ翼の生えた黒い三角形の魔物と4本足の獣系の魔物をそれぞれ数体ずつ、真上から射抜いた。
しかし、全部を倒して訳ではないので同胞や仲間がやられても決して挫けず、それどころか残りの30以上の魔物達は弔い合戦のつもりなのだろうか、身体から発する殺気を更に強め走るのを止めようとはしなかった。
「(っ! まずい!)」
魔物達から放たれる眼に見えない殺気を肌で敏感に感じ取ったカレンは直感的に危険だと悟り、対抗しようとロロとアイシャの二人から離れるように大きく前に出る。
「ちょい待て! 前に出過ぎだぞ、カレン!」
「これで良いんだ! あの数で囲まれて僕ら三人だけで戦うのは危険だ! だから、僕が全力で彼らを引き付けるから、その間に援護と強力な一撃を!」
武器を持った普通の人間より厄介で、尚且つ数では圧倒的に相手が勝っている魔物達に対して、もしも囲まれてしまって、接近戦向きではないロロとアイシャを、自分と共に正面切って戦わせるのは、危険だと考えたカレンは二人に自分一人が囮になっている間に援護と相手の一気に仕留められる程の強力な一撃をお見舞いする事を要請した。
「…了解、任して」
「なっ!? アイシャ!?」
迷う素振りも無く、アイシャはカレンの要請をキッパリと承認し、ロロは自分よりも先に答えた、その返事に驚愕する。
「一人で、囮なんて危険過ぎるだろ! 此処は皆で戦った方が……」
「ロロの言いたい事は分かるよ。 けど、あの数で囲まれて、私達三人だけで各個撃破はとても難しいし、何よりリスクが高い! だから、此処はカレンの言った通りの戦法の方が背負うリスクは低くなるし、効率的にも良いんだ」
囮という危険な役目を背負わせず、皆で力を合わせて戦おうと反論しようとしたロロに対して、アイシャは手で待ったを掛けて反論を制止し、魔物相手に三人のみで戦えば自分達の背負うリスクは高いが、一人が囮になってくれれば、逆に背負うリスクが低いと述べる。
「アイツの言った戦法で、うまくいくのか?」
「100%は保障出来ない……けど、このまま普通に戦えば最悪、全滅って事に成り得るかもしれない。でも、誰か一人が囮という危険な役目を背負ってくれれば、その起こり得る最悪の事態を回避出来るかもしれない。そう考えたからこそ、カレンは例え自分が犠牲になろうとも、覚悟の上で自らその役目を引き受けたと思うんだ」
自分達が背負うリスクはともかく、カレンの言った通りの戦法で果たしてうまく事が運べるのかと注意深く尋ねるロロに最悪の事態を想定して、カレンはそれを回避する為に自ら危険な役目を背負ったと本人の気持ちを推測して、アイシャは述べた。
「……本当にそうなら、アイツの行為を無碍には出来ねぇな」
あくまでアイシャの推測上の話だが言われてみればカレンの性格上、有り得そうだと察したロロはカレンのお人好しの越えの自己犠牲的な行為に呆れを超越して男気に近い物を感じ、その気持ちも覚悟を無駄させない為にも自身も覚悟を決め、囮反対の気持ちを虚無の彼方へ投げ捨、表情と眼が真剣な物になった。
「カレン、危なくなったら逃げろよ! 俺も全力でお前を援護してやる、感謝しろよな!!」
「ありがとう、ロロ!」
優しい笑顔を浮かべて、ロロは自分が援護してやるとカレンの背中に語り掛け、 それを励ましと受け取ったカレンは顔を90度振り向かせ、感謝の言葉を笑顔と一緒に送った。
「アイシャ、お前は強力な一撃の方を頼むぞ!」
「OK」
それぞれの役割を決め合ったところで、カレンは自身が考えた戦法通り一人前線に立って、強烈な殺意を持って近付く、残り30匹以上は居る魔物達を待ち構え。
ロロとアイシャはカレンを援護しやすいよう斜め左右後方に立ち、三人は陣形を築いた。
「差別も隔たりも存在せず、在るのは冥界へ誘う黒き門…………………」
目を閉じて、呪文を唱え始めたアイシャの周りに無数の黒い光が溢れ出し、戦法上強力な一撃を任されたアイシャは周囲の黒い光から察するに〝闇〟属性の魔法を使う気であった。そして、囮役を背負ったカレンは敵と接触する前に少しでも敵の数を減らそうと空間内に押し寄せて来た魔物の群れの中で、一番小さくてしかも空を飛んでいる三角形の黒い魔物達に剣先を合わせ、大剣の取っ手部分に在るトリガーを数回押した。
「CANNON!!」
トリガーが押された回数だけ、大剣の刃と刃の間から数本の光の矢が放射され、鉛の弾丸よりも早く真っ直ぐに直進する光の矢はそのまま、標的の空を飛ぶ三角形の魔物に当たる。と思われた……が。
「!?」
光の速さで駆け抜けた光の矢は空を飛ぶ魔物達に一矢も当たるどころか、かすりもせず、ただ魔物達の間と間を綺麗に通り抜けただけで、虚しくも攻撃は失敗に終わり、カレンはその光景を目の当たりにして愕然とした。
「か、CANNON!!」
ビーム攻撃が全部外れた事で少々動揺してしまったが、めげずにカレンはもう一回、大剣から幾つもの光の矢を放射させ、また光の速度で光の矢もといビームは空を飛ぶ魔物達の懐まで飛んで行った……が。