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ユニヴァース  作者: クモガミ
度重なる出会い
44/125

もう一人の訪問者

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


その後、眩い光に包み込まれて同時に意識を失ったカレンは次に眼を覚ますと。

「ん……」

再び眼を開けばそこは眼を疑ってしまうような天変地異な空間もとい夢の中の世界とは違い、真っ暗な空間の中だった。

そこでカレンは夢の中と同じく、仰向けで寝ていた。

「此処は…ん?」

カレンが身体を起き上がらせようとした時。

暗くてよく見えないが自分の服の上から小さな小石や塵状の土のような物が零れ落ち、同時に自分の身体の下や周りには大きな土の塊がような物が大量に転げ落ちている事に気付いた。

「何なんだ、これ?」

夢とは思えない濃厚な夢を見た所為で、寝惚けてしまって思考がうまく働かず、直ぐには現在の状況を把握する事が出来ず。

カレンは若干、混乱状態になりながらも何とか自分の置かれている現状を把握しようと立ち上がって見通しが悪い真っ暗な空間の中を見渡す。

どうやらもう『暗通薬あんつうやく』の効力は切れたらしく、この暗闇の中での視界の悪さはその所為であったがフッと上を見上げるとある物が眼に映った。

「あれは……霧?」

かなりの高さがある空間の天上にはポッカリと風穴が空いた大きな穴が存在しており、その穴から白くて濃い霧が零れ出ていた。

「穴と……白い霧……」

見上げたまま、天上の穴と白い霧を見詰めながらカレンは現在、自分が置かれている状況を把握する為に今までの事を思い出そうと眉間にシワを寄せた瞬間。

誰かのある言葉の部分が脳裏を過ぎった。

「(……全員山脈の中へ落ちて行っただろう?)」

「(山脈の中は偶然にも洞窟となっており……)」

「(…お前達はそれぞれ異なる空間に別々に別れてしまった訳だ)」

つい先程まで居た、正確には気絶して見ていた。 

夢の中の世界で、会ったレクサスとの会話の一部を思い出したカレンは眼を見開いた。

「そうだ……僕は、山脈の中に落ちて来たんだ!」

夢の中の出来事を思い出したお陰で、少し前に大地震に襲われて足場が崩れ去り、大きな穴の中へ落ちてしまった事をようやく思い出したカレンは纏わりついていた寝惚けが吹き飛び。

もう一度、空間内を隈なく見渡した。

「(ロロ、アイシャはやっぱり居ない! 夢で会ったレクサスの言う通り、この洞窟の何処に居るのか?)」

空間内にロロとアイシャの姿が無いと確認したカレンは、光と闇が混ざり合ったような球体の姿をしたレクサスの話が正しければ、二人は自分も落ちた山脈の中に在る。

洞窟の何処かに居るのだと思いだす。

「(だったら、早く二人と合流しないと! 此処には強い魔物が居るんだ!)」

親切? に教えてくれたレクサスの話に因るとこの洞窟の中にも魔物が生息しており、しかも『水底の洞窟』で遭遇した魔物達より強い魔物が居るらしく。

二人の身の安否を心配したカレンは一刻も早く二人と合流しようとズボンのポケットから『暗通薬あんつうやく』を取り出して飲み、視界を良好にさせ、空間内に出口が在るかどうか、もう一度空間内を隈なく見渡した。

「(! 在った!)」

焦らずゆっくりと空間全体を見渡していると先程は見えなかったが『暗通薬あんつうやく」のお陰で壁に深く掘られたような穴を見つけ、それは空間内で唯一の出口の発見だった。

発見してすぐカレンは一目散に出口に向かって走り、暗闇が延々と続く、穴の奥を全力疾走で突き進んで行った。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


そして、しばらくカレンが穴の中に続いている通路を走って数十分が経とうしていた時。

ロロとアイシャを探す事で頭が一杯だったカレンの頭にある人物? が浮ぶ。

「そういえば、彼、レクサスは一体何者なんだろう?」

大の大人二人が並んで走っていけるぐらいの広さを持つ、洞窟の通路を走りながらカレンは夢で会った、外見は一見不気味なようで何処か神秘的な球体の姿をしたレクサスは一体何者なのか、ふと考えた。

「人間でも魔物でも虫でも無いって本人は言っていたけど……じゃあ彼は、本当に何なんだろう?」

あの宙に浮かぶ、日食が起きている太陽のような球体は自身の魂を具現化した姿だとレクサス本人は語ったが、外見が生物では無い上に自分の正体を明かさなかったともなれば、余計怪しさ爆発となり、カレンはレクサスへの疑惑の念を持ってしまう。

「声は……男性の物だったな」

聞いた限りではレクサスの声の低さは男性の分類に当たると、カレンは割り当てた。

「でも、行き先々で僕に助言を教えてくれているから……良い人なのかな?」

しかし、理由はともかく『水底の洞窟』、軍用都市『レイチィム』、そして、地下水道での戦いでカレンに色々助かるアドバイスを送っていた事は確かであるから。

カレンはレクサスに対して、決して悪い人ではなかったと囁いた。

「って……人じゃなかったんだっけ?」

自分の発言に間違いが在ったと、小さく苦笑いを浮かべて自分自身に突っ込んだ。

「……考えるのは後にしよう。今は早く二人に会わなきゃ!」

顔を左右に振って雑念を払い、余計な事を考えるのは止めるように気を取り直して、一秒でも早く二人の元に辿り着こうと、カレンは速度をもっと上げようした。

「!」

だがその時、暗闇が続く通路の先に、キラっと光る何かが視界に入った。

「(光った?)」

カレンは速度を急激に落とし、歩いて光った何かの元へ近付いた。

「うわぁ……すっごい綺麗!」

そして、光った何かの元まで近付き、それを拾い上げ、首の下辺りまで持って来ると、

暗闇の中でもハッキリと分かる程の輝きを放つ、美しいネックレスが眼に映り。

一瞬、カレンは男性にも関わらず、そのネックレスの美しさに思わず、見惚れてしまう。

「!」

如何にも高級そうな光輝くネックレスに目を奪われていると、暗闇で先が見えない通路の奥から物音が聞こえ、カレンは瞬時に我に戻った。

「なんだ?」

耳を傾ければ、ガタッ、ゴトッと何かが動いているような物音が立て続けに起こり続け、カレンはその物音が何なのかを確かめるべく、手にネックレスを持ったまま、物音の元へ近付いて行った。

「(……もしかして、ロロ達かな? それとも……)」

物音の発生源がロロとアイシャかもしれないと同時に魔物かもしれないと考えたカレンは、神経を研ぎ澄ませ、身の周りに注意しながら、ゆっくりと足音を発てずに闇の中でまだ鳴り響く、物音の近くまで歩き着く。

「これは…?」

物音を辿って着いた先はカレンが落ちた空間とは別のだが、似たような空間の中であり、そして、その空間の天上にもポッカリと風穴が空いていた。

だが、少し違う所が在った。

それは天上の穴の真下に小さい物から大きい土の塊が山のように積み重なっており、自然に出来た物では無く、まるで人工的に作くられたかのような物だった。

「(ッ! 誰だ!?)」

土の山の影から物音が聞こえたと一緒に何かの影が見え、カレンは土の山の影に隠れているその影の正体を確かめようと、慎重に迂回した後に目を凝らして、自分より先にこの空間の中に居た、存在の姿を捉えた。

「!? ひ、人だ!」

驚くべく事に土の山の影に隠れていた影の正体は、カレンと同じ人であり。

その人物は地面に無数に転がっている土の塊を拾っては土の山に次々と重ねていた。

「何処だ…何処に在るんだ?」

「(どうして、こんな所に人が…?)」

見て判別したが、物音の発生源はこの人物が土の塊を動かしていた音が原因みたいで。

後ろ姿で顔は見えないが、ブツブツと呟きながら地面に転がっている土の塊を大きさ関係無く、懸命そうに拾い上げた後に塊の下を丹念に見渡し、そして最後に土の山へ器用に積み重ねるなど、その人物はまるで何かを探しているようだ。

一方カレンは、まさか自分達以外にもこの洞窟の中に人が居るとは思いも因らず。

何故、このような場所に居るのか、不思議で仕方無かった。

此処に居る訳は知らないが、ともかく声を掛けようとカレンはその人物の背後に近付いて、恐る恐る声を掛けてみた。

「あの……何をしているのですか?」

「む…何だ、こっちは忙しいだ! 話なら後にしてくれ!」

此処(『白霧山脈ホワイト・マウンテン』)に自分以外の人が居るのにも関わらず。

その人物は声を掛けられても、カレンの事などは眼中に入らないのか、或いはどうでもいいのか、手を止めなければ、振り向きもせず『後にしてくれ』と言って、一蹴する。

「いや、でも…その、何が忙しいんですか?」

跳ね返されてもカレンは挫けず、もう一度声を掛けてみる。

「見て分からないのか? 探し物をしているんだ! 邪魔しないでくれ!」

「探し物? 探し物って一体何ですか?」

再び声を掛けてみても、その人物は一向に振り向かず、せっせと土の塊を拾っては積み重ねる作業を止めはしなかったが、〝何かを探している〟という事を聞き出せたカレンは探し物は一体何なのかを尋ねた。

「ネックレスだ!! 姉上から貰った大切な……」

「ネックレス?」

相手がまだ話している途中、目当ての物は、『ネックレス』と聞いたカレンは、視線をすぐ自分の手に向けた。

何故なら思い当たる物は既に持っていたから。

「…そのネックレスって、これの事?」

この空間に来る前に見つけた美しいネックレスをカレンは、見せ付けるような感じでその人物に差出した。

「何?」

カレンの言葉を聞いて、やっと振り返ったその人物は自身の前に差し出されたネックレスを怪訝そうにじっくりと眼を細めて見詰めると。

やがて、その眼は丸くなり、身体も小さく震えだした。

「…お、おお!! これは!!!」

「!?」

震えた声から急に声を大きく上げて、その人物はカレンの手ごとネックレスをがっしりと両手で握り締めて、急接近し始め。

カレンは相手の突然の行動に思わず、ビクッと驚く。

「これは正しく、正しく姉上のネックレスだ!!」

案の定、先程カレンが見つけて拾ったネックレスが、この人物は探し物だったようで、

大層嬉しそうに満面な笑顔を浮かべながら、その人物は暗闇の中でも輝くネックレスに負けないくらい眼をキラキラと輝かせ、カレンからネックレスを受け取る。

「そ、そう…良かったね」

若干、戸惑いながらもネックレスを渡したカレンであったが。

相手の大袈裟に見える反応は置いといて、その人の大切な物を見つけて良かったとカレンは、自然と嬉しさが込み上がり、自身も笑顔を浮かべる。

「おお、そうだ! 是非、お礼を言わせてくれ!」

早速、ネックレスを首に下げて、その人物はネックレスを見つけてくれたカレンにお礼を言いたいと胸に手を当てて、申し上げる。

「俺の名は、『ミツルギ・神楽かぐら・ルーレイ』! ミツルギと呼んでくれ!」

「ミツルギか……」

ミツルギと名乗ったその人物は、外見的に齢はカレン達と同じぐらいの少年。

しかも、高級そうな金色の縦線が入った鮮やかな灰色のズボンと上着を身に纏い。

その服に合った、街中を歩けば、百人中百人の女性が振り向くような端整、尚且つ美形の顔立ちを持ち。

さわやかなブロンズ色の髪と蒼く透き通った瞳、そして、首に下げた美しいネックレスと両手の薬指にそれぞれ、色も刻印も違う綺麗な指輪を付けているのが特徴の所謂、美少年だった。

相手の外見図を掴んだ後、ミツルギが名乗ったので、こちらも自分の名前を教えないと不公平だと考えたカレンは自身も名乗る事にする。

「僕は……僕は、カレン! カレンって言うんだ!」

夢の中で会ったソルランスとの会話で、今まで信じ込んでいた自分の名前が本当に自分の名前なのか、自信までも喪失したカレンは、少し躊躇するもすぐ調子を立て直して、名を名乗る。

「カレンと言うのか…良い名前だ!」

「えっ? あぁ…そ、そう?」

今日、出会った人物達に自身の名前を名乗って、その中の約二名から『変』だと評価されたが、ミツルギからは『良い』と正面切って褒め立てられ、カレンは照れ臭そうに後頭部を掻いて、頬を少し赤く染める。

「謙遜する事は無い! 花の世界では『ラン・カレン』と言う、場所を選ばず世界中の何処にも咲いていると言われている美しい花が在って、その花は花の世界でも珍しく、二つの花言葉は付けられていて、『ラン・カレン』の『カレン』は〝紡ぐ〟と意味付けられた、縁のある花なんだ。 だから、さっきも言ったように君の名前は実に良い名前だ」

改めて褒められたカレンだったが、ミツルギが今言った、あるキーワードを聞いて、身体が固まったかのようにピタッと動きが止まる。

「素敵な名だ! その名前を付けてくれた君の両親はさぞかし、立派な方に違いない!」

「…『ラン・カレン』? ……〝紡ぐ〟?」

『ラン・カレン』の『カレン』と同じ名前を持つ、カレンの名前は実に良いとわざわざ説明してまで語り、ついには両親まで褒め称えるミツルギを余所にカレンは、ミツルギの話の中に出て来た『ラン・カレン』と〝紡ぐ〟この二つキーワードを聞いた瞬間、心の中がその二つに支配されたような感覚に陥った。

「(何だろう……この感じ? ミツルギの口から出て来た、この二つの言葉を聞いた瞬間……まるで……懐かしいような……暖かい感じがする!)」

ブレスレットに刻まれていた名前を見た時に感じた、確信付いた感覚とは違い、もっと違う懐かしさを感じたカレンは、心の中が不思議と暖かくなった。

「(!?)」

そして次の瞬間、カレンの頭の中に女性らしき人物と小さな花畑が浮かび上がり、それを見た途端カレンは金縛りに遭ったかのように眼を見開いた状態で身体が硬直した。

「カレン……この度は貴君に助けて貰い、大変感謝している。 このミツルギ・神楽・ルーレイは『ルーレイ』家及び『神楽かぐら』家、両当主としてでは無く、俺個人としてお礼を改めて言わせてくれ…本当にありがとう!」

そんなカレンの様子の変化には気にも止めず、マイペースに話を進めるミツルギは感謝の言葉を述べた後に深々と頭を下げる。

「え、えっ? あっ……あぁ、いや、そんな、べ、別に……僕は大した事はしていないよ。 うん!」

謎の映像ビジョンの所為なのか、金縛り状態なっていたカレンはミツルギからの感謝の言葉のお陰で金縛りが解け、反応が遅れて取り乱しながらも謙遜的な返事で対応する。

「とんでもない! 君は俺の一番の宝物を見つけてくれたお人だ! この大恩を受けた身として、感謝さずにはいれない!!」

「……じゃ、じゃあ、遠慮無くその気持ちを受け取っておくよ……」

感謝の気持ちが抑えられないっと言った感じで、迫るように語り掛けるミツルギ。

相手の気持ちを受け取らなければ、素直に引いてはくれないと察したカレンは、観念したかのようにミツルギの気持ちを貰い受ける。

「おお! そうか、それでこそ我がSEOUL・FRIENDソウル・フレンドだ!」

SEOULソウル……FRIENDフレンド?」

言葉の意味が分からず、カレンはいつものように首を傾げる。

「心の友、と言う意味さ!」

「心の友……友達?」

恥じる事なくミツルギは言葉の意味を教え。

それはつまり友達の事かとカレンは解釈して聞き返す。

「その通りだ! 今日から俺達は友達だ!!」

一方的に自分達はもう友達だと話を飛躍的に進めたミツルギは友情の証として、汚れの無い可憐な手を差し伸べる。

「(……友達か)」

差し伸べられた手をジッと見詰めながら、友達という言葉に何故か不思議と心に嬉しさが湧き上がり、カレンは唇を緩めて微笑みを浮かべる。

「うん!」

自分の心の中で自然に溢れる嬉しさと共にミツルギの気持ちに応えたいとカレンも同様に手を差し伸べ、二人はお互いに相手の手を握り締め、握手を交わした二人はミツルギの言う通り、今この瞬間から友達という関係に成り立った。

「…ん?」

「?」

ところが握手を交わしている途中、ミツルギは何かに気付いたのか突然、カレンの身体全体を眺めるように注視し始め、その行動にカレンはどうしたんだろうと首を傾げる。

「僕の身体に変な物でも、付いてる?」

「……いや、気にしないでくれ。ほんの些細な事だ」

いきなり全身をジッと見詰められて、カレンは自分の身体の何処かに何かが付いているのかと思い、自身も身体全体を見渡すがミツルギは何でもなかったと事を終わらせた。

「ところで、カレンは此処で一体何をしていたんだ?」

「え? ……あっ!」

お互いの手と手を離し合い、友情の握手を交わし終えた後、気を取り直してミツルギはカレンに此処で何をしていたのかを尋ねると。カレンは数秒の間を空けて、ロロ、アイシャ達の事を思い出す。

「い、いけない! 早く、ロロとアイシャを探さないと!」

「む、それは……連れの事か?」

ミツルギとの出会いで、自分の目的が頭から離れていたカレンは、皮肉にもミツルギの発言でその事を思い出し、ロロとアイシャを一刻も早く見つけようと、一先ず、この空間に入って来た道とは別の道は無いのかと、空間内全体を隈なく探そうとした時。

焦り出して誰かの名前を呟いたカレンを見て、ミツルギはカレンが呟いたその姿の見えない二人はカレンの連れなのかと、察して問い掛ける。

「う、うん。 此処(洞窟)に来た時に離ればなれになっちゃたんだ!」

「このような場所に来たという事はもしや、カレン達も地震の所為でこの洞窟の中に落ちてしまったのか?」

「〝僕達も〟って事は……もしかしてミツルギも!?」

言葉の意図からカレンは、ミツルギもまた自分達と同じ、地震によってこの洞窟の中に迷い込んだ一人と推測した。

「ああ、あの通りだ」

自分から丁度、真上に在るポッカリと空いた大きな穴に指を指すミツルギ。

どうやら彼も、カレン達同様、地震で起きた地割れによって、地面と一緒にこの山脈の中の洞窟に崩れ落ちたようだった。

「此処(洞窟)に落ちた事自体は大した問題じゃなかったんだが、此処に落ちた時の衝撃で大切なネックレスが外れて何処かに行ってしまい、だから、先程のようにこの土の塊を退けつつ、必死にネックレス探していたんだ」

「成る程、そうだったんだ」

ネックレスを見つけたカレンがこの空間に入った時に見たミツルギの行動は、地震の所為で、此処(洞窟)に落ちた時にネックレスが取れて行方が分からなくなり、ネックレスを探す為に邪魔な土の塊を取り除き。

尚且つ、取り除いた土の塊がその後も邪魔にならないよう、器用に積み重ねながら、あれ程懸命にネックレスを探していたとカレンは大体想像が着き。

この空間に来る途中、通路にネックレスが落ちていた訳も納得する。

「よし! 俺もカレンの連れを探すのを手伝おう!」

「へっ? いいのミツルギ?」

予想もしなかったミツルギの救済の申し出にカレンは思わず、聞き返してしまう。

「当たり前だ! 友が困っている時助けるのが友の役目、そうだろ?」

またしてもくさいセリフを恥じる事も無く言って、更には自分に向かって親指を立てて、片目を閉じてポーズを取るミツルギの姿は美少年だからこそ、とても絵になっていた。

「……ありがとう! ミツルギ!」

猫の手も借りたいような一刻も争う現状で会ったばかりのミツルギが協力してくれる事にカレンは心の底から感謝の気持ちが溢れた。

「感謝されるまでも無い! それよりもカレン急ぐのだろう? ならば君が来た通路とは別の通路があそこに在る!」

ミツルギが指を指す方向にはカレンがこの空間に入って来た穴とは反対方向に別の穴が在り、それも来た穴と同様、洞窟の中の奥へと続いていた。

「ホントだ! よぉし、そうと分かれば……行こう! ミツルギ!!」

「もちろんだ!」

息ピッタリに走り出した二人は、共に『白霧山脈ホワイト・マウンテン』の中に在る、洞窟の更に奥へ続いていると思われる通路を恐れも無しに入り込み、二人並んで列を乱さず、慎重に駆け足で暗闇の奥へと進んで行った。


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