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ユニヴァース  作者: クモガミ
度重なる出会い
42/125

震える山脈

三人一行が白い霧の所為で下が見えない山脈の登山道を登り切るとその先に在ったのは山脈の中へ続く、山道の入り口だった。

「どうやら、山脈の中に辿り着いたようだね」

「だな、二人共気を付けろ! 此処からは霧が濃くなって……っうお! い、言った傍から!」

山脈の中の山道に登り着いたとアイシャは辺りを見渡して呟き、ロロも周りに目を配って、二人に山脈の中に入ったら霧が濃くなるから注意するよう、促そうとするが、言う前に白い霧は急に濃くなり、数メートル先までしか見えない程に、辺りは白い霧に包まれた。

「ああくそ! と、とにかく二人共、この『白霧山脈ホワイト・マウンテン』に生息する魔物に気を付けるんだ! 此処の魔物は山脈特有の白い霧に隠れて、不意に襲い掛るので有――」

すると、注意事項を述べているロロのすぐ背後に白い霧とは別の白い影と宙に浮かぶ二つの緋色の珠が音も無しにゆらりと現れ、そしてその白い影から鋭い刃のような物が伸びていて、それは背後の存在に気付いていないロロの頭上に迫っていた。

「ロロッ!! 後ろ!!!」

「ッ!?」

ロロの背後に近付く存在に気付いたカレンはすぐさまロロを呼び掛け、ロロは呼び掛けられて自前の素早い反応で瞬時に振り向くが、頭上に迫っていた鋭い刃のような物は、もうロロの目と鼻の先くらいに近付いていた。

「!!!」

「「!??」」

そしてこの瞬間、カレンとロロの二人は、今何が起こったか、分からなかった。一瞬の出来事だった。 ロロが振り向いて自分の顔から数cm先に在る鋭い刃のような物が、視界に入った直後、突然、乾いた一発の銃声が山脈中に響き渡り、それと同時にロロの眼に映った刃のような物がピタッと動きを止めた。

「―――………」

銃声が止んだ後、白い影はぐらりと傾き、そのまま垂直にドサっと地面に倒れ伏せた。

「………」

あまりにも唐突な出来事にロロは、言葉を失い、顔が引きつり、痙攣したようにピクピクと身体を震わせて、呆然と立ち尽くし。そんな情けないロロとは正反対にカレンは、一切呆ける事無く銃声が鳴った方向にいち早く顔を振り向けた。

「ふぅ……大丈夫かい、ロロ?」

そこには、発砲し終えた銃を構え、ロロの身体の安否を確かめるアイシャが立って居た。

「アイシャ!」

銃を片手だけで構えたアイシャを見て、カレンは察した。山脈中に響いた銃声の発生源は、アイシャが腰のホルダーに閉っていた銃を瞬速の速さで、取り出して発砲したからの様で、放たれた銃弾は銃口が向けられている方向から推測するにロロの背後に立って居た白い影に撃ち込こまれたらしい。

「こ、こいつは……」

身体の震えが止まり、声が出るようになったロロは目の前で倒れて、今も地面に伏せている白い影に視線を移すと、そこには人間のような細い胴体と背中に翼を生やし、狼の顔に近い面をした鋭い牙を持った、全身白に染まった緋色の目の生物が横たわっていた。

「……『ガーゴイル』、だね!」

銃をホルダーに戻して、アイシャはロロの前に倒れている生物の名前を明かす。

「『ガーゴイル』? まさか魔物なの、アイシャ?」

「そう、『ガーゴイル』は主に此処みたいな山脈等に生息する魔物で、他の魔物のように集団行動は好まないけど、頭は賢く、しかも偽装が得意で、今みたいに自分の全身真っ白な身体を利用して、此処の白い霧と一体化し、不意を突いて獲物ロロを噛み殺すので知られている厄介な魔物なんだ」

外見上、動物にはとても見えないし、魔物としか見えなかったカレンはその生物の名前を明かしたアイシャに正体を聞くと、やはり魔物だった。

「……死んでるの?」

「眉間に銃弾を撃ち込んだんだ。即死だよ」

地面に倒れてからピクリとも動かない魔物もといガーゴイルにカレンは死んだのかと様子を窺うと、アイシャが言うにはガーゴイルの眉間に銃弾を撃ち込んだらしく、言われて見るとガーゴイルの眉間と思われる箇所に銃弾がめり込んでおり、そこから真っ赤な血が流れていて、更には白い霧の中でもハッキリと見えていた緋色の眼も光を失い、ガーゴイルは文字通り、絶命していた。

「あ、アイシャ! ま、マジで助かったぜ! お前が助けてくれなかったら、俺は今頃、コイツの腹の中だったぜ!」

「どういたしまして。それより怪我は何処にも無いの、ロロ?」

アイシャの的確な助けが一瞬でも遅れていたら、自分は確実にガーゴイルの鋭い牙の餌食になっていたと思い、ロロは助けてくれた事を心から感謝し、慎ましくお礼を受け取ったアイシャは先程確認出来なかった、ロロの身体の安否を再度確かめた。

「見ての通りだ、お陰さまでなっ!」

「はぁ……良かったぁ」

元気な姿を見して、怪我は一切無い所をアイシャに証明するロロ。そしてその姿を確認してカレンはロロが無事な事に安堵し、ホッと胸を撫で下ろした。

「「「!?」」」

安心したのが束の間。突如、天地を揺るがすような地震が山脈全体に発生し、足が正常に立って居られぬ程の揺れが三人に襲い掛かった。

「う、うわっ!」

「っ!」

「こ、今度は地震かよ!?」

前触れも無く起こった大きな地震に一行は、驚きながらも倒れないよう必死に姿勢を保ち、地震が収まるまでその場に留まり続け、やがて揺れは次第に弱まり、そう経たない内に山脈全体を揺るがす揺れは完全に停止した。

「…収まったね」

「ち、チクショウ! 何なんだ、さっきから!?」

揺れが一旦収まって、一安心するカレンとは別に、心臓に悪いアクシデントが立て続けに起こって、寿命が縮んだような気分になったロロは、怒りに火が付いたのか、声を荒げる。

「落ち着いて、ロロ! 今は嘆くより、早く此処から先へ進まないと!」

「早くって……何か遭ったの、アイシャ?」

ロロを落ち着かせようとするアイシャは同時に先へ進むことを促し、何故急に急かすのかカレンは疑問に思い、訳を尋ねた。

「地震が起これば、大抵の動物や魔物は気が動転して、暴走してしまうんだ。 けどそれは今の私達にとっては逆にチャンスになる!」

「チャンス?」

地震のお陰で、今の私達にチャンスが訪れたと話すアイシャにカレンはそのチャンスとは何なのか、尋ね返した。

「今の地震の所為で、この山道に潜んでいる多くの魔物はパニックって、山道から離れる可能性が高いんだ! だから今の内に山道を急いで駆け抜ければ、魔物の遭遇が少なく、この『白霧山脈ホワイト・マウンテン』を越える事が出来ると思うんだ!」

「なぬ!? それは確かなのか!?」

今の地震で起こり得る、魔物達のパニックがこれからの自分達の山脈越えを有利に運ぶかもしれないとアイシャが指摘する可能性を聞いて、ロロはほんのちょっと前まで在った、怒りの興奮が何処かに行ってしまい、別の興奮が芽生え、その話に喰い付く。

「保証は出来ないけど、少なくともこの白い霧の中で魔物に不意を取られる事は最低限に避けられる筈だよ!」

「そうか! それだけでも十分なくらいだ!」

心に希望が宿ったのか、ロロの眼はキラキラと輝いた。

「カレン、話は聞いていたか!?」

「うん、『アイシャが今話してくれたチャンス(好機)に乗じて、一気にこの山脈を越えるぞ!』って言いたいんでしょ、ロロ?」

「ハッ! 分かったてんじゃねぇか! それじゃあ二人共、先に進むぞ!」

カレンとアイシャはロロの前進の掛け声に頷き、三人は白い霧の奥に続いている山道を足元に注意しながら、颯爽と進んで行った。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


一行が、全方向が白い霧に包まれた山道を歩いて二時間近く経っており。アイシャの言う通り地震が発生したお陰か、一行が山道の奥に進んでからは魔物一匹も遭遇せずに、難なく先に歩み続けていた。

「進んでも、進んでも、白しかないな……この山道は」

「上を向いても、空は真っ白だよね~~~~!」

「今の時間帯を考えれば、山脈の外は夜なのに、此処に居たら外は昼なのか、夜なのか分からなくなっちゃうね」

外から光が差さない、時間を忘れれば今は夜なのか、昼なのかも分からない、白の世界で三人はお互いの感想を述べていた。

「所でよ、アイシャ」

「ん、何?」

一時間近くも経って、何も起こらない事は良いのだが、どうも暇で仕方のないロロは何か話題が欲しくなってしまい、ついアイシャに話を持ち掛けてしまった様だ。

「聞いた時から気になっていたんだが……お前、王都『リア・カンス』で人と会う約束が有るって、言っていたよな? それって一体誰なんだ?」

元々興味が在ったのかは知らないが、無神経にロロは女の子であるアイシャの約束で会う人物の事を図々しく、聞いてみた。

「……ごめん、私の仕事上、依頼主についての情報は喋っちゃ駄目なんだ」

「仕事? お前仕事に就いてのか? 何の仕事をしているんだよ?」

依頼主という発言より、仕事に喰い付いたロロは、アイシャのような齢頃(外見上)で仕事をしている事が意外だったのか、またまた図々しく何の職業に就いているのか、聴いた。

「私、傭兵なんだ」

「へ~~~よ――………って、よ、傭兵!?」

「その傭兵って、何、アイシャ?」

自身の職業は傭兵だと打ち明けるアイシャにロロは驚愕し、カレンはいつものようにいつもの言葉を垂れ流した。

「傭兵と言うのはお金を貰って、あらゆる仕事を請けよう人の事だよ」

「(あらゆる仕事……)」

具体的にはどうゆう仕事なのかは分からないが、時によっては規模のデカイ仕事だという事は何となくだがカレンは理解した。

「傭兵か……あ~~成る程! だからあんなに戦い慣れていたのか!」

少し前までは、アイシャを幼い頃からとある国の特殊部隊の兵士だと、勝手に思い込んでいたロロだったが、アイシャが自身の職業は傭兵だと打ち明け、言うまでも無くロロの予想は外れていたが、傭兵ならば別に戦い慣れていておかしくはないと自分の予想が外れていた事は一切気にも止めず、また一人で納得していた。

「ん? ちょっと待てよ?」

「!」

「?」

アイシャが傭兵だと承知したロロだったが、頭の中で何かが引っ掛かったのか、突然止まり出し、アイシャはすぐ反応して足に急ブレーキを掛け、ロロから見て斜め前に止まり、気付くのが遅かったカレンはロロ達から数メートル離れた所で止まって、振り向いた。

「急に止まって、どうしたのロロ?」

ロロ達から見て数メートル先に居るカレンは、急に何故止まったのか、ロロ本人に問う。

「アイシャ、俺達目当てで『レイチィム』まで追い掛けて、襲い掛かって来た盗賊達から傭兵のお前が何で俺達を助けてくれたんだ? 金にもならないのに?」

カレンの問い掛けは耳に入らなかったのか、ロロは何故、金を貰ってでしか働かない傭兵(ロロの偏見)であるアイシャが、盗賊達から助けても金が貰える訳ではないのに、どうして自分とカレンを助けたのか疑問に思い、直接アイシャに、問い掛けた。

「それは……」

ロロの偏見交じりとはいえ、もっともな意見を投げ掛けられたアイシャはその問いに答ようとした瞬間。

「「「!!?」」」

突如として、再び天地がひっくり返ると思えるような地震が発生し、三人は再度、足が正常に立てぬ程の揺れに襲われる。

「く、くそ! また地震かよ!?」

三人はデジャヴを感じながらも、前と同じ倒れぬよう必死に姿勢を保ち続けた。

「! 二人共、この場から急いで離れて!!」

「「えっ?」」

何かを感じ取ったのかアイシャはロロとカレンにこの場から離れろと叫び掛けるが、二人がその声に反応しても、時は既に遅かった。

「「「!??」」」

地震に因る辺りが揺れる音と混じって、地面から嫌な地響きが鳴り響き、三人はそれを聞き取った直後、三人が立って居た地面が崩れ落ちた。

「うわぁあああああああああああああ!!!」

「のわぁあああああああああああああ!!?」

「ぁあああああああああああああああ!!!」

三人は地面が崩れ落ちて出来た大きな穴の中に落ちてしまい、三人の叫び声は虚無のように暗い穴の中へ飲み込まれ、そして三人の姿は深い穴の中へ沈んで行った。


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