突然の退化
攻撃の絶好のチャンスを止めさせたアイシャは若干、焦りを感じているような表情になっていた。
「あのバトル・マシーンを爆破させるような破壊の仕方だけはしてはいけない!」
「えっ?」
「ど、どういう意味だよ?」
返って来た質問の答えの意味が理解できないカレンとロロは二人揃って首を傾げる。
「あのバトル・マシーンには『ニビル・ブランジ』が詰め込まれているんだ!!」
「に、に・び・る?」
「ぶ、ぶら…何だって?」
「『ニビル・ブランジ』! 複合科学燃料の『ニビル・ブランジ』の事だよ!」
首を揃えて分からないと反応する二人にアイシャは、焦ったのかそれとも呆れたのか、珍しく声に感情を乗せて説明した。
「大型の無人機であるバトル・マシーンには大抵、複合科学燃料『ニビル・ブランジ』が使われているんだ!」
「それが……どうしたんだよ?」
説明の意図が読めないロロはもっと詳しく分かるように聞き返す。
「もし、『ニビル・ブランジ』を積んでいるあのバトル・マシーンが爆破された時に火が『ニビル・ブランジ』に引火したら、大爆発が起こるんだよ!!」
「ええっ!?」
「何だって!?」
アイシャの説明の最後ら辺に出て来た大爆発と言う言葉に二人は耳を疑うように驚く。
「『ニビル・ブランジ』は大型バトル・マシーンを動かす為だけじゃない、敵地に入り込んで自爆し、敵に大ダメージを与える為にも使われている燃料なんだ!」
「ま、マジかよ!?」
「だから、無闇にあのバトル・マシーンを爆破して、『ニビル・ブランジ』が引火して大爆発が起こったら、私達は確実に命が無い! あのバトル・マシーンはそれだけヤバイ代物を積んでいるだ!!」
今戦っているバトル・マシーンを爆破して、『ニビル・ブランジ』に火が付いたら大爆発が起こり、例え勝ってもタダでは済まないとアイシャはカレンとロロに言い聞かせる。
「じゃあ、どう倒せって言うだよ!?」
ロロのもっともな意見にアイシャは今スライム接着剤によってもがいているバトル・マシーンの胴体部分に指を指した。
「資料によれば、あの『タイプ・タイラント』は胴体の中の中心部分に在る、動力源だけを破壊すれば、爆破せずに機能を停止させる事が出来る筈だよ!」
「胴体の中の動力源って、おまえ…そこだけを破壊する事なんて出来るのかよ?」
もし胴体の中を破壊して、例の『ニビル・ブランジ』に火が付いたら命が無いのに動力源だけを破壊するなんていう芸当が本当に出来るのかロロは不安げに尋ねた。
「もし、失敗なんてしたら……」
「……でも、それしか方法は無いんだよね?」
失敗したら命が危ないと心配そうに尋ねるロロを遮るようにカレンは言った。
「だったら、やるしかない! 力を合わせて、そうでしょ?」
これから前に進む為には、この方法しかないならカレンはやるべきだとロロとアイシャに目を配って、述べる。
「そうだよ、力を合わせた上でこの方法でしか今の状況を打開する術は無い!」
「い、いや、だけどよ……」
アイシャはもうとっくに覚悟を決めているのに、一人だけ怖気づいて、戸惑っているロロは歯切れが悪くなっていた。
「大丈夫だよロロ、僕達が力を合わせればきっと出来るよ!」
「カレン……」
この緊迫した状況で、勇気付けるかのようにニコッと笑って、力を合わせようと、成功出来る確信が無いのにも関わらず、思い込みや強がりも無く言うカレンにロロは意表を突かれ、少し呆然となる。
「……わかったよ、やってやろうじゃねぇか!!」
カレンから勇気を分けて貰ったのか、ロロも覚悟を決め、力を合わせてバトル・マシーンの動力源を破壊する事に賛同する。
「じゃあ全員一致って事で、いいね?」
「ああ!」
「うん!」
意見がまとまり、カレン達は一致団結になって、バトル・マシーンの動力源破壊に挑む事になった。
「(狙いは……胴体の中心!)」
動力源がどういう物かカレンにはさっぱり分からないが、それを破壊すれば、バトル・マシーンを倒す事が出来るとアイシャの説明で分かったので、最優先でその動力源を破壊しようと胴体の中心に狙いを定めた。
「(!)」
するとバトル・マシーンの胴体の上部分から円に沿って穴が幾つも空いている車輪のような物が上部分の左右にそれぞれ一つずつポッと出て来て、片方はカレンの方を向いており、もう片方はアイシャの方を向いていた。
「「!!」」
次の瞬間、バトル・マシーンの胴体の左右にポッと出て来た、二つの車輪のような物から銃弾の雨が発射され、銃弾の矛先は言うまでも無く、カレンとアイシャそれぞれであり、二人は突然降り注いで来た銃弾の雨に目を見開いた。
「『10mmバルカン』!!」
「っ!」
バトル・マシーンから新たに登場した車輪のような物を『10mmバルカン』だと判別したと同時にアイシャはこちらも懐から新たな銃を瞬速の速さで取り出し、両手にそれぞれ銃を持ち、飛んで来る銃弾の雨に向かって二つの銃口を構える。
「(間に合わない! ……なら!!)」
時を同じくしてカレンは自分の方にも降り注いで来る大量の銃弾に今のタイミングでは『エネルギー・フィールド』は間に合わないと判断し、違う対処法で凌ごうとした。
「周体斬!!」
「SONIC・BREST!!」
脚に力のような物を流し込み、右脚を軸にして大剣を片手で持ちながら、カレンは竜巻のように高速回転を行い、飛んで来た銃弾の雨を全て回転によって振り回っている大剣で叩き落とした。
一方でアイシャは二つの銃で放った複数の銃弾が小さなソニック・ブームを起こし、銃弾が風の塊と成って、自分より大きい銃弾を次々と弾きながら前進して行き、カレンとアイシャは見事に襲い掛かって来た銃弾の脅威を文字通り打ち払った。
「(これも、威力が上がっている!)」
『水底の洞窟』で使った時よりも回転スピードとパワーが何倍もハネ上がっており、またしても技の力が上昇している事にカレンは確信に近い物を感じた。
「(やっぱり、この状態で技を使うと力が上がるんだ!)」
三度目の正直のようにカレンは、今の姿で自分の用いる技を使えば、技の威力が大幅に増すという結論が出来上がりそうになっていた。
「?」
技の威力がどうこう考えているとカレンは自分の大剣(魔装器)をチラッと視線と向けたら、大剣にある変化が起こっている事に気付く。
「あれ? 色が薄くなっている?」
大剣の剣格部分に在る、水晶のような美しく輝いていた碧い珠の色が薄暗くなっており、今までのような、輝く碧さが何処かに消えていたのだった。
「(!)」
カレンが大剣に気を取られている内にバトル・マシーンは『プラズマ砲』のリチャージが完了して、ターゲットに狙いを絞って、3回目を発射する。
「カレン!」
「!!」
よそ見をしているカレンにアイシャは呼び掛け、カレンはアイシャの呼ぶ掛けの御かげで、自分に接近して来る高出力の電撃の存在に気付き、すかさず大剣を前に出して強く念じる。
「エネルギー・フィールド!!」
声と共に『エネルギー・フィールド』がカレンの周りに展開し、急接近して来た高出力の電撃を難なくフィールドで弾き返す。
「(そうだ。考えている場合じゃなかった!!)」
また戦闘中に考え事をしてしまい、アイシャの呼び掛けが無かったら、今頃自分はあの電撃を喰らっていたと我に戻ったカレンは『エネルギー・フィールド』を解いたと同時に肝を冷やした。
「(考えるのは後で良い! 今は…戦わなきゃ!!)」
先程の事を反省し、今やるべき事をするべきだと気持ちを瞬時に切り替えて、相手の動力源を破壊の為にカレンは脚を前に踏み込み、バトル・マシーンに突進するように駆け出した。
だが、この時カレンは気付いていなかった、自身の魔装器でもある大剣の剣格部分に在る水晶が更に薄暗くなっている事を。
「(!)」
自分の所にやって来るカレンを返り討ちする為にバトル・マシーンは現在脚が7本の内一本を使って、脚を出来るだけ伸ばしてリーチを最大限に利用して接近するカレンに脚を水平に薙ぎ払った。
「ふ、伏せろ! カレン!」
「!」
バトル・マシーンの真下から戦いの様子を窺っていたロロはカレンの横から迫り来る巨大な脚を見て、つい〝伏せろ〟と叫んでしまったが、そう言われてもカレンは走っているので伏せる事が出来ず、自身の真横から怒涛の勢いで急接近している脚に対してカレンは走りながら力一杯自分の脚に力を入れて上へジャンプした。
「(!!)」
薙ぎ払われた巨大な脚は誰にも当たらずに行き止まりの壁に激突して壁を砕き、カレンは真横から襲い掛かって来た脚を当たる前にジャンプして、バトル・マシーンの脚より少し上空まで飛び上がった御かげで、当たらずに済み、オマケに上に避けたのが幸いだったか、偶然にもカレンは自分を攻撃して来た脚の上に着地したのであった。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
幸運にもバトル・マシーンの脚に着地したカレンは、それを利用して脚を胴体へ渡る為の架け橋として渡り走り、脚の根元の部分まで近付くと再び高くジャンプして、一気に胴体の中心まで行って動力源を破壊しようと剣を両手で逆さに持ち、突き刺そうとした。
「(!!!)」
「ぬっ!」
しかし、カレンの大剣が胴体の中心に到達する前にバトル・マシーンはもう一本脚を使って、上からやって来る大剣を受け止め、カレンの剣は胴体には刺さらず、代わりに脚の方に深く刺さり込んだ。
「くっ!!」
胴体への攻撃を阻止されたカレンは、諦めずもう一回胴体への攻撃を再開しようとしたが、大剣が脚に深く刺さった所為か、剣が抜けなくなってしまい、何度やってもどんなに力を入れても取れないと焦ったカレンは、刃の内側に力を溜め込み、その力を爆発させるように一気に刃の外側に解き放つ。
「裂閃衝!!」
まるで爆発したかのように分厚い鉄で出来た脚に刺さった大剣の刃先から耳鳴りが起こる程のとても強力な衝撃波が炸裂し、衝撃波によって脚は爆破して粉々に砕け、バトル・マシーンは動力源を守った代わりにもう一本の脚を失う事になった。
「うわっ!」
だが、バトル・マシーンの脚が爆破した時に生まれた爆風により、カレンは勢い良く吹き飛ばされてしまい、動力源から離されてしまう。
「ッ!」
このまま遠くまで飛ばされてたまるかとカレンは吹き飛ばされて間もない瞬間に大剣を、手を伸ばせば届くぐらいの距離に在った壁に突き刺し、体にブレーキを掛け、両手で大剣にぶら下がった状態でバトル・マシーンの次の行動を見逃さないように視線を戻す。
「(!)」
三人の中で一番厄介なのはカレンだと判断したのかカレンに集中攻撃しようとバトル・マシーンは胴体の左右に在る、『10mmバルカン』二門をカレンに向け、大量の銃弾を撃ち出した。
「よっと!」
二門の『10mmバルカン』から発射された、銃弾の雨から逃げる為にカレンは大剣が刺さっている壁を思いっ切り蹴り、蹴った衝撃で大剣を引っこ抜き、同時にアイシャの居る向こう岸の通路まで飛び移った。
「!! アイシャ! 僕の後ろに!」
飛び移って直ぐにカレンは、バトル・マシーンの攻撃がもう一度来ると予測したと同時にある事を思い付き、後方に居たアイシャに自分の後ろに来るよう呼び掛けた。
「分かった!」
瞬時に意図が読めたアイシャは、すぐさま言われた通りにカレンに近付き、隠れるように後ろに付いた。
「(!)」
アイシャの居る所に飛び移ったカレンを懲りずに『10mmバルカン』二門を向け直し、同じ所に居るアイシャごと攻撃しようと銃弾を乱射した。
「エネルギー・フィールド!!」
一緒の所に居れば、二人とも狙われるとカレンは予測したいたので慌てる事も無く『エネルギー・フィールド』を展開し、後ろに居るアイシャも含めて山吹色の光がカレンの周りを包み込み、降り注ぐ銃弾の雨を光の球体で全て無効化していった。
「交差する、冷たい悪意が、寒気を呼び起こし、今汝に、凍える吹雪を降り注がん!」
今の状態なら問題は無いと思ったアイシャは『エネルギー・フィールド』の中で守られながら詠唱を唱え始め、それに答えるようにアイシャの周りから銀色の光が無数に現れ、そしてアイシャは最後に魔法の名前を口にする
「氷の雨!!」
バトル・マシーンが『10mmバルカン』を乱射している中、カレンの『エネルギー・フィールド』の中でアイシャは魔法の名前を唱え、その瞬間、バトル・マシーンの上空に何かの文字が描かれた銀色の円状の輪が現れ、その輪から氷の刃が雨のように広範囲に降り注いだ。
「(!!!!)」
降り注いだ氷の刃達の殆どがバトル・マシーンの体中に突き刺さり、突き刺さった所から氷が浸食するようにみるみると広がり、そう経たない内にバトル・マシーンの体は氷漬けになった。
「ぬおっ! な、何だ!?」
未だにバトル・マシーンの真下に居たロロは、突然バトル・マシーンが氷漬けになった事に驚いた。
「氷漬けになった………アイシャ! お前の魔法か?」
こんな事が出来るのは氷の魔法を唱えられるアイシャだけだと思いついたロロにタイミング良く『エネルギー・フィールド』は解かれ、中から現れたカレンの背中に隠れているアイシャにロロは確認を取った。
「うん、カレンが守ってくれなかったら出来なかったんだけどね」
『エネルギー・フィールド』で自分の事を守ってくれると同時に自分が安全に魔法を唱える環境や時間も確保する為にカレンは自身の後ろに来いと自分を呼び掛けたとアイシャはカレンの考えを的確に読み取り、そしてご覧の通りにバトル・マシーンを氷漬けに出来たとロロに省いて話す。
「でも、アイシャは凄いよ! 僕の考えていた通りに動いてくれたどころか、あんな凄い攻撃が出来るなんて!」
自身の考えを完璧に読んで、それによって想像以上の成果を出したアイシャにカレンは大いに賛美する。
「これだったら、もう動力源なんて破壊しないで済むんじゃないか?」
氷漬けになり、動けなくなったバトル・マシーンの真下から出て来たロロは、こんな状態ではもう動力源を破壊する必要は無いと安心仕切った顔で凍り付いた脚をパンパンと軽く叩きながら二人に尋ねる。
「油断しない方が良い……戦いではいつも不測事態がおこ……」
気が緩んでいるロロにアイシャは気を引き締まるように忠告しようした時、氷漬けになっているバトル・マシーンの氷に大きなヒビが入った。
「「「!!!」」」
突如岩の壁にヒビが入った時と同じような不吉な音が鳴り、カレン達はその音にピクッと身体が反応し、視線をバトル・マシーンに向け直す。
「ま、まさか……」
氷漬けになって動けなくなっていたバトル・マシーンの体が、地震が起こったかのようにブルブルと震え始め、そしてその振動によって今さっき氷に出来た大きなヒビと同じ大きなヒビが幾つも発生し、次第にヒビは氷全体に広がっていき、ロロは目の前の光景に顔が青くなる。
「どうやら……そううまくはいかないみたいだね」
ロロに忠告しようとした事が見事に的中して、アイシャは小さな溜息を零す。
「(!!!)」
案の定次の瞬間、大きな氷の塊がバラバラに吹き飛び、氷の中から何ともなかったかのように平然とした姿でバトル・マシーンが現れた。
「だぁ!? こ、氷が!!」
バラバラになって吹き飛んだ氷の欠片は、大小問わず小石のようにバトル・マシーンの周りに飛び散り、ロロは飛んで来る氷の大きな欠片を器用に避ける。
「「!」」
そして飛び散った氷の欠片はカレンとアイシャの所まで飛んで行き、カレンはすぐさま大剣を持ち直し、刃先に力のような物を溜め込む。
「剛魔!!」
大剣を水平に振り上げ、振り上げられた剣はとても大きな風の波を作り、巨大な衝撃波となって、飛んで来る氷の欠片を向かい撃つように飛んで行って直撃し、氷の欠片を余すことなく粉々に粉砕した。
「あの攻撃で…まだ動けるのか!?」
氷の欠片の脅威を取り除いた後、アイシャの魔法で氷漬けになっておきながら、しぶとく動き出したバトル・マシーンにカレンは目を見開いて驚愕する。
「やはり、動力源を破壊するしか無いみたいだね……!」
甘く見ていた訳では無いが、結局あのバトル・マシーンを止める為に動力源を破壊して倒すしか道は無いとアイシャは述べる。
「なら……今の内に倒さなきゃ!!」
体から氷を剥がしても、まだロロが仕掛けたスライム接着剤が脚にくっ付いて満足に動けないバトル・マシーンと見たカレンは、早く仕留めた方が良いと考え、全力疾走で駆け出し、もう一度、動力源を破壊しようと胴体の中心まで大きくジャンプした。
「(!)」
再度、動力源狙いで胴体へ飛び移ろうとジャンプして来たカレンを通せんぼしようとまた脚を出して妨害するバトル・マシーンにカレンはまず、その脚をぶった切って、胴体へそのまま移ろうと大剣を大きく振り上げ、垂直に振り下ろそうとした……その時。
『RETURN・PURGE!』
今まで聞いた事が無い言葉が突然、大剣でもある魔装器から発し、そして声と共に大剣が最初に現れる姿、切れ味が無い鈍器みたいな姿に戻ってしまった。
「!?」
切れ味抜群の大剣から切れ味皆無の大剣に急退化した事にカレンは突然の出来事なので何が何だが分からず目を疑い、大剣は姿が戻った状態で垂直に振り下ろされるが、元の姿では相手を斬るのではなく、叩く事しか出来ない為、大剣はバトル・マシーンの脚に鈍い音を出して激突したが、脚には傷一つ与える事が出来なかった。
「(!!)」
「!」
どうゆう訳かは知らないが、カレンの攻撃が急に弱くなったので、バトル・マシーンは大剣を受け止めた脚を振り払い、脚の乗っかった大剣ごとカレンを振り払った。
「ぐっ!!!」
振り払われ吹き飛ばされたカレンは壁に激突し、受身を止めないままそのまま重力に従ってゆっくりとコンクリートの地面に叩き付けられる。
「なっ! どうしたんだよ、カレン!?」
「カレン!」
アイシャが居る通路に落ちたカレンに反対側の通路に居るロロは何故、カレンの攻撃が急に弱くなり、そしてカレンの武器でもある魔装器の姿が前触れも無く元に戻った事にカレンの身を心配しながら問い掛け、一方アイシャは自分の通路側の壁に激突して落ちて来たカレンの元へ駆け寄った。
「大丈夫?」
「う、うん、何とか………まだ戦えるよ」
カレンに肩を貸して、起き上がらせようとしたアイシャは身の状態も尋ねると、カレンは頑丈に出来ているのか或いはそれ程ダメージを喰らってはいないのか、大丈夫だと答え、まだ戦うだけの力と動く力は残っているようだった。
「……」
自分の手を借りて立ち上がったカレンをアイシャはカレンの手に持っている大剣をチラッと眺めた。
「もしかして、『マナ』を使い果たしたの? カレン?」
「えっ?」
『マナ』を使い果たした、アイシャの言うその言葉の意味が何を示しているか、この時のカレンにとってはさっぱり意味が分からなかった。
「(!)」
「!」
追い打ちを掛けるようにバトル・マシーンは『プラズマ砲』のリチャージが終了したようで、カレンとアイシャを一緒に攻撃しよう標準を二人に合わせ、そしてその事にアイシャは他の二人よりも一足先に気付いた。
「お、おい! 二人とも! 危ねぇぞ!!」
「!!」
二人の危険を察知したロロは、バトル・マシーンの『プラズマ砲』が二人に向けられていると大声で叫び、その叫びによって気付いたカレンはバトル・マシーンの『プラズマ砲』に顔を向けて、自分達に向けられていると確認する。
「ま、まずい!」
「あっ!」
あれをまともに喰らえばタダでは済まないと自分達の身の危険を感じたカレンは、アイシャの手から離れ、アイシャを守る為に身を前に乗り出して、大剣の剣背部分が前になるように両手で構え、強く念じる。
「(!!)」
そして間も無くバトル・マシーンの『プラズマ砲』の電撃が発射され、一直線に伸びる高出力の電撃がカレン達に向かって空中を走って行った。
「エネルギー・フィールド!!」
『エネルギー・フィールド』を展開させ、後ろに居るアイシャと共に光の球体がカレン達を瞬時に包み込み、襲い掛かる電撃から守ろうとした……が。
「!!?」
しかし、展開された『エネルギー・フィールド』は最初に弾いた電撃の時とは違い、光の壁が電撃によってグリグリと押し進むように削られていき、次第に電撃は光の壁を押し退け、カレンにどんどん近付いていき、カレンは『エネルギー・フィールド』が弱くなっていると目を見開いて気付く。
「がぁ!!」
「「! カレン!!」」
やがて、電撃は相殺するような形で『エネルギー・フィールド』を打ち破り、『エネルギー・フィールド』を破られたて生まれた衝撃により、カレンは後ろに倒れるように軽く吹き飛ばされるが、すぐ後ろに居たアイシャに身体を受け止められ、向こう側の通路で一部始終を見ていたロロはアイシャと一緒に声を上げて呼び掛ける。