盗賊と謎の物体 出現
そして、馬車を走らせてそう経たない内に、遠くからだが一つの村が見えてきて。
「ほれ! あそこに見えるのが『カム―シャ』村だ」
「あれが…………」
もうすぐ着く村を眺めているとカレンは道の先に人影を見つける。
「あっ! 人が倒れてる!」
道の真ん中で人が倒れているとカレンはコルトに伝える。
「ぬお! 本当だ!」
コルトは倒れている人の前で馬車を停止し、二人は馬車から降りる。
「大丈夫ですか!?」
「やれやれ! 今日は倒れている人が多い日だ」
倒れいている人に駆け寄るカレン、溜息を吐きながらカレンに続くコルト。
「ううっ………」
小さくて弱った声を出すうつ伏せ状態の男性に急いで駆け付けたカレンは手を伸ばして、立ち上がらせようとするが。
「!」
突然カレンの動きが止まった何故ならカレンの目先に一本の剣が突き付けられていたから、その剣は倒れていた男性から伸びていて、うつ伏せだった男性はゆっくり立ち上がった。
「動くなよ。ボウズ。そっちのじいさんもな」
立ち上がったスキンヘッドの男は歪んだ笑みを浮かべ、剣をカレンの喉元に移した。剣を突き付けられたカレンは動く事が出来ず、コルトも突然の出来事に呆然としていたが。
「お前……盗賊だな!」
「今頃気付いたのかよ………おい!」
男は近くに在った大きな岩に声を掛けるとそこからやたら髪の毛が長い男が出て来て、その後からその長い髪の男の2倍以上大きい大男が登場し、二人はスキンヘッドの男と同じ服装をしているからにして仲間である事は明らかだった。
「へへっ、うまくカモが引っ掛かったなぁ! ハン!」
「ああ! しかも見た所あの馬車は、商人の馬車だ! 金目の物だけじゃなく、食い物や酒も入っているかも知れねぇ」
ハンと呼ばれたスキンヘッドの盗賊は、良い獲物を捕まえたみたい嬉しそうに話す。
「おい! ラジリカ! お前はハンと一緒にあのガキとじじいを見張れ、俺はあの馬車の中身を探る」
「お~~~、わかったよ。ケビー」
なまった様な声を出し返事するラジリカと呼ばれた大男はその巨体な身体を動かしてスキンヘッドの男の隣まで移動し、ケビーと呼ばれたロン毛の盗賊はコルトの馬車に中に入り込む。
「いいかお前ら動くんじゃねーぞ。抵抗さえしなけりゃ命までは奪う事はねえ。大人しくしてるんだな」
カレンに剣を突き付けたまま警告をするスキンヘッドの盗賊、その隣でのほほんとした顔で、カレンとコルトを見詰める大男。もう一方の馬車の中に入り込んだロン毛の盗賊は早速、金目の物を探そうとした。
「さてさて、金目の物は――――、ん?」
するとロン毛の盗賊はある物に目が止まる。
「何だこれ? 剣の取っ手と虫?」
そこには古びた錆付いた剣の取っ手の様な物と虫の置物の様な物が置いて在った。
「何だよ。ガラクタかよ」
ガラクタだと即決めつけたロン毛の盗賊はつまらなさそうに二つを無視し、金目の物を探し続けた。
そして、カレン達の方では未だに剣を突き付けられて動けない状況が延々と続いても取り乱す事も無く、じっと待ち続けた。
「おーい、ケビー! 何か金目の物を見つけたかーーーーー?」
スキンヘッドの盗賊が馬車の中に居るロン毛の盗賊に呼び掛ける。
「まだだーー! もうちょっと待ってくれーーーー!」
「早くしろよーーーー!」
スキンヘッドの盗賊が馬車の方に顔を向け、カレン達から目を外し、その一瞬を見逃さなかったコルトは懐からナイフを取り出し、スキンヘッドの盗賊に斬りかかる。
「! ぬおっ!!」
それに気付いたスキンヘッドの盗賊は素早くバックステップを行い、ナイフをギリギリに避ける。
「大丈夫!? ハン!?」
大男は仲間が斬りつけられ、心配そうに声を掛ける。
「テメ――……、じじい! よくもやりやがったな!!」
思わぬ攻撃をされたスキンヘッドの盗賊は、怒りを露わにし、コルトに怒鳴りかかる。
「おい! どうした! 何があった!?」
馬車の中に居たロン毛の盗賊は、外の騒ぎを聞き付け、馬車から飛び出す。
「お前達にやる物は無い! さっさと何処かに行け!!」
ナイフを構え、盗賊達に強気な態度を見せるコルト。
「コルトさん………」
コルトの突然の行動に驚くカレン。
「この野郎……調子乗りやがって! おい! ラジリカ!」
は~~~い」
スキンヘッドの盗賊に呼ばれ、大男はトルコに向かってその重そう体を突進させる。
「うおおおおおお!!」
ナイフを両手で握り締め、大男に突進して突き刺そうとするコルト。だが。
「!」
あっさりと大男の片手だけで両手を握り締められ、突撃を止められるコルト。
「くっ!!」
「そりぁ!」
大男はコルトの両手を握り締めながら、コルトを軽々と投げ飛ばし。投げ飛ばされたコルトは地面と激突して、転がっていった。
「がぁ!!」
「コルトさん!!」
投げ飛ばされたコルトに駆け寄るカレン。
「大丈夫ですか!? コルトさん!?」
「う………………」
何処か痛めたのか弱った声が漏れるコルト、地面に仰向けなコルトの上半身を抱き上げるカレン。するとスキンヘッドの盗賊が傍に寄って来て。
「抵抗しなけれりゃ、命まで取らねーっつったのによー。ばかなじいさんだぜ」
まるで自業自得だと言わんばかりの言葉を吐き、スキンヘッドの盗賊は剣を振り上げ、コルトに斬りかかろうとした。
「待って! もうやめて!」
カレンはスキンヘッドの盗賊の前に立ち、コルトを、身を挺して守ろうとする。
「ああ? なんだボウズ? おまえから先に斬られたいか?」
スキンヘッドの盗賊はカレンの行動に苛立ちを感じた。
「お願いだから、許してやってください! この人はもう戦う力は残っていません!」
盗賊相手に必死に訴えかけるカレン。しかし。
「だめだ。そのじじいは俺達の警告を無視して抵抗した。だからもう抵抗しないよう、殺すんだよ」
理不尽な事をしておいて理不尽な物言いを押しつける盗賊にカレンは。
「どうしても許してくれませんか?」
一歩も引かこうとしないカレンは、どうしたら許してくれるか問い出した。すると、スキンヘッドの盗賊は。
「そうだなぁ、お前が代わりに斬られるってんなら。許してやってもいいぞ」
悪意の塊のような理不尽な要求を言い出した盗賊達は、歪んだ笑みを浮かべ。カレンの反応と返事を楽しもうとした。
「カ、カレン……」
「………………………」
心配そうにカレンを呼ぶコルトにカレンは少しの間、目を閉じ、そして、決意した。
「わかりました。それで許してくれるなら……」
「! お、おい! カレン!!」
まさかの返答したカレンにコルトは慌てて叫ぶ。そして盗賊達も予想外の答えに少し驚いた顔をするが。すぐにスキンヘッドの盗賊はニヤっと笑い。
「そうかぁ…………じゃあ、遠慮なくやらせてもらうぜ!!」
スキンヘッドの盗賊は、剣を振り上げ、垂直にそのまま振り下ろす。
その瞬間、カレンは死を覚悟して目を深く閉じた。そして。
「ヒヒーーーーーーーーーン!!」
突然馬車の馬が叫び、盗賊達は驚き、振り下ろされた剣はカレンの頭上数センチ上で止まり、その場に居た全員が馬車の方を見るとそこには。
「な! なんだありゃ!!」
「………………!」
馬車の中から日光のような強い光が漏れ出していた。
「まっ、まぶしいぃ~~~~!」
「ど、どうゆう事だこりゃ!」
「……………………?」
全員が不可解な出来事に驚いていた。そして、フっと馬車から光が無くなった。
「い、一体何が――――――、 …………………!!」
すると馬車の中から山吹色の謎の物体が飛び出してきて、スキンヘッド盗賊は眼を見開いた。
「あ、あれは…………!」
「何だあれ!!」
その謎の物体に見覚えがあるコルトと、ついさっき見つけた物とは気付いていないロン毛の盗賊の眼に映った、謎の物体はスキンヘッドの盗賊の方に突撃するかのように突進した。
「なっ……………!」
謎の物体はスキンヘッドの盗賊の剣の方に体当たりし、剣を弾き飛ばした。
「な、何だコイツ!!」
スキンヘッドの盗賊は、慌てて剣の所まで拾い直す。すると謎の物体はカレンの周りをグルグルと回り始め。カレンの手元に、持っていた白く染まった剣の取っ手の様な物を落とす。
「うわっと!」
何の前触れも無く落としたそれを慌ててカレンはキャッチしたら謎の物体は取っ手の剣格にある、青い珠の反対側部分に差し込まった。
『REGI・IN』
謎の物体と剣の取っ手のような物から突然声が出て、それと同時に剣の取っ手様な物の剣格部分の上を昇るようにみるみると形が形成されてゆき、刀身の両側面に窪みのような物がある大きな剣の形へと変身した。
「あ…………!」
目の前で起こった事に目を疑うカレンであったが。
「くそ! 何だか知らないが!!」
「ッ!」
何が起こったか分からないが、スキンヘッドの盗賊はカレンに突進し、剣を振り下ろした。
だが素早い反応でカレンは謎の物体によって出来上がった剣でスキンヘッドの盗賊の剣を受け止め、剣と剣がぶつかり合った事で強い金属音が生じた。
「ぬ!」
「ッ!」
力の押し合いにカレンは力一杯に剣を押し出す。
「うわっ!!」
スキンヘッドの盗賊の剣は力尽くでカレンの剣にあっさりと弾き飛ばされ、同時にスキンヘッドの盗賊の身体も一緒に弾き飛ばした。
「この!!」
「!」
仲間に続くように、隙を突いて後ろから斬り掛かろうとロン毛の盗賊はカレンに向かって剣を垂直に振り下ろしたが。
「!」
これも素早い反応で振り下ろされた剣をカレンは横にズレテかわし、そして避けた直後、剣を持ち直して剣の剣背部分をロン毛の盗賊に向かって、打ち上げるように振り上げた。
「ぶふっ!!」
剣はロン毛の盗賊の上半身の正面に当たり、対象はまるで鳥が飛び立つように宙へ舞い飛ぶ。だが実際鳥ではないで対象は重力に引っ張られそのまま落下して地面に激突し、ガクっと気絶する。
「く、くそ! おいラジリカ! やっちまえ!!」
「アイアイサ~~~~」
今度は大男がカレンに突進し、背中に背負っていた大きな斧を取り出し。
ラジリカ「チョイサ~~~~~!!」
力強い一振りをカレンに向けて振り下ろした。
「!!」
さっきのとは比べ物にならない激しい金属音が生じ、その中でカレンは大男の一振りを受け止めていた。
「ば、バカな! 俺達の盗賊団の中で自分と同じぐらいの大きな岩を持ち上げる程の怪力を持つラジリカの一撃の止めるなんて!」
信じられない光景を見ているような声と顔を出して、スキンヘッドの盗賊は唖然としていた。一方、大男の方も自分の一撃を止められたがショックだったのか、動揺する。
「そ、そんな~~~~~」
カレンは大男が剣の押し合いの中で、ショックで力を抜き始めた事に気が付き、腕に更に力を強める。
「っあああああ!!!」
大男の斧を力尽くで弾き飛ばし、後ろに下がって、カレンは剣を後ろに構え。
「はあああああ・・・・・!!」
刃先に力のような物を溜め込み。そして。
「剛魔!!!」
掛け声と共に剣を振り払い、剣は空中で大きな風の波を作り、その波が次第に衝撃波となって大男のところまで走り飛び、真っ正面に直撃する。
「ぶへへっ!!」
風の壁のような物に激突した大男は空高く吹き飛んだ。
「へ?」
そして、呆然と戦いを眺めていたスキンヘッドの盗賊の上空に大男の影が覆い被る。
「わあああああああ!!!」
さっき、カレンに剣ごと弾き飛ばされた時のダメージで動く事が出来ず。そのまま大男がスキンヘッドの盗賊の上から迫まり来るように降り落ちる。
「ぐふっ!!!」
「ぐえっ!!!」
グシャっとスキンヘッドの盗賊は大男の下敷きになってしまい、ガクッと気絶する。同じく大男も地面に叩き付けられた衝撃でガクッと気絶する。
「ふぅ……………」
盗賊三人組を倒したカレンは溜息一つ零した。
「………………」
「! コルトさんっ!」
戦いが終わって唖然と地面にまだ座り込んでいるコルトにカレンは身を案じて駆け寄った。