助っ人登場
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以上でスキンヘッドの盗賊はバトル・マシーンを手に入れた経緯を説明し、そして、現在に至ると語る。
「……と言う訳だ!」
「此処のトロイカ軍の兵器保管倉庫から盗んだのかよ!」
「人の物を盗むのはいけない事なんだよ!」
「突っ込む所そこじゃねぇよー!」
盗賊相手に盗む事はいけないと注意するカレンにロロは反射的に突っ込む。
「俺達は盗賊! 相手が誰であっても欲しい物は何だって奪う! お前の魔装器もな!」
「!」
スキンヘッドの盗賊は、カレンの持っている魔装器に指を指して強奪宣言を隠す事無く堂々と言い、そして、更にその発言が合図だったのか、何処からか他の盗賊達がゾロゾロと30人ぐらい湧いて出て来た。
「もう逃げ場はねぇぞ! 観念するんだな!!」
乗っていたバトル・マシーンのコクピットの扉であるガラスを閉じたスキンヘッドの盗賊は手を振って、仲間に突撃の合図を出し、沸くように現れた盗賊達は合図に従い、それぞれの武器を取り出しカレン達に向かって一直線に走って、突撃を開始し始めた。
「ロロ! 来るよ!」
「ああもう! 結局こうなるのかよ!!」
大きな声で愚痴を零しながらもロロは鞄の中から弓と矢を取り出し、カレンも魔装器でも武器でもある大剣を構え直し、二人は突っ込んで来る盗賊達に対して迎撃態勢を取った、その時。
「「「「!!!!」」」」
刹那……何処からか何発撃った銃声が聞こえ、それと共にカレン達に突進して来た盗賊達の一角が地面に倒れ、盗賊達は突然の出来事に足を止めてしまい、カレンもロロもスキンヘッドの盗賊も何が起こったか、分からなかった。
「今のは?」
「じゅ、銃声?」
突如鳴り響いた銃声にその場に居た誰もが、その発砲音がした所を隈なく見渡した。
「お、おい! 大丈夫か!?」
撃たれて、悲痛な叫び声出す仲間を抱きかかえる一人の盗賊は、体の撃たれた箇所を見ると、仲間は手足を撃たれて動けなくなっただけで、命に別状は無いと確認し、他の撃たれた仲間も同じ状況だと気付く。
「あっ! あそこ!」
一人の盗賊が何かを見つけ、声と共に指を指し、その場に居た全員がその指を指した方向に顔を向けさせる。
「一体何処の誰だ!?」
「!」
指を指した方向に在った物は、宿屋の非常階段で、その非常階段の3階辺りに一つの人影が在った。
「アイシャ……!」
「えっ……?」
その人影は、カレンが盗賊から隠れる為に飛び込んだ宿屋の部屋の客人であり、さっき盗賊達を撃ち、今でも銃を盗賊達に向け構えている少女アイシャであった。
「てめぇ……一体何者だ!?」
「………」
怒鳴るようにアイシャに何者であるかを呼び掛けるが、アイシャは答えようともせず、非常階段の手摺りを飛び越え、非常階段から地上に降りて、カレン達の元に駆け寄った。
「アイシャ……どうして君が此処に?」
「今は、その事について話している場合では無いでしょ……カレン」
「な、何だよ、知り合いかお前ら?」
顔を合わせる3人は、お互い顔見知りが居れば、初対面の相手もおり、カレンは何故アイシャが此処に来た理由を問い掛け、アイシャはカレンの問い掛けに今は目の前の事だけに集中しようと答え、ロロは二人が知り合いなのが意外だったのか、思わず尋ねてしまう。
「あのアマ、あのボウズ共の仲間か! まぁいい……どちらにしても俺達の邪魔をしようてんなら、容赦はしねぇ!!」
自身の問い掛けを無視されて、腹を立てたスキンヘッドの盗賊は、再度仲間の盗賊達に突撃の合図を出して、合図を出された盗賊達は動ける者だけで突進を再開した。
「「!」」
「………」
再び突進を行なった盗賊達にカレンとロロは、気を取り直して戦闘態勢に戻るとそれに対してアイシャは如何にも落ち着いた態度で銃を構えていた右手を下ろし、左手を盗賊達に向けて伸ばし、手の平を開き、目を静かに閉じる。
「死の後に、肌を冷やす氷よ、今我に仇名す、かの者を凍て尽くせ!」
唱えるように呟きだしたアイシャに応えるように、アイシャの周りに銀色の光が無数に現れ、その現象は以前『水底の洞窟』でロロがカレンの傷を治す為に魔法の呪文を詠唱し始めた時の現象と全く同じであった。
「氷の砲弾!!」
左手を最後の言葉を言い終わった時に斜め下に振り下ろし、それに続くかのように突如アイシャの前に何かの文字が描かれた銀色の円状の輪が現れ、その輪から複数の氷の刃が盗賊達に向かって飛び出した。
「!!!」
真っ直ぐ伸びて盗賊達の方に飛んで行った複数の氷の刃はカレン達に向かって来る盗賊達の一角の武器や足元に当たり、当たった所から氷が浸食していくみたいに広がっていき、盗賊達の手足をみるみると凍らせていった。
「な、何ぃ!?」
「おお、すげぇ! 氷の魔法か!」
手足を凍らされた盗賊達は地面に倒れ込み、手足を撃たれた仲間と同様に戦闘不能に陥り、スキンヘッドの盗賊はアイシャの氷の魔法の威力に驚き、反対にロロは歓声の声を出す。
「剛魔!!」
「「「「「「!!!」」」」」
追い打ちを掛けるようにカレンは突進して来る別の盗賊達の一角に衝撃波を放ち、風の塊が盗賊達に直撃し、盗賊達は鳥が羽ばたいたように吹き飛され。そして残った仲間は次々と味方が倒れて、再び戸惑い慌てふためき、進撃を停止してしまう。
「くっ! よくもやったなぁ!!」
たった3回の攻撃だけで突撃した仲間の盗賊が半数も戦闘不能に陥らせたカレン達に対してバトル・マシーンのコクピット越しに怒りを露わにするスキンヘッドの盗賊。
「お前ら! あいつ等に一発かましてやれ!」
そう言ったスキンヘッドの盗賊に従って、2体のバトル・マシーンが右腕を前に出して、カレン達の方に標準を合わせるようにその四角形の右手をカレン達に向けた。
「ッ! 避けて!!」
「「!!」」
いきなりその場から逃げろとカレンとロロに呼び叫んだと同時に自身もその場から飛び逃げるアイシャ。
一方、カレンとロロは言われた通りに素早くその場から離れる。
すろと直後に2体のバトル・マシーンの右手から銃弾の雨が乱射され、カレン達が居た所がハチの巣になった。
「げげっ!?」
「……!」
「……『6mmバルカン』!」
武器の性能を見ただけでバトル・マシーンの装備が一瞬で分かったアイシャは武器の名前を呟き。カレンとロロはアイシャが自分たちに声を掛けてくれなかったら、自分達もハチの巣になっていたと心の底からそう思い、唖然とした。
「何やってんだ! もっと良く狙え!」
仲間が外した事に喝を入れるスキンヘッドの盗賊は、再びカレン達を撃てと指示を出し、2体のバトル・マシーンは更にカレン達に向けて攻撃を再開しようと右手の『6mmバルカン』で捉えようとした。
「う! またっ!?」
「っ!」
また右手を向けられて、焦るロロに対してカレンは、そうはさせないと大剣の剣先を2体の内の1体に標準を合わせように向け、剣の取っ手部分に在る、凸型のトリガーを押す。
「BEAM・CANNON!!」
トリガーを押した瞬間に叫んだカレン。そしてトリガーを押した直後に大剣の刃先が中央に別れ、その刃と刃の隙間から光の矢が飛び出し、目にも止まらぬ速さの光の矢は狙っていたバトル・マシーンの右手を溶かすように射抜く。
「なっ!!」
ライトピンクの光の矢に射抜かれた『6mmバルカン』が付いていた右手は、カレン達に撃つ前に爆散し、脆くも右手は使い物にならなくなってしまい、そのバトル・マシーンに乗っている盗賊の一人は目の前の出来事に目を疑う。
「なんじゃありゃ!?」
「…ビーム!」
剣も銃も通用しないバトル・マシーンの装甲をいとも簡単に射抜いたカレンの攻撃に驚愕するスキンヘッドの盗賊は口を大きく開き。アイシャはカレンの放った光の矢がビームだとこれも一目で見抜いた。
「くそ! このぉ!!」
乗っていたバトル・マシーンの右手をやられて、腹が立った盗賊の一人は、今度は左腕を前に出し、右手と同じ四角形の左手をカレンに標準を合わせて、その左手から火を噴きだして前進する鉄のような塊を撃ち出して来た。
「! LAUNCHER・MISSILE!!」
「ロロ!!」
「ぬぁ!?」
また武器の名前を言い当てたアイシャをよそにカレンは自分達の所に音速並みの速さで飛んで来る鉄の塊を避けきれないと悟り、隣に居るロロだけでも逃すようにロロをアイシャの居る所まで投げ飛ばした。
「危ない!!」
「くッ……!!!」
大剣を盾にするように剣背部分を前に出し、もう間近に自分の方に接近して来る鉄の塊もといミサイルを受け止めようとしたカレンであったが、人間の頭一個分の大きさのミサイルは大剣に直撃して、瞬く間に大地を揺るがす程の大きな爆発が炸裂し、それに伴って耳が痛くなる程の爆音が響き、そしてカレンの周り一帯の物は全て吹き飛んだ。