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ユニヴァース  作者: クモガミ
始まりの一日
23/125

バトル・マシーン

突如として現れた、バトル・マシーンと呼ばれた十機の機械人形。

その中の一機のコクピットに居たのはあのスキンヘッドの盗賊だった。

「お、お前は!」

「どうだ、ボウズ共! さすがにお前達でもコイツには敵わなぇだろ!」

バトル・マシーンの丸い体の中にスッポリと自分の体が入っているスキンヘッドの盗賊は自慢するようにそのバトル・マシーンの中をバンバンと軽く叩き、まるで勝つ事が目に見えているみたいに余裕の笑みを浮かばせていた。

「く、くそ! 何であんな物が!?」

「ねぇ、あのバトル・マシーンって言うの、そんなにヤバイ物なの?」

あのバトル・マシーンがどのような物かロロは知っているようで焦った表情を見せる。そんなロロを見て、カレンはスキンヘッドの盗賊達が乗っているバトル・マシーンという物がそんな危険な物なのかロロに尋ねてみた。

「知らないのか? バトル・マシーンって言うのは機械兵器の事だよ!」

「機械兵器?」

機械兵器と言う単語だけではどうゆう意味なのか分からないカレンは首を傾げ、ロロは溜息を吐きながらもこんな状況下で親切と言えるぐらいに説明を開始する。

「バトル・マシーンって言うのは機械で出来た兵器の事さ。対人、対魔物戦や拠点制圧、殲滅戦などあらゆる状況で適切に対応できるように作られた戦闘用の乗り物だ」

「乗り物? バトル・マシーンって乗り物なの?」

「そうだ、色んな種類が有るがバトル・マシーンは人が乗って操作するのが殆どだ。装甲は剣や銃みたいな平凡な武器じゃ貫けない程の硬さを持ち、そして、普通の人間じゃ太刀打ちできない程のパワーと火力を搭載しているっていう、現代のハイテク兵器だ!」

簡易的な説明であるが無駄に細かく詳しく説明している状況では無いので、ロロは自分が今説明できるだけの事をカレンに伝える。

「へぇ~~~何だか凄そうだね!」

「凄そうだねじゃねぇよ! 今の俺達にとっては厄介この上無い相手なんだぞ!」

説明を聞いてこんな状況下でのん気にバトル・マシーンがどうゆう物なのか、興味を持ちだしたカレンにロロは喝を入れるように突っ込む。

「あれはバトル・マシーン=〝タイプ・ヒューマン〟って言う汎用性が高い人型機械兵器で、今はどの国でも開発や改良が進められ、国の主戦力として注目されている程の機体がよりにも因って10体も居るんだぞ! 少しは焦れ!!」

緊張感が無いにも程があるぞと言いたげな眼差しで、カレンに説明と同時に注意を行なうロロにスキンヘッドの盗賊は、もっと焦らせるように話しに加わろうとする。

「それだけじゃねぇ! この〝タイプ=ヒューマン〟は背中にホバージェットが搭載された最新鋭の量産型だ! ある一定時間内なら空に飛ぶ事だって出来るんだぜ!!」

「なん、だと!?」

「ああ……そういえば、さっき空から来たよね?」

スキンヘッドの盗賊が暴露した盗賊達が乗っているバトル・マシーンの性能に耳を疑って驚くロロに対して、カレンはさっきスキンヘッドの盗賊達が空から降りて来た登場に冷静に一人で納得していた。

「け、けどよ……あのバトル・マシーンの体に付いているマークって、『トロイカ』軍の物じゃねぇか!? どこからあんな物を?」

バトル・マシーンの急な登場の所為で気付かなかったのか、どうやらロロは機体に付いているマークについて知ってようで、ロロが『トロイカ』と言った軍の物だと示しているマークに目を向けて指摘する。

「あん? 何だ………教えて欲しいのか?」

「うん、知りたい!」

何処から持って来たのか疑問に思うロロに、スキンヘッドの盗賊は答えを教えてもよさそうに薄笑いを浮かべ、挑発染みた質問を掛けて来たのに対し、カレンは嫌みを感じずに、素直に回答を求め、そんなカレンにロロは鋭く冷めた眼差しを向けて突っ込む。

「まぁ……教えてやるよ、コイツを手に入れた経緯を………」

予想とは違うカレンの返事にスキンヘッドの盗賊はつまらなさそうに眉と口を曲げて、声を低くするが、とりあえず自分達がバトル・マシーンを手に入れられた経緯を語る。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


カレン達が宿屋でバッタリと遭遇した盗賊達に追われていた時にスキンヘッドの盗賊達は軍用都市『レイチィム』の一部の兵器保管倉庫に居た。

「………」

上に鉄製網が張った壁によって四角形状に囲まれた4つもの倉庫にロロが指摘したバトル・マシーンの体に付いていた『トロイカ』と言う軍の同じマークが倉庫のシャッターの隣の壁に看板のように張り付いており、そのシャッターの前に軍の警備兵が数人でそれぞれの倉庫を見張っていた。

「……ん?」

倉庫を見張っている一人の警備兵が背後に人の気配を感じ振り向こうと顔を横に向けると。

「!!!」

当然、首に何かで叩きつけられ、警備兵は何者かに不意を突かれて気絶し、地面に倒れ込む。

「! おい、どうした!?」

隣の倉庫を見張っていた警備兵が仲間の異変に気付き、倒れ込んだ警備兵に呼び掛け、駆け寄ろうとするが。

「!!!」

足を一歩前に出そうとした瞬間に、背後から鈍い痛みが走り、隣の倉庫に駆け付けようとした警備兵は、最初に倒れた仲間と同じく地面に倒れ込んで気絶する。

「「「「「!!!!」」」」」

それに続くかのように、次々と倉庫を見張っていた警備兵達が背後から何者かに不意を突かれて気絶し、地面に降り伏して行く。

「悪いな……ちょっとお寝んねしてもらうぜ」

倒れた警備兵の後ろにスキンヘッドの盗賊とその仲間の盗賊達が立っていて、倉庫の警備兵達を襲って気絶させたのは盗賊達であった

「えっと……どれどれ……」

気絶して動けない警備兵の一人の服の中を探るスキンヘッドの盗賊、そして仲間の盗賊達も倒れている他の警備兵達の服の中を探り始めた。

「おっ! あったあった!」

警備兵の服の中から目的の物を見つけたようで、スキンヘッドの盗賊の手に鉄製のリングに繋がっている幾つもの鍵を握っており、他の盗賊達も、警備兵達の服から同様の鍵を取り出した。

「コイツで倉庫のシャッターを開けろ!」

倉庫のシャッターの近くに居た仲間の盗賊に鍵を投げ渡すスキンヘッドの盗賊。鍵を渡された仲間の盗賊はシャッターを開けようと開閉用の鍵口に鍵を刺し込み、他の仲間の盗賊達もそれぞれの倉庫の鍵口に鍵を刺し込み、シャッターを開口させる。

「ね、ねぇ……ケビー、やっぱりあいつ等と戦わなきゃいけないのかなぁ?」

「な、何だよ、いきなり……」

すると倉庫の影から二つの人影が出て来て、その人物はスキンヘッド盗賊と一緒に軍の保管倉庫に来ていた大男とロン毛の盗賊で、二人は仲間達とは少し離れた所で話の内容を聞かれないようにヒソヒソと何かを話していた。

「だ、だって………あいつ等は『水底の洞窟』であの馬鹿でかい魔物からオイラ達の事を守ってくれたんだよぉ」

どうやら大男は、『水底の洞窟』での出来事で、カレンに恩を感じ、今カレン達への更なる襲撃に躊躇していた。

「お、お前が言う、あいつ等が俺達を助けてくれたっていうのは信じるよ………でも俺達は狙った獲物は逃さない、それが俺達盗賊だ!」

戸惑いながらも、自分達が盗賊である限り、譲れない物があるとロン毛の盗賊は躊躇している大男に喝を入れるように反論する。

「で……でも……」

「確かに、お前の言う通りあいつ等には恩が有るかもしれない、でも盗賊である俺達がたった二人のガキに後れを取るのは、世間のいい笑い物だ!」

二人は心の中で助けてくれた恩と盗賊である使命が葛藤し、大男は頭を悩ませるが、ロン毛の盗賊は苦脳の末、盗賊である事を割り切り、大男にも割り切らせようと説得を試みる。

「それに俺達がこうやって食って生きるのは、お前の兄である、あのお方の御かげなんだぞ!」

「! そ……それは……」

ロン毛の盗賊が言う『あのお方』という言葉が止めになったのか、喉に何かを詰まらせたように言葉を詰まらせ、大男は顔を曇らせる。

「お前には悪いと思うが、あのお方の為だ! お前も割り切るんだ!」

「う……うん……」

心が折れたように顔を下に向かせて、小さい声で了承した大男は、カレン達に対する襲撃に躊躇していたが、『あのお方』という単語が心の中で重く圧し掛かり、苦悩の末、カレンに対する恩を仇して返す事を割り切ってしまう。

「おーーい、ハン! こっちの倉庫に在ったぞ!」

「おお! 在ったか!」

二人の話が終わった直後に、盗賊の一人がスキンヘッドの盗賊を呼び掛ける。

「情報通り、上物があるぜ!」

「そいつ、結構な事だ!」

スキンヘッドの盗賊は嬉しそうに笑いながら、呼んで来た仲間の盗賊が居る倉庫の方に歩いて行く。

「(しかし、助かったぜ………此処レイチィムの『トロイカ』軍がタイミング良く合同演習で兵の大半が出張で居なくなったお陰で、軍の中で働いている仲間と容易に連絡出来たからな)」

これ程うまく事が運べたことにスキンヘッドの盗賊は笑みを肥大化させる。

「(おまけに仲間の手引きによって基地内部に容易に侵入出来たし、警備が薄くなっている所も容易に忍び込む事が出来た……御かげで目的の物が手に入る!!)」

軍の中で働いている内通者の手引きとラッキーな事が重なって心の中でも笑みを浮かべながら歩いていくとスキンヘッドの盗賊は目的の〝品〟があると言った仲間の盗賊が居る倉庫の中へ到達する。

「やっぱりバトル・マシーン……〝タイプ=ヒューマン〟の最新の量産型か!」

倉庫に在ったのは、『トロイカ』軍のマークが付いたバトル・マシーンと言う機械兵器が静止状態のまま、正座のような態勢で10体も並んでそこに在った。

「確かにコイツは上玉だ……おい! お前らの中でコイツを操縦できる奴は早く搭乗しろ!」

仲間の中からバトル・マシーンを操縦できる仲間だけをバトル・マシーンに搭乗しろと指示を出したスキンヘッドの盗賊は、10体の内の一体に近付き、丸い体の上の部分に付いているコクピットに入る為のガラスを開けて、奥にコクピットが在るのを確かめる。

「さ~~て、これであのボウズ共に一泡吹かせられるぜ」

コクピットの中に入って、座席に座わり、座席から見て頭上の壁に付いている幾つものボタンの中に在った『ON/OFF』というボタンを押して、スキンヘッドの盗賊はまるで眠っているかのようだったバトル・マシーンを起動させる。

「コイツさえあれば、例え相手が馬鹿デカイ魔物だとしても一捻りだぜ!」

そう言うとスキンヘッドの盗賊はバトル・マシーンを立ち上がらせ、その棒状みたいな両脚とお餅のような形をした足で機体を出入り口まで歩きださせ、他の盗賊達も残りの9体のバトル・マシーンに搭乗し、起動させ、倉庫の出入り口に向かって歩き出す。

「ケビー、ラジリカ、それとお前ら! 俺達は先にボウズの一人を捕まえた仲間の所に行って来る、お前達は速やかに此処(兵器保管倉庫)から出て、後から合流しろ!」

倉庫から出て来たスキンヘッドの盗賊は外に居た大男とロン毛の盗賊と他の盗賊達に後から合流するぞと打ち合わせをする。

「あ、ああ……わかった」

「わ……わかった……」

「まぁ、お前達が着いた頃には、もう終わっているかもしれないからな………そんじゃ先に行ってくるぜ!!」

バトル・マシーンという強力な力を手に入れて過信を抱いたのか、スキンヘッドの盗賊は大男とロン毛の盗賊の歯切れの悪さに気にも止めず、間も無く倉庫から出て来たバトル・マシーンに搭乗した仲間の盗賊達と共に出撃態勢を取る。

「オシ! 行くぞ野郎共!!」

「「「「「「おう!!」」」」」」

気合いを入れる掛け声と共に、バトル・マシーンの背中に付いて在るホバージェットに火を点け、機体が地から少し浮び上がり、やがて一気に空高く上昇し、カレン達と仲間の盗賊達が居る宿屋まで飛んで行った。



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