捕まった二人
持ち前の身体能力でクレオの攻撃? から逃れたロロは一刻も早くどこか別の場所に逃げたいが為に、ドアにまた体当たりして強引に部屋の外へ飛び出したが。
「あ…」
「「「「あ…」」」」
部屋を飛び出した先にタイミングが悪い事に盗賊達に鉢合わせになり、しかも盗賊達はロロの左右を二人ずつで囲むように立っていた。
「「「「「………」」」」」
沈黙するお互いは時が止まったように見詰め合い、ロロはまた振り掛って来た身の危険に冷や汗を体中にタラタラと垂れ流す、そして。
「にゃ……ニャーーン♪」
「「「「嘘付け!!」」」」
嘘を付いて、その場をやり過ごそうとしたがあまりにも無理が有りすぎる為、素早い突っ込みを入れられた後、抵抗も出来ずに盗賊達にあっけなく取り押さえられ、通路にロロの乾いた叫び声が虚しく響いた…一方カレンの方では。
「(あれ? ……今、叫び声が聞こえた様な?)
閉じた出入り口の扉の方に目を向けて、声が聞こえたような気がしたカレン。
「(……気のせいかな?)」
気のせいでは無いがロロの助けを呼ぶ声は虚しくもカレンの耳には届かなかった。
「どうしたの?」
「あ……いや、何でも無いよ」
部屋に飛び込んで、盗賊達の目からは逃れられたカレンだが、部屋に居た銀髪の少女に銃を向けられ、抵抗しないまま両手と両足を縄で縛りつけられ、正座のような拘束状態になり、満足に動けない状態と今でも少女から顔を背け続けているのであった。
「そう……」
「………」
無表情のまま頷いた少女は、拘束状態にしたカレンから目を離さず、カレンの目の前で着替えを終え、今でも銃口をカレンから外そうとはしなかった。
「一応聞くけど……」
さっきまでの格好とは違い、頭の上に水色のキャスケット型の帽子にグレー色のジーパンに黒いジャケットのような上着を着ている。外見から見れば齢はカレンとロロと同じぐらいで、雪のような白い肌と後ろの髪は首の辺りまで伸びた氷のように潤いた銀髪、宝石みたいに輝く深紅の瞳と人形と思えるような端整な顔立ち、この容姿を見れば男女関係無く大半の人は、美少女と思うだろう。
「この部屋に入って来た理由は何なの?」
相変わらず無表情で、氷のように冷たく鋭い眼で、カレンに自分の部屋に入って来た理由を尋ねて来た少女。
「なんて言うか……盗賊って言う人達に追われているんだ、この宿屋まで追い掛けて来て……」
「盗賊?」
「この『レイチィム』に一緒に来たロロって言う子が居るんだけど、その子も盗賊に追われる事になっちゃって………」
拘束されたまま、カレンは淡々と事情を話す。
「それで、ロロの提案でお互いそれぞれ違う部屋に入り込んで盗賊の人達の目から逃れようって、事になったんだ」
「それで、偶然私が入っている部屋に入り込んで来た……という事?」
「うん……そうゆう事になるね」
申し訳なさそうに顔を下げるカレン、中に人が居たと知っていた訳では無いが、断りも無く勝手に部屋に入り込んで、更に相手の体を見てしまった為、非常事態だったとはいえ、とても気まずい気持ちになってしまったカレンに少女は。
「そう……じゃあもう一つ尋ねたいんだけど………」
怒る素振りも無く、まったく何も感じていたはいないように、心身共に変化が見当たらず、顔に一切感情を表せないまま、落ち着いた態度で少女はカレンに質問を続ける。
「この『レイチィム』に来た理由を話してくれない?」
その赤く染まった深紅の瞳に感情の色が無いと感じ取ったカレンはまるで感情が氷のように凍っているようだと記憶喪失のカレンでも普通の女の子では無いと悟る。
「人を…探しに来たんだ、長い金髪の女の子を」
「…女の子?」
女の子というカレンの発言に眉がピクっと反応する少女。
「その子を探しだす為に、此処まで来たんだけど……今はそれ所じゃないんだけどね……」
今、カレンとロロは盗賊達に狙われているので、目標の金髪の少女を探すのは困難な状態が現状なのであった。
「その探している人は、知り合いなの?」
「いや……今日会ったばかりなんだけど、その子が落とし物をしたから、届けに行かなきゃって、思ったんだ」
「落とし物? 一体何を落としたの?」
興味が湧いたのか、カレンに詳しい事情を聞き出そうとする少女、カレンはそんな少女の言動にまったく疑問も不審も感じずに、詳細を明かす。
「ペンダントを落としってたんだ、君は此処で見掛けてない? 長くて綺麗な金髪をした、蒼い瞳の女の子」
この「レイチィム』に来て、少女の行方を尋ねた最初の相手がその金髪の少女と同じぐらいの年齢に見える銀髪の少女に窺うカレンであったが、少女は首を横に振る。
「残念だけどそれだけじゃ分からない、でも容姿がもっと分かるような物が在れば、或いは……」
二つの特徴だけでは、判断し辛いと言う少女の発言にカレンはある事を思い出す。
「あっ……そうだ! 僕の胸のポケットに入っているペンダントを取ってみて!」
「え?」
自分の胸ポケットに締まっているペンダントを取ってみてくれと少女に頼み、少女はカレンにゆっくりと近付いて言われた通りに、胸ポケットの中に在るペンダントを取り出す。
「!」
ペンダントを取り出した少女は、何故か目を見開き、瞳を細くにしてペンダントを注意深く見る角度を変えながら眺め出す。
「そのペンダントの上の部分を押してみて」
そして、次にカレンは少女にペンダントの上の部分に在る、ボタンのような物を押してように促す。
「これは……!」
ボタンを押すと、ペンダントの前部分が開き、破れているがそこにはカレンが探している金髪の少女の昔の写真と思われる物が入っていた。
「会った時の姿とは違うけど、それは幼い頃の写真だと思うんだ。その写真に映っている女の子の成長した姿が、僕の探している子なんだ!」
この写真は以前、その少女と出会った場所でその写真が締まってあるペンダントが落ちて在るのを見つけ、拾った時に何となくペンダントの中身を開いてしまい、中に写真が在ると分かったと同時に少女の幼い頃の姿だと分かったカレンは、これが彼女の所持品だという可能性が高かった為、届けに来たと銀髪の少女に説明をする。
「……」
「どう? 見覚えあるかな?」
また注意深く真剣に写真を見詰める少女にカレンは顔色を窺うように尋ねる。
「……ごめんなさい、やっぱり見覚えは無いと思う」
「……そう……か」
申し訳なさそうに首を横に振って、見ていないと答える少女にカレンは、残念そうに顔をうつ伏せる。
「……でも、君の事情はよく分かったよ」
そう言うと少女は銃を腰に掛けてあるホルダーの中にしまい込み、静かに歩き出して、カレンの後ろに回り、カレンの両手両足に縛ってあった縄を解く。
「あ……」
「ずっと縛り付けてごめんなさい、あなたが私を狙って来た、敵という可能性が捨て切れなかったから」
どうやら事情を理解してくれたようで、少女は拘束状態にしていたカレンを解放する。
「いや、謝る事は無いよ。勝手に入って来た僕が悪いんだから謝るのはこっちだよ、でも……ありがとう」
やっと解放されたカレンは笑顔を浮かべ、少女に自分の話を聞いてくれた事に感謝する。
「僕はカレン、カレンって呼んで……君は?」
「私はアイシャ・フレイク、アイシャでいいよ」
立ち上がって自身の名前を明かしたカレンに応えるように、少女は『アイシャ・フレイク』と名乗り、さっきまでの無表情な顔と冷たく鋭い眼差しとは違い、少し笑って顔を和らげ、温かい微笑みの姿を見せてくれた。
「じゃあアイシャ、僕はこれから――――――」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!! カレンーーーーー!! 助けてくれ~~~~~!!!」
突然、部屋の窓越しからロロらしき叫び声が響いた。
「?」
「!」
ロロの叫び声にカレンはいち早く反応し、声のした窓の方に急いで向かい、窓を開いて、窓から顔を出して、辺りを見渡すと。
「! ロロ!!」
下に目を向けると、遠くからではあるが両手両足を縄に縛り付けられ、カレン達を追って来た盗賊達がロロに剣を突き付けている姿があった。
「カレンーーーーーー!! 早く助けに来てくれ~~~~~~~!!!」
情けない声を出して、正座のような態勢で拘束されているロロはさっきまでのカレンの状態とまったく同じで、必死にカレンの名前を叫んで、助けを求めていた。
「知り合い?」
同じ窓から顔を出して、カレンの名前を呼んでいるロロを知り合いかと聴くアイシャ。
「僕がさっき話したロロって言う子だよ!」
「彼が?」
「そう……彼がロロ! 盗賊の人達に捕まちゃったんだ!」
指を指して、盗賊達に捕まっている人物がロロだとアイシャに説明したカレンは、ロロの状態を見て、焦りを感じ、顔を曇らせる。
「ロロ! 今助けに行くよ!!」
「!」
そう言ってカレンは、窓の上に身を乗り出す。
「ちょっと待って! 此処は12階だよ、落ちたら只じゃ……」
「ごめん! 今は……そんな事を言ってられないんだ!!」
「っ! 待って――――――」
強引にアイシャの制止を振り切って、窓から下へ身を投げ出したカレンは、その直後に腰に掛けて合ったガジェッタ―を取り出す。
「ストライク!!」
落下中に自分の核の名前を呼び、何も無い所からカレンの魔装器の核であるストライクが現れ、そしてカレンの手まで飛んで行って、カレンはストライクを空中で掴み取り、ストライクをガジェッタ―の剣格部分にはめ込む。
『REGI・IN』
ストライクをはめ込むと、声と共に、カレンのガジェッタ―の剣格の上から形を形成し、いつもと同じ、刃が鋭くない大剣の姿が現れ、カレンは遥か下に居るロロ達の所に大剣を刺すように向けて、衝撃に備えて身を構えた。
「魔装器!」
窓から飛び出して魔装器を出した所から一部始終を見ていたアイシャは、カレンが出した物は魔装器だと一目で分かり、そして少し考えるように目を閉じて、短く沈黙をする。
「!」
何か決心したようにアイシャの眼つきが変わり、テーブルに置いて在った自分の荷物を取って、颯爽と部屋から飛び出して行った。