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ユニヴァース  作者: クモガミ
始まりの一日
13/125

浄化石

陳腐な嘘偽りなんて物は完全に感じない、思いやりのあるカレンの優しい一面を目の当たりにした、ロロは面を喰らったかのように呆けてしうまう。

「お前…………………」

意表を突かれたかロロは、目を丸くし、腑抜けた顔で呆気を取られたが、すぐその後、苦笑いを浮かべ、そして今度は清ました顔に変わり。

「サンキューな! じゃあ、ちょっと待ってろ!」

さっきまでの真剣な表情は何処かに消え、カレンの手に在った袋を手に取り、中身を探る。

「これと…………あとこれと………、おお! これも在るのか!」

嬉しさうに笑みを浮かべ、袋の中から四角形のパンと丸く切り取られたハムと瓶に入ったケチャップを取り出す。

「何を作るの?」

「良いから、見てろって!」

まずロロは、丸く切り取れたハムをパンと同じ位の厚さに2枚切り、ケチャップの瓶のフタを取って、その切った二つハムの表と裏にケチャップを適量に塗り、そして二つのそれぞれのハムを四角形のパンとパンの間に挟み込んで。

「ほら! 〝サンドイッチ〟の完成!」

「〝サンドイッチ〟?」

「この料理の名前だよ! ほい!」

完成した内の1枚のサンドイッチをカレンに差出し、もう1枚は自分の片手に持つロロ。

「お前の分だよ」

「あ、ありがとう」

自分の分を用意してくれた事に驚きつつサンドイッチを受け取り、カレンは作ってくれたロロに礼を言う。

「「いただきます」」

二人は食事の挨拶を行ない、サンドイッチを口に運ぶ。

「あ……………おいしい…………!」

「だろ?」

おいしい物に有り付けた二人は微笑ましそうに笑い、その後、黙々と食事を行ない、二つのサンドイッチはそれぞれの胃袋に消えて行った。

「ふぅ、少しは腹の足しになったな」

「うん、おいしかったよ」

お腹を擦って、空腹から逃れた事に安心するロロと素直においしいと伝えるカレン。

「よっと」

急に起き上がったロロは、上から水が流れている泉の端に近付き、そこにしゃがみ込んで、両手で溜まり場の水をすくい上げ、その水を飲み込む。

「プハーー! 生き返る~~~!」

喉が渇いていたのか、ロロは歓喜の声を出す。その声に釣られ、カレンも起き上がり、泉の端に近付く。

「おいしいの?」

「うめぇよ! お前も飲んでみろよ!」

どうやらロロには好評なようで、カレンはロロの勧めでその場をしゃがみ込み、泉の中の水を覗いてみる。泉の中は白い光を発する石が無数に在り、石のおかげで中は明るく、水は何の濁りも汚れも無く、透明で綺麗な水だった。

「…………」

その透き通った水をロロと同じ両手で水をすくい上げようとするカレン。水はひんやりと冷たく、肌に潤いを与え、両手に満たされたその水はまるで宝石の様に輝いていた。そしてじっくりと観賞したカレンはゆっくりと水を口に運び、飲み干す。

「(あれ? この味………………)」

「ん? どうした?」

飲み終えたカレンの顔が何かに気付いたような表情して、ロロはそれが気に止まり、カレンに問い掛ける。

「これと同じ味の水を前にも飲んだ事があるんだ」

その水の味に身に覚えが有るカレンは、あの金髪の少女に出会った湖で、コルトから分けてもらった水筒の水を思い出す。

「………………という事はお前、此処(水底の洞窟)に来る前に何処かの湖の水でも飲んだか?」

「…………多分そうだと思う」

確信が無いため曖昧な返答をしてしまうカレン。

「だったら、此処の水脈が繋がっている湖の水でも飲んだんだな、きっと!」

「湖と繋がっている?」

水脈が此処に繋がっている事は前にロロに教えて貰ったカレンであるが、湖と繋がっている事は初耳だった。

「上に在る運河から通じている水脈が何もこの洞窟だけに繋がっているんじゃない! 水脈はあらゆる所に繋がっているんだ!」

つまり上の運河から流れる水脈は、此処の『水底の洞窟』だけに繋がっている訳では無く、あらゆる至る所に繋がっていると、ロロはカレンに解説を再び行う。

「じゃあ、『カム―シャ』の少し離れた所に在る、あの湖にも繋がっているの?」

「おっ! 何だ、あの湖に立ち寄ったのか?」

『カム―シャ』の少し離れた所に在る湖という言葉だけで、カレンの言う湖が、ロロ思い当たる湖と合致する。

「あの湖も運河の水脈で、繋がって出来た湖なんだ」

「そうなんだ……………」

自分が落ちた湖の水と同じ水を飲んだと、ロロの説明で初めて分かったカレンは、あの湖と上の運河から流れる水脈が繋がっているも知った。

「所で、この光る石は何なの?」

続いてカレンはこの空間内に来てからずっと気になっていた、この場所を照らしている無数にある白い光を発する石について、カレンは泉の中に光る石を眺めながらロロに尋ねる。

「その石は、奇石っていう鉱物に当たる石なんだ」

「奇石?」

これも知らないカレンに、ロロはもう呆れずに受け流すように淡々と説明を続ける。

「奇石って言うのは、普通の石とは違い、あらゆる特性を持っている石の事を言うんだ」

「特性? この石に特性が有るの?」

泉の中に手を入れて、壁に張り付いている奇石と呼ばれる、光る小さな石を掴み取り、カレンに見せるように目の前に付き出すロロ。

「この石は、浄化石っていう水を浄水にする事が出来る石なんだ」

「浄水?」

「浄水の意味は、汚くて飲めない水を濾過と殺菌をして、綺麗な水になった水の事を指すんだ」

手の平に在る小さな奇石もとい浄化石を指でなぞりながら、ロロは浄化石の特性を語る。

「まぁ、簡単に言うと、この石は水を綺麗で安全なうまい水に変えてくれるっていう代物だ」

「それが…………この石の特性…………?」

知らない物の物への興味心か、カレンはロロの手の平に在る、小さな浄化石を渡してもらって、自分の手の平に乗せて、まるで宝石のようにその白い光を発する石を見詰め続ける。

「浄化石はこの大陸特有の原産物だからな、この洞窟以外にも色んな場所に有るんだぜ」

「此処以外にもいっぱい有るの?」

「ああ、この大陸のほとんどの場所に在るって噂だ! 探そうと思えばいくらでも在るみたいだぞ」

「そんなに……………」

この光る石が他の場所に沢山在ると知って、驚いたように目を細めるカレン。

「この浄化石は、この大陸全ての連中の生活を支えているんだ、昔から。だからこの大陸に住んでいる奴で、この石の事を知らない奴はいないってくらいだからなぁ」

「生活を支えている?」

「俺の村(カム―シャ)もこの石のおかげで、安全な飲み水を井戸の中から、確保できるんだ、他の所も大して変わらねぇ」

ロロのこの言葉で『カム―シャ』で見掛けた井戸の事を思い浮かべて、カレンは一つの答えを見つける。

「それってつまり、この石が在るから、汚い水を飲まなくて済むって事?」

「そうゆう事だ、ちょっとは分かってきたな」

教えた甲斐があったかのように、上機嫌になったロロは、先に進めると思われる、来た道の真っ直ぐ前に在る、奥の穴の方に体を向ける。

「さて、そろそろ行くか!」

「えっ? もういいの?」

この場所に来て数十分しか経っていないので、この短い休憩の中で、ロロの回復の早さに信じられないと言いたげ顔に変化するカレン。

「大丈夫! 腹も少しは膨れたし、水も飲めたし、これくらいの時間で休めたから、もう全開だ!」

「本当に?」

「本当に大丈夫だって! それに此処でぐずぐず時間を潰していたら、後ろで追っかけて来る盗賊達に追い付かれるからな」

「………………それもそうだね」

自分達が追われている身だという事は、この洞窟に入った時から分かっていた事だから、ロロは確実に逃げ切れるように此処で休憩して体力の回復を短時間で済ましてようだ。

「それに、また地震が起こって、壁にヒビが入って、水脈が噴き出すのはもう勘弁だ」

前の空間内の出来事を予測して、この空間内でも起こるかもしれないと恐れたロロは早く先に進む事にしたようだ。

「地震って、此処(水底の洞窟)でよく起こるの?」

「此処だけって話じゃねぇ、この大陸事態でよく起こるんだ!」

「? それって……どうゆう意味?」

「この地震もこの大陸特有の現象なんだ。この地震は毎年に何十回も起こる! おまけに今年は特に多いんだ!」

「現象………………」

地震は毎年起こって、今年は特に多いと口走るロロは、カレンの反応を見向きもしないで話を進める。

「俺様が生まれる前のずっと前の話だが、昔は今と違って、此処は運河の先を渡る為に普通に人々が渡っていたみたいでな。多くの人が此処を通っていたんだ」

「え? じゃあ何で此処は、誰も通らなくなったの?」

「………………昔ある時、大きな地震が起こってな、その地震であの時みたいに壁にヒビが入って、それが運悪く大きな水脈に当たっちまったみたいでな」

声が急に質が低くなったロロの声は、カレンの耳に小さく響く。

「洞窟内をあっという間に埋め尽くす程の水が流れ込んでな………………その時、洞窟内を通っていた人達は水に飲み込まれ、大勢の犠牲者を出したそうだ……………………」

「そう………か…………」

「まっ、聞いた話によればだがな…………………」

「…………………………」

「…………………………………」

何て言えばいいのか、何となく言葉が見つからないカレンはロロが今話していた瞳の奥に悲しみのような物を感じた。そして二人の間に少しの沈黙が支配した。」

「っで、でな! それ以来、洞窟を通ろうとする人は居なくなって、どうにか運河の先を渡ろうと洞窟と違って、安全で早く運河を渡る為に何十年掛けて、今は地震のせいで修理中の大橋を建設したって話だ!」

妙に気まずく感じたロロは、いつも通りに声の質を戻して話を持ち直す。 

「その橋は、君が生まれる後に出来たの?」

調子が戻ったロロに、カレンは話を振りやすくなり、さっきと同じ調子で口を開く。

「いや、確か……………俺様が生まれるちょっと前に出来たらしいぞ」

「そうか……………………その橋が出来たから此処はもう誰も来なくなったんだね」

「俺達を除いてな……………………………」

「あっ、そうだった……………」

誰も、もう通らない洞窟を通ろうとしている事をうっかり忘れていたカレンに、ロロは忘れんな!っと突っ込んだ後、足を進め、先に続いていると思われる奥の穴に向かう。

「ああ! ちょっと待って!」

「ここで、もうたらたら話している暇は無いぞ! さっさとこの洞窟から出るぞ!」

「………………ああ! ちょっと!」

慌ててロロを追い掛けるカレンは、元気を取り戻したロロに何処か嬉しさを感じ、奥の穴に入って行ったロロを駆け足で追う。

「待ってよ!」

「置いて行かねーーよ!」

カレンを待っていたようにゆっくりと歩いていたロロにカレンはすぐ追い付き、二人は隣り合わせでまた暗くて狭い通路の奥へと歩き続けた。


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