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ユニヴァース  作者: クモガミ
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縛られる

一方でカレンの奮闘により、Xの左半分側の黒い糸に続いて右半分側の黒い糸も切断されたことによって、金髪の少女の拘束は完全に解けた。

右半分側の拘束が解けたことにより少女の身体の右半分も地面に着く。

だが過労や電流によるダメージのせいで立つの力も失ってしまった少女は右膝が地面に着いた途端、上半身に前のめりに倒れる。

するとそこへカレンが少女の元へ駆け付け、上半身が地面にぶつける前にカレンは右手で少女の右肩を跨いで左肩に手を伸ばし、その身体を支えた。

「あ、あんた……」

横目でカレンの姿を確認した少女は今にも消えてしまいそうな弱々しい声で呟く。

「遅くなってごめん、でももう大丈夫だから」

黒尽くめ達の動きを見逃さないよう、周りに居る全て者に眼を配りながら、自分が来たからには大丈夫だと少女を安心されるように囁くカレン。

その囁きに対し、少女は眼を丸くして、

「なんで………"なんで戻って来たの,,?」

信じれないと言いたげな表情でカレンが戻ってきたことに驚いた。

意外な言葉が返って来てカレンは思わずクスッと笑う。

「なんでって……戻ってくるって言ったじゃない。君はじっとしてて………大丈夫、君は僕が守るから」

笑みを浮かべてカレンがそう言うと少女は再び驚く。

短剣が刺さった腰から激痛が走り、額から大量の汗が流れているのにも関わらず、何故そんな優しい笑みを浮かべることが出来るのか。

そしてその状態のまま、逃げずにまだ戦う気であることを。

少女は驚きの余り言葉が見付からず、ただ呆然とする。

「く…………っ!」

するとその時、カレンが放った風の塊によって吹き飛ばされた黒尽くめの一人が起き上がった。

その黒尽くめは二人の黒尽くめに抱えられていた者だった。

他の二人を置いて彼だけが起き上がれたのは彼だけが風の塊の直撃を喰らわなかったからであろう。

やられたと思っていた仲間の一人が起き上がると黒尽くめ達のリーダー格は『縮地法(しゅくちほう)』でその黒尽くめの隣に移動し、

「やれそうか?」

「心配ない、まだやれる!」

起きたことは良いが、戦えるかのか?とリーダー格が確認を取るとその黒尽くめは折られた左手をブランと下げながらもまだ戦えると躊躇なく答える。

左手が折れて戦闘力は落ちたが、それでも戦力になるのでリーダー格は仲間のやる気のある返事に『よし』と頷く。

そのやり取りを見てカレンは黒尽くめ達の視線があの起き上がった黒尽くめの方に傾いていることを察するとすかさず少女の耳元に口を寄せる。

「手を離すよ、良い?」

「えっ? ちょ………」

本人の承認も取らず、黒尽くめ達が行動を起こす前に彼等の隙を見て金髪の少女が地面に尻餅を着いた状態で手を離すカレン。

支えられた手を離された少女は左手を地面に置き、それを支えにして尻餅を維持する。

少女から手を離すとレンは即座に腰を起こし、大剣を両手で握り直して迎撃態勢を取る。

カレンが態勢を整えたと同時にリーダー格はまだ立っている残りの仲間達に眼で合図を送る。

声や手も出していないのにリーダー格の眼を見ただけで、仲間の黒尽くめ達はその合図を理解し、服の袖から短剣を取り出す。

その直後に黒尽くめ達が一瞬でその場から消える。

黒尽くめ達が消えた瞬間、カレンは咄嗟に念じると共に、

Energy(エネルギー)Field(フィールド)!!」

そう叫ぶと大剣の刀身の側面側の窪みから山吹色の光の粒子が溢れ出し、放出された大量の光の粒子達はカレンとカレンの傍に居る少女を包み込むように球体状の壁へと姿を変える。

大量の粒子が密集し合って球体状の壁を築いた直後、球体の囲むように四方から黒尽くめ達がすぐ手前に出現した。

しかし、現れてすぐにバックステップを行い、球体から少し離れると球体を注視し始める。

Energy(エネルギー)Field(フィールド)か!」

球体を挟んでカレンの正面に現れたリーダー格が一目で球体の正体を見抜く。

「どうする?」

右斜めに現れた黒尽くめが『Energy(エネルギー)Field(フィールド)』に対して、どう対処して良いのか分からないのか、リーダー格に指示を仰ぐ。

他の黒尽くめ達も同様にどう対処すれば良いのか分からないようだ。

仲間達が対処に困ったのを見て、リーダー格は落ち着いた態度で指示を出す。

「問題ない、俺が今からやることを良く見てろ」

そう言うとリーダー格は球体の傍まで歩いて近付き、球体の数㎝手前で止まる。

すると右手に持っていた短剣を服の袖に戻し、おもむろにその右手を球体に添えるように触れた。

リーダー格の行動を間近で見て、カレンは何をする気なのだろうと眉を吊り上げる。

と、その瞬間。

リーダー格の右手が粒子の壁を押し退けて、球体の内側へ侵入したのだ。

鉄壁の防御だと思っていた『Energy(エネルギー)Field(フィールド)』が手を前に突き出しただけで突破さえれたことにカレンは眼を見開く。

そして球体の壁を突破した右手の服の袖から黒い糸を発射した。

狭い球体の中では逃げられることは出来ない上に至近距離からの攻撃なのでカレンは避けること出来ず、黒い糸は瞬く間にカレンの首に巻き付いた。

カレンは即座に黒い糸を解こうと左手を大剣から離し、黒い糸へ掴み替えて左手に力を込めるが、その前に黒い糸から電流が流れる。

「あっ、がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

黒い糸から伝わって身体全体に電流が走り、悲鳴を上げるカレン。

身体に流れる電流に悶え苦しみながらもカレンは黒い糸を引き千切ろうとする。

しかし、電流がそれを邪魔して腕に力を入れることが出来ぬまま、電流を浴び続けた。

やがて20秒後、電流が流れ終わり、カレンの悲鳴も止む。

20秒間も電流を浴びせられたが耐えきれない訳ではなく、まだ気力が残っているカレンは次の電流が流れる前に今度こそ黒い糸を引き千切ろうとした。

だがその時。

カレンの両手や両足に黒い糸達が四方から巻き付いた。

「!!?」

カレンは顔を真っ青にして驚く。

続々とカレンの身体に巻き付いた黒い糸達はリーダー格が発射した物ではなく、仲間の黒尽くめ達による物で、彼等もリーダー格と同じように右手を球体の内側に侵入させ、そこから黒い糸を発射してカレンの身体中に巻き付かせたのだ。

そして直後に新たに巻き付いた黒い糸達から電流が流れる。

「がっ、ぁああああああああああああああああああああ!!!」

再び電流が身体に流れて、また悲鳴を上げるカレン。

しかも最初は一本であったのに対し、今度は四本の糸から電流が流れているので最初の時よりも出力は四倍も高く、それ比例にしてカレンの悲鳴も最初の時よりもより悲痛な物に成る。

四本の黒い糸から流れる電流は痛みを与えると共にカレンの身体を焦がし、気力や意識も削り取っていく。

そして最初の時と同じ、約20秒で四本の糸から電流が流れ終わる。

「………ぁ………くっ!」

電流がストップした直後にカレンの身体は前のめりに倒れそうになるが、すかさず大剣を地面に突き刺し支え杖代わりにして、何とか踏み留まった。

だが最初の電流は何とか耐えたが今度の電流は流石のカレンも堪えたようで、顔には生気が無く、眼は虚ろを向き掛けていると共に意識が明滅していた。

そんな薄れいく意識の中でもカレンは決してそこから一歩も動かず、『Energy(エネルギー)Field(フィールド)』を展開し続ける。

球体の内側を黒い糸に侵入された今、もう『Energy(エネルギー)Field(フィールド)』を張り続ける意味など無いと思われるのにカレンは何故、頑なにフィールドを展開し続け、しかもそこから動こうとしないのか?

その理由はただ一つ、金髪の少女を黒尽くめ達から守る為だ。

もしフィールドを解けば、自分だけではなく少女もさらけ出すことに成ってしまうので、黒尽くめ達がフィールドを解いた瞬間を狙って少女を拐って逃げ去って行くかもしれないという可能性も考えられる為、カレンはフィールドを解く訳にはいかないのだ。

更に言うと黒尽くめ達は『Energy(エネルギー)Field(フィールド)』の壁を身体ごと突破して、少女を奪うことはしないと思われる。

何故ならフィールドを突破し、球体内に身体が完全に入ればカレンの大剣の刀身が届いてしまうので、入った途端、大剣で迎撃されることを警戒して今は手だけを球体内に入れているようだ。

だがカレンの身体に黒い糸が巻き付いている今、カレンが不利な状況なのは明らかである。

現に二度も電流を浴びたカレンの身体や意識はもうボロボロ、今は不屈の精神力で何とか立っていられるがそれも時間の問題。

早く黒い糸を外さなければまた糸から電流が流れ、カレンの身体は更に傷付けられてしまう。

しかし、電流を浴び過ぎたカレンにはもう黒い糸を引き千切る力は残されておらず、ただ大剣を杖代わりにして立ちながら、『Energy(エネルギー)Field(フィールド)』が解かないよう、意識を保ち続けるのがやっとだった。

「……もう……良いから」

するとそこへ少女がカレンに声を掛ける。

「私のことは……もう良いから、早く逃げなさい!」

声を出すことも辛そうに少女は尻餅着いた身体でカレンに逃げるよう途切れ途切れだが促す。

更に少女は言葉を重ねる。

「………このままだと………アンタ、本当に死んじゃうわよ。アンタだってこんなところで……死にたくないでしょ!」

小さな風でも掻き消されそうな声で必死にこの場から逃げるように語り掛ける。

少女の言う通りこのまま電流を浴び続ければ、やがてカレンは意識どころか命も落ちしかねないであろう。

それはカレン自身もよく分かっている。

だがそれでもカレンは、

「嫌だ………僕は逃げない!」

身体も意識もボロボロなのに力の込もった声で頑なに逃げないと少女に返した。


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