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ユニヴァース  作者: クモガミ
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109/125

・・・・・の筈が

金髪の少女が居なくなった今、カレンは大人しくロロやミツルギ達の帰りを待つこと以外、することがなかった。

『早く帰ってこないかな』と思いつつ、天井に向けていた顔を下ろすと開きっぱなしの出入り口が眼に映る。

とりあえずあのままではいけないと思い、その開きっぱなしの出入り口を閉めようと立ち上がるカレン。

そして立ち上がった拍子に視線が一瞬だけ、少女が寝ていたベッドに傾いた瞬間。

「あっ」

とカレンが声を上げる。

何故声を上げたのかと言うと此処に在ってはいけない物が在ったからだ。

そのいけない物とはベッドのすぐ隣に在る、小さな棚の上に在った。

カレンはすぐさま少女が寝ていたベッドの方へ向かい、棚の上にあるそれを拾い上げる。

棚の上に在った物、そうそれはペンダント。

カレンがやっとの思いで少女に届けた、少女の大切なペンダントだった。

「また気付かなかったのか!?」

少女がペンダントを置いて行ったことにデジャヴを感じるカレン。

ペンダントが此処に在るということは、少女はすぐ近くに置いて在ったペンダントの存在に気付かず、部屋から出て行ってしまったということになる。

「お、追いかけなきゃ!」

置いて行かれたそのペンダントは少女にとって大事な物で、その大事なペンダントを届けたいという一心でカレンは少女を追い続けた。

大事なペンダントを失えば彼女が悲しむ、それだけは避けないと再び思う。

更に言えばやっとの思いでペンダントを届けたというのに、ここでまたペンダントを置いて行かれては、今までの努力が水の泡になってしまう。

そうならない為にもカレンは慌ただしくもテーブルの上に置いてある自分の荷物を取り、急いで部屋から出る。

廊下に出ると近くに階段を見付け、その階段でロビーまで降りた。

階段を下りながら少女がペンダントの存在に気付いて、部屋に戻ってくるのでは?とカレンはその可能性を考慮し、少女が戻ってくるまで部屋に待つべきか?と考えたが、すぐにその対処を一蹴する。

もし少女がペンダントの存在に気付かないまま、何処か遠い場所まで行ってしまったら手遅れになってしまうので、やはり直接渡すべきだとそう判断するカレン。

やがて1分も経たない内にロビーに着いたカレンはロビーの玄関付近で見覚えのある獣人の少年を発見する。

ロロだった。

どうやら夕飯を買い終えたようで、手にはビニール袋が引っ提げられていた。

するとロロがカレンの存在に気付き、

「カレン、何やってんだこんな所で?」

「ロロ!」

声を掛けられたカレンはロロの元へ駆け寄る。

自分の元へ来たカレンが何やら慌ただしい様子だと感じたロロは何が遭ったのか伺う。

「どうした? そんな慌てて」

「あの子を見なかった?」

「あの子? あの子って……あの金髪の奴か? それなら宿屋の手前ですれ違ったが………何か遭ったのか? アイツも急いでいたみたいだけど」

「実は彼女、これ置いて行っちゃったんだ!」

細かいことは省いて、カレンは簡潔的にあの金髪の少女をまた追い掛けなければならなくなった最大の原因であるペンダントを見せる。

ロロはそれを見て、眼の色変えて、

「何やってんアイツは!?」

「と、とにかく! 彼女を追い掛けなきゃいけないんだ、彼女は何処へ行ったの!?」

「この宿屋を出てすぐ左の大通りの方へ行ったが……お前一人だけじゃ探す前に迷子になるだろ、俺も一緒に探してやんよ」

「うん、ありがとうロロ!」

記憶喪失のせいでロクに地理も分からないカレンが一人で外に出れば、高確率で迷子になると予測したロロは一緒に金髪の少女を探すことにし、二人は颯爽と宿屋から出る。

外へ出るともう9時過ぎだと言うのに都内は人の群れで溢れ返っており、ロロは先行する為、その群れの中へ突入した。

続いてカレンも進行を阻むように歩道に群がる人の群れを掻い潜るように前へ進みながら、大通りの方へ向かうロロの後に付いていく。

そして数分後、二人は大通りに辿り着き、捜索を始めようとしたが……

「ど、何処に居るんだろう?」

「お、俺に聞くな……」

二人の額から汗が流れる。

辿り着いたのは良かったのだが、大通りも人があまりにも多く、カレンとロロはその群れの中から少女を探し出すのは非常に困難に思えた。

だが、その時。

「(此処にはあの女は居ない)」

「(その声、レクサス!)」

何時も突拍子も無く、カレンの頭の中で謎の人物?であるレクサスの声が響いた。

「(この通りを真っ直ぐ抜けろ! 抜けた先には見晴らしの良い広い空間がある、そこに女は居る)」

「(分かった、行ってみる!)」

レクサスの言うことを素直に信じて、カレンは大通りの奥を目指して走り始める。

カレンが急に走り出したことに驚きつつもロロはその後を追う。

「っておい! 何処へ行くんだよ!?」

「この大通りを抜けた先! そこに彼女が居るってレクサスが!」

「レクサスって誰だよ!?」

そう突っ込まれたが説明している暇は無いのでカレンはロロの問いに対する答えは一旦置いといて、大通りの奥へ急いだ。

やがて二人は大通りを抜けると中央に噴水が建てられた見晴らし良い広場に辿り着く。

レクサスの言っていた通り、確かに見晴らし良い場所だった。

しかし、それに以前にカレンはその場所に見覚えを感じる。

そうそこは今日の昼間、アイシャとの待ち合わせた場所でもあり、金髪の少女の居場所を知る切っ掛けが得られた場所でもあった。

「本当に此処に居るのかよ?」

「分からない、けど探してみないと」

レクサスの言ったことが本当ならば金髪の少女は此処に居る筈だとカレンは中央の噴水を目指しながら辺りを見渡す。

昼間は大通りのように人で溢れ返っていた広場だったが、夜に成ると見違えるように人通りがとても少ない。

しかも広い場所なのに電灯の数が少なく、見晴らしは良いが薄暗さが目立つ場所だった。

今度は視線を噴水に移すと噴水に設置された映像を映す機械も電源が入っていないのか、画面は真っ暗で、映像が流れる気配はない。

するとカレンはその噴水の前に誰かを見付ける。

眼を凝らしてその人物が誰なのかよく見てみると………

捜索対象である金髪の少女だった。

「居た!」

少女を見付けてカレンはすぐさま少女の元へ駆け寄る。

「おーい!」

無事に見付けられた事に安堵しつつカレンはこちらの存在に気付いて貰う為に呼び掛けた。

声を聞いて少女はハッと眼を見開き、顔をカレン達の方へ向ける。

そして呼んだ相手がカレンだと分かると右手に持っていた何かを服のポケットにしまい、左肩に掛けた白いバックから『ガジェッター』を取り出す。

「一体、何しに来たの?」

身を構えながら放ったその声は何処か冷たく、更に盗賊団のアジトで再開した時と同じように険しい表情をしていた。

追い掛けて来たことに不審を抱き、警戒しているのだろうと悟ったカレンは少女の数m手前で止まる。

「いや、実は………」

ペンダントを渡す為にも、追い掛けて来た理由を話そうとした時。

カレンは少女の顔に何かが付いていることに気付く。

……涙だ。

少女の眼から頬を伝って涙が零れているのだ。

「泣いているの?」

カレンにそう指摘されるまで、自分が泣いていること気が付かなかったのか。

自身の眼から涙が流れていることに気付いた少女は左手で少し乱暴に涙を拭う。

「ど、どうでも良いでしょそんなことは! それで結局一体何の用なのよ!? 私は忙しいのよ!!」

涙を見られて羞恥心が沸き上がったのか、キレ気味にそう吐き散らす少女。

その反応に驚きつつもカレンは手際の早さで胸ポケットからペンダントを取り出す。

「これ! 忘れ物だよ」

流れる動作でカレンがペンダントを差し出すと少女の眼が丸くなる。

次に左手でペンダントを仕舞っていた服のポケットの中を漁り始め、中にペンダントが無いことを確認すると、少女は宿屋を飛び出た際に落としてしまったのではと思い込む。

すると顔を覆い隠すように左手を顔に被せて、溜め息を溢す。

「…………ごめんなさい、また世話を掛けさせてみたいね」

一度ならず、二度までもペンダントを届かせてしまって申し訳ないと思ったのか、今までのようなツンツンとした感じとは違って、悔い改めた態度で詫びを入れる。


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