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ユニヴァース  作者: クモガミ
二人の再会
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五人の関係

アイシャのその言葉にロロは意外そうに眼を大きく開き、その根拠を伺う。

「何か良い案が在るのか、アイシャ?」

「これを使うのさ」

そう言ってアイシャは『グラ・ビー』の操縦器をポンポンと叩く。

言葉と行動から察するにどうやらその『グラ・ビー』に乗って、首都『リア・カンス』へ行こうということらしい。

確かに『グラ・ビー』の足ならば、人の足では半日も掛かる距離等、たった数時間程度で辿り着くことが出来るだろう。

「良い案だアイシャ! これなら歩かずに『リア・カンス』へ赴くことが出来る」

『グラ・ビー』を使うとアイシャの提案にミツルギは大いに賛美する。

「け、けどよ、この『グラ・ビー』が盗賊団の物とはいえ、元は誰かの物だったんだぜ。それを勝手に使って良いのかよ?」

しかし、ミツルギとは対照的にロロは盗品を勝手に使うのに少し抵抗が有るのか、それはいけないことではないか?と投げ掛ける。

その投げ掛けに対して、ロロの言うことも一理有ると思ったのか、アイシャは考え込むように腕を組んで少しの間口を閉ざし、そしてそう経たない内に口を再び開く。

「……確かに盗品とはいえ、元は誰かの物を勝手に使うのはいけない事だね」

盗品でも人の物を勝手に使うのはいけないことだと素直に認めるアイシャ。

だが、アイシャはそこで『でも』と付け足す。

「今の私達の状況ではそうは言ってられない。外はもう夜だし、私達の身体はヘトヘトに近い状態だし、その状態で『リア・カンス』へ徒歩で行くのも、何処かで野宿するのも危険だ。道中で魔物に襲われる可能性が十分有るからね」

「じゃあ、小屋(ここ)で野宿すれば良いじゃないか。此処なら魔物に襲われる心配は無いぜ」

「いや、それは駄目だね」

とアイシャにその案をバッサリと却下され、ロロは不可解そうに眉を吊り上げ、

「何でよ?」

「私達は盗賊団のアジトの地下坑道から逃げたんだよ。で……アジトの鉱山周辺を『トロイカ』軍が包囲していた、アジトから盗賊達が去った後、今頃盗賊団のアジトは軍に占領され、人質を確保と共に内部調査が行われている。そして私達が通った地下の鉱山が発見され、坑道の行き先が此処であることが発覚するのは時間の問題。………もし、私達がこの小屋で野宿している中、『トロイカ』軍が盗賊団の小屋で野宿している私達を見付けたとしたら?」

「俺達を盗賊団の一味だと誤解するかもしれんな」

『あっ』とアイシャとミツルギの推測を聞いて、小屋で野宿する危険性を理解するロロ。

更にアイシャは言葉を重ねる。

「それに私は今日の夜、『リア・カンス』で依頼人と会う約束がある。だからこんな所で呑気に野宿する暇も徒歩で首都へ向かう余裕なんて無いんだ。そして何より………」

と話の途中でアイシャは視線をある人物に向き変える。

その人物とはカレンにおんぶされた金髪の少女だった。

「私達よりも遥かに疲労している彼女を一刻も速く安全な場所まで連れて行って、宿か何処かで休ませるべきだよ。『グラ・ビー』を勝手に使うに関しても、元の持ち主に返す為に乗った御返しとして『リア・カンス』の憲兵団に引き渡せば、元の持ち主にとっても良いことだと思うよ」

自分の約束事と尽力を尽くしてくれた少女の迅速な救護、そして『グラ・ビー』の元の持ち主に返す目的で『リア・カンス』まで乗れば、お互いにとっても有意義だと述べられ、心が揺らいだのか、ロロの顔に迷いが表れた。

するとそこで決定打を出すように、

「僕も誰かの物を勝手に使うのは悪いことだと思うけど、今はこの『グラ・ビー』が必要で、そしてこれを『リア・カンス』に持っていくことで元の持ち主に返せるのなら乗るべきだと僕は思う」

カレンからも『グラ・ビー』の足が必要だと述べられ、ロロの心がグラっと傾く。

すると観念したのか、ロロは肩を落として、

「分かったよ。じゃあ使わせ貰うぜ、『リア・カンス』まで」

二人の意見や説得によって思い直したロロは『グラ・ビー』に乗ることを仕方がないという感じで同意する。

「お前もそれで良いよな?」

と金髪の少女も『グラ・ビー』に乗ることに賛成か、確認を取るロロ。

「……………」

「「「?」」」

しかし、返事は返ってこらず、ロロ・ミツルギ・アイシャの三人は眉を吊り上げる。

すると三人は少女に違和感を覚え、

そしておんぶでカレンの後ろに隠れているせいで、分かり難かったが少女が妙にぐったりしていること気付く。

いや、ぐったりしていると言うよりも身体の力を抜いて、ダラーンとカレンに身を預けているといった感じだ。

更に耳を澄ますと『スゥー……スゥー……』と言う声が断続的に聞こえて来る。

三人はもしやと思った瞬間、カレンの口が開く。

「言い遅れたんだけど彼女、坑道の出口に着く少し前に寝ちゃったんだよね」

と言った直後に『あはははは』と笑って横に振り向くカレン。

そうすると盗賊団のアジトから地下坑道の途中まで過労状態にも関わらず、眼を凝らしてカレン達を警戒していた金髪の少女だったが、カレンとの会話で気が緩みにそこへ睡魔が襲ったのだろうか、少女は上半身と横顔をカレンの背中に預け、まるでベッドで寝ているかのようにすやすやとした表情で眠っていた。

その寝顔を見て、ミツルギは苦笑を浮かべる。

「道理でさっきから一言も発しない訳だ」

返事を返さない訳が判明してロロも同じく苦笑を浮かべた。

だが二人と違ってアイシャは眠った少女を見詰めながら、

「……本来なら彼女にも了承を貰いたかったんだけど、今起こすのは悪いし………しょうがないからこのまま彼女も乗せて『リア・カンス』に行こう」

「良いのか? それじゃあ約束を破ることになるぞ」

と少女の確認無しで勝手に『グラ・ビー』に乗せたら条件付きで手伝うという約束を破ってしまうとロロは指摘する。

その指摘に対し、『それはー』と何かを述べようとアイシャだったが、カレンが遮るように口を挟む。

「彼女ならちゃんと話せば分かってくれるよ。良い子だから」

地下坑道で少女と話したお陰か、少女の人柄を少し知ったカレンは話せば分かると自分なりの根拠でそう語った。

そしてカレンに遮られたが後に続くように、アイシャもこう述べ始める。

「そうだよ、ちゃんと話せば分かってくれる筈だよ。そもそも、私達は彼女を助ける為に『リア・カンス』まで連れていくだけであって、別にそれ以外の目的がある訳でも、信用を得たい相手でもなければ、これからも行動をずっと共にする関係でもない。私達と同じ、ただ成り行きで行動を共にした関係に過ぎない」

淡々と述べるアイシャの言葉はまるで全員に言い聞かすように小屋の中に響く。

心なしか、カレンはこの時のアイシャの言葉が何時もよりも何処か冷たく感じた。

アイシャのその調子で話を続ける。

「大体『リア・カンス』に着けば、結局は皆のそれぞれの都合で別れるんだから約束を破っても何も問題無いよ。別に彼女から嫌われたって構わないでしょ? 私達は………」

と一旦そこでアイシャは口を止めて、周囲を見渡すように皆の顔を一瞥し、そして途中で止めていた言葉を紡ぐ。

「………赤の他人同士なんだから」

何処か躊躇しながらも突き放すようにそう言い放つ。

アイシャのその言葉に誰も意義を唱える者は居なかった。

かなり冷たい言い方だが、アイシャの言うことはもっともだからだ。

少女と四人はカレンを除いて今日出会ったばかりの関係で、親しい仲でも無ければ、仕事で雇われた訳でもない。

今は行動を共にしているがそれは所詮一時的なもので、アイシャの言う通り首都『リア・カンス』に着けば、お互いの都合で別れるであろう。

カレン達の最終的目標は金髪の少女を無事に安全で休める場所まで運ぶこと、つまり五人の現在地から一番近い『リア・カンス』まで送り届けることだ。

そしてそれが終われば、もう少女と共に行動する理由は無いし、少女の方もカレン達の力を借りる必要も無いので、後にそれぞれの都合で別れるのが自然且つ普通と言えよう。

卑屈な言い方だが、要するに約束を破ったとして仮に少女から疑われようと嫌われようと恨まれようともカレン達は少女を助けたい、ただそれだけなので今後ともお互い関わり合う関係で無ければ、気にする必要は殆ど無いということだ。

更に言えば、カレン・ロロ・アイシャ・ミツルギも少女と同じ関係とも言える。

彼等も殆ど何も接点を持たない他人だからだ。

その他人同士のカレン達が今まで行動を共にしたのは主に目的の合致や利害の一致或いは個人的な感情で協力し合っていただけで、これからも共に行動するという余程の事が無い限り、可能性は低い。

何故ならロロにはロロの都合が有り、アイシャにはアイシャの都合が有り、ミツルギにはミツルギの都合が有るので『リア・カンス』に着いた後の彼等の予定がまた合うのは奇跡が起こらない限り難しい。

一方カレンはペンダントを少女に届けるという当初の目的を達成した為、一旦目的が無い状態になったが、彼は記憶喪失な為、少女と同じく自分探しの旅に出る可能性が高く、もし自分探しに出るのならば、やはり皆とまた共に行動するのは無いと言えよう。

口せずとも頭の何処かでそう考えていたのか、カレンはアイシャの言葉に聞いて、顔が俯く。

成り行きとは言え、お互い手を取り合って戦った彼等も少女と同じように一時的な関係だということだ。


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