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ユニヴァース  作者: クモガミ
二人の再会
105/125

坑道を抜けた先

坑道内を歩き続けて更に一時間後。

五人はようやく出口らしき扉を見付ける。

盗賊達の隠し通路だけあってか、扉には鍵が掛かっていたが特に壊しちゃいけない理由等無い為、ミツルギはその扉を叩き壊し、扉の奥に進み、残りの四人もその後に続く。

扉の奥に進むとそこは外だった。

坑道と違って点灯が無いので辺りは暗くて殆ど何も見えないが、五人の遥か頭上には小さく輝く星達が在るので五人が出た所は外で間違い無かった。

ロロは溜め息を溢して、

「やっと外だな」

「みたいだね。真っ暗ってことはもう夜か………まぁ時間的に考えれば当然なんだけど」

誰が見ても分かるが、外が夜になっているとアイシャは空を見上げて述べる。

片や辺りを見渡しながらミツルギは、

「さて、外に出たこと良いが……此処は何処だろうか?」

そう言って話を切り出す。

ここで五人は新たなる問題に直面していた。

五人は無事に『トロイカ』軍の眼を盗んで鉱山から抜け出したのは良いものの、自分達は今、何処に居るかが分からない状況にあるからだ。

「………何処だろうな? 森の中みてぇーだけど」

何処に繋がっているかも分からない道を通り、しかもその道が地下で在るなら現在位置が分からなくなっても無理はない。

しかも外は夜なので辺りは暗く、この大陸の住民であるロロでも今自分達の居る場所が森の中だということ分からなかった。

そこでカレンはロロにこう問い掛ける。

「ロロ、こんなに暗いのに良く分かるね?」

「お前………もう忘れたのか? 俺は猫の獣人で、俺の眼は暗い所でも効くんだよ」

『ああ、そうだったね!』と思い出すカレンに『まったく』と溜め息を吐きつつ、ロロは辺りを見渡し始める。

「お?」

するとロロは自分達の斜め後方にある物を見付ける。

ロロはそのある物の所へ向かい、他の四人もロロの後に続く。

「何を見付けたのんだ、ロロ?」

「……小屋だ」

「小屋?」

暗闇の中でロロが見付けた物、それは木製で出来た小屋だった。

一同はロロを先頭に小屋の前に辿り着く。

辿り着くとその小屋を視認出来る距離まで来たアイシャは小屋の出入り口の扉に触れて、

「この小屋は恐らく、盗賊達が使用している物だね」

「俺もそう思う。秘密の坑道の近くに在るのだから盗賊達とは無関係ということは無いだろう」

盗賊団アジトの秘密の坑道の近くに存在しているのだから、この小屋は盗賊達の物だと推測するアイシャとミツルギ。

するとアイシャは小屋の中に入りたいのか、扉を開けようとドアノブをクイクイっと引っ張る。

だが扉には千錠が付いており、どんなに引っ張っても千錠が邪魔をして扉を開くことが出来なかった。

その様子を見てロロは慌ててアイシャの側に駆け寄り、

「おいおい、何をするつもりだよ?」

「中に入るのさ。この小屋の中に私達の現在位置が分かる物が在るかも知らない」

「入るって………もしこの小屋が盗賊団の物じゃなかったら不法侵入だぞ。見たところまだ使われているみたいだし」

確かにこの小屋が盗賊団の物とはまだ断定されていない。

更に小屋の状態から見て、まだ人が使っている形跡もあると診断するロロ。

もし、今五人の眼の前に在る小屋がロロの言う通り、盗賊団以外の誰かの物だったら、持ち主の許可も無しに入れば、その行為は列記とした犯罪である。

……しかし、実際にはそれが通用するのは公然の場に限った話。

アイシャはロロを宥めるようにこう述べる。

「私達以外誰も居ないんだからバレないさ。それにこの小屋が仮に盗賊団の物じゃなくても、何かを取って盗む訳じゃないんだ。私はただ私達の現在位置が分かる物が見付かれさえすればそれだけで良いんだから。ロロだって此処で迷子には成りたくないでしょ?」

「………それもそうだな。今は此処が何処なのか、調べなきゃ帰れないもんな」

自分達の行いが例え犯罪だとしても今はアイシャの言う通り、此処が何処なのかを知る方が大事だとロロは考えを改める。

「退いてくれアイシャ、俺が開ける」

ロロがそう促すとアイシャは扉の前から身を引き、代わってロロが扉の前に立つ。

そして鞄からヘアピンを取り出すと、千錠の鍵穴の中にヘアピンを入れ、カチャカチャと音を立てながら鍵穴の中でヘアピンを動かす。

数秒後、千錠からガチャリと金属音が響くと千錠の金具が外れ、金具が外れた千錠は地面へと落ちる。

無事且つ速やかに解錠は成功し、間近でその様子を眺めていたアイシャはロロの解錠の速さと手際の良さに感心したか、軽く握り締めた右手を唇の前に置く。

「始めて見た時から思ってたけど、ロロのピッキングスピードって早いよね。千錠の解錠をたった数秒で終わらせるなんて、プロ並みだと思うよ」

「へっ! 俺様に掛かれば千錠ぐらい、朝飯前だぜ!」

「あまり誉められたことでは無いがな」

「う、うっせーよ!」

例え頼りになってもピッキング行為は犯罪なので誉められたことじゃないとミツルギにそう言われて、半ば八つ当たりするように小屋の扉を乱暴に開けるロロ。

開けた瞬間、ロロは小屋の中である物を見付け、眉を吊り上げた。

そのある物とは。

「グラ・ビー?」

ロロはそう呟く。

小屋の中に在った物、それは四輪の車輪で地面を走る乗り物『grand(グランド)Vehicle(ビークル)』、略して『グラ・ビー』だった。

もっと近くで見ようとロロが中に入ると続いて残りの四人も小屋の中に入る。

入った瞬間、早速アイシャはその『グラ・ビー』の運転席の扉を開け、上半身を車内に入り込ませ、手探りで車内の点灯を付けた。

明かりが付いたことでロロ以外の者達の視界が大分良くなり、周りが見え安くなった。

そして視界を良好させたアイシャは次に『グラ・ビー』を運転する時に使う円状型の操縦器を調べ始めた。

すると、

「……やっぱり」

予想が的中したのか、アイシャはそう呟いた。

その呟きを耳にしたロロはアイシャの隣に近付き、

「どうしたんだ?」

「操縦器の鍵穴に細工が施されている。これは鍵が無くても『グラ・ビー』を使えるようにする為の細工だよ」

「細工って……まさか」

「そう、この『グラ・ビー』は盗難車だよ」

操縦器の鍵穴の細工を見て、小屋の中に在るこの『グラ・ビー』は盗まれた物だと判定するアイシャ。

更に重ねてアイシャはもう一つ分かった事を告げる。

「しかも、運転座席の端に小さな○△の印が在る。これは盗賊が物を盗んでそれを自分達の物だと示す為の印だよ」

「その盗賊団の盗品を示す物が小屋(ここ)に在るってことは、この小屋は……」

「盗賊団の物ということで間違いなそうだな」

ロロが推測した答えを横取りするように先に答えるミツルギ。

自分の台詞を先に奪われたことに対してムッと顔をしかめるロロだったが、この小屋に盗賊団の盗品が存在していたことが分かった以上、五人は坑道の近くに在ったこの小屋はやはり盗賊団の物だと確信する。

「あっ」

とそこでアイシャは隣の席で何かを発見する。

「なんだ、何か見付けたのかアイシャ?」

「うん、ほら」

皆に見せようとアイシャは差し出すようにそれを出す。

アイシャが見付けた物、それは四つ折りと成っている一枚の紙切れだった。

だが、それはただの紙切れでは無く、ミツルギはその紙切れの正体を言い当てる。

「それはもしや、地図か?」

「ご名答、多分この地図は此処等辺の地図だと思う」

そう言ってアイシャは地図を広げて、内容を調べ始めた。

するとその地図にはご丁寧にも五人の現在位置を示す印が付けられていた。

しかも印から見て、一番近い村や町はどうやら首都『リア・カンス』のようだ。

アイシャは地図を皆の方に広げて、その事を伝える。

「皆、見て! 此処からなら『リア・カンス』の方が近いみたいだよ」

「お、ホントだな! 野宿しなくて済むぜ!」

と喜ぶロロだったが、それとは逆にミツルギは眉間に皺を寄せながら腕を組んで、

「しかし、一番近いと言っても此処から『リア・カンス』までかなりの距離が有るぞ。もし歩いて行くとなれば、着くのは最低でも明日の明朝ぐらいに成るな」

此処から首都『リア・カンス』の距離は歩いて半日程の掛かる距離だと地図を見て、自分達の現在位置と『リア・カンス』の距離を瞬時に計算したミツルギはそう述べる。

「げっ……それはキツイな」

ロロも含めて五人は盗賊団のアジトの騒動でかなり疲労しているので、徒歩だと『リア・カンス』に着くには半日も掛かると聞いたロロは希望が断たれたかのように顔を曇られる。

「それなら心配要らないと思うよ」

だがその曇りを振り払うようにアイシャが心配無いと囁く。


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