勇者の剣と聖女の羽根
「こちらは、我が国に伝わる勇者の剣です。
鞘から剣を引き抜くことは勇者様しか出来ません。
シズヤ様、どうぞこの剣を鞘から引き抜いて下さいませ。」
エヴァンナから静也へと剣が渡され、引き抜く。
かちゃっ……。
鞘から剣が引き抜けた。
が、刀は竹光だ……
本当に情けない…。
これには皆、妙に納得した。
((へたれな勇者は伊達じゃない。))
静也が剣を鞘に戻す。
居たたまれない感が流れる…。
「流石ですわ。勇者の剣を兄上達が抜くことが出来なかったのですから、剣の刃は勇者様のレベルに応じて変化すると歴史の書で言い伝えられていますので、これからでございますわ。」
エヴァンナの助け船がでる。
「そして、聖女様であらせますシズカ様にはこちらの白い羽根とインクがございます。これらは聖女の羽根と魔法のインクと呼ばれております。」
エヴァンナから静華の手に聖女の羽根がてわたされた。
すると、白い羽根は羽根ペンへと変化した。(静華愛用のマンガを書く時に使うペンだ…)
静華はにっこり笑顔で言う。
「ありがとうございます。月の巫女姫様、大事に使わせて頂きます。」
兄と末っ子は同時に心から思った。
((あの人は必ずやる。絶対布教する。))
末っ子は何を思ったか兄に同情の目を差し向けて、ぽんっと肩に手を置いた。
(あたしはお兄ちゃんの味方だよ。)
と末っ子の雫は日本語で言った……。
雫はすでに姉の黒いオーラを察知して、兄を心から心配していた。
この世に生をうけて妹歴10年、この勘は今のところ外れたことがない末っ子の雫であった……。