乙女の花園
ここはアディストリア城の「乙女の花園」と呼ばれるうら若き乙女達がお茶会を開く庭園の一部をそう呼んでいる。
日本では女子会ともいうが…、今はエヴァンナと静華と侍従達が芝生の上に敷物を敷いてピクニックのような感じで午後のお茶を楽しんでいた。
辺りは薔薇の花が色とりどりに咲き乱れて、花の香りが辺りを包んでいた。
「最近の執筆活動はどうでしょうか?」
愛らしい声でエヴァンナは静華に言った。
「そうねぇ、イマイチなのよ~!あの魔族の美人さん達みたら、いろいろとね……思い付いてそればっかり考えちゃうの」
「シズカ様、その思い付いたものとは?」
「皆に猫耳付けてみたり、コスプレしたら…何が似合うかなとか♪」
「猫耳に、コスプレとは?」
「ああ、エヴァ様、コスプレは知らなかったね。コスプレの総称はコスプレイヤーって言って、アニメやマンガのキャラに成りきることで、例えばエヴァ様が忍術学園の制服を着て見たところを妄想して下さい」
エヴァンナは妄想してみた。
(らん○郎様の着ているあのお召しものを私が……、)
「まあ、なんて素敵なことなんでしょう!」
アディストリア公国の王女はまた新たな世界を見いだした瞬間であった。
「そうでしょう!コスプレには色々なジャンルがあって制服ものや擬人化ものもあってこの間の新作とか♪」
「『砕幽鬼』ですわね。私、とても感動しましたわ」
『砕幽鬼』はジュリエット・シャーロックこと鈴木静華の最新作であり、元々は人間で鬼になってしまった三蔵が旅の通りすがりに500年間、岩に幽閉されていた猿の悟空を岩を粉砕して助けて、人間に戻る為に西に向かうというとある物語のパロディを書いたのだ。
これもアディストリア公国の腐女子会のメンバーには大変好評で絶賛発売中である。
「猫耳は擬人化の1つで私の国でも一番身近なものなんですよ」
「まあ、私もコスプレというものをもっと知りたいですわ」
「そうですよね、ぜひともやってみるべきですよね。いひひっ♪」
「そうですね。うふふ♪」
これが「乙女の花園」のうら若き乙女達のお茶会の様子であった。
この会話が元で後に男の魔族が巻き込まれるのは、すぐ目前であった。