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花街の悪夢 7

暴力的なシーンがありますのでご注意下さい。



アダムに良く似た18、9歳位の女性がいた。



女性は薄暗い土壁の寒い部屋に閉じ込められ、冷たい鎖の首輪に繋がれていた。



女性は目を焼かれ瞼が火傷でただれていた。



その火傷は手当てされることもなく放置されていた。



女性は一人、暗闇でどうしようもない悲しみと孤独の中にいた。



そして、双子の弟のことを思い出していた。



**




魔族の保護が出来た。


しかし、アダムは魔王の子供なのかは判断出来ない。




それに最初の魔族が目撃された情報も残っていた。


エタリーナの兵士と共に競売に参加していた貴族や金持ちの商家の家を家宅捜索し今まで買われてきた人々の救出に静也達は協力し情報を探っていた。




今日は午前中から静也はアダムの傍についてキールとルイズラムは家宅捜査を手伝いにいっていた。




アダムは昨日の薬で良く眠っていた。



時々、イブと名前を呼んでいた。



気になったが今はそっとしておく。



眠れる時に眠っていた方がいい……。



静也自身も捕まっていた時は、正直目が覚めてから怖くて不安でいっぱいだった。



アダムの今までの境遇に近い体験をした静也はアダムの精神的不安が少しでも取れれば良いと思った。



**




私が売られてきたのはどれくらい前だろうか?



一ヶ月は過ぎたかも知れない。



目を焼かれてから日の光さえも見れなくなったのは、一週間前だ。



瞼はただれて化膿し、病んでいた。




私は最初に屋敷の主人に襲われて体も心もズタズタにされ、主人が私のことが奥方にばれるや否や鞭で体を叩かれ、松明で顔を焼こうして私は光を見ることを奪われた。




「あんな何処の馬の骨とも知れない、化け者にあんた良く相手にできるわね。こんな悪夢、わたくしが冷まさせてあげる」




奥方が私の目を焼く瞬間に言った言葉だった。




そのあとは猛烈な痛みに高熱を出して倒れた私はそのまま放置された……。



私のこの地獄のような悪夢はいつ覚めるのだろう……。




**




目が覚めたアダムは顔色が幾分よくなり表情もどことなく柔らかくなった気がした。



お昼に帰ってきたキールとルイズラムは未だ人身売買で捕まった人々の解放をして、午後もその任務に当たるらしい。



静也もアダムを連れて一緒に行くことにした。



時々、アダムがイブという女性の名を呟いていたことを二人に話しておいた。



「やはり、もう一人魔族がいるのでしょう」



「イブちゃんね!早く見つかるといいわね」



「はい、見付けてあげたいです」



**




それから、3件目の貴族の屋敷にきた。



アダムの様子が何だかおかしい。



キョロキョロ辺りを見回していた。



エタリーナの兵士を数十名連れてその屋敷の主人を訪ねた。




出てきた主人と奥方は明らかに何か隠していた。



「わし達の屋敷には一歩もいれんぞ!」



大概はそう言うがあるものをルイズラムがある巻物を開いて見せると二人の顔色が真っ青になった。



その巻物とは国王陛下自らが書いた家宅捜索を許す内容とその旨を断った場合における処罰があると書かれていた。



静也達は家の中に入るとアダムが何かに導かれるようにある場所に歩いていった。



**





私は夢を見ていた。


もう、疲れ果て生きる力さえもうあまり残されていない。



夢の中には弟が私を見付けてくれた。



しかし、不思議と何かふわふわして暖かいものがこみあげてくる。



手の指先から温かくなり、トクントクンと穏やかな心臓の音が聞こえる。



その心臓の音に安心してしまった。




私の悪夢は終わったのだろうか?




**




アダムはある薄暗い土壁の寒い部屋に冷たい鎖の首輪をされいた女性を見つけた。



瞼が火傷でただれていて酷い有り様だった。



そして、着ているものもぼろぼろで全身にむち打ちの後があった。



静也は急いでアダムにも飲ませた薬を一滴だけ女性に飲ませた。




アダムに良く似た女性のあまりにも酷い有り様にアダムは呆然としていたが、他の三人はその女性を早くこの場から離した方が良いと考えて迅速に引き上げる行動をした。



女性を宿のベッドに休ませて医者にてもらい、火傷をはじめ治療してもらった。



一番の回復は一緒に寝ることだと医者はいっていた……。



アダムはやはり彼女のことをイブと呼んでいた。



やはり彼女がアダムの姉弟らしい。



イブは今夜、静也と一緒に寝ることになったが理由はキールは既婚者で万が一にも間違いを起こさないために却下された。

キールは昨日、アダムに生気を取られ、残るは静也となりイブと添い寝をしなくてはならなくなった。



**




これは夢だ。




静也は不思議と夢の中にいるのかわかった。



辺りは山々が広がり富士山が見えた。



空は青く澄み渡り、遠くで海まで見渡せた。



近くには花街フラワータウンでみたエキザカムの青紫の可愛らしい花が咲いていた。



あぁ、彼女がいた。



この景色を一緒に見ているんだと思うとまた不思議な思いがした。



鷹が空を飛んでいた。



彼女と何も話さず、ぼぉーと一緒にこの景色を見ていた。




**




朝、起きると彼女の火傷の後が綺麗になくなっていた。



静也はエキザカムの花を摘んで彼女の部屋に飾った。




イブは眠りから覚めた。



太陽の光が見え、近くには弟のアダムがいた。



これはまた夢なのだろうか?



《イブリティーナ、久しぶりだね》



アダムは魔族語でイブに言った。



《ええ、アダム、ここは?》



イブの問いにアダムは全部話した。




そこへ、キールが部屋に入ってきた。




「あら、イブちゃん。目が覚めたのね。あら、素敵な花ね」



キールの問いにアダムとイブは部屋に飾られた花の存在に気付いた。




「その花は、エキザカムっていってね。花言葉は『あなたの夢は美しい』っていうのよ」



キールの話にアダムとイブは花を見つめてほっと安心した。




もう、悪夢は終わり。

夜明けがきたのだ。



二人はそんな思いを青紫の花弁と真ん中が黄色の花が私達の希望ように思えた。






これで、やっと花街編も終わりです。



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