花街の悪夢 5
「さて、次の商品は黒髪黒目の何とも珍しい人間の娘です!」
おぉ!!
会場では、静也の番になり異様な盛り上がりをみせていた。
俺は珍獣ではありません。
と、静也はそう言いたくなる視線を周りから見られていた。
「それでは、100アッハーンからです」
静也の競売が始まった。
ちなみにエタリーナ国の通貨100アッハーンは日本円にして千円である。
野○さんである。
福島県出身のとある病気の病原体を発見し、自らも、とある病気にかかり亡くなった医学者にして細菌学者の千円のお札に出ている人物である。
「1ヤッホー」
お、1ヤッホーとは凄い1000アッハーンで1ヤッホーつまり日本円で壱萬円の価値が静也についた。
「100ヤッホー」
おぉ!
会場がざわめいた。
100ヤッホーは100万円だ。いきなり、高額な金額である。この国では一年間は遊んで暮らせる。
その人物は真っ赤に燃える髪に仮面を掛けた青年だった。
そう、アディストリア公国の細菌学者にして宰相のルイズラム・ジ・ヤイアンであった。
いきなりの高い金額を出されそれ以上の値段を言い出せる者はなかなか出ずに静也は無事に落札され、仲間の元に戻って鳥籠から解放された。
ルイズラムとキールの手によって静也は手錠を外してもらった。
**
「次は銀色の髪に黄金の瞳の美青年です」
絶世の美人である。
青年は魂のない人形のような無表情であった。
静也が先程、声をかけた青年だ。
静也は今、手錠を外してもらい手を白い布で巻いていた。
「シズヤ殿、これからエタリーナ国の兵士がこの競売の関係者たちを捕らえますのでご協力お願いします」
「ええっ?」
静也は驚いたが、何とく最初から仕組まれいたのではないか思っていたが…、
「黒幕はあのじいさんですか?」
静也は確信をもって言った。
「……」
ルイズラムは無言の沈黙で静也の言葉を肯定していた。
お~い、ご隠居や~い。
なんじゃ~い。
じいさん、黒幕になってますよ!
むむ…。このままではいかんな。わしの『かっこチョイわいるど』ご隠居の活躍をみてくれ読者殿よ。
**
鳥籠に入れられた青年は今まで表情がなかったのにある人物を見ていた。
黒髪に紫色の瞳の長身の27、8歳位に見える男だ。
黒のタキシードに身を包み白い仮面をかけていた。…薔薇でも背負っていたら少女マンガのセーラー○ーンの某キャラに酷似している。
某キャラも前世からの云々設定があったな。
「×××××」
「××××××××」
二人は知り合いのようだ。
静也は呆然と見ていたが、旅の共のルイズラムとキールは緊張しているようだ。
そこへ、鳥籠のある前へ一人の初老の男がひょっこり歩いてきた。
「ふぅお、ほぉっ、ほぉっ、ほぉっ。久しぶりじゃな、エタリーナ国の民達よ。わしが誰じゃか、わかるかのぉう」
突然の初老の男の登場に地下会場にいた誰もが驚き恐れた。
数年前に退位したとはいえ、あのじいさんはエタリーナ国の民なら誰しも知っている。
この国の元国王陛下であったお方だった。
「この国では、人身売買は禁じられておるはずじゃのう」
元国王陛下が語る言葉に辺りの人間は冷や汗をかく。
「さて、この場に来ている者達よ!
我がマリオ・エタリーナの名において、
人身売買の密売及び誘拐の罪の容疑において
この場にいる者すべて捕縛する!」
マリオ元エタリーナの先代国王陛下はそう言い、その場にいた者達は逃げだそうと辺りは混乱した。
**
逃げ戸惑う人々で地下競売会場は騒然となった。
静也はルイズラムがご協力お願いしますと意味がやっと解り帯に差し込んで隠していた武器を持ち出した。
末っ子がくれた手貫尾に手を通して十手の柄をしっかりと握りしめて、静也は逃げようとする密売組織の関係者を捕まえようとした。
バシッ!
「……ぅっ」
静也は男を一人倒した。
そして、剣をあのじいさんに向かってくるものがいた。
すると、じいさんはもっていた杖で相手の剣をかわし、剣を弾き飛ばして相手の男の喉仏に杖をついていた。
さすがである。あの時のニタリと笑う気色悪いじいさんではない。
『かっこチョイわいるど』なじいさんになった瞬間だった。
外からもエタリーナの兵士が増援にきて、会場内は速やかに静けさを取り戻した。
だか、今夜の27人の競売参加者の内、23人が捕縛され、4人を取り逃がしてしまった。
あの時、タキシードをきた男と連れ合いが捕まらなかった。
しかし、今夜のマリオ先代国王陛下のおかげで人間のよる密売組織を一つ捕まえる事が出来たのでる。
エタリーナは一歩、平和の礎を築き、『魔族達の仕業』で人が誘拐されていなかったという真実を突き止め、静也達は力になり、この国のために貢献したのであった。
**
「ねえ、××××!元王様がくるなんて話聴いてないよ」
「すまない、アグネス。俺の失態だった。もう少しで弟を取り戻せたのに…」
「魔族達の兄貴せいやありまへん」
「そうだな、しかし、お前の弟は無事だろう?」
「ああ、あの元王様ならアダムをうやむやにあつかったりはしないと思うが…」
「今回は仕方ないわ。カイル!一度アジトに戻って様子をみましょう」
「アグネスの言う通り。一度、海へ戻ろう」
「魔族達の兄貴、気になさんさ。アグネスの姉御とカイル船長がについてもう少し様子をみまひょうや」
「ありがとう。リュミオン」
今はエタリーナの花街の郊外を離れた場所にある宿で地下競売会場から逃げ延びた4人?の会話だった。
ついに、作者の某主人公が出てきました。
こちらの本家では初の登場になります。
ちなみに花街編はまだまだ続きます。